ランチタイムコメント

日経平均は大幅続落、世界的な物価高が相次ぎ伝わり米CPI発表へ

配信日時:2022/04/12 12:18 配信元:FISCO
 日経平均は大幅続落。365.55円安の26455.97円(出来高概算5億9000万株)で前場の取引を終えている。

 週明け11日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに大幅反落し、413ドル安となった。インフレ・金融引き締め観測を背景に金利上昇が続き、ハイテク株を中心に売りが出た。中国で新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖(ロックダウン)が継続していることも景気悪化懸念につながった。ナスダック総合指数は-2.18%と大幅続落。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで214円安からスタートすると、寄り付き後も下げ幅を拡大する展開となった。今晩の米3月消費者物価指数(CPI)発表を前に警戒感から売りが広がり、前場中ごろを過ぎると26407.84円(413.68円安)まで下落する場面があった。

 個別では、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎船<9107>といった海運株が大幅に下落。前日急伸した東京電力HD<9501>は買いが一巡すると反落し、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>もさえない。第3四半期決算が市場予想を下回ったコスモス薬品<3349>は急落。また、公募による自己株式の処分を発表したブックオフGHD<9278>などが東証プライム市場の下落率上位に顔を出している。一方、NTT<9432>やOLC<4661>はしっかり。今期大幅増益見通しのローツェ<6323>
は商いを伴って急伸し、東証プライム市場の上昇率トップとなっている。その他の決算発表銘柄でも高島屋<8233>などが買われ、アークランド<9842>やSansan<4443>が急伸している。

 セクターでは、海運業、精密機器、医薬品などが下落率上位。一方、空運業、パルプ・紙、その他金融業などが上昇率上位だった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の79%、対して値上がり銘柄は17%となっている。

 本日の日経平均も前日と同様、米国の金利上昇によるハイテク株を中心とした相場下落を受けて、売りが先行する展開となっている。日足チャートを見ると、26800円台に位置する25日移動平均線水準を下抜け。ここ3日ほど25日線水準で踏ん張りを見せていたため「値固め」との解説も散見されたが、一段の下落により短期トレンドの悪化が意識されやすいだろう。前引けの日経平均が-1.36%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は-1.14%。ここまでの東証プライム市場の売買代金は1兆3000億円弱で、前日並みといったところか。

 個別・業種別では海運株に加え、値がさグロース(成長)株やこのところ逃避資金が流入していた(景気の影響を受けにくい)ディフェンシブ株の一角で軟調ぶりが目立つ。ただ、ローツェやSansanの好決算が他の関連銘柄の期待を支え、買い戻しを誘っている印象も受ける。

 新興株ではマザーズ指数が-0.76%と続落。前日に-4.01%という大幅下落を強いられた反動から朝方プラスに転じる場面もあったが、買いは続かず失速する格好となっている。時価総額トップのメルカリ<4385>は小安いが、ソニーネットワークコミュニケーションズとNFT(非代替性トークン)事業で共同出資会社を設立したサンアスタリスク<4053>が商いを伴って急伸。材料株物色が手控えられているわけではないようだ。本日、東証グロース市場に新規上場したサークレイス<5029>はここまで買い気配が続いている。

 さて、8日の当欄「やはり米金利水準の上昇には懸念」で述べたとおり、その後の日米株式市場では米金利の更なる上昇を受けてグロース株を中心に軟調な展開を強いられている。11日の米市場では10年物国債利回りが2.78%(+0.08pt)に上昇。一時2.79%と2019年1月以来の高水準を付けたという。インフレ・金融引き締め観測に加え、アマゾン・ドット・コムの大型起債という需給要因もあったようだ。金融政策の影響を受けやすい2年物は2.49%(-0.03pt)に低下し、利回り曲線(イールドカーブ)は傾斜化(スティープニング)したが、やはり長期の年限を中心とした金利上昇は将来収益に基づき株価形成されるグロース株に逆風となっている。

 また、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)
も2.91%(+0.04pt)と足元上昇しているが、金利の上昇ピッチがより速いため、結果的に名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利のマイナス幅は縮小傾向にある。

 今晩発表される米3月CPIは市場予想のコンセンサスで前年同月比8.4%上昇と、2月
(同7.9%上昇)から伸びが加速するとみられている。これに先立ち、世界的な物価高を示すニュースも相次ぐ。国連食糧農業機関(FAO)が8日発表した3月の世界の食料価格指数は159.3と2カ月連続で過去最高値を更新。『前月比』で12.6%の大幅上昇である。また、中国国家統計局が11日発表した3月の卸売物価指数(PPI)は資源高の影響で前年同月比8.3%、前月比1.1%上昇した。これらのニュースに加え、米ホワイトハウスがCPIについて「非常に大きく上昇する」との見方を示しており、発表を前に警戒感が先行するのもやむを得ないだろう。

 発表後は短期的に悪材料出尽くし感が意識される可能性もあるが、引き続き各種経済指標や金融当局者を中心とした要人発言を睨み神経質とならざるを得ず、戻りは限定的とみておきたい。

 東京市場の動向にも少々触れておくと、3月第5週(3月28日~4月1日)の投資主体別売買動向で外国人投資家はTOPIX先物を8566億円、日経平均先物を2590億円売り越した。それまでの買い越しは配当再投資等を睨んだ一過性のものだったと受け止めざるを得ない。また、1日申込み時点の市場全体の信用買い残高の合計(東名2市場、制度・一般合計)は2兆9569億円(+66億円)と4週ぶりに増加したが、昨年11月に3.7兆円規模まで膨らんだのをピークに減少傾向が続く。金融引き締め局面でのレバレッジ縮小は当然の動きだろう。

 従前に当欄で予想したとおり、日経平均の直近の戻りは昨年9月からの戻り高値を結んだライン上にある28000円台で一服した。戻り売り目線の投資家が減らない限り、中長期的には上値切り下げトレンドにならざるを得ないだろう。
(小林大純)
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