インタビュー:より信頼ある財政再建目標を=ムーディーズ日本担当
[東京 9日 ロイター] - 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスのシニア・バイス・プレジデント クリスチャン・ド・グズマン氏は9日、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化するという日本政府の目標について、「より信頼のおけるターゲット」が必要と主張した。新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、この目標は非現実的だと指摘してきたと語った。
日本国債の格付けを担当するアナリストのグズマン氏は、シンガポールからオンラインでロイターとのインタビューに応じた。
グズマン氏は、コロナの世界的流行による影響で黒字化目標の達成はさらに難しくなったとし、「財政再建とバランスシートの修復をある程度達成するためには、より信頼のおけるターゲットと根本的なアクションが必要」と述べた。
コロナ禍を受けた経済対策などで日本の財政支出は膨らみ続けているものの、岸田文雄首相は1月、2025年度にPBを黒字化する政府目標を堅持する姿勢を示した。内閣府は高成長を前提とした場合は26年度に黒字化する見通しと試算。25年度は1.7兆円の赤字が残るが、歳出改革を続ければ同年度の黒字化も視野に入るとしている。
グズマン氏は、コロナ禍の中でも家計や企業の多額な貯蓄が日本の債務を支えていると指摘する一方で、高齢化が進み、良好な調達状況がこの先も持続可能なのか疑問を呈した。同氏は「重要な局面に到達する前に、日本政府は財政再建と積み上がる債務のコントロールに取り掛かることが重要だ」と語った。
ムーディーズは日本国債の信用格付けを上から5番目のA1、見通しを「安定的」としている。
日本は30年連続で世界最大の対外純資産国の地位を守り続けているが、2位のドイツが肉薄している。グズマン氏は、仮に日本が首位の座を失っても、格付けに影響するとは思わないと発言。海外にある資産から生じる配当や利子といった第一次所得収支などに支えられ、「日本の対外純資産はしばらくの間、大幅な黒字を維持するだろう」と語った。