Reuters Japan Online Report Business News

アングル:ゼロコロナ緩和の中国、感染実態不明で投資家は手探り

配信日時:2022/12/16 08:08 配信元:REUTERS

[香港/上海 14日 ロイター] - 中国政府による突然のゼロコロナ政策緩和に虚を突かれた投資家が、今度は中国のパンデミック後の混乱を手探りで進まざるを得ない事態に陥っている。感染の拡大や数カ月先の経済に対する潜在的脅威を追跡する適切なデータがないためだ。

中国は当局のデータが投資家を混乱させたり、信頼性に疑問が生じたりすることが少なくない。当局は大規模な検査を打ち切り、感染状況に関する報告を縮小しており、情報を入手することさえ難しくなっている。

投資家はインターネットの検索データなど他の材料を探し回って追跡モデルを調整するなど、感染の急増や、経済再開に伴う医療危機の可能性を明確に把握する上で困難に直面している。

中国が来年後半に、より強力な成長を遂げるという投資家の確信にまだ揺らぎはない。しかし、以前から投資家にとって読み取りづらい経済が、短期的な感染者急増で一層扱いにくくなっている。

JPモルガン・アセット・マネジメントの新興市場・アジア太平洋株式投資スペシャリスト、ジョアンナ・シェプ氏は「今は混乱している。とりあえず1カ月は様子を見よう。全てがすごい速さだ」と話す。JPモルガン・アセットは中国の投資判断を「中立」に維持。先週のゼロコロナ緩和後も、短期的には様子見のスタンスを取っている。

ゼロコロナの緩和が浮上し、その後、実際に導入されると中国の株価と人民元はいったん急騰した。だが、市場は今週に入って失速。香港ハンセン指数は11月に月間で1998年以来の大幅な上昇を記録し、12月第1週も上げ基調を維持したが、その後は騰勢が衰えた。

上海総合指数も今週は週初から1%近く下落。オフショア人民元 は11月に約4%上げて月間で過去最高の上昇率となったが、その後は足踏み状態だ。

投資家は経済にとっての主要な圧力が、医療制度だとみている。医療制度が崩壊すればゼロコロナ政策に回帰する恐れがあるため、感染状況を追跡する新しい方法を模索し、公開データがますます断片的となる中で欠落したピースを埋めようとしている。

公式発表によると、中国の新型コロナ新規感染者数はこの1週間で急激に減少した。13日発表の有症状感染者数は2291人で、ピークだった5日の5046人から半分以下に減った。

だが、実際には一部地域での感染拡大のうわさが流れ、発熱外来前に長蛇の列ができてインフルエンザ治療薬の争奪戦が起きるなど、感染の急速な拡大が見て取れる。

<キーワード検索>

新型コロナに関する信頼できる公式データがないため、ノムラの首席中国エコノミストのティン・ルー氏は、感染状況を追跡するために中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)など新たな情報源を利用するようになった。

ルー氏の執筆した13日の顧客向けリポートによると、百度の検索サイトでは新型コロナ関連のキーワードでの検索回数が急増しており、おそらく今の感染拡大の震源地となっている首都・北京など主要都市で、局所的に感染が急増しているという。ルー氏は来年1月下旬の春節(旧正月)ごろに、かつてない規模の感染拡大が起きると予測している。

インベスコのアジア太平洋地域担当グローバル・マーケット・ストラテジスト、デービッド・チャオ氏は、大規模検査が終了したため、医療制度に目を向けるようになった。医療制度崩壊の兆候が表れれば、隔離など厳しい管理体制に戻る可能性があるからだ。

投資家にとってもう1つの課題は、感染増加による労働者不足の可能性と、コロナとの共生に対する国民の反応を見極めることだ。

調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの調査責任者、アーサー・クローバー氏によると、中国のコロナ政策転換は非常に速いため、同社の都市におけるコロナ制限指数には、まだ反映されていない。「今後1、2カ月は実施に伴う混乱が続く」とクローバー氏は予想した。

投資家に慎重な姿勢を促すのはBNYメロン・インベストメント・マネジメントのアジアマクロ・投資戦略部門を率いるアニンダ・ミトラ氏。リポートで「中国の幅広い開放への移行は現在進行中で、楽観視は当然だが、一方的な賭けではない」とくぎを刺した。

モルガン・スタンレーは長期的な観点から、中国は経済再開で2023年に5%成長を達成できると見込んでいる。

しかし、モルガン・スタンレーの首席中国エコノミスト、ロビン・シン氏は、それでも「短期的な痛みは避けられない」と感じている。「来年の春が始まるまで成長は低迷を続けそうだ」という。

(Summer Zhen記者、Samuel Shen記者)

ニュースカテゴリ