注目トピックス 日本株
TKP Research Memo(1):仕入れ環境が追い風にあるなか、ポストコロナを見据えた出店加速に取り組む方針
配信日時:2022/05/19 15:01
配信元:FISCO
■要約
ティーケーピー<3479>は、貸会議室ビジネスを起点とした「空間再生流通事業」を展開している。不動産オーナーから遊休不動産等を大口(割安)で仕入れ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、それを法人に小口で販売・シェアリングを行う独自のビジネスモデルに特徴がある。遊休不動産の有効活用を図りたい不動産オーナーと、低コストで効率的に会議室を利用したい法人のニーズを結び付けるところに新たな市場を創出し、高い成長性を実現してきた。国内の主要都市に238拠点・1,963室(約13.3万坪)と幅広く展開し、顧客基盤は3万社以上に上る(2022年2月期末時点)。
2019年5月にはレンタルオフィス「Regus」等を展開する日本リージャスホールディングス(株)(以下、日本リージャス)を買収すると、2021年3月にはTKPによる新ブランド「Work X Office(ワ—クエックスオフィス)」の立ち上げにより、貸会議室ビジネスとの親和性の高い短中期オフィス事業にも本格参入した。この2年間は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により業績は低迷してきたが、足元で回復基調にある貸会議室需要をはじめ、コロナ禍をきっかけにさらなる拡大が見込まれるフレキシブルオフィス需要を取り込むことで成長を加速する戦略である。また、2019年9月には台湾リージャスを買収し、アジアを中心とした海外展開へ向けても足掛かりを築いた。リージャス施設としては、日本国内で170施設(約4.3万坪)、台湾で14施設(約0.7万坪)を展開している(2022年2月期末時点)。
1. 2022年2月期の連結業績
2022年2月期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の44,685百万円、営業損失が883百万円(前期は2,497百万円の損失)と増収及び損失幅が改善した。また、重視するEBITDA※1についても同50.7%増の4,630百万円と大きく回復した。TKP単体では、コロナ禍の影響を通年で受けたものの、「TKP職域ワクチンセンター」※2の運営や、同社運営アパホテルによる新型コロナウイルス感染症の軽症者用宿泊療養施設としての一棟貸し(以下、新型コロナ軽症者用一棟貸し)※3が寄与したほか、貸会議室需要の緩やかな回復により増収を確保した。一方、コロナ禍の影響をほとんど受けていない日本リージャスについては、新規出店を継続しながらも、施設稼働率が堅調に推移したことにより、通期及び四半期ベース(第4四半期)での過去最高売上高を達成した。損益面では、TKP単体が売上高の一定の回復と固定費削減による収益体質の強化により営業黒字化を達成した一方、日本リージャスは先行費用(将来を見据えた積極出店の継続)により営業損失を計上した。重視するEBITDAについては、TKP単体及び日本リージャスともに黒字を確保している。財務面では、新株予約権(第7回)の行使促進を通じて8,296百万円の資金調達を実現した。
※1 EBITDA=営業損益+減価償却費+のれん償却費+長期前払費用償却費+顧客関連資産等の無形資産償却費。
※2 2021年6月21日より開始された新型コロナワクチン職域接種に対し、同社会場の一部無償提供を開始するとともに、自社内での職域接種対応が困難な中小企業を支援すべく、新型コロナワクチン接種会場のオペレーションや医療従事者手配等を総合的に行う「TKP職域ワクチンセンター」を迅速に整備・開設した。
※3 2021年1月以降、同社が運営するアパホテルを新型コロナウイルス軽症者用宿泊療養施設/感染対策用施設として順次提供を開始した(2022年2月期末時点で5棟)ほか、9月6日より「抗体カクテル療法センター」としての提供も開始した。
2. 2023年2月期の連結業績予想
2023年2月期の連結業績について同社は、売上高を前期比14.1%増の51,000百万円、営業利益を2,000百万円(前期は883百万円の損失)と増収増益により、各段階利益での黒字化を見込んでいる。また、EBITDAについても同62.0%増の7,500百万円と大きく伸びる見通しである。コロナ禍の影響を一定程度見込むものの、期末に向けコロナ禍は徐々に収束へ向かうことを前提とした業績予想となっている。TKP単体については回復基調にある貸会議室需要を取り込み、日本リージャスについても出店を継続し順調な稼働上昇を想定している。このほか、社会経済活動の正常化に伴う需要回復を見据え、新規出店の推進にも意欲的に取り組む方針である。損益面では、売上高の一定の回復と収益体質の強化(損益分岐点の引き下げ)等により、各段階利益での黒字化を実現する見通しである。
3. 今後の方向性
コロナ禍の影響により、同社の成長戦略は2年続けて足踏み状態となっているものの、中長期的な方向性に見直しはない。すなわち、TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させることにより、収益基盤を拡大していく方向性である。足元で回復基調にある貸会議室需要をはじめ、コロナ禍をきっかけにさらなる拡大が見込まれるフレキシブルオフィス需要を取り込んでいくほか、コロナ禍収束とともに需要回復が予想されるビジネスホテル分野にも注力していく考えである。一方、コロナ禍収束後(以下、ポストコロナ)を見据えた当面の戦略としては、1) ポートフォリオ改革、2) リアル×オンラインによる需要の総取り、3) 事業提携による高付加価値化の加速を掲げており、新規出店の推進や日本リージャスにおけるサブフランチャイズ展開の始動、事業提携の推進等により、今後さらなる拡大が見込まれるスペース需要に幅広く対応していくことで、早期に成長軌道に回帰していく方針である。
■Key Points
・2022年2月期はコロナ禍の需要への柔軟な対応や貸会議室需要の緩やかな回復により、損益改善を実現
・2023年2月期は期末に向けてのコロナ禍収束を前提として、売上高の一定の回復と各段階利益での黒字化を見込む
・仕入れ環境が追い風にあるなか、ポストコロナを見据えた出店加速に取り組む方針
・TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させるとともに、フレキシブルオフィス市場でも圧倒的なポジションを確立していく中長期的な方向性に見直しはない
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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ティーケーピー<3479>は、貸会議室ビジネスを起点とした「空間再生流通事業」を展開している。不動産オーナーから遊休不動産等を大口(割安)で仕入れ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、それを法人に小口で販売・シェアリングを行う独自のビジネスモデルに特徴がある。遊休不動産の有効活用を図りたい不動産オーナーと、低コストで効率的に会議室を利用したい法人のニーズを結び付けるところに新たな市場を創出し、高い成長性を実現してきた。国内の主要都市に238拠点・1,963室(約13.3万坪)と幅広く展開し、顧客基盤は3万社以上に上る(2022年2月期末時点)。
2019年5月にはレンタルオフィス「Regus」等を展開する日本リージャスホールディングス(株)(以下、日本リージャス)を買収すると、2021年3月にはTKPによる新ブランド「Work X Office(ワ—クエックスオフィス)」の立ち上げにより、貸会議室ビジネスとの親和性の高い短中期オフィス事業にも本格参入した。この2年間は新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響により業績は低迷してきたが、足元で回復基調にある貸会議室需要をはじめ、コロナ禍をきっかけにさらなる拡大が見込まれるフレキシブルオフィス需要を取り込むことで成長を加速する戦略である。また、2019年9月には台湾リージャスを買収し、アジアを中心とした海外展開へ向けても足掛かりを築いた。リージャス施設としては、日本国内で170施設(約4.3万坪)、台湾で14施設(約0.7万坪)を展開している(2022年2月期末時点)。
1. 2022年2月期の連結業績
2022年2月期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の44,685百万円、営業損失が883百万円(前期は2,497百万円の損失)と増収及び損失幅が改善した。また、重視するEBITDA※1についても同50.7%増の4,630百万円と大きく回復した。TKP単体では、コロナ禍の影響を通年で受けたものの、「TKP職域ワクチンセンター」※2の運営や、同社運営アパホテルによる新型コロナウイルス感染症の軽症者用宿泊療養施設としての一棟貸し(以下、新型コロナ軽症者用一棟貸し)※3が寄与したほか、貸会議室需要の緩やかな回復により増収を確保した。一方、コロナ禍の影響をほとんど受けていない日本リージャスについては、新規出店を継続しながらも、施設稼働率が堅調に推移したことにより、通期及び四半期ベース(第4四半期)での過去最高売上高を達成した。損益面では、TKP単体が売上高の一定の回復と固定費削減による収益体質の強化により営業黒字化を達成した一方、日本リージャスは先行費用(将来を見据えた積極出店の継続)により営業損失を計上した。重視するEBITDAについては、TKP単体及び日本リージャスともに黒字を確保している。財務面では、新株予約権(第7回)の行使促進を通じて8,296百万円の資金調達を実現した。
※1 EBITDA=営業損益+減価償却費+のれん償却費+長期前払費用償却費+顧客関連資産等の無形資産償却費。
※2 2021年6月21日より開始された新型コロナワクチン職域接種に対し、同社会場の一部無償提供を開始するとともに、自社内での職域接種対応が困難な中小企業を支援すべく、新型コロナワクチン接種会場のオペレーションや医療従事者手配等を総合的に行う「TKP職域ワクチンセンター」を迅速に整備・開設した。
※3 2021年1月以降、同社が運営するアパホテルを新型コロナウイルス軽症者用宿泊療養施設/感染対策用施設として順次提供を開始した(2022年2月期末時点で5棟)ほか、9月6日より「抗体カクテル療法センター」としての提供も開始した。
2. 2023年2月期の連結業績予想
2023年2月期の連結業績について同社は、売上高を前期比14.1%増の51,000百万円、営業利益を2,000百万円(前期は883百万円の損失)と増収増益により、各段階利益での黒字化を見込んでいる。また、EBITDAについても同62.0%増の7,500百万円と大きく伸びる見通しである。コロナ禍の影響を一定程度見込むものの、期末に向けコロナ禍は徐々に収束へ向かうことを前提とした業績予想となっている。TKP単体については回復基調にある貸会議室需要を取り込み、日本リージャスについても出店を継続し順調な稼働上昇を想定している。このほか、社会経済活動の正常化に伴う需要回復を見据え、新規出店の推進にも意欲的に取り組む方針である。損益面では、売上高の一定の回復と収益体質の強化(損益分岐点の引き下げ)等により、各段階利益での黒字化を実現する見通しである。
3. 今後の方向性
コロナ禍の影響により、同社の成長戦略は2年続けて足踏み状態となっているものの、中長期的な方向性に見直しはない。すなわち、TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させることにより、収益基盤を拡大していく方向性である。足元で回復基調にある貸会議室需要をはじめ、コロナ禍をきっかけにさらなる拡大が見込まれるフレキシブルオフィス需要を取り込んでいくほか、コロナ禍収束とともに需要回復が予想されるビジネスホテル分野にも注力していく考えである。一方、コロナ禍収束後(以下、ポストコロナ)を見据えた当面の戦略としては、1) ポートフォリオ改革、2) リアル×オンラインによる需要の総取り、3) 事業提携による高付加価値化の加速を掲げており、新規出店の推進や日本リージャスにおけるサブフランチャイズ展開の始動、事業提携の推進等により、今後さらなる拡大が見込まれるスペース需要に幅広く対応していくことで、早期に成長軌道に回帰していく方針である。
■Key Points
・2022年2月期はコロナ禍の需要への柔軟な対応や貸会議室需要の緩やかな回復により、損益改善を実現
・2023年2月期は期末に向けてのコロナ禍収束を前提として、売上高の一定の回復と各段階利益での黒字化を見込む
・仕入れ環境が追い風にあるなか、ポストコロナを見据えた出店加速に取り組む方針
・TKP・リージャスに加え、アパホテルを3本目の柱として成長させるとともに、フレキシブルオフィス市場でも圧倒的なポジションを確立していく中長期的な方向性に見直しはない
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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