焦点:人手不足はニューノーマル、効率化待ったなしの外食産業
Hilary Russ
[ニューヨーク 29日 ロイター] - ハンバーガー、ピザ、パンケーキ――商品は何であれ、米国の大手外食チェーンは人手不足に悩んでいる。しかもその状態は続きそうだ。手持ちの人員で何とかやっていくために、業界では営業時間短縮とオペレーション合理化が進んでいる。
ダイン・ブランズ・グローバル傘下の「アイホップ」「アップルビーズ・グリル&バー」両チェーンでは、スタッフ充足率が2019年当時に比べ約90%に留まる。ロイターの取材に応じたジョン・ペイトン最高経営責任者(CEO)は、少なくとも直近の4四半期はその状態が続いているとして、「ニューノーマル」という言葉で表現した。
ペイトンCEOによれば、年中無休・24時間営業で知られる「アイホップ」では深夜勤務シフトの従業員が不足し、約400店舗で営業時間を短縮しているという。同チェーンが米国で展開するレストランのほぼ4分の1に当たる。
外食産業は憂鬱(ゆううつ)な現実に直面している。新型コロナウイルス感染症のパンデミックから脱しつつあるというのに、長期にわたり手薄な人員体制でやっていかざるをえない。ロックダウンの初期に、多くの店舗が大幅な人員削減を余儀なくされたためである。外食各社では今、最も必要とされる場所に従業員を配置しつつある。人手不足を補うためにテクノロジーを活用し、レストランでお金を払うよりも、テイクアウトや宅配、ドライブスルーを好むというポスト・コロナの消費性向に適応しようとしている。
リフィニティブのデータによれば、7月3日に終了した第2四半期におけるダインの純利益率は10.1%で、前年同期比で約20%減少した。商品原価と人件費の上昇が利益を圧迫したためだ。
確かに、雇用はここ数カ月で改善している。8月5日に発表された労働統計局(BLS)のデータによれば、外食産業では7月に雇用が7万4100件増え、2月以降で最も強い伸びを示した。外食産業幹部は、求人への応募件数も伸び、採用後の勤務状況も良好だという。
チポトレ・メキシカン・グリルなど一部の企業は、スタッフ充足率は2019年並みか、それを上回っていると話している。そして、フルサービスのレストランよりもファストフードの方が好調だという。
チポトレではスタッフ充足率の高さの要因として自社の魅力的な給与や福利厚生を挙げているが、賃金やその他手当の引き上げは、ほとんどの大手外食チェーンでも共通して見られる。BLSの速報値によれば、今年6月の外食産業における全従業員の季節調整済み平均時給は、2020年2月に比べ約18%上昇し、18.42ドルに達した。とはいえ、これでもようやくインフレの進行に追いつけるかどうかといったところだ。
賃金上昇にもかかわらず、7月時点での外食産業における労働者数は、コロナ禍が始まった2020年2月以前に比べ、約63万5000人(5.1%)減少している。
8月初めに全米レストラン協会が事業者を対象に実施した調査では、顧客の需要に見合う十分な従業員を確保できていないとの回答が65%に達した。
全米に1000店以上を展開し、従業員数約2万人を抱えるマルコズ・ピザのトニー・リバルディ共同CEOは、ロイターの取材に対し、必要な人員に対して約2200人が不足しており、欠員率は11%になると語った。
キャロルズ・レストラン・グループは、「バーガーキング」と「ポパイズ」1100店舗をフランチャイズ経営している。同社のアンソニー・ハル最高財務責任者は8月11日の業績報告会議で、両ブランドの1店舗あたりの従業員数は現在約21名で、2019年時点での1店舗あたり24名より12%少ないと述べた。
多くの外食チェーンでは、可能な限り新たなテクノロジーを導入して人手不足を補い、どうしても人手が必要な場所に従業員を配置転換している。
「ポパイズ」の親会社であるレストラン・ブランズ・インターナショナルのホセ・シルCEOは、あるインタビューで、同ブランドの運営事業者は自動油切り装置を備えたフライヤーなど、調理を高速化する機器を投入しつつあると語った。「おかげで、従業員は本当に重要なこと、つまりお客様へのサービス提供に集中できるようになる」とシルCEOは語る。
BTIGのアナリスト、ピーター・サレー氏によれば、マクドナルドは、イリノイ州内の20店舗以上でドライブスルーにおける音声自動認識による注文方式をテストだという。だが、音声注文の精度はまだ約80%に留まり、広範な導入に向けて要求される95%には達していないとのことだ。
ブリンカー・インターナショナル傘下の「チリーズ・グリル&バー」は、厨房における仕込み作業を効率化する方法を模索中だ。
毎日、従業員はいくつかのメニューで使うエビを事前に数え、分割して袋詰めをし、冷蔵庫に入れている。だがこの作業は、調理中に行うことも可能だ。
ケビン・ホフマンCEOは8月24日の業績報告会議で、「仕込み作業を効率化して、人件費を数百万ドルも節約しないという手はない。その分の手間を厨房ではなくフロアに振り向けることもできるし、その仕事に投入してきた時間を削減できれば最終的な利益を改善できる可能性もある」と語った。
「チリーズ」の店舗は全米1128カ所。年間362日営業しており、1店舗あたり1日1時間の労働時間を削減すれば、チェーン全体で年間40万8336時間相当の労働効率改善につながる。
株式非公開のマルコズ・ピザでも、生地のカットやロールを補助する新しい機械を導入しており、以前は毎日7─8時間かかっていた工程がわずか2─3時間に短縮できたとリバルディ共同CEOは語る。
「もっと人を雇って欠員を埋めたいと思ってはいるが、このままずっとそれが不可能になるという覚悟を固めつつある」。
(翻訳:エァクレーレン)