ランチタイムコメント
日経平均は小幅続伸、28500円維持に安堵感、マザーズ指数は底打ち感強まる
配信日時:2021/12/22 12:08
配信元:FISCO
日経平均は小幅続伸。31.21円高の28548.80円(出来高概算4億3175万株)で前場の取引を終えている。
21日の米株式市場でNYダウは560.54ドル高(+1.60%)と4日ぶりに大幅反発。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」に対し、製薬会社が追加接種の有効性を確認したほか、複数の経口薬の当局の承認が近いとの報道で、懸念が後退。バイデン大統領が歳出法案に関しても何らかの進展の可能性を示唆したことも手伝い、終日堅調推移となった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+2.40%だった。こうした流れを引き継いで日経平均は96.47円高の28614.06円でスタート。ただ、時間外取引のナスダック100指数先物の上昇などを受けて前日に500円超反発していただけに、米株高は既に織り込み済みで、寄り付き直後に失速すると、その後は前日終値近辺でのもみ合いに終始した。一時はマイナスに転じる場面もあったが、28500円割れでは押し目買いが入り、底堅く推移した。
個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の大幅高を追い風に、前日に急伸した半導体関連株が反動安をこなして買い優勢となり東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などが上昇。また、ソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>なども堅調で、ソニーG<6758>、ZHD<4689>は2%前後の上昇。INPEX<1605>、ANA<9202>なども高い。自己株式の消却を発表したグリー<3632>、大型受注の獲得を発表したFPG<7148>などは大幅高となり、業績予想を上方修正したERI HD<6083>はストップ高買い気配で終えている。
一方、川崎汽船<9107>や郵船<9101>などの大手海運株が大きく下落しており、任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、デンソー<6902>、武田薬<4502>、日本M&A<2127>、神戸物産<3038>、SMC<6273>なども下落。決算が売りを誘ったところでは日本オラクル<4716>、ツルハHD<3391>などが大きく下落している。
セクターでは空運業、鉱業、証券・商品先物取引業などが上昇率上位となっている一方、パルプ・紙、輸送用機器、非鉄金属などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は38%となっている。
前日の東京市場は、米株安の中でも大幅反発するなど底堅さを見せたものの、本日は対照的に、米株の大幅高を追い風にできない冴えない展開となっている。日経平均は、25日移動平均線に上値を抑えられる形となっており、12月16日の高値からみると上値切り下げの形となっている。日本や欧米の株式市場では底打ち感の兆しも見られてはいるが、海外勢がクリスマス休暇入りで取引参加者が少ないなか、依然として明確な方向感が定まっていない。本日も、前場の東証1部の売買代金は1超円を割り込んでおり低調。週内は、商いが限られるなか引き続き需給主導でボラティリティーの高い相場続きそうだ。
一方、日経平均は前場に一時心理的な節目の28500円を割り込み、前日比でマイナスに転じる場面もあったが、そこから値を崩さず、再びプラスに転じて同水準を回復してきたことには先行きに対する明るさも感じさせる。これまでの流れからあまり期待できそうにもないが、クリスマス休暇明け、新年入りに向けて海外勢が新たに仕込んでくるような動きが出てくれば、「掉尾の一振」の可能性もありそうだ。
他方、東証1部の主力株が冴えないなか、久々にマザーズ指数が3%近い上昇率で強い動きをみせている。本日はマザーズ市場に新規株式公開(IPO)した銘柄が6銘柄もあったが、公開価格を割り込むなど軟調な出足の銘柄が多かった。IPOに備えて換金売りしていた個人投資家の含み損益が改善しなければ、マザーズ市場全体の機運にも影響しかねないため、やや懸念したが、既存の主力株に買いが入り、全体としては堅調な動きとなった。マザーズ先物の日中売買高の推移をみても、IPO参加に伴う海外投資家の先物を使ったヘッジ売りも一巡してきたとみられ、年末に向けてはマザーズ指数の底打ち感がより鮮明になってくる可能性があり、期待したい。
さて、後場の日経平均は引き続きもみ合いとなりそうだ。香港ハンセン指数が大きく上昇している一方で、時間外取引の米株価指数先物は軟調で、外部環境はまちまち。目先、目立った材料もなく、心理的な節目の28500円を維持できるかが焦点となろう。
<AK>
21日の米株式市場でNYダウは560.54ドル高(+1.60%)と4日ぶりに大幅反発。新型コロナウイルス変異株「オミクロン型」に対し、製薬会社が追加接種の有効性を確認したほか、複数の経口薬の当局の承認が近いとの報道で、懸念が後退。バイデン大統領が歳出法案に関しても何らかの進展の可能性を示唆したことも手伝い、終日堅調推移となった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は+2.40%だった。こうした流れを引き継いで日経平均は96.47円高の28614.06円でスタート。ただ、時間外取引のナスダック100指数先物の上昇などを受けて前日に500円超反発していただけに、米株高は既に織り込み済みで、寄り付き直後に失速すると、その後は前日終値近辺でのもみ合いに終始した。一時はマイナスに転じる場面もあったが、28500円割れでは押し目買いが入り、底堅く推移した。
個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の大幅高を追い風に、前日に急伸した半導体関連株が反動安をこなして買い優勢となり東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などが上昇。また、ソフトバンクG<9984>、リクルートHD<6098>、エムスリー<2413>なども堅調で、ソニーG<6758>、ZHD<4689>は2%前後の上昇。INPEX<1605>、ANA<9202>なども高い。自己株式の消却を発表したグリー<3632>、大型受注の獲得を発表したFPG<7148>などは大幅高となり、業績予想を上方修正したERI HD<6083>はストップ高買い気配で終えている。
一方、川崎汽船<9107>や郵船<9101>などの大手海運株が大きく下落しており、任天堂<7974>、トヨタ自<7203>、デンソー<6902>、武田薬<4502>、日本M&A<2127>、神戸物産<3038>、SMC<6273>なども下落。決算が売りを誘ったところでは日本オラクル<4716>、ツルハHD<3391>などが大きく下落している。
セクターでは空運業、鉱業、証券・商品先物取引業などが上昇率上位となっている一方、パルプ・紙、輸送用機器、非鉄金属などが下落率上位となっている。東証1部の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は38%となっている。
前日の東京市場は、米株安の中でも大幅反発するなど底堅さを見せたものの、本日は対照的に、米株の大幅高を追い風にできない冴えない展開となっている。日経平均は、25日移動平均線に上値を抑えられる形となっており、12月16日の高値からみると上値切り下げの形となっている。日本や欧米の株式市場では底打ち感の兆しも見られてはいるが、海外勢がクリスマス休暇入りで取引参加者が少ないなか、依然として明確な方向感が定まっていない。本日も、前場の東証1部の売買代金は1超円を割り込んでおり低調。週内は、商いが限られるなか引き続き需給主導でボラティリティーの高い相場続きそうだ。
一方、日経平均は前場に一時心理的な節目の28500円を割り込み、前日比でマイナスに転じる場面もあったが、そこから値を崩さず、再びプラスに転じて同水準を回復してきたことには先行きに対する明るさも感じさせる。これまでの流れからあまり期待できそうにもないが、クリスマス休暇明け、新年入りに向けて海外勢が新たに仕込んでくるような動きが出てくれば、「掉尾の一振」の可能性もありそうだ。
他方、東証1部の主力株が冴えないなか、久々にマザーズ指数が3%近い上昇率で強い動きをみせている。本日はマザーズ市場に新規株式公開(IPO)した銘柄が6銘柄もあったが、公開価格を割り込むなど軟調な出足の銘柄が多かった。IPOに備えて換金売りしていた個人投資家の含み損益が改善しなければ、マザーズ市場全体の機運にも影響しかねないため、やや懸念したが、既存の主力株に買いが入り、全体としては堅調な動きとなった。マザーズ先物の日中売買高の推移をみても、IPO参加に伴う海外投資家の先物を使ったヘッジ売りも一巡してきたとみられ、年末に向けてはマザーズ指数の底打ち感がより鮮明になってくる可能性があり、期待したい。
さて、後場の日経平均は引き続きもみ合いとなりそうだ。香港ハンセン指数が大きく上昇している一方で、時間外取引の米株価指数先物は軟調で、外部環境はまちまち。目先、目立った材料もなく、心理的な節目の28500円を維持できるかが焦点となろう。
<AK>
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日経平均は小反発、今晩の米SQ前に基調転換を示唆するようなミーム株急落
日経平均は小反発。25.80円高の28967.94円(出来高概算5億3530万株)で前場の取引を終えている。 18日の米株式市場でダウ平均は18.72ドル高(+0.05%)と小反発。利益確定売りが先行し下落して始まった。ただ、週次失業保険申請が予想外に減少したほか、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数が予想外のプラスに改善するなど良好な経済指標を好感して買い戻しが強まった。ハイテク株も主要企業の良好な決算や長期金利の低下を受けて買い戻され、相場を後押し。引けにかけて主要株価指数は上昇に転じた。ナスダック総合指数は+0.21%と反発。日経平均は153.57円高と29000円を回復してスタート。しかし、寄り付き直後に29150.80円まで上昇した後はすぐに失速。29000円台で踏ん張る動きも見られたが、午前中ごろには同水準を割り込み、一時28900円近くまで下落する場面があった。その後は下げ渋ったが、戻りは鈍く、この日の安値圏でのもみ合いが続いた。 個別では、引け後に発表された米アプライド・マテリアルズの決算が予想を上回り、強気の見通しも示されたことで東エレク<8035>、ルネサス<6723>、ディスコ<6146>などが大幅高。ハイテクでは他にローム<6963>、新光電工<6967>が強い。郵船<9101>や商船三井<9104>の大手海運も高い。NY原油先物価格の上昇を手掛かりに石油資源開発<1662>が大きく上昇し、富士石油<5017>、丸紅<8002>、大平洋金属<5541>なども大幅に上昇。主力処ではソニーG<6758>、キーエンス<6861>、日立<6501>が堅調。グロース(成長)株はまちまちな中、メルカリ<4385>、SREHD<2980>が強い動き。フジクラ<5803>は証券会社の目標株価引き上げを受けて急伸。アシックス<7936>は日テレHD<9404>と共同でスポーツメディア事業などを手掛けるアールビーズの株式を取得すると発表し、業容拡大への期待感から買われた。 一方、レーザーテック<6920>が半導体関連の中で逆行安となり大幅に下落。ファーストリテ<9983>、任天堂<7974>、OLC<4661>など値がさ株の一角が軟調。第一三共<4568>、武田薬<4502>など医薬品の一角も大きく下落。東証プライム市場の下落率上位にはマネーフォワード<3994>、ギフティ<4449>、インソース<6200>、インフォマート<2492>など中小型グロース株が多く見られる。 セクターでは石油・石炭、鉱業、パルプ・紙が上昇率上位となった一方、医薬品、倉庫・運輸、その他製品が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。 前日の米株式市場では主要株価指数がともに小幅ながら上昇して終了。セントルイス連銀のブラード総裁が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75ptの利上げ支持に傾くなど、タカ派寄りの発言が相次いだ中でも、米10年債利回りは小幅に低下し、落ち着いた動きだったことで、ハイテク・グロース株も底堅い動きだった。 しかし、前日の当欄(「来週以降の基調転換を示唆する材料観測」)においても述べたが、明らかに株式市場の騰勢は弱まっている。一昨日、前日のナスダック総合指数が特にそうだったが、これまでのように押したら買いが湧いてくるような動きが見られなくなった。日経平均も前日は一度も29000円を上回れなかったうえ、本日も寄り付き直後から早々に29000円を割り込み、寄り天井という、ここ1カ月の間ほとんど見られなかった動きを見せた。7月半ばからのリバウンド局面の特徴として、押しても買いが入り続け、これでもかと言わんばかりの力強い動きが見られていたが、明らかにそれとは対照的な動きに変化してきている。 これもまた当欄でのコメントの繰り返しにはなるが、今晩の米国版SQ(特別清算指数)算出を境にした需給の転換には注意したい。奇しくも前日の米株式市場では、今回のリバウンド局面において再び盛り上がっていたミーム銘柄が軒並み安になるという、まるでリバウンド局面の終了を示唆するかのような出来事が起きた。。小売チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドの株価は前日20%安と急落。物言う投資家のライアン・コーエン氏率いるRCベンチャーが、保有していた同社株を全て売却したことが明らかになったことで売りが膨らんだ。ミーム銘柄の代表であるAMCエンターテインメント・ホールディングスも10%安となった。 SQを境にした基調の転換とは、あまりに分かりやす過ぎるとも思われるが、リバウンドが始まってからちょうど1カ月が過ぎたタイミングでもあり、日柄的には十分と思われる。また、上述した出来事も、リバウンドをけん引してきた個人投資家の投資余力を左右しかねないという観点から、基調の転換に繋がり得ると考えられる。ここまでの株式市場の上昇ペースがかなり速く、強烈な印象を残した分、そんな簡単に下がるとは考えにくいかもしれないが、今回のリバウンド局面は決算シーズンを挟んでいたにも関わらず、現物・先物ともに売買高が少なかった。つまり、指数の上昇幅から窺える見た目ほどには実体は強くないと考えられ、その分、下げる時も足の速いことが考えられるだろう。 来週はカンザスシティー連銀が主催する年に一度の経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開かれる。また、半導体大手エヌビディアの決算もある。注目イベントを前に買いの手が限られてくるとも考えられ、ここからの押し目買いは慎重になるべきだろう。後場の日経平均は29000円を回復できるかが焦点となる。このまま回復できないようであれば、来週以降の基調の転換にはより注意した方がよいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/19 12:10
ランチタイムコメント
日経平均は反落、来週以降の基調転換を示唆する材料観測
日経平均は反落。238.21円安の28984.56円(出来高概算5億1099万株)で前場の取引を終えている。 17日の米株式市場でダウ平均は171.69ドル安(-0.50%)と6日ぶりに反落。英国のインフレ率が40年ぶりの高水準となったほか、連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えた金利上昇を嫌気し、下落して始まった。米小売ターゲットの決算を受けた株価下落も重石となった。公表されたFOMC議事要旨では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及したことが明らかになり、金利が伸び悩んだことで、主要株価指数は終盤からやや下げ幅を縮小した。ナスダック総合指数は-1.25%と続落。金利高・米株安を受けて日経平均は265.37円安の28957.40円からスタート。朝方は売りが先行し、一時28846.52円(376.25円安)まで下落。ただ、ナスダック100先物の下げが限定的なこともあり、その後は下げ渋り、前引けにかけては29000円を窺う水準まで戻した。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、信越化<4063>など値がさ株のほか、キーエンス<6861>、ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株などの下落が大きめ。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>のグロース(成長)株が崩れており、ラクス<3923>、マネーフォワード<3994>などの中小型株グロース株の下落がきつい。米アナログ・デバイセズの決算を受けたフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅安を嫌気し、アドバンテスト<6857>、スクリン<7735>などの半導体関連も軒並み安。配当権利落ちの西松屋チェ<7545>も大きく売られた。 一方、レーザーテック<6920>、外資証券が目標株価を引き上げた新光電工<6967>が逆行高。郵船<9101>を筆頭に海運がしっかり。任天堂<7974>は大幅高。米エネルギー情報局(EIA)の統計で、原油の週間在庫統計の減少や原油輸出の増加が確認されたことで、INPEX<1605>、ENEOS<5020>のほか、住友鉱<5713>など資源関連が小じっかり。連日でストップ高となっていたアイスタイル<3660>は急伸。エンビプロHD<5698>、光通信<9435>、イリソ電子<6908>などが東証プライム市場の上昇率上位に入った。 セクターでは精密機器、空運、輸送用機器が下落率上位となった一方、鉱業、その他製品、繊維製品が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体73%、対して値上がり銘柄は23%となっている。 前日の米国市場で注目すべき点は2つあった。一つは米10年債利回りの動き、2つ目は7月開催分のFOMC議事録の公表とそれを受けた米ハイテク株の動き。一つ目の10年債利回りについては、前日、約1カ月ぶりに一時2.9%台に乗せる場面があった。8月1日の2.57%をボトムにした上昇基調への転換がより鮮明になってきており、実質金利の低下による株価収益率(PER)主導のリバウンド相場については、一服の兆候が強まってきたと思われる。 2つ目については特に印象的だった。前日のナスダック総合指数は1.25%の下落。序盤には一時1.7%以上も下落する場面があり、リバウンド相場が始まった7月半ばからの直近1カ月間では特に弱い動きだった。FOMC議事録では、参加者が過剰な引き締めリスクに言及していたほか、利上げペースについては、いずれは減速させる必要性があるとの認識で合意していたことが明らかになった。市場ではこれをややハト派寄りと受け止める向きが多かったもよう。これを受け、議事録公表後にナスダックの下落率は0.4%台まで縮める場面があったが、引けにかけて再び大きく下げ幅を広げた。 ここ1カ月の米株式市場では、相場上昇に乗り遅れることを嫌った投資家の押し目買いが強く、下げてもすぐに持ち直すという動きが多かった。引けにかけては強い動きを見せる日が大半だったため、一度持ち直した指数が引けにかけて再び弱く動いたのは印象的で、リバウンドが最終局面にあることを示唆しているのではないかと考えられる。 SOX指数の下落率が2.48%と大きかったことも注目される。米アナログ・デバイセズが発表した5-7月実績及び8-10月見通しは共に市場予想を上回った。ただ、同社の最高経営責任者(CEO)は「経済的な不確実性が受注に影響し始めている」と言及。同社は半導体メーカーの中でも広範な種類の半導体を手掛けているだけに、業界の先行きを占う上で注目されていた。エヌビディアやマイクロン・テクノロジーに続く同社のネガティブなコメントを受け、改めて半導体業界の先行きに対する警戒感が高まった。 米国、中国、欧州の3大経済圏の景気減速が気掛かりな中、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)の様相を一段と強める欧州経済を中心とした世界経済の後退も更に心配になってきた。前日に発表された英国の7月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+10.1%と、6月の+9.4%から一段と伸びが加速し、市場予想の+9.8%も上回った。7月CPIの減速を受けてインフレ懸念がやや後退している米国とは対照的だ。 全体的に資源価格は下落しているが、欧州では天然ガス価格の急騰が続いており、足元では、ロシア軍のウクライナ侵攻後に付けた2月高値も上回る勢いとなっている。欧州の複数の地域では猛烈な熱波が襲っており、冷房需要が急速に高まっている。そのうえ、ドイツでは、発電のために使っている石油を運ぶライン川の水位が低下して石炭を運ぶことができず、天然ガスの需要が一段と高まるという負の連鎖が起きている。 景気回復が期待された中国も想定以上に回復ペースが鈍く、世界経済のけん引役は期待できない。足元でファナック、キーエンス、SMCといったFA関連株が弱含んできていることもその証左と言えそうで、気掛かりだ。 前日の当欄(「売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄」)での繰り返しにはなるが、今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えており、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意した方がよいと考える。来週25日からは経済政策シンポジウム「ジャクソンホール会議」も開催される。イベントとしては注目度が高く、これを前に、1カ月にわたって続いてきた需給主導のリバウンド相場が転換し始めてもおかしくはないだろう。 なお、今晩の米国市場では、8月フィラデルフィア連銀製造業景気指数のほか、半導体大手アプライド・マテリアルズの決算が予定されている。どちらも注目度は高く、結果は事前にはやや警戒されている。そのため、後場の東京市場では積極的な押し目買いは期待しにくいとみている。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/18 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は反発で29000円回復、売り方は少なくとも今週いっぱい望み薄
日経平均は反発。232.42円高の29101.33円(出来高概算5億7926万株)で前場の取引を終えている。 16日の米株式市場でダウ平均は239.57ドル高(+0.70%)と5日続伸。大手小売企業の決算が軒並み予想を上回ったことで、高インフレ下での消費の強さを確認し安心感が台頭。バイデン大統領の署名によりインフレ抑制法案が成立したことも支援材料となり、引けにかけてダウ平均は上げ幅を拡大。一方、金利の上昇でハイテク株は伸び悩み、ナスダック総合指数は-0.19%と3日ぶりの小反落。ダウ平均の上昇を引き継いで日経平均は83.74円高の28952.65円からスタート。寄り付きから買いが先行し、すぐに29000円を超えると序盤の時間帯に29153.05円まで上げ幅を広げた。その後は騰勢一服となったが、円安進行なども支えに高値圏での堅調推移が続いた。 個別では、ファーストリテ<9983>、ソニーG<6758>、ダイキン<6367>などの値がさ株が高い。為替の円安進行を追い風にトヨタ自<7203>、ホンダ<7267>、デンソー<6902>などが軒並み上昇。リクルートHD<6098>、メルカリ<4385>、マネーフォワード<3994>、JMDC<4483>のグロース(成長)株も全般大きく上昇している。原子力規制委員会が柏崎刈羽原発6、7号機のテロ対策設置計画を許可したと伝わったことで東京電力HD<9501>が大幅高となった。自社株の消却を発表したシュッピン<3179>も堅調。東証プライム市場の上昇率上位には、リブセンス<6054>、クロスマーケ<3675>、大阪チタ<5726>など直近、好決算を発表した銘柄が散見される。 一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落を受けてレーザーテック<6920>、東エレク<8035>が軟調。ファナック<6954>、SMC<6273>のFA関連株の一角も冴えない。下落率上位にはKeePer技研<6036>、サーバーワークス<4434>、メンバーズ<2130>などが並んでいる。 セクターではその他製品、海運、非鉄金属が上昇率上位となった一方、鉱業、医薬品、陸運が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体72%、対して値下がり銘柄は24%となっている。 本日の日経平均は7カ月ぶりに29000円台を回復している。警戒されていた米小売大手企業の決算では、ウォルマートとホーム・デポが揃って市場予想を上回る内容を発表し、株価が大幅高となったことで安心感が台頭。金利上昇でこれまでけん引役だったナスダック総合指数が小休止する一方、主役交代でダウ平均が相場全体をけん引した。これを好感し、東京市場でも買い戻しの流れに更に弾みが付いた格好だ。 足元では、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの先物買いが相場上昇を演出してきたが、ここにきて個人投資家による買い戻しも加わっているもよう。日経ダブルイン<1357>の買い残は、日経平均が30795円の高値を付けた昨年9月以来の高水準まで大きく積み上がり、買い長になっている。一方で、日経レバETF<1570>は8月に入ってから売り長の状態が続いている。売り目線の個人投資家が増えるなか、相場の上昇が想定以上に続いてきたことで、個人投資家の踏み上げが相場上昇に拍車をかけているようだ。 しかし、ファンダメンタルズを無視した需給主導の上昇にもさすがに過熱感が出てきている印象。米・中・欧の3大経済圏で経済指標の予想以上の悪化が続き、景気後退懸念が強まるなか、企業業績は7-9月期以降の悪化が懸念されている。こうした悪材料はまだアナリストの業績予想などには反映し切れておらず、今後の業績悪化が想定される。一方、米10年債利回りは8月1日に付けた2.57%をボトムに足元では2.8%台まで回復。金利の低下トレンドは一服したとみられ、再度、金利上昇による株価バリュエーションの下押し圧力なども警戒される。こうした中、既に29000円を回復してしまった日経平均にどのような一段の上昇材料があるのか、需給要因以外ではなかなか思いつかない。 頼みの綱の需給要因についても、リバウンドが始まった7月半ばから1カ月が経ち、日柄的にはそろそろ一服してきてもおかしくないだろう。今週末には米国版SQ(特別清算指数)算出を控えているが、これを過ぎた来週あたりからは基調の転換に注意し始めた方がよいだろう。日米ともに株価指数が大きく水準を切り上げてきた中でも、半導体関連だけは取り残されているのも気掛かりだ。産業のコメとも呼ばれる半導体は製造業としての先導性が高く、関連株の軟調が続くなかでの需給主体の相場はいずれ転換せざるを得ないと考える。個人投資家の踏み上げについても、日経平均が29000円を回復した現状水準からの一段の上昇を見込む投資家は少なく、実際に買い戻しに転じる向きは限られるのではないだろうか。 後場の日経平均は29000円台でのもみ合いか。昨日は現物株も先物も共に売買高がかなり少なく、直近の指数の値幅程には商いは膨らんでいない。需給要因以外で相場上昇を期待できる材料も見当たらず、積極的な売買は引き続き手控えられるだろう。今晩の米国市場では7月小売売上高、ターゲットなどの小売企業決算、連邦公開市場委員会(7月26-27日開催)議事録の公表などが予定されており、様子見ムードも広がりやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/17 12:08
ランチタイムコメント
日経平均は3日ぶり小反落、悪材料織り込み済みでない株価上昇に不安
日経平均は3日ぶり小反落。10.02円安の28861.76円(出来高概算5億1656万株)で前場の取引を終えている。 15日の米株式市場でダウ平均は151.39ドル高(+0.44%)と4日続伸。8月NY連銀製造業景気指数や8月NAHB住宅市場指数が大きく落ち込んだことで、景気減速懸念から売りが先行。ゼロコロナ政策に伴う中国の低調な経済指標や中国人民銀行による予想外の利下げなども世界経済への懸念を強めた。ただ、取引後半に入ると、金利低下に伴うハイテク株の上昇が相場を支援し、主要株価指数は揃って上昇に転じて終了した。ナスダック総合指数は+0.61%と続伸。 一方、先週末から昨日までの2日間で1000円超も上昇していた日経平均は短期的な過熱感もあり42.25円安からスタート。朝方は売りが先行し、28752.88円(118.9円安)まで下落したが、前日の米株高も支えに持ち直すと、アジア市況が堅調な中、前場中ごろには一時プラスに転換。ただ、上値も重く、その後は前日終値を挟んだ一進一退となった。 個別では、米中経済指標の下振れで景気後退懸念が強まるなか、郵船<9101>、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の大手海運が揃って大幅安。NY原油先物価格が1バレル=90ドルを割り込んだことでINPEX<1605>、コスモエネHD<5021>が下落。資源価格も全般下落しており、三菱マテリアル<5711>、大紀アルミ<5702>なども安い。ホンダ<7267>、マツダ<7261>、日産自<7201>などの自動車関連のほか、川崎重工業<7012>、IHI<7013>の機械・防衛関連、村田製<6981>、TDK<6762>の電子部品関連の一角も軟調。今期減益見通し及び中計目標の物足りなさが嫌気されたテスHD<5074>が急落したほか、第1四半期が大幅減益となったUMCエレ<6615>も大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、東証プライム市場の売買代金上位ではダブル・スコープ<6619>、レノバ<9519>、エムスリー<2413>、ギフティ<4449>が大幅に上昇。SHIFT<3697>、ラクス<3923>、JMDC<4483>などのグロース(成長)株も全般高い。ほか、バンナムHD<7832>、コナミG<9766>といったゲーム関連も総じて強い動き。前日に決算を発表したレアジョブ<6096>、リブセンス<6054>は揃って急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。高水準の自社株買いが好感された日機装<6376>、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンス等による株式の大量買い付けで思惑が高まっているジャフコG<8595>なども急伸した。 セクターでは海運、鉱業、石油・石炭が下落率上位となった一方、その他製品、空運、不動産が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体51%、対して値上がり銘柄は43%となっている。 本日の日経平均は小休止といった様子。7月15日以降、ちょうど1カ月の間に2000円超も上昇してきただけにさすがに一服感が見られている。4-6月決算も一巡したことで、心理的な節目の29000円を手前に材料難でもあろう。一方、マザーズ指数が大幅高で、8月5日の戻り高値を大きく突破、節目の750を窺う動きとなっている。材料不足のなか、直近好決算を発表したばかりの銘柄を中心に、値動きの軽い中小型株の物色が活発化している。 ただ、全体としてはやはり買い疲れ感が出てきている様子。昨日は日経平均が300円を超す上昇で、29000円を窺う強い動きだったが、東証プライム市場の銘柄では半数以上が下落していた。本日も同様に半数以上が下落している。東証プライム市場の売買代金からも、指数の値幅程には売買が活発していない様子が窺える。8月物オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出が絡んだ先週末12日は3兆円台後半と見かけ上の売買代金は膨らんだ。一方、昨日15日は2兆5000億円台にとどまり、先週末の決算発表が500件近くもあった割には、物色は低調だったように見受けられる。本日も前引け時点で1兆2800億円台とさほど膨らんでいない。 足元の株式市場の上昇に対して懐疑的な見方を持っている機関投資家の多くが夏休みに入っており、売り手不在のなか、個人投資家の買いや、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドの機械的な買いで相場上昇が続いているが、ファンダメンタルズなどの実体を伴っていない印象は拭えない。 昨日に発表された8月NY連銀製造業指数は-31.3と、前月の+11.1から大幅に悪化。市場予想の+5も大きく下振れ、2001年以降で2番目に大幅な低下となった。前回7月も3カ月ぶりのプラスだったとはいえ、6カ月先の見通しを示す景況指数はマイナスと内容は悪かった。NY連銀製造業景気指数は結果のブレが大きい特徴があるとも言われているが、ここ4カ月は連続して悪い結果・内容だ。18日に発表予定のフィラデルフィア連銀製造業景気指数も悪い結果が続いている。前回7月までの間、4カ月連続で結果が予想を下振れているほか、その下振れ度合いも拡大傾向にある。また、6月からはこちらもマイナス圏に低下している。 前日に発表された中国の経済指標も株式市場にはほとんど影響を与えなかったが、内容はネガティブで、今後じわりと効いてきそうだ。7月の小売売上高は前年比+2.7%と予想(+4.9%)を大きく下回り、6月(+3.1%)からも悪化した。鉱工業生産も同+3.8%と予想(+4.3%)及び6月(+3.9%)を下振れた。 米国の景気の基調は明らかに下方向であり、その下振れ度合いも予想を超えるものが多くなっている。景気循環が良い意味で欧米など他の先進諸国とずれている中国については、4月をボトムに景気回復に向かい、世界経済のけん引役になってくれることが期待されていたが、その期待も剥落してきている。むしろ、住宅ローン未払い問題など不動産業界の悪化が著しく、世界経済の足枷になる恐れの方が強まっているくらいだ。 こうした中でも、前日の米株式市場では主要株価指数が揃ってプラス転換で終えた。景気後退懸念に伴う金利低下を追い風にハイテク株が下支えしてくれているようだが、これも、インフレ抑制を最優先にし、来年までの利上げ継続を方針としている米連邦準備制度理事会(FRB)とのギャップが大きすぎて、いつまで金利低下を理由にしてハイテク・グロース株買いに付いていけばよいか分からない。 国内の企業業績も、アナリスト予想の平均値は営業利益の伸び率でみて4-6月がボトムという見通しになっているようだが、米・中・欧の世界3大地域の経済が減速しているなか、7-9月期以降の方がむしろ業績の悪化懸念が強いのではないだろうか。一株当たり利益(EPS)の悪化を、金利低下による株価バリュエーション(PER)の拡大で相殺しようにも、金利低下には景気後退を織り込んでもさすがに低下余地が乏しいだろう。日経平均でいえば、29000円を超えてまで買ってくる理由があるのだろうか。9月以降は29000円突破よりも27000円割れなど下方向のリスクの方が高い気がしてならない。 後場の日経平均はもみ合い継続を予想。手掛かり材料難のなか、今晩には米国で7月の住宅着工件数や鉱工業生産のほか、ホームデポ、ウォルマートなどの注目小売企業の決算が予定されており、これらを見極めたいとの思惑から積極的な売買は手控えられやすいだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/16 12:09
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、米株高好感して28800円台に到達
日経平均は続伸。283.92円高の28830.90円(出来高概算5億3303万株)で前場の取引を終えている。 前週末12日の米株式市場のNYダウは424.38ドル高(+1.27%)と大幅続伸。インフレ減速を期待した買いに、寄り付き後、上昇。8月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値が予想以上に改善し、経済への悲観的見方が後退したため終日堅調に推移した。インフレ抑制法案の成立期待も相場を支援し、引けにかけて上げ幅を拡大した。長期金利の低下でハイテク株も買われてナスダック総合指数は大幅に反発。堅調な展開となった米株市場を受けて、日経平均は前週末比76.80円高からスタート。その後は、上げ幅を拡げる展開となった。 個別では、ADC技術に関する紛争で相手側の主張を全面的に否定する判断が下された第一三共<4568>、前期実績及び今期予想は共に市場予想を上振れたパンパシHD<7532>、上期経常損益が黒字浮上で着地したダブル・スコープ<6619>が大幅高となった。ソフトバンクG<9984>、ダイキン<6367>、信越化<4063>、メルカリ<4385>、任天堂<7974>などが大幅に上昇、ファーストリテ<9983>や東エレク<8035>なども堅調に推移した。キャリアリンク<6070>、ギフティ<4449>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。三井松島HD<1518>や楽天グループ<4755>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、富士通<6702>やトヨタ自<7203>なども軟調、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株も冴えなかった。ほか、22年12月期業績予想を下方修正したスノーピーク<7816>、ダイレクトマーケティングミックス<7354>やネットプロHD<7383>、マーケットエンタープライズ<3135>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは医薬品、ゴム製品、小売が上昇率上位となった一方、海運、鉱業、陸運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は51%となっている。 本日の日経平均株価は、上昇してスタートした後じりじりと上げ幅を拡げる展開となった。アジア市況や米株先物がもみ合い展開となっているが、日経平均は前週末の米株高を好感する動きに加えて、決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっている。 新興市場は上値の重い展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、上昇してスタートしたあとじりじりと上げ幅を縮小した。米国でインフレピークアウト期待が高まり堅調な展開が続くなか、国内の個人投資家もこうした流れを好感する動きが優勢となった。また、新興市場でも決算発表が本格化しており、米株高の流れを引き継いで12日に決算を発表した銘柄など個別材料株もポジティブな反応をみせている。ただ、米長期金利が2.8%台と高水準で推移しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株を積極的に買い進む動きは乏しい様子。前引け時点で東証グロース市場Core指数が0.77%高、東証マザーズ指数が0.71%高となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移、本日は28800円台まで上昇している。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていること、リセッション材料が出尽くしていることなどが挙げられている。物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、やはり順調な持ち直しは長続きしないと感じている投資家も少なくない。米国の重要インフレ指標の減速を受けてインフレピークアウト期待が高まっているが、米7月のCPIとPPIの減速要因の大半はエネルギー価格で、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの分野もほとんど減速していない。 ブルームバーグが実施した最新の月間調査でエコノミストらは、インフレ予測を2023年の各四半期で引き上げたという。米金融当局がインフレ目標の基準値としている個人消費支出(PCE)総合価格指数は、来年末に平均で年率2.5%上昇と予想されており、7月時点の予想2.3%上昇から上方修正となるもようだ。インフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。また、FRB高官からけん制発言が相次いでいることは見逃してはならない。17日に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にはある程度の注目が集まるだろう。 そのほか、マーキー米上院議員(民主党)率いる米議員団が14日、台湾に到着した。2日間の日程で滞在するようだが、ペロシ下院議長による今月初旬の訪台以降高まっている中国との緊張が続く恐れがある。このような米中問題も見逃してはならず、ロシアのウクライナ侵攻など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。筆者も中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に現在のリバウンド基調を見守っている。 さて、後場の日経平均は、上げ幅をさらに広げる展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/15 12:11
ランチタイムコメント
日経平均は大幅反発、諸要素考慮して28500円が目一杯か
日経平均は大幅反発。660.66円高の28479.99円(出来高概算7億9957万株)で前場の取引を終えている。 東京市場が祝日だった間の10、11日の米株式市場では、ダウ平均が535.10ドル高、27.16ドル高と上昇。10日は米7月消費者物価指数(CPI)が予想以上に減速したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペース減速への期待が高まり、大幅に上昇。一方、11日は、米7月生産者物価指数(PPI)も予想以上に減速したものの、FRB高官らの発言を受けて長期金利が大きく上昇したことで、買い先行で始まったが大きく失速した。ナスダック総合指数はそれぞれ+2.89%、-0.58%だった。重要インフレ指標を無難に通過した目先の安心感から売り方の買い戻しなども入り、日経平均は432.41円高とギャップアップでスタート。朝方から買いが先行した後はこう着感を強めたが、高値圏での推移が続き、前引け直前には一時28500円を超える場面があった。 なお、8月オプション取引に係る特別清算指数(SQ)算出値は28525.62円だった。 個別では、東エレク<8035>、ファナック<6954>、キーエンス<6861>、信越化<4063>、ダイキン<6367>などのハイテク株や値がさ株が大幅高。アリババ株の一部売却を発表したソフトバンクG<9984>は急伸。村田製<6981>、安川電機<6506>、京セラ<6971>も高い。エムスリー<2413>、ベイカレント<6532>、JMDC<4483>、メルカリ<4385>のほか、ラクス<3923>、Sansan<4443>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株は全般強い動き。三菱商事<8058>、住友鉱<5713>、ENEOS<5020>など資源関連株も堅調。業績予想を上方修正し、自社株買いも発表したホンダ<7267>や、4-6月期営業利益が市場予想を上回った住友不動産<8830>、SMC<6273>、パーソルHD<2181>が大きく上昇。業績予想を下方修正も、市場予想を上回る水準にとどまったコーセー<4922>はあく抜け感から買われた。 一方、業績予想を、市場予想を下回る水準にまで下方修正したブリヂストン<5108>、資生堂<4911>、7月既存店売上高が冴えない結果となった良品計画<7453>は軟調。業績予想を上方修正した富士フイルム<4901>は買い先行も失速して下落。ガンホー<3765>、ブレインP<3655>、PHCホールディングス<6523>、ディー・エヌ・エー<2432>などが決算を材料に大きく売られ、東証プライム市場の下落率上位に並んでいる。 セクターでは電気機器、精密機器、石油・石炭を筆頭にほぼ全面高。一方、ゴム製品が下落した。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体87%、対して値下がり銘柄は11%となっている。 祝日明けの日経平均は600円を超える大幅反発で6月9日に付けた28389.75円を超えてきた。日足チャートでは7月20日以降のもみ合いから上放れる形となっており、商品投資顧問(CTA)など短期筋の追随買いを一段と誘い込みやすい状況だ。一方で、28500円を意識した上値の重さも見られている。 米7月の消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)は共に予想を下回り、市場ではインフレピークアウト期待が高まっている。しかし、指標の減速要因の大半はエネルギー価格であり、食品価格などはむしろ上昇ペースが加速。住居費などの下方硬直性のある分野のインフレもほとんど減速していない。 一時1バレル=90ドルを割り込んでいたNY原油先物価格は足元で90ドル半ばまで回復している。代表的な商品市況の総合指数であるCRB指数も7月14日をボトムに下値切り上げの上昇トレンドに転換。こうした背景から、7月のインフレ指標は大きく減速したものの、8月分以降は高止まりが想定される。また、7月雇用統計では平均賃金の伸びは予想に反してむしろ加速していた。「インフレピークアウト→利下げ減速」までを織り込むのは時期尚早といえよう。 米連邦準備制度理事会(FRB)の高官からもけん制発言が相次いでいる。インフレ指標の発表後、米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は「インフレとの闘いで勝利を宣言するには非常に程遠い」と指摘。「政策金利は更に引き上げられた後、インフレが2%に低下するまでは維持される」とも発言し、来年の利下げを織り込む市場を強くけん制した。市場とFRBが想定する今年末の政策金利予想にもかなり開きがあり、いずれ、市場の楽観は修正される可能性がある。 ここしばらく落ち着いた動きだった米10年債利回りは、前日、2.89%(+0.1pt)と大幅に上昇した。これに伴い、期待インフレ率の指標とされる10年物の米ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を差し引いた実質金利は8月に入ってからの上昇基調をやや加速させている。米国で業績予想の下方修正が進むなか、予想一株当たり利益(EPS)は切り下がっており、株価上昇には投資家の期待値を表す株価バリュエーションのPER(株価収益率)の上昇が欠かせないが、実質金利の低下に歯止めがかかり、上昇に転じてきているなか、そうした展開は見込みにくいだろう。 市場関係者の多くは、足元の株式市場の上昇はベアマーケットラリー(弱気相場の中の一時的な上昇)に過ぎないとみている。ただ、機関投資家の多くが夏休みに入るなか、市場参加者が限られ、相対的に個人投資家や短期売買のみを目的とした投資家の動きに左右されやすい地合いが続いている。このため、相場に乗り遅れることを嫌った個人投資家の買いや、CTAなどの短期筋の追随買いで足元は上方向に振れやすい状況だ。来週末に控える米国版SQ(特別清算指数)までは売り方の買い戻しが相場を下支えしそうだ。 一方、4-6月期の決算発表が一巡したばかりだが、行動制限が長期化している中国の景気回復が遅れていることで、7-9月期決算に対する懸念が早くも台頭してきている。こうした状況において、株式の持ち高を「アンダー」から「ニュートラル」に修正することはあっても、「オーバー」にまで引き上げることは考えにくいだろう。今は夏休み入りしている多くの機関投資家が、休暇明けに積極的に株式を買ってくることは想定しにくく、日経平均は今の28500円が上限とも考えられよう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/12 12:12
ランチタイムコメント
日経平均は続落、 機関夏休み入りのなか逆張り個人が下支え?
日経平均は続落。232.89円安の27767.07円(出来高概算5億5338万株)で前場の取引を終えている。 9日の米株式市場でダウ平均は58.13ドル安(-0.17%)と3日ぶり小幅反落。消費者物価指数(CPI)の発表を控えた持ち高調整から終日売り優勢。半導体メーカーのエヌビディアに続きマイクロン・テクノロジーも弱い見通しを示したため、同セクターが大きく売られ相場の重しとなった。ナスダック総合指数は-1.19%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は-4.57%と揃って3日続落。米株安を受けて日経平均は44.85円安からスタート。半導体関連など値がさ株を中心に朝方は売りが先行し、寄り付き直後に27729.46円(270.5円安)まで下落した。一方、今晩に発表される米7月CPIを前に売り方の買い戻しなども入り、その後は下げ渋った。しかし、戻りは鈍く、前引けにかけては再び弱含みとなった。 個別では、SOXの急落を受けてレーザーテック<6920>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>などの半導体関連が大幅下落。ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、SMC<6273>、富士通<6702>などの値がさ株や、エムスリー<2413>、メルカリ<4385>、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>のグロース(成長)株も総じて軟調。カナミックN<3939>、JMDC<4483>、ペプチドリーム<4587>、アカツキ<3932>、じげん<3679>、やまみ<2820>、藤田観光<9722>などの決算発表銘柄が東証プライム市場の下落率上位に並んだ。 一方、レノバ<9519>が見直し買いで急反発。決算発表銘柄では、住友林業<1911>、マツダ<7261>、三菱マテリアル<5711>、出光興産<5019>が大幅に上昇。ほか、ロート製薬<4527>、セグエグループ<3968>、理研計器<7734>、新日本製薬<4931>、日本マイクロニクス<6871>などが決算を手掛かりに急伸し、東証プライム市場の上昇率上位に並んだ。マクロミル<3978>は好決算を材料にストップ高まで買い進まれた。 セクターではゴム製品、電気機器、精密機器が下落率上位になった一方、石油・石炭、電気・ガス、パルプ・紙が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体55%、対して値上がり銘柄は40%となっている。 前日に終値で僅かに28000円を割り込んだ日経平均は、本日も指数寄与度の大きい半導体関連株の下落に押される形で、値幅を伴った下落となっており、28000円回復が遠のく形となっている。半導体業界では、一昨日のエヌビディアの市場予想を大幅に下回る決算に続き、昨日はマイクロン・テクノロジーによる業績見通しの引き下げというネガティブなニュースが続いた。 マイクロンは顧客の在庫削減を理由に、6-8月の売上高見通しを従来の会社予想レンジの下限、ないしそれを下回る可能性があると示した。前回の弱気な見通しを示したのは僅か1カ月前のことだ。また、先んじて需要が減速していた民生向け市場だけでなく、データセンター用や産業用、車載向け用など、これまで堅調とされてきた市場でも調整が広がっており、需要の一段の減少の可能性も示唆された。東エレクも一昨日の決算において、市場見通しを期初に提示した水準から下方修正した。業界の急速な冷え込みがひしひしと伝わっており、一時後退していた景気後退懸念が再び頭をもたげている。 一方、今晩には米7月消費者物価指数(CPI)、明日には米7月生産者物価指数(CPI)と重要インフレ指標の発表を控えている。東京市場は明日が祝日で休場となるため、これら両インフレ指標の結果を受けた2日分の米株式市場の動きを祝日明けに反映することになる。結果を受けた相場のボラティリティの高まりを警戒する投資家が多く、イベント前に持ち高を大きく傾ける向きは限られ、指数の下落率はさほど大きくなっていない。ただ、指標結果がネガティブなものとなれば、一段の下落は否定できないだろう。 また、機関投資家の多くが夏休み入りしている。市場参加者が少なくなっている中、逆張り志向の強い個人投資家の存在感が相対的に増している。これら個人投資家が、昨日からの下落局面において、日経レバETF<1570>の空売りや日経ダブルイン<1357>の買い持ち高を手仕舞っていることも、指数の底堅さに繋がっていると考えられる。ただ、裏を返せば、機関投資家が戻ってくる8月後半から9月以降には相場の波乱が待ち構えているとも言える。 前日の当欄「インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい」において述べた通り、インフレを巡る環境はほとんど改善していないと考えられ、仮に、今夜から明日にかけての米インフレ指標が前月から予想以上に減速したとしても、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ転換期待を高めるには依然として材料不足であることには変わりはない。利上げペースの減速ですら、期待値を高めるには時期尚早と思われ、指標結果を受けた初動がポジティブなものであったとしても、現在の株価指数の水準を踏まえれば、ここからの上値追いには慎重になった方がよいだろう。 後場の東京市場は軟調もみ合いか。国内の祝日、米重要インフレ指標を前に持ち高を動かしにくく、様子見ムードが支配的となりそうだ。一方、香港ハンセン指数が大きく下げ幅を広げてきており、外部環境の悪化次第では、イベント前に一段と手仕舞い売りが広がる可能性もあるため、注意したい。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/10 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は5日ぶり反落、インフレ巡る楽観論の危うさを今一度考えたい
日経平均は5日ぶり反落。239.89円安の28009.35円(出来高概算5億8451万株)で前場の取引を終えている。 8日の米株式市場でダウ平均は29.07ドル高(+0.08%)と小幅続伸。強い7月雇用統計を受けた景気後退懸念の緩和に伴う買い戻しが続き、買い先行。ただ、今週半ばに発表が予定されている重要インフレ指標を警戒した売りから次第に失速した。上院がインフレ削減法案を可決し成立する見込みとなったことが一部プラス材料となり、ダウ平均はかろうじてプラス圏を維持したが、ナスダック総合指数は、半導体メーカーのエヌビディアの決算を受けた下落に押され、-0.1%と小幅続落。日経平均は12.4円安からスタートすると、低調な決算を発表した東エレク<8035>やソフトバンクG<9984>の急落が重石となる形で徐々に下げ幅を拡大。午前中ごろには28000円を割り込む場面もあったが、引けにかけては下げ渋った。 個別では、予想外に減益決算となった東エレクが8%を超える下落率で急落。4-6月期の最終赤字額としては日本企業で過去最大を記録したソフトバンクGは4%強の下落。流通取引総額の伸び悩みが嫌気されたメルカリ<4385>は9%超と大幅安。東エレクや米エヌビディアの株価急落が波及する形でアドバンテスト<6857>やスクリン<7735>などの半導体関連が総じて軟調。業績予想を下方修正したダイフク<6383>と住友ゴム<5110>は揃って急落。第1四半期が大幅減益となった日製鋼<5631>も大幅安となった。 一方、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、SHIFT<3697>などのグロース(成長)株の一角が堅調。業績上方修正や増配、高水準の自社株買いを発表したINPEX<1605>は大幅高。三井松島HD<1518>は商いを伴った連日の大幅高で、東証プライム市場売買代金上位に顔を出した。ラウンドワン<4680>も連日で急伸。ほか、デサント<8114>、NISSHA<7915>、チャームケア<6062>、日産化学<4021>、ニチコン<6996>が好決算を手掛かりに大幅高。トレンド<4704>は、アクティビストとして有名な米バリューアクト・キャピタルが大株主に浮上したことで急伸した。 セクターではゴム製品、電気機器、輸送用機器が下落率上位になった一方、鉱業、海運、石油・石炭が上昇率上位になった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。 日経平均は指数寄与度の高い主力株の下落に押され、値幅を伴った下げとなっている。ただ、心理的な節目である28000円割れの水準では買い戻しが入って下げ渋っている。前日のナスダックの下落率も0.1%と、エヌビディアの急落があった割には底堅い印象。 10日の米7月消費者物価指数(CPI)と11日の米7月生産者物価指数(PPI)を前に様子見ムードが広がっており、持ち高を大きく動かしたくない向きが多いというのが指数の底堅さの背景だろう。ただ、筆者としては、足元の株式市場は楽観の修正が足りないと考えている。 7月半ばからの株式市場のリバウンドは、米連邦公開市場委員会(FOMC)や主要企業の4-6月期決算を前にした買い戻しから始まった。その後、FOMC後のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を受けて高まった利下げ転換期待や、資源価格の下落を背景にしたインフレピークアウト期待、主要企業の決算が想定程には悪くなかったことなどから買い戻しに拍車がかかった。 しかし、先週末に発表された米7月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが予想を2倍以上回ったほか、平均賃金の伸びは前年比と前月比のどちらでみても、減速の予想とは対照的に加速した。この強すぎる雇用統計は上述した7月半ばからのリバウンドの根拠とされてきた「インフレピークアウト→FRB利下げ転換」の期待を打ち消すものだ。市場でも、雇用統計を受け、0.5ptの利上げが有力視されていた9月会合での利上げ幅としては急速に0.75ptの確率が高まってきた。 それにも関わらず、週明けの株式市場は日米ともに底堅い。CPIは総合で前年比+8.8%と、6月の+9.1%から減速する見込みで、投資家はインフレピークアウト→利下げ転換への期待をまだ持っているのかもしれない。また、前日に発表されたニューヨーク連銀の調査で、3年先の期待インフレ率が3.2%と、6月の3.6%から大きく低下したことも、こうした期待を支えているのかもしれない。 しかし、CPIは減速したところで依然8%強と歴史的な高水準。また、資源価格の下落傾向には一服感が出てきており、今後の減速ペースはかなり緩やかになるとも考えられる。さらに、FRBが重要視する食品・燃料を除いたコアCPIは前年比+6.1%と6月の+5.9%から拡大する見込み。全体の3分の1を占めるCPIの最大構成項目である住居費は住宅価格から1年程遅れて動く傾向がある。このため、米国で住宅価格は今年4月に伸びとしてはピークを打っているが、CPIの伸びは対照的に今後も加速する公算となる。コアCPIはFRBの目標値である2%を3倍以上上回る状態が今後も続く可能性が高いといえる。 加えて、上述したように労働市場では平均賃金の伸びが加速している。賃金はインフレ項目の中でも下方硬直性があり、FRBのインフレ退治にあたっては特にやっかいな分野。サプライチェーン(供給網)制約の解消などが進んでいるのは確かだが、いま言えることは、それでも、なお需要が供給を上回っているということだ。需要が供給を上回っている限り、価格上昇圧力は消えず、FRBは金融引き締めを止めることはできない。 FRBも市場よりは慎重ながら、今後のデータ次第では0.5ptへと利上げ幅の減速も可能という見方が出ているのは心配だ。昨年8月のジャクソンホール会合で、パウエル議長は、インフレは一過性という主張を繰り返していた。しかし、その僅か3カ月後に同氏は「一過性」という表現を使うべきでないと姿勢を急転換。その後、FRBは自らの過ちを認める形で、急速な金融引き締めへと舵を切った。 僅か1年前に過度な楽観論から大きな過ちを犯したにもかかわらず、ここにきて再び利上げペースの減速もあり得ると市場に期待を抱かせるような楽観的な見方を一部持ち始めているのは非常に危うい。そもそも、これだけインフレが高いにもかかわらず、政策金利が未だに2.25-2.50%という物価指標の伸びを大きく下回る水準にあることに疑問府がつく。個人的には1ptの利上げを連続実施するくらいのショック療法が必要と考える。 いま市場が抱いている楽観論が正しいかどうかの答え合わせは近く行われる。早ければ、今週の米物価指標の発表、そこで行われなければ、来週17日のFOMC議事録公表か、今月25~27日開催予定のジャクソンホール会合までに修正される可能性があるだろう。(仲村幸浩)
<AK>
2022/08/09 12:07
ランチタイムコメント
日経平均は続伸、不安要素多くリバウンドの長期化は期待薄
日経平均は続伸。65.22円高の28241.09円(出来高概算5億9463万株)で前場の取引を終えている。 前週末5日の米株式市場のNYダウは76.65ドル高(+0.23%)と反発。7月雇用統計の強い結果を受けて連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測が再燃し、金利高を警戒した売りが広がった。ただ、景気後退懸念も緩和したため、徐々に買い戻しが強まり、下げ幅を縮小。ダウは上昇に転じ終了、ナスダック総合指数は下落した。まちまちとなった米株市場を横目に、日経平均は前週末比125.78円安からスタート。その後は、プラス圏に浮上する場面も見られたが前週末終値を挟んでのもみ合い展開となった。 個別では、好調な受注動向を評価されたレーザーテック<6920>、自社株買いの実施を発表したキヤノン<7751>、業績・配当予想上方修正や株式分割を好感されたラウンドワン<4680>が大幅高となった。丸紅<8002>や三井物産<8031>、住友商事<8053>などの商社株が上昇しているほか、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、第一三共<4568>、INPEX<1605>、などが堅調、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>などの銀行株も上昇した。冶金工<5480>、三井松島HD<1518>などが値上がり率上位に顔を出した。 一方、商船三井<9104>や川崎汽船<9107>、日本郵船<9101>などの海運株が軟調。東京海上<8766>や任天堂<7974>、リクルートHD<6098>が大幅に下落、ソニーG<6758>やトヨタ自<7203>、キーエンス<6861>なども下落した。ほか、メディアスHD<3154>やクオールHD<3034>、ソリトンシステムズ<3040>、ジャムコ<7408>が値下がり率上位に顔を出した。 セクターでは鉱業、石油・石炭、金属製品が上昇率上位となった一方、保険、パルプ・紙、海運が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の42%、対して値下がり銘柄は52%となっている。 本日の日経平均株価は、下落してスタートした後前週末終値付近でのもみ合い展開となった。アジア市況や米株先物が軟調な展開となっているが、日経平均は小幅なレンジでの推移となっている。週末に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの加速が確認されたため売りが先行したが、決算発表を終えた主力株への物色が中心となり下支えをしているようだ。 新興市場は売り優勢の展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は、下落してスタートしたあと朝方に下げ幅を大きく拡げた。新興市場でも週末に発表された米7月雇用統計の結果でインフレの加速が確認されたことは、インフレの減速を予想していた分個人投資家心理にネガティブに働いた。また、米長期金利が2.8%台まで急伸しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすいグロース株にとっては逆風となっている。前引け時点で東証グロース市場Core指数が2.35%安、東証マザーズ指数が1.80%安となった。 さて、直近の日経平均株価は想定外の強さとなっておりこれまで何度も押し返されてきた28000円を大きく突破したあとも28000円台で推移。7月半ばからのハイテク・グロース株を中心としたリバウンドが想定以上に続いていることは前回の当欄で述べている。 ほかにも、米国のリセッション入り確率が急低下してきているとブルームバーグでは述べられている。JPモルガン・チェースのストラテジストが考案したリセッション確率の指標によると、株式市場の視点では米景気下降はますます起こりそうにないという。また、株式とクレジット、金利市場が全体として織り込む米国のリセッション確率は40%と、6月段階の50%から低下したようだ。つまり、昨年11月から今年6月までの長期的な下落はリセッションを織り込むためで、現在はリセッション材料が出尽くしているとも捉えられている。さらに、物価が落ち着いてきていることもリバウンドの要因となっているだろう。 ただ、「株式相場の最近の順調な持ち直しは長続きしない」とゴールドマン・サックス・グループとバーンスタインのストラテジストが警告しているともブルームバーグで述べられている。マクロ経済データの悪化が続き、企業業績見通しが下方修正されていることを理由に挙げられている。4日に発表した1週間の新規失業保険申請件数は前週比6000件増加し、26万件だったことも気がかりである。 また、5日に発表された米7月雇用統計は大幅に予想を上回り、インフレの減速予想とは対照的にインフレの加速が確認された。インフレ高進が確認されるとインフレ抑制のために、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後積極的に金融引き締めを行う根拠となる。やはり、10日に発表される米7月消費者物価指数(CPI)の結果、これに伴うFRB高官ら発言には注目が集まろう。 さらに、ロシアのウクライナ侵攻や米中問題など地政学リスクの高まりも忘れてはいけない。これだけ不安材料が重なってくると、現在のリバウンドが長く続くことは筆者も想定していない。中長期的にはもう一度下落トレンドが再開する可能性があることを念頭に株式市場を注視していくことが重要であろう。さて、後場の日経平均は、こう着感の強い展開が続くか。前場に続いて決算発表を終えた個別材料株中心に物色が向かうか注目しておきたい。
<AK>
2022/08/08 12:13
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