ランチタイムコメント

日経平均は小反落、今晩の米小売り決算に注目、円安の下支え余地は小さいか

配信日時:2023/02/21 12:10 配信元:FISCO
*12:10JST 日経平均は小反落、今晩の米小売り決算に注目、円安の下支え余地は小さいか  日経平均は小反落。12.44円安の27519.50円(出来高概算5億159万株)で前場の取引を終えている。

 20日の米株式市場はワシントン誕生記念日のため休場。欧州株式市場では、英FTSE100が+0.12%、独DAXが-0.02%、仏CAC40が-0.16%とまちまち。手掛かり材料難の中、日経平均は45.85円安からスタート。序盤は売りが先行し、一時27359.12円(172.82円安)まで下落する場面があった。ただ、週末にかけてイベントを控える中、持ち高を一方向に傾ける向きは限られ、27500円割れでは買い戻しが入りやすく、その後は切り返して、ほぼ前日終値近くまで戻して前場を終えている。

 個別では、ロンドン金属取引所(LME)での金属価格の上昇を材料にUACJ<5741>、住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、三井金<5706>などが大きく上昇。異形棒鋼の値上げを発表した東京製鐵<5423>のほか、冶金工<5480>、山陽特殊製鋼<5481>、大和工業<5444>などの鉄鋼関連や、INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、コスモエネHD<5021>
など鉱業、石油・石炭なども高い。国内証券の目標株価引き上げも追い風に三菱商事<
8058>、三井物産<8031>、丸紅<8002>など商社も堅調。大黒天<2791>は国内証券の新規買い推奨、ホシデン<6804>はシティインデックスイレブンスの大量保有の判明を材料にそれぞれ急伸。西松建設<1820>は中期経営計画の発表で見直し買いが活発化。東京精密<7729>は国内証券のレーティング格上げで買われた。

 一方、レーザーテック<6920>、ファーストリテ<9983>、ファナック<6954>、SMC<6273>、新光電工<6967>、太陽誘電<6976>などの値がさ株、ハイテク株が全般軟調。メルカリ<4385>、メドレー<4480>、マネーフォワード<3994>などグロース株も総じて冴えない。決算短信における継続企業の前提に関する注記記載が嫌気されたツバキ・ナカシマ<6464>は急落している。

 セクターでは陸運、空運、銀行が下落率上位となった一方、鉱業、石油・石炭、非鉄金属が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の33%、対して値上がり銘柄は62%となっている。

 前日の米国市場はワシントン誕生記念日のため休場。手掛かり材料難の中、週末には次期日本銀行総裁候補である植田和男氏の所信聴取や米1月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが予定されていることもあり、本日も相場は膠着感の強い展開となっている。

 一方、今晩の米国市場では小売り企業のウォルマートやホーム・デポの決算が予定されており、こちらも注目される。根強いインフレの要因にもなっている米個人消費の堅調さを背景に、ウォルマートはしっかりとした決算が予想される。節約志向の高まりで購買対象が生活必需品へ集中するなか、粗利益率の停滞は続きそうだが、在庫調整の進展などが確認されれば好感されそうだ。

 他方、格付け機関のムーディーズによる調査が注目されている。同社によると、クレジットスコアが低い債務者に提供された自動車ローンの30日以上延滞率が2010年以来の水準に上昇しているという。急速な金融引き締めにより、信用力が低い層への消費者信用に悪影響が及び始めたことを表していると、警告シグナルと捉える声も少なくない。

 先日の市場予想を大幅に上回った米1月小売売上高の結果を、季節性など複数の要因が重なった結果として捉える向きも多い中、今晩の米小売り決算で消費動向の堅調さが本物かどうかを見極めたい。仮に悪い内容となれば、深刻な景気後退は避けられるとの年始からの楽観論は修正を迫られそうだ。また、反対に強い結果となると、インフレ懸念はさらに強まり、週末の米PCEコアデフレーターへの警戒感が上値抑制要因として働くことが予想される。

 ほか、日経平均や東証株価指数(TOPIX)の下値を支えている為替の円安については、週末のイベントを控える中、1ドル=135円の節目を手前に一服となっている。米商品先物取引委員会(CFTC)が公表している投機筋の円ポジションをみても、直近のデータではネットでほぼ中立水準近くまで円の買い戻しが進んでおり、海外勢による金融緩和の修正および円高への思惑は根強いと思われる。米国のインフレ懸念の根強さ、利上げ長期化観測の高まりからドルの底堅さが見られているが、現水準からの一段の円安進行余地は大きくないと考える。

 外部環境の不透明感がくすぶる中、当面は3月期末の配当権利取りを狙ったバリュー
(割安)株、高配当利回り株の相対優位性が続きそうだ。
(仲村幸浩)
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