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金融庁、銀行の有価証券運用や外貨流動性を重点検証 米利上げで警戒感

配信日時:2022/08/31 17:03 配信元:REUTERS

[東京 31日 ロイター] - 金融庁は31日、新たな行政方針を公表し、銀行の有価証券運用や外貨流動性のリスク管理を重点的に検証していくとした。米連邦準備理事会(FRB)の急速な利上げで米債利回りが上昇、メガバンクや地方銀行で外債の含み損が膨らんでいることに対応する。

メガバンクについては外貨調達の状況も注視する。地銀に関しては、地元を離れた大都市での融資など新たな注力分野のリスクにも警戒感を示し、必要に応じて立ち入り検査を実施するとした。

行政方針は今年7月から来年6月までの金融庁の取り組みをまとめたもので、中島淳一長官の下で2回目となる。

金融庁は、日本の金融機関は「総じて充実した財務基盤を有し、金融システムは総体として安定している」と評価した。しかし、金融・経済や世界情勢の先行きは不透明だと指摘し、経済環境の変化や金融市場の変調が金融機関の健全性や金融システムの安定性に与える影響を分析するとともに「業績が悪化した貸出先に対する与信管理や事業者支援の状況、有価証券運用や外貨流動性に関するリスク管理態勢についてモニタリングを行う」とした。

FRBの急ピッチの利上げを背景に米債利回りが急伸したことで、メガバンク3グループの外債の含み損は6月末時点で合計2兆6569億円と、3月末の1.5倍に拡大。SMBC日興証券の集計によると、上場している地方銀行の外債・投信などの含み損は3月末の約1800億円から6月末は約9800億円と、5.4倍に膨れ上がった。米金利の上昇を主因に、米ドルの調達コストも上昇している。

金融庁はメガバンクを含む主要行等について、有価証券運用や外貨流動性に関するリスク管理態勢を「重点的に検証し、その高度化を促す」とした。外貨流動性については「市場性調達に一定程度依存しており、市場の急変に対して脆弱性を有していることに留意する」とし、外貨流動性の状況を「タイムリーにモニタリングしていく」とした。リスク管理の高度化に向け、日銀と共同で銀行と対話していく。

昨事務年度に続き、日銀と共同でストレステストを実施することも盛り込んだ。

地方銀行については、「リスクテイクの状況に応じたリスク管理の高度化を進める必要がある」と強調。大口の与信先を含む信用リスクの管理状況、短期的な市場変動への対応を含めた有価証券運用の管理状況、新たに積極的に取り組んでいる施策のリスク管理状況などについて「必要に応じて検査なども活用し、モニタリングしていく」とした。大口与信先やコロナ関連業種などの信用状況、市況の変化が「各行の期間収益や健全性に与える影響を常時把握し、必要となる対応を早め早めに促していく」とも記した。

(和田崇彦)

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