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2月ロイター企業調査:春闘ベア実施は3割強、5割強が賃金総額引き上げ

配信日時:2022/02/17 10:04 配信元:REUTERS

[東京 17日 ロイター] - 2月のロイター企業調査で春闘への対応を質問したところ、基本給を底上げするベースアップ(べア)を予定している企業は3割強だった。業績好調で人手が不足する企業は前向きな様子が伺えるが、全体でみると新型コロナウイルス禍が直撃した前年調査をやや上回る水準にとどまった。

一方、賃金の支払総額を増額すると回答した企業は5割強だった。分配を看板政策に掲げる岸田文雄政権が賃上げを強く求める一方で、原材料が高騰するなどし、多くの企業はベアで固定費を増やすより、賞与など変動費で賃金を引き上げようとしている。

調査期間は2月1日から10日。発送社数は502、回答社数は233だった。

今春闘でベアを「実施する」と回答した企業は全体の32%、「実施しない」は68%だった。 業種別では食品や小売りは50%が、電機や輸送用機械も42-43%が実施する方向と回答した。一方、情報サービス・情報通信やサービス・その他は、実施する方向と回答した割合がいずれも20%に満たなかった。

前年2月に実施した調査(発送482社、回答225社)では、27%がベアを実施すると回答した。

今春闘でベアを実施する方向と回答した企業からは、その理由として「収益が予想金額以上を達成」 (化学)、「給与水準を上げないと人材確保できない」 (機械)などの声が聞かれた。「コロナ禍にはあるものの、会社業績は堅調にある。昨今の物価上昇を鑑み、また、従業員のモチベーションアップのためにも必要不可欠と考えるため」(窯業)とのコメントも寄せられた。

一方、実施しない方向と回答した企業の多くは、「業績悪化」を理由に挙げた。

ベアを予定する企業が3割にとどまる一方で、賞与を含む賃金支払総額は52%が増額する見通しと回答した。賃金全体は引き上げても一時金など変動費で上積みする、日本でここ最近ずっとみられてきた構図だ。

「定期昇給および業績回復に伴う賞与増額などを見込む」(機械)、「ベアは先々の固定費を増やすことになるので、避ける」(機械)などの声があった。

増額幅は今年度比「1―3%程度」が39%、「3―5%程度」が11%、「5%超」が2%だった。

<男女賃金開示、賛成は2割のみ>

今回の調査では、男女の賃金格差是正に向けて岸田首相が表明している企業の開示ルール見直についても聞いた。男女間の賃金状況を有価証券報告書の開示項目にすることについて「賛成」と回答した企業は20%だった。「反対」は31%、「どちらでもよい」が48%だった。

化学製品を扱う企業は、人口減に伴い女性が就労することの重要性が増しているとコメント。「女性の活躍は日本の国際競争力の増加にもつながると考えられる」 とした。一方、「開示が賃金格差是正に繋がるとは考えにくい 」(卸売)と効果を疑問視する回答もあった。

男女間の賃金格差の有無を質問したところ、「ある」と回答したのは16%で、「ない」と答えたのは84%だった。経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の男女間賃金格差は主要7カ国(G7)の中で最も大きい。

「ある」と回答した企業のうち、格差の程度を「1-5%」としたのは35%、続いて「6-10%」が26%だった。「26%以上」の差があるとの回答は15%だった。「管理職への女性起用の停滞」(鉄鋼)や、「女性は一般職の割合が高い」 (運輸)などを格差の理由に挙げていた。

(金子かおり グラフィック作成:照井裕子)

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