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焦点:対ロ制裁で一段の物価上昇リスク、消費税1.6%分との試算も

配信日時:2022/02/28 12:45 配信元:REUTERS

[東京 28日 ロイター] - ウクライナ情勢の悪化と対ロシア制裁で原油がさらに高騰し、日本国内の物価をもう一段押し上げるリスクが出てきた。生活者にとっては増税も同然で、経済への影響は消費税率1.6%分に相当するとの試算もある。政府が近く公表する原油高対策は、「トリガー条項」の凍結解除を含め、痛税感に近い消費者実感をいかに緩和できるかが焦点となる。

<「産油国から増税」>

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、国際的な指標となる米WTI先物は24日、一時7年7カ月ぶりに1バレル=100ドルを突破した。西側諸国がロシアをSWIFT(国際銀行間通信協会)から除外する決定をした後の28日も開始直後に99ドル台を付け、北海ブレント先物は一時7ドル超急騰した。

新型コロナウイルス禍からの経済活動回復や、産油国の生産調整などでもともと油価格は上がっており、資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリンの店頭価格(全国平均、消費税込み)は21日時点で1リットルあたり172.0円と、前週に比べて0.6円値上がりした。ウクライナ情勢がこれに追い打ちをかけ、「産油国ロシアからの原油供給が滞るとの懸念から、油価が反転下落する要素がない」と、政府関係者の1人は言う。

第一生命経済研究所の永浜利広・首席エコノミストの試算では、原油価格が1バレル=100ドル程度で推移した場合の経済的な損失額は、消費税率1.6%分に相当するという。「原油先物価格が1バレル=10ドル上がると年換算で1.5兆円の所得の国外流出が生じる。100ドルでの推移が続けば4.6兆円に上る計算になる」と、永浜氏は指摘する。「産油国から増税を課されるのと同じだ」

<GDPに下方圧力>

足元の原油価格上昇は、数カ月後の電気・ガス代や食料品価格に反映されることが予想され、新年度以降の景気に影響を及ぼすのは必至だ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストによると、原油高に加えてリスク回避の円高、株安が向こう1年程度の実質国内総生産(GDP)を1.11%押し下げる可能性がある。

新型コロナウイルス感染の収束期待も背景に、市場では4月以降の消費持ち直しを期待する声が多かった。ただ、想定を超える原油高の影響で「回復力はかなり削がれそうだ」と、前出の木内氏は言う。

個人消費にとどまらず、企業が設備投資を手控えることも懸念される。3月期決算企業が次年度の業績予想を組むタイミングだけに、政府内には「投資計画にどう影響するか注視している」(別の関係者)との声がある。

近く公表する原油高対策では、ガソリン税を引き下げるトリガー条項の凍結解除も含め、あらゆる選択肢を排除せず対処する構えを崩していない。ただ、支援拡充には新たな財源確保が課題となり、「結局は焼け石に水となるリスクがある」(同)との声もくすぶる。

(山口貴也、金子かおり 編集:久保信博)

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