アングル:ソフトバンクGの資産圧縮に痛手、英アーム売却白紙
[東京 8日 ロイター] - 米半導体大手エヌビディアへの英半導体設計子会社アーム売却計画が白紙になったことは、投資ポートフォリオ全体の評価に下方圧力がかかる中、資産売却を進めるソフトバンクグループにとって大きな痛手となる。
<資産売却巡る不透明感>
ソフトバンクGは8日、アームをエヌビディアに売却する契約を解消すると発表した。各国の競争法規制当局の承認を得られなかったためで、代わりに2022年度中にアーム株を上場する準備を進める。
アナリストの間では、アームの売却手続きがなかなか進まなかったこと、さらに投資先企業の株価が公開価格を下回って取引されている実績を踏まえ、ソフトバンクGのこうした計画を疑問視する声が出ていた。
ジェフリーズのアナリスト、アトゥル・ゴヤル氏は、アーム売却が成立しないという見方が広がった1月29日付の顧客向けメモに、「ソフトバンクGの資産売却を巡る持続的な不透明感が、株価の上昇を引き続き妨げることを懸念している」と記した。
また、アームの売却や上場には、中国で起きている同社のトラブルにも対処する必要がある。アームの中国合弁会社は、解任した最高経営責任者(CEO)のアレン・ウー氏と法廷闘争を繰り広げている。
2016年にアームを320億ドルで買収したソフトバンクGは、エヌビディアへの売却で120億ドルの現金に加え、エヌビディア株を6.7─8.1%(最大500億ドル相当)程度得るはずだった。グラフィックス用プロセッサーを手掛けるエヌビディアは、米国で最も価値の高い半導体企業に成長している。
<投資家は株主還元の強化を希望>
10─12月期決算の発表を控えていたソフトバンクGの株価は8日、ほぼ横ばいで取引を終えた。昨年11月に発表した最大1兆円の自社株買いの計画が支えになっているものの、同社株は昨年3月の高値から約5割下落している。
ソフトバンクGは「ビジョン・ファンド2」を通じて150社超のスタートアップ企業に投資しているが、投資家は株主還元の強化を求めていると、アナリストらは指摘する。
レデックス・リサーチのアナリスト、カーク・ブードリー氏は「投資家は資産売却を望んでいるだろうし、これまでもずっと望んでいた」と話す。
ソフトバンクGが出資している中国の電子商取引大手アリババ・グループの株価は、当局が企業への規制を強化する中、20年10月に付けた最高値から60%超下落している。
シティグループのアナリストは、アリババが米証券取引委員会(SEC)に追加登録届出書を提出したことを巡り、ソフトバンクGが持ち分の一部を売却しようとしている兆候だと指摘している。