来年のアジア株式資本市場、中国の経済活動本格再開が追い風か
[シドニー 16日 ロイター] - 今年のアジア株式資本市場は過去3年で最も低調な動きにとどまったが、来年は中国の新型コロナウイルス対策の転換による本格的な経済活動再開が追い風になる――。複数の同市場関係者からはこうした声が聞かれた。
中国で2年にわたって続いてきたハイテク企業への締め付けが緩んでいることや、米上場企業会計監視委員会(PCAOB)が米国上場中国企業の監査状況について全面的な点検が可能になったと発表し、中国企業の米上場廃止リスクが後退したことも、株式資本市場の活性化につながると期待されている。
ゴールドマン・サックスで日本を除くアジア株式資本市場共同責任者を務めるエドワード・ビュン氏は「中国の経済活動の本格再開に伴って、市場の動きは段階的に上向いていくだろう」と述べ、まずは流通市場の取引と株式追加売り出しによる資金調達が恩恵を受けると予想。市場環境が改善するとの確認が広がれば、新規株式公開(IPO)復活の条件も整ってくるとした。
リフィニティブのデータによると、日本を含むアジア太平洋地域のIPOは今年、金額ベースで43.3%減少し、株式資本市場のディールも52%落ち込んだ。
特に同地域でIPOが不振だったのは香港で、10年ぶりの低水準を記録。新株の売り出し総額は昨年の281億7000万ドルより74%も少ない74億ドルにとどまった。またディールロジックのデータに基づくと、全70件のIPOのうち44件で流通市場の取引価格が公開価格を下回っている。
ただ中国の経済活動が徐々に再開されれば、これまで中国を敬遠してきた機関投資家の資金がきっと戻ってくるはずだ。
シティグループのアジア太平洋株式シンジケート責任者ハリシュ・ラマン氏は「多くの機関投資家は米国に資金を戻したが、中国は依然として無視できない『部屋の中のゾウ』だ。米国(株)がピークに達してバリュエーションが限界まで高まっていると感じる一方で、どこかに資金を振り向けて利益を得たいと考えるなら、中国に回帰するしかない」と指摘した。
オーストラリアでも、IPOを通じた資金調達額は今年が6億3310万ドルと、昨年の96億ドルから急減した。ただ株価は小幅の下げにとどまっている。UBSのオーストラリア株式資本市場共同責任者マシュー・ベッグス氏は「来年前半にはある程度IPOが実施されると期待している。それに加えて市場がより安定化し、経済環境も落ち着けば、年後半はずっと(IPOが)活発化するだろう」と予想した。