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アングル:米国株に新たなボラ、比較的堅調なセクターを選好

配信日時:2022/09/05 11:43 配信元:REUTERS

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米国株式市場の新たなボラティリティーを背景に、エネルギー株、ディフェンシブ銘柄、高配当銘柄など、厳しいこの1年間でも比較的堅調となっているセクターを一部投資家が選好している

S&P総合500種は8月中旬以降に9%下落。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が同月26日に経済シンポジウム(ジャクソンホール会合)で行った講演で、成長鈍化などの「痛み」を伴ったとしてもインフレが抑制されるまで「当面」金融引き締めが必要という見解を示したことが響いている。

今年に入ってから18%近くも下落した同株価指数の中で、影響を免れたセクターはほとんどないものの、生活必需品株、ヘルスケア株、公益株などのセクターは、市場全体よりも下落幅が小さくなっている。

エネルギー株は最近の反落にもかかわらず、年初来で44%の上昇。2022年の「勝ち組」の一角となっている。

また、過去25年間毎年増配している企業を対象とした配当貴族指数は今年約10%下落しているが、市場全体に比べればそれほど深刻ではない。

S&P500は3.3%安で2日までの週を終えた。2日は8月米雇用統計で労働市場が緩み始めている可能性が示され、序盤は上昇したものの、欧州へのガス供給を巡る懸念が重しとなり、下げに転じた。

夏季の株価上昇局面は大きな打撃を受け、S&P500は6月中旬の底値から現在約7%の上昇にとどまっている。今年の安値を再び付ければ、株価が6%以上上昇してから下落して新たな安値を付けるのは、今年4回目となる。

債券利回りの急上昇は株式の見通しをさらに複雑にし、利回り上昇に敏感なテクノロジー株やその他の成長(グロース)株を特に圧迫している。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントは「株式の軟化と利回りの上昇は、現在のインフレ率での各中央銀行の政策引き締め意欲を投資家が過小評価していたというわれわれの見解と一致している」と指摘。製薬株を含むディフェンシブ株や、平均より高い配当利回りと低い負債比率を特長とするいわゆる優良企業にポートフォリオを傾けることを勧めている。

コメリカ・ウェルス・マネジメントのジョン・リンチ最高投資責任者(CIO)は「インフレがポートフォリオに与える影響を株式投資家が十分に理解しているとは思えない」と指摘。ここ数週間はエネルギー株を買い増しており、供給制約が引き続き原油価格を押し上げることに賭けている。

リンチ氏はまた、他のディフェンシブ株よりも値ごろ感があると考え、ヘルスケア株も買い入れているという。

もちろん、今年アウトパフォームしているセクターにはそれなりのリスクもある。エネルギー価格は不安定で、景気後退で世界的な需要が減退すれば関連銘柄は圧迫されるだろう。

公益株や生活必需品株を中心とする一部のディフェンシブ銘柄は、過去の平均に比べてかなりの割高水準で取引されている。景気が後退を免れれば、投資家はディフェンシブ銘柄を見放す可能性もある。

(Lewis Krauskopf記者)

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