アングル:円34年ぶり安値が再び視野、介入ライン152円前後と市場想定
Shinji Kitamura
[東京 14日 ロイター] - ドルが150円台へ上昇し、34年ぶり高値が再び視野に入ったことで、外為市場では、政府・日銀の円買い介入に対する警戒感が一気に高まってきた。通貨当局は介入に当たって「特定の水準は意識していない」としているが、当局の防衛ラインは、2022年10月に巨額介入を実施した152円前後になるのではないか、との声が多く聞かれる。
「151円台でドルを買うと必ず負ける」──。ここ数年のドル/円相場で語られるジンクスのひとつだ。151.94円まで上昇した22年10月は、巨額介入で翌年1月には127円台まで反落した。151.92円まで買われた昨年11月も、植田和男日銀総裁の「チャレンジング」発言などを経て、翌月には140円台まで売られた。
こうした過去の経緯もあって、150円半ばから後半では上値を買い上がる勢いが次第に限られ、151円台では売りに回る向きが増える。それでも上昇に歯止めがかからないようなら、円安は投機的と当局が判断し、介入して鎮静化させるというのが、現時点で多くの市場参加者が描く介入へのシナリオだ。
上田東短フォレックス営業企画室室長の阪井勇蔵氏も、そうした見方を支持するひとり。「これまでの動きを踏まえると、151円台が円買い介入の『デンジャー・ゾーン』となる。上昇ピッチは緩やかになり、すぐに152円や153円を試すような展開にはなりづらい」と話す。
同時に、最近の米利下げ観測の後退と日本の利上げ期待の後ずれが、円をしばらく安値圏に押しとどめる要因にもなる。「日米の非常に大きな金利差を狙うキャリートレードは、世界的に見ても魅力的な収入源となり得る取引のひとつ。ドルの下値では、それを狙った買いが入りやすい」(外銀関係者)という。
14日の通貨オプション市場では、ドル/円のプットとコールの価格差を示すリスクリバーサルが3カ月ぶり水準へ縮小した一方、1カ月物の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)は8%付近と低水準にとどまった。
円がしばらく安値圏でもみあう展開を示唆している。介入をめぐる円相場の神経戦は、まだ再開したばかりだ。
(基太村真司 編集:平田紀之)