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ティアンドエス Research Memo(2):トータルソリューションを提供する独立系ソフトウェア受託開発企業(1)

配信日時:2022/02/24 15:22 配信元:FISCO
■会社概要

1. 沿革
ティアンドエス<4055>は2016年11月、1996年創業の(株)テックジャパンと1985年創業の(株)シナノシステムエンジニアリングが合併してできた比較的若い企業である。代表取締役執行役員社長の武川義浩(たけかわよしひろ)氏の同業界における30年以上の経験と、そのなかで培われた東芝グループをはじめとする顧客との強固な信頼関係によって、創業以来右肩上がりで成長してきた(武川氏は前職時代、東芝グループが手掛けた原子力発電所のシステム開発に従事していた経歴を持つ)。売上高は創業以来、年平均成長率(CAGR)9.4%と高い成長率を誇っている。2019年には東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターと、次世代技術であるスピントロニクス技術を用いたAIプロセッサに関する共同研究の契約を締結。2020年8月には設立からわずか4年弱という短さで東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たしている。

2. 事業内容
同社は「あらゆる産業において、ソフトウェア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供すると共に、社員を大切にし、株主様に貢献する」という企業理念の下、東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループなどをはじめとする顧客から生産管理システムや業務管理アプリケーションなどの受託開発を請け負っているほか、社員派遣型の保守・運用サービスも提供している。バリューチェーンの一部に特化するのでなく、要件定義、システム開発などの川下から保守・運用といった川上まで全体にわたってサービスを提供していることが同社の特徴の1つである。これにより、顧客との接点を増やし、収益獲得機会を増やすことを可能にしている。

具体的な事業セグメントとしては、ソリューションカテゴリー、半導体カテゴリー、先進技術ソリューションカテゴリーの3つで事業を展開。ソリューションカテゴリーでは様々な業種の顧客からシステム開発を受託している。また、半導体カテゴリーでは、半導体工場のITインフラの運用・保守サービスやヘルプデスクサービスを提供している。先進技術ソリューションカテゴリーは次世代の収益源となることが期待される事業セグメントだ。外部機関との連携による先進技術の研究や他社とは差別化され、一線を画したAIサービスなどを提供している。

3. ソリューションカテゴリー
ソリューションカテゴリーは同社の収益基盤である。同カテゴリーの2021年11月期の売上高は、前期比16.3%増(294百万円増)の2,101百万円で売上高全体の76.9%を占めている。取引先の企業は、強固な顧客基盤である東芝グループ、日立グループ、キオクシアグループに加え、医療、金融関連など多岐にわたっている。こうした幅広い顧客に対し、重電系管理システム、プラント・工場の生産管理システム、経費精算システム、人事考課システムなどをはじめとする業務アプリケーションの受託開発サービスを提供しているほか、医療システムの開発やオンサイトでの開発支援も行っている。新型コロナウイルス感染拡大(以下、コロナ禍)の影響を受けて日本企業のDX推進がさらに加速していることから、堅調な需要が見込めるカテゴリーであると弊社は考えている。

4. 半導体カテゴリー
半導体カテゴリーは、同社に安定した収益をもたらしているカテゴリー。同カテゴリーの2021年11月期の売上高は、前期比30.5%増(108百万円増)の464百万円で売上高全体の17.0%を占めており、ソリューションカテゴリーに次ぐ収益源となっている。主な顧客は、東芝グループとキオクシアグループ各社。これらの顧客に対して、業務アプリケーション導入支援、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション:事業プロセスを自動化する技術の1つ)導入・運用支援、業務プロセス効率化支援などのサービスを提供しているほか、運用・保守サービスも展開している。同カテゴリーの対象である半導体は、DXの成否を左右する部品と言っても過言ではなく、今後ますます半導体に対する需要が拡大していくと弊社は考えている。また、たとえ生産が減少したとしても、工場が稼働している限り、管理システムの運用・保守をはじめとするサービスに対する需要がなくなることはない。したがって、同カテゴリーも安定した収益基盤であり続けると同時に、今後の成長力が期待できる分野であると弊社は考えている。

5. 先進技術ソリューションカテゴリー
先進技術ソリューションカテゴリーは、今後の成長と新たな収益源になることが期待できる事業分野だ。同カテゴリーが新設されたのは約4年前と比較的最近ではあるものの、早くも収益化に成功している。同社は特に画像認識の分野に強みを持ち、大手企業の研究開発などの支援を積極的に行っている。具体的には、日本電気<6701>(NEC)、(株)日立ハイテク、本田技研工業<7267>(以下、Honda)、オムロン<6645>をはじめとする大手企業に対して、世界中にあるAIアルゴリズムの中から顧客のニーズに最も沿ったアルゴリズムを見つけ出し、実装・テストをして使用可能かどうかを検証したうえで提案をするという独自のビジネスモデルを構築している。自社でゼロからAIアルゴリズムを構築するのに比べ、非常に幅広い業種の顧客に対応することができ、多くの収益機会を得ることができることに加え、このようなビジネスモデルを行っている企業が他にいないことも強みになると弊社は考えている。また、自社の社員が常に最新のアルゴリズムに触れていることによりAIの最新動向を把握することができ、顧客により先進的な提案をすることができるようになってくるとも言えるだろう。2021年11月期の売上高は、前期比60.7%増(63百万円増)の167百万円で売上高全体の6.1%を占める。売上高に占める割合は小さいものの、同社独自のビジネスモデルと技術力によって、今後も高い成長が期待できるカテゴリーであると弊社は考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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