ボーイング787納入再開、広胴機需要上向き始めたタイミングに一致
[パリ/ワシントン 12日 ロイター] - 米ボーイングが10日に2021年5月以降で初めて中型機787を納入したが、これは折しも長らく不振が続いてきた双通路型の広胴(ワイドボディー)機需要がついに上向き始めたタイミングと一致する形になった。
ボーイングは今後、規制当局によるさまざまな検証作業への惜しみない対応を通じて787のさらなる納入を進め、積み上がった受注残の解消を図っていかなければならない。
ただアナリストによると、広胴機を求める声は強まりつつある。実際、東アジアからペルシャ湾岸まで、複数の航空会社が保有する広胴機の陣容見直しに動いているところだ。
3人の業界関係者は、サウジアラビアが広胴機の大規模発注をかけることを検討していると明かした。この話は数年前から浮上していたが、今まで具体的な取引として発表はされておらず、決定時期はさらに先送りされる可能性もある。
しかし事情を追っている関係者の1人は、サウジ政府が石油依存脱却と経済構造多様化を目指す「ビジョン2030」構想の一環として、観光や航空産業への投資に力を入れている点を指摘。これを踏まえると、発注決定が遅れるよりは早まり、ボーイングの787と最新鋭機777Xが候補に含まれる可能性があると予想した。
台湾の中華航空も保有するエアバスの「A330」22機の更新を検討中で、787とエアバスの「A330ネオ」が後継候補の座を争っている。
世界最大の航空機リース会社エアキャップのケリー最高経営責任者(CEO)は11日、「世界中で国境が全面的に再開されるとともに、国内市場で見られたような旅行需要の回復を国際市場でも目にするようになると確信している。広胴機に関してわれわれが目の当たりにしている問い合わせや需要の大きさを考えると、航空各社もまたこうした展開になると信じていることは明白だ」と述べている。
ボーイングの商用機販売・マーケティング担当シニア・バイスプレジデント、イセーヌ・ムニール氏は、先月の英ファンボロー国際航空ショー後に記者団に対し、「われわれが今目撃しているのが(需要の)持ち直しなのは間違いなく、幾つかの国際市場に根を下ろしつつある」と語った。欧米間や中東と欧米間の需要は非常にしっかりしてきているという。
独立系航空アドバイザーのバートランド・グラボフスキ氏は「広胴機需要は本格的に回復してきている。ただし開発と生産の遅れのため入手がしにくい。だからコロナ禍前の水準にはまだ戻っていない」と説明し、777Xの納入が先送りされていることや、787も引き渡しが途切れ途切れな状況を挙げた。
787は納入がなかった期間が1年あったほか、777Xは初号機納入予定が5年遅れて2025年となっている。