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アングル:ECB理事会、市場が注視する5論点 インフレ圧力が主要議題に

配信日時:2022/02/01 16:45 配信元:REUTERS

[ロンドン 31日 ロイター] - 今週2月3日の欧州中央銀行(ECB)理事会では、ユーロ圏のインフレ率が高水準となっていることから、物価上昇圧力が主要議題となる。

12月の理事会で1兆8500億ユーロ(2兆0900億ドル)のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を3月で終了すると決定しており、差し迫った政策行動は見込まれていない。

しかし、物価上昇圧力は依然として強く、市場はECBがよりタカ派的なスタンスに近付いているかどうかを知りたがっている。

市場が注目している5つの論点は以下の通り。

<1>ECBはインフレに関する文言を変えるのか?

可能性はある。ECBは既に少しずつ文言を変えており、今後もそうする可能性がある。

ECBのレーン専務理事兼主任エコノミストは先週、インフレ率が目標(2%)を上回る水準にとどまればECBは金融引き締めに踏み切ると述べた。ただ、現時点ではそうした展開になる公算は小さいとした。

ユーロ圏のインフレ率は12月に過去最高の5%を記録したが、第4・四半期には目標を下回ると予想されている。

しかし、一部の当局者はこの予測を過度に楽観的なものと見ている。12月理事会の議事要旨でインフレに関する深い意見の対立が明らかになっており、ECB理事会の前日に発表される1月のデータはタカ派が文言の変更を促すための新たな武器となる可能性がある。

<2>よりタカ派的な米連邦準備理事会(FRB)がECBに正常化の加速を迫る可能性は?

それはないだろう。ECBのラガルド総裁は、経済状況の違いから、FRBほど大胆に行動する必要はないと考えている。例えば、米国の労働市場ははるかに逼迫(ひっぱく)している。

PGIMフィクスト・インカムの欧州担当チーフエコノミスト、キャサリン・ニース氏は「ユーロ圏は米国と異なり、域内に過熱の兆候はない」と指摘。「しかし、今回は典型的なサイクルではないため、ある程度の警戒が必要だ。ECBは回復が予測よりも強くなる可能性を常に意識する必要がある」と述べている。

FRBの引き締めサイクルが過去の例よりも早く完了し、ECBの行動を起こすまでの時間が短くなった場合は難しい運営を迫られる可能性がある。

<3>ECBは利上げに関する市場予想をどう考えているのか?

ラガルド総裁は、ECBの超緩和的な金融政策スタンスにそぐわない市場の利上げ観測に反発する可能性がある。市場での貸出金利の上昇が企業の財務状況を逼迫させれば問題となる可能性がある。

金融市場では、10月までに10ベーシスポイント(bp)の利上げが織り込まれている。ドイツ銀行はECBが12月に25bpの積極的な利上げに踏み切ると見ている。

しかし、ECBは基本的に年内利上げの可能性を排除している。資産買い入れを徐々に減らすことを目指しているものの、今のところ完全にストップする予定はなく、債券買い入れ終了まで利上げはしないだろう。

<4>ECBはインフレによる二次的効果がいつ出現すると予想しているのか?

高インフレが予想以上に長く続き、原油価格が高止まりする中、政策当局者は、これが賃上げ要求のきっかけとなって物価上昇を押し上げるかどうかに注目している。

政策当局者は、賃金がインフレに大きく反応するとは考えていないと強調。ドイツ政府は、景気回復とインフレ率の上昇により、今年は「幾分強めの賃金上昇」になる可能性が高いと考えている。

ダンスケ銀行のチーフストラテジスト、ピート・ヘインズ・クリスチャンセン氏は「ドイツやオランダなどでは労働市場が逼迫しており、賃金上昇の傾向は極めてよい。問題はそれが一過性のものになるかどうかだ」と指摘。「賃金はパズルで欠けている一片で、そこでインフレが見られれば利上げが行われるだろう。それは早ければ来年の春になる可能性がある」と述べた。

<5>パンデミック(世界的大流行)対応の変化はマクロ経済にどのような影響を与えるか?

オミクロン変異株は経済を圧迫しているが、ほとんどの国が全面的なロックダウン(都市封鎖)を回避しており、データによると経済活動は比較的順調に推移している。

レーン氏は、オミクロン株の影響は月単位ではなく週単位で計測されるだろうと述べている。

ECBウォッチャーにとって、経済の勢いが増している兆候は、景気刺激策の早期解除を求める圧力が高まることを意味する。また、原油価格の高騰や中国の景気減速が成長を妨げる可能性など、不確実な要素もある。

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