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焦点:中国でIPO申請急増、世界市場の活動鈍化の中で脚光

配信日時:2022/07/09 08:12 配信元:REUTERS

[上海/香港 7日 ロイター] - 中国では今年6月に新規株式公開(IPO)申請件数が急増し、IPO候補企業は一気にほぼ倍増して1000社近くと3年ぶりの高水準に達した。世界の多くの地域で株式・資本市場の活動が鈍化しているが、中国はバンカーにとって高収益が期待できる場所になるかもしれない。

IPO申請が増えた一因は、新型コロナウイルス感染対策として実施されていたロックダウン(都市封鎖)が6月に緩和されたことだ、と複数のバンカーは話す。

当局に新たな財務情報の提出を迫られ、手続きが遅れるのを避けようと、6月末までに駆け込みで申請する動きも相次いだ。

ある中国人バンカーは、IPO申請に必要な財務諸表の有効期限は半年間なので、上半期や下半期の業績で対応できる6月末までと12月末までに駆け込み申請が起きる傾向があると説明。

また、上海のロックダウン(都市封鎖)が6月1日に終了した点に触れて「多くのIPO計画は、新型コロナウイルスの感染拡大で滞っていた」と付け加えた。

中国のIPO市場は既に今年前半、資金調達額で世界最大となっているが、IPO候補が続々と控えている以上、年後半も好調を維持できることになる。年前半に資金調達額が世界で最も大きかったのは、上海証券取引所の科創板(スターマーケット)だった。

大型案件としては、スイスの農薬大手・シンジェンタが年内に科創板へ上場し、100億ドルを調達する計画が挙げられる。実現すれば、今年の中国IPOとして最大規模になるだろう。

また、上海聯影医療科技は19億ドルの株式売り出し、米政府から制裁対象に加えられた人工知能(AI)技術のメグビー(昿視)は、10億ドルの調達を目指している。両社とも科創板に上場予定で、現在は審査の最終段階にある。

投資家は、電子商取引最大手・アリババの金融子会社、アント・グループのIPOが復活するかどうかも注目している。アントの上場は2020年11月、直前に延期が決まった。ただ、複数の関係者はロイターに対し、アントの計画について共産党指導部が暫定的な許可を与えていると明かした。

<追い風の期待>

公式統計によると、中国当局が受け付けたIPO申請は6月だけで444件に上り、申請総数は933件に達した。

中国では科創板と深セン証券取引所の創業板(チャイネクスト)、北京証券取引所が米国式のIPO手続きを採用しており、合計申請数は前年同期比で31%増えている。

アーンスト・アンド・ヤング(EY)のパートナー、フェリックス・フェイ氏は、上海と北京の感染対策規制が緩和され、中央政府が景気刺激策を打ち出しているので、中国経済は年後半に持ち直し、それがIPO市場の追い風になるとの見方を示した。

KPMGの分析によると、中国のIPO候補は製造業やテクノロジー・メディア・通信(TMT)、ヘルスケア、エネルギーといった革新的かつ戦略的なセクターに集中している。

KPMGチャイナの資本市場担当パートナー、ルイス・ラウ氏は、中国経済の回復可能性が「資金調達に好ましい環境を生み出し、中国におけるIPO制度改革の拡大が予想されることもプラスに働く」と指摘した。

今年前半の上海と深センにおけるIPO規模が合計463億ドルと世界全体の調達額の約半分を占めたことが、KPMGのデータで分かっている。

(Samuel Shen記者、Scott Murdoch記者)

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