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インタビュー:共同声明見直し、日銀は大規模緩和の転換を=BNPパリバ・中空氏

配信日時:2022/12/13 13:08 配信元:REUTERS

[東京 13日 ロイター] - BNPパリバ証券の中空麻奈・グローバルマーケット統括本部副会長は、ロイターのインタビューに応じ、政府・日銀の共同声明(アコード)を見直すべきだと述べた。「海外の金利動向を加味した金融政策運営」と記すことで、これまでの大規模な金融緩和とは違う路線を採ることを示す必要があるとした。

同証券でチーフクレジットストラテジストを務める中空氏は、インフレ圧力の高まりを受けて欧米の中央銀行が急速に利上げする中、「日本はコロナの終息とは言えない中でも金利は上にも下にも動き得るという情報発信をしておくべきだった」と振り返った。

政府・日銀のアコードは2013年に策定され、2%の物価目標を「できるだけ早期に実現することを目指す」とした。今年4月以降、物価上昇率は2%を上回る状況が続いているが、物価目標の「持続的・安定的な達成」には至っていないとして日銀は大規模緩和を継続してきた。

中空氏は、とにかく2%を目指すというよりは、少し余裕を感じる文言に変えていくのが望ましいと話し「情勢に応じて金利を上げもするし下げもするということを発信しなければならない。少なくとも、大幅な金融緩和をやめるというメッセージを伝えることが必要」と語った。中空氏は、欧米は景気の悪化で来年の終わりか再来年の冒頭には利下げすると予想している。

債券市場では、社債や地方債の利回りの国債金利に対する上乗せ幅(スプレッド)が拡大し、日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の下、10年金利の上限を0.25%としていることによる副作用との指摘が市場で出ている。

スプレッド拡大について、中空氏は「日銀の金融政策の副作用とは思っていない」と指摘。「総裁が代わる時でないと政策は変わらないとの予測が市場参加者の間でコンセンサスのようになりつつある」と話し、スプレッド拡大は日銀の政策修正に関する思惑が背景にあるとした。

中空氏は「(経済情勢を踏まえれば日銀は)実際には金利を上げるのは難しいだろう」とし、「日銀から現状の金融政策を維持するという意思表示があれば、タイト化(スプレッドの縮小)に向かうだろう」と話した。

<日銀の気候変動対応、「指針作りを」>

中空氏はチーフESGストラテジストも兼任する。気候変動リスクと物価については「ロシアによるウクライナ侵攻によってもたらされたコストプッシュ型のインフレはピークアウトが近づいているが、構造的に気候変動対応に伴うコストアップで『グリーンフレーション』は起こってしまう」と述べ、気候変動対応のための新しいインフラや設備の整備、サプライチェーン(供給網)の見直しはインフレ圧力になるとの見方を示した。

日銀が昨年12月に始めた気候変動対応オペについては「日銀の動きは政府より早かったと認識している」と評価した。「ECB(欧州中央銀行)の社債購入プログラムのように、日銀の判断で環境に配慮した企業の社債を優先的に買い入れることは難しい」とする一方、「気候変動対応として、どういう取り組みが望ましいと思っているのか指針を示す必要があるのではないか」と述べた。日銀の気候変動オペでは、市場中立性の観点から日銀は個別の融資案件をチェックせず、何が気候変動に資するかの判断は金融機関に委ねている。

アジアの中で日本が気候変動対応をリードしていくために、中空氏は「アジアの排出権取引市場の根幹を日本で創設できないか」と提案した。優良な技術を持った日本企業を支援する基金を作り、海外投資家から資金を募るのも一案だとした。排出権市場を巡っては中国の都市が先行しており「日本も遅れをとってはならないのではないか」と語った。

*このインタビューは12日に実施しました。

(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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