フィンテック、新たな金融危機生む危険=米OCC長官代理
[ニューヨーク 7日 ロイター] - 米通貨監督庁(OCC)のマイケル・スー長官代理は7日、ニューヨークでの会議イベントで、フィンテック企業やデジタル銀行の台頭が金融リスクを高め、長期的には新たな危機をもたらしかねないと警告した。
スー氏は「フィンテックと巨大ハイテク企業は大きな影響力を持っていると思う。われわれが多大な関心を払うに値する存在だとも考える」と述べ、フィンテックが銀行との提携などを通じて伝統的な金融の分野に入り込むことで、銀行セクター全体がより複雑化し、分断が進むと指摘した。「私が強く感じているのは、このプロセスは放置すれば深刻な問題を引き起こすか、あるいは何らかの危機が起きる公算が大きいという点だ」と訴えた。
スー氏によると、銀行とハイテク企業は顧客に継ぎ目のないサービスを提供する狙いで相互の協力関係を築きつつある。このため規制当局がどこまでが銀行の従来業務で、どこからがハイテク企業の新規開始分野なのかが区別しにくくなっているという。フィンテック企業のバリュエーションが低下し、そうした企業の資金調達コストが上昇するにつれて、銀行と提携する動きはより増えてくると予想した。
スー氏は、これによって情報セキュリティーやシステム耐性といったIT関係のリスクや顧客保護を巡る問題が生じる可能性があるとも指摘。「私はデジタル化にかかわる、よりなじみの薄いリスクが定義もされておらず、そのため可視化されていないのではとの懸念を強めている。2008年の金融危機でわれわれが学んだ通り、目に見えないリスクは広がりやすく、のちに忌々しいサプライズを起こす原因になりがちだ」とも強調した。
スー氏に先立ち、元OCC長官のジーン・ラドウィグ氏も、フィンテックの規制は銀行への監督体制にくらべてはるかに緩いとして「何も手を打たなければ(ノンバンクが)われわれを次の金融危機に陥らせる」と発言し、危機感をにじませた。