ランチタイムコメント

日経平均は大幅反落、値幅ほどの悲観は不要か?

配信日時:2022/01/25 12:12 配信元:FISCO
 日経平均は大幅反落。561.14円安の27027.23円(出来高概算6億1550万株)で前場の取引を終えている。

 24日の米株式市場でNYダウは99.13ドル高(+0.28%)と7日ぶりに反発。ウクライナ情勢の緊迫化や25-26日開催予定の連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした警戒感から寄り付き後下落。NYダウは一時1100ドル超下落したが、売られ過ぎとの見方や値ごろ感からの買いから下げ渋ると、引け間際に買戻しが加速し主要株価指数は上昇に転じて終了。一時下落率が5%程だったナスダック総合指数は結局0.62%の上昇と5日ぶりに反発。ただ、前日に時間外取引の米株価指数先物の上昇を受けて先んじて上がっていた日経平均は売りが先行し121.55円安と反落してスタート。時間外の米株指数先物が下げ幅を広げるなか東京市場では売りが続き、日経平均は一時27006.37円(-582円)まで下げた。

 個別では、前日に大幅高となっていた郵船<9101>、川崎汽船<9107>などの海運株が急反落。リクルートHD<6098>、日本電産<6594>、ベイカレント<6532>などのグロース
(成長)株でも下落が目立っており、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、ルネサス<6723>などの半導体関連株や、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、信越化学<4063>などの主力株も大幅安。トヨタ自<7203>や三菱UFJ<8306>のほか、日本製鉄<5401>、三菱商事<8058>、INPEX<1605>などの資源関連株も総じて軟調。第3四半期決算の発表を延期した日本M&A<2127>、第1四半期好決算も地合い悪化で出尽くし感に繋がったインソース<6200>などが東証1部下落率上位に並んだ。一方、地政学リスクの高まりが刺激材料となった石川製作所<6208>、業績予想を上方修正した共立印刷<7838>が急伸した。

 セクターでは海運業、サービス業、機械などを筆頭に全面安となっている。東証1部の値下がり銘柄は全体の91%、対して値上がり銘柄は6%となっている。

 本日の日経平均は想定以上の大幅安となっている。前日の米国市場はNYダウが一時1100ドルも急落した後に急速に下げ渋ってプラスに転じるという、なかなかしびれる展開だった。一時急落していたナスダックとフィラデルフィア半導体株指数(SOX)も揃って反発に転じ、SOXに至っては+1.31%と大幅反発にまで至った。

 前日の日経平均は朝安後に切り返してプラス圏に浮上する強い動きを見せていた。
背景として、時間外取引のナスダック100先物などの大幅高があったことから、昨晩の米株市場の上昇はすでに織り込み済みだったとも解釈できるが、さすがに、NYダウの1100ドルの下げからのプラス転換を織り込んでいたとは考えにくい。あれだけの急落から切り返してプラスに転じたのだから、むしろ、本日も米株の売り一巡感を好感して多少なりとも上昇してもよかったくらいではとも思う。

 そういう意味では今日の東京市場の動きには正直落胆せざるを得ない。しかし、前引け時点での東証1部の売買代金は1兆5000億円台と、まずまず活況ながらも値幅の割には商いが膨らんでいない印象。また、前日の先物手口でも、日中の指数の乱高下にも関わらず目立った手口は少なかった。一方で本日のネット証券の売買代金ランキング上位では日経レバETF<1570>がなかなかの活況ぶり。つまるところ、地政学リスクという分かりやすい悪材料が浮上してきたのに加え、前日の米株市場の値幅の大きさなど高いボラティリティーを目の当たりにした個人投資家が日経レバの売買を通して指数の変動幅を大きく見せている可能性がある。その一方で機関投資家はそこまで大きく動いていないのかもしれない。

 他方、「恐怖指数」とされる米株の変動性指数(VIX)は前日、一時38.94(+10.09、+34.97%)まで急伸する場面があった。ただ、その後は株価の戻りに歩調を合わせるように低下していき、終値では29.90(+1.05、+3.63%)と前営業日からほぼ変わらずで終えた。VIX指数がピークを付けてから低下基調を辿るのは市場の底入れサインとして捉えられることが多く、前日のVIXの急低下と株価指数の急速な戻りは、今週25日からのFOMCを前にして続いていた厳しい売りにもようやく一巡感が出てきたことを示唆しているともいえる。

 昨日の米株の急速な下げ渋りから売り方もそこそこの利益を取って買い戻したともみられる。機関投資家のFOMCを前にした持ち高調整は大方済んでいて、今日の東京市場の大幅な下げが上述の通り、仮に個人主体の売買によるところが大きいのだしたら、本日の指数の下落率以上に過度な悲観に陥る必要はないかもしれない。市場ではすでにFRBによる年4回の利上げ、年央からのバランスシート縮小(QT)くらいの内容は織り込んでいる。3月利上げ幅が0.25%でなく0.5%、QTの市場予想よりも早い時期への前倒しなど、相当なサプライズがない限りは、年始からの下落率もあり、相場はあく抜け感から短期的には戻りを試す展開となりそうだ。

 むろん、VIX指数は依然高水準にあり、FRBによる金融引き締め懸念が1月FOMC通過後に完全に払しょくされるわけでもないだろう。そのため、相場が反発したとしても、あや戻しに終わる可能性もあるため、その点は留意しておきたい。

 さて、後場の日経平均は下げ渋りが予想される。前場は売り一辺倒といった様相だったが、日経平均は心理的な節目の27000円ギリギリのところでは度々踏ん張る動きを見せ、ある程度の底堅さや、ここが下値と思わせるような意識を持たせてくれた。また、東証株価指数(TOPIX)の前場の下落率が2%を超えたことで、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの期待も高まりやすい。アジア市況や時間外取引の米株価指数先物の動き次第でもあるが、後場は下げ幅を縮める展開に期待したい。一方、仮に日銀のETF買いが観測されず、日経平均が27000円を割り込むようだと、下値模索となり、週足一目均衡表の雲下限に相当する26600円近辺まで突っ込む可能性があろう。
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