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アングル:北京五輪熱戦の17日間、保険業界の視線はウクライナ国境

配信日時:2022/02/04 14:43 配信元:REUTERS

[3日 ロイター] - 北京冬季五輪に関する保険を手掛ける保険会社にとって、最大のリスクはロシアとウクライナの間で戦争が勃発して各国チームが撤退したり、選手が出場をキャンセルしたりする事態だ。

五輪は常に、保険業界にとって大きなビジネス機会であると同時に、頭痛の種でもある。

2020年に新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪が1年延期された際、保険会社が東京都の組織委員会に支払った保険金は数億ドルに上ったと、複数の業界筋は話している。ホテルや会場の再予約など、各種コストをカバーするものだった。

4日開幕の北京冬季五輪で保険会社と組織委員会は、選手が新型コロナに感染して出場できなくなるリスクにも増して、ウクライナ国境付近でロシア軍が部隊を増強していることを警戒している。

開戦となれば複数の国々がチームを引き揚げかねない。つまり、チームや放送局は選手の欠場に伴う保険金の支払いを請求する可能性がある。

保険ブローカー、ハウデンの幹部、ダンカン・フレーザー氏は「北京大会に関する最大の懸念は政治リスクだろう」と言う。「保険会社が注視するのはウクライナ情勢だ」

2016年のリオ夏季五輪ではジカ熱の影響が懸念され、2018年の平昌冬季五輪でも戦争のリスクが注目されたが、結局は両大会とも滞りなく実行された。

アージェンタ・プライベート・キャピタルのシニア調査アナリスト、ベン・シェパード氏は「リスク・保険業界は、北京大会が計画通りに進むよう祈り続けるだろう」と語った。

最近の夏季五輪では通常、総額30億ドルほどの保険金がかけられているとアナリストは推計している。

関係筋によると、国際オリンピック委員会(IOC)は毎回の夏季五輪で8億ドル前後の保険に加入するが、夏季よりも小規模な冬季五輪の保険加入額はもう少し小さいかもしれない。

開催都市の組織委員会や、米オリンピック委員会のような国の委員会、放送局などその他のステークホルダーも、中止や暴動などのリスクに備えて保険に加入する。

北京冬季五輪を巡っては、米国を初めとする多くの国々が中国の人権侵害に抗議して外交ボイコットを発表するなど、開催前から緊張が高まっていた。これに伴うホテルその他のキャンセルが、保険契約にどの程度影響したかはまだ明らかになっていない。

しかしロシアとウクライナの間で戦争が起これば、チームと放送局は戦争関連の損失を自己負担せざるを得ないかもしれない。ハウデンのフレーザー氏によると、米国、英国、フランス、中国、ロシアという5つの「超大国」が関わる戦争はしばしば、興行中止保険の対象から除外されるからだ。

保険会社は普通、保険金を支払いきれないようなリスクを保険の適用外とする。2年前に新型コロナのパンデミックが始まって以来、興行中止保険を提供する保険会社はスポーツ大会やコンサート、会議の中止に伴って損失を抱え込むことになった。

この結果、保険会社は契約対象から外す項目を拡大。保険加入者は、イベントの延期や中止につながりかねない事由でも、一部は保険金を請求できなくなった。

<新型コロナはカバーせず>

北京冬季五輪は、新型コロナの感染を防ぐために厳しい「バブル」の中で開かれるが、既に五輪選手・当局者の感染が報告されており、組織委員会は今後も感染が増える可能性があるとしている。

五輪の中止や欠場に関する保険契約は大会の何年も前に結ばれることが多いため、損失は保険会社に及ぶ。しかし保険ブローカー、NFPスポーツ・アンド・エンターテインメント・グループのリー・アン・ロッシ最高執行責任者(COO)によると、最近契約が結ばれた保険では新型コロナがカバー対象から除外されているはずだ。

そして今後の五輪に関しては、新型コロナなど伝染性の疾病をカバーする興行中止保険がほぼ購入不可能になっている。

独保険大手アリアンツは2028年までIOCとスポンサー契約を結んでおり、業界筋らによると、北京冬季五輪では最大の保険会社となる可能性が高い。

アリアンツの広報は契約の詳細についてコメントを控え、五輪関連の各委員会や選手らと各種保険を巡って協力しているとした。

(Noor Zainab Hussain記者、Carolyn Cohn記者)

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