Reuters Japan Online Report Business News

賃金動向に不確実性、手を緩めず緩和続ける必要=雨宮日銀副総裁

配信日時:2022/07/28 11:27 配信元:REUTERS

[東京 28日 ロイター] - 日銀の雨宮正佳副総裁は28日、岩手県金融経済懇談会であいさつし、今月取りまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では2%の物価目標を持続的・安定的に実現できる見通しにはなっておらず、先行きの賃金動向にも不確実性が高いとして「手を緩めることなく、金融緩和を継続する必要がある」と述べた。

雨宮副総裁は、個人消費が持続的に拡大していくには物価上昇率を上回る名目賃金の上昇が必要だと述べた。その上で、今年度は高水準の企業収益を背景に、製造業中心に夏季賞与の増加が見込まれるなど賃金は上昇すると見込んでいるが、賃金上昇率は「消費者物価の上昇率を上回るとは想定していない」と話した。

一方、来年度以降は、労働需給が引き締まっていくもとで「労使間の賃金交渉において、物価上昇率の高まりも勘案されると予想されることから、ベースアップも含めた賃金のさらなる上昇が期待できる」と指摘。インフレ率低下も相まって、賃金上昇率は消費者物価の上昇率を上回っていくとの見通しを示した。

雨宮副総裁は、今後とも金融緩和で経済活動をしっかりとサポートし「賃金上昇を伴う形で物価目標を持続的・安定的に実現することを目指していく」と語った。

海外からの金利上昇圧力が高まる中、日銀はイールドカーブ・コントロールで10年金利を許容上限0.25%以下に抑え込んでいる。雨宮副総裁は「短中期ゾーンの実質金利は総じて低下傾向にあり、金融緩和効果は従来よりも高まっている」と述べた。

日銀が21日に公表した展望リポートでは、22年度の物価上昇率見通しは前年度比プラス2.3%となった。ただ、雨宮副総裁は来年年明け以降は「原油等の資源価格がこの先も上がり続けるという仮定を置かなければ、エネルギー価格の押し上げ寄与は減衰し、さらにコスト転嫁の動きも一巡していく」と述べた。さらに、振れの大きい生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数の見通しでは24年度でも1%台半ばの上昇率にとどまるとした。

<GDP、今年度後半ごろにはコロナ前水準を回復>

雨宮副総裁は景気の現状について「個人消費の回復が明確になってきている」と指摘。ただ、最近の新型コロナウイルスの感染者数の増加は「かなり急激であるだけに気がかりな要因だ」と述べた。エネルギーや食料品を始めとする物価上昇についても、消費者マインドの悪化につながっており、今後十分に注意が必要との認識を示した。

景気の先行きについては、資源高による下押し圧力を受けるものの「感染症の影響が和らぎ、供給制約も解消に向かう中で、回復していく」と予想。国内総生産(GDP)の水準は「今年度後半ごろには、コロナ以前の2019年の平均水準を回復する」との見通しを示した。

ただ、こうした見通しの不確実性はきわめて高く、リスク要因として個人消費の持続力と海外の経済・物価情勢を挙げた。

海外情勢については雨宮副総裁は、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは22年、23年とともに3%程度のプラス成長を続ける見通しとなっており、景気後退に陥るとの見方にはなっていないものの、「資産価格の調整や為替市場の動向、新興国からの資本流出を通じて、グローバルな金融環境が一段とタイト化し、ひいては海外経済が下振れるリスクがある」と警戒感を示した。日銀として「引き続き、金融・為替市場の動向やその日本経済・物価への影響を十分注視する必要がある」と述べた。

(和田崇彦 編集:内田慎一、田中志保)

ニュースカテゴリ