後場の投資戦略
上昇後尻すぼみ、米株高を素直に好感できず
配信日時:2021/10/20 12:20
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;29261.51;+45.99TOPIX;2029.68;+3.11
[後場の投資戦略]
日経平均は上値抵抗線と見られていた25日移動平均線を突破し、チャート形状は一段と改善した。企業決算への警戒感が高まっていたなか、米国企業のこれまでの決算が総じて市場予想を上回る好内容だったことで、投資家心理が改善してきている様子。NYダウやS&P500種株価株価指数のチャート形状もかなり改善し、再び史上最高値を窺う位置にまで回復してきた。
ただ、国内の企業決算が本格化するのは来週後半からで、ちょうど時期が重なる月末の衆院選投開票結果に対する不透明感もあり、一段と上値を追う動きには至っていない。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の大幅上昇を背景に朝方大きく上昇していた東エレク<8035>など半導体関連株も寄り付き後は失速し、上げ幅を縮める動きとなっている。個別株で大きく上昇しているものは多くなく、短期筋による散発的な先物買いで指数だけが先行して上昇していた印象だ。
また、これまでの米国企業の好決算も、日本株にとって過度にポジティブには捉えにくい。これまでの企業決算は大手投資銀行や保険大手、医薬品関連など米国内経済との結びつきが強いものが大半。原油高や供給網混乱などの影響が懸念される製造業を中心とした日本企業の業績に直接示唆を与えるようなものではない。
他方、前日に発表された米消費財メーカーのプロクター&ギャンブル(PG)の決算では、商品価格や輸送費の上昇による通期計画への下押し圧力に言及があり、株価は下落した。日本株にとってはこちらの方が示唆深いだろう。また、日本企業については、資源価格や輸送費の上昇に加え、急速に進展する円安も相まってコスト増に対する懸念が特に強い。東証1部全体の売買高が停滞気味であるところを見ても、7-9月期決算と下期に対する見通しを確かめるまでは、明確に強気に転じることはできそうにない。
また、約5カ月ぶりの高値を記録した米長期金利の上昇も気懸かり。米10年債利回りは19日、1.64%と、1.59%から大きく上昇。一方、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.54%と横ばいで高止まり。インフレ懸念や来年からの米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げなどを織り込む形で、米国債が売られる状況が続いていると思われるが、BEIが高止まりの一方で米長期金利が上昇を続けると、実質金利の上昇を通して株式相場の重しとなりかねない。3月に付けた1.78%水準にはまだ距離があるが、米長期金利の上昇ペースには改めて警戒しておきたい。
むろん、供給網の混乱や商品市況高など供給サイドに基づく金利上昇でなく、企業業績や景気回復を反映した良い金利上昇であれば、長期的には株式市場への影響もポジティブなものとなる。それでも、金利上昇ペースの速さや実質金利上昇の短期的な悪影響には警戒が必要だろう。また、商品市況が高止まりしている中、今の金利上昇が素直に景気回復を映したものと捉えてよいかどうかを判断するには時間がかかろう。
日経平均は、決算シーズンを一巡するまでは当面3万円の大台を回復することは難しいとみられ、29500円手前での一進一退が続きそうだ。しばらくは、上昇したところは売り、下がったら押し目買いの逆張り戦略が奏功しやすい環境が続くとみる。
<AK>
日経平均;29261.51;+45.99TOPIX;2029.68;+3.11
[後場の投資戦略]
日経平均は上値抵抗線と見られていた25日移動平均線を突破し、チャート形状は一段と改善した。企業決算への警戒感が高まっていたなか、米国企業のこれまでの決算が総じて市場予想を上回る好内容だったことで、投資家心理が改善してきている様子。NYダウやS&P500種株価株価指数のチャート形状もかなり改善し、再び史上最高値を窺う位置にまで回復してきた。
ただ、国内の企業決算が本格化するのは来週後半からで、ちょうど時期が重なる月末の衆院選投開票結果に対する不透明感もあり、一段と上値を追う動きには至っていない。フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)の大幅上昇を背景に朝方大きく上昇していた東エレク<8035>など半導体関連株も寄り付き後は失速し、上げ幅を縮める動きとなっている。個別株で大きく上昇しているものは多くなく、短期筋による散発的な先物買いで指数だけが先行して上昇していた印象だ。
また、これまでの米国企業の好決算も、日本株にとって過度にポジティブには捉えにくい。これまでの企業決算は大手投資銀行や保険大手、医薬品関連など米国内経済との結びつきが強いものが大半。原油高や供給網混乱などの影響が懸念される製造業を中心とした日本企業の業績に直接示唆を与えるようなものではない。
他方、前日に発表された米消費財メーカーのプロクター&ギャンブル(PG)の決算では、商品価格や輸送費の上昇による通期計画への下押し圧力に言及があり、株価は下落した。日本株にとってはこちらの方が示唆深いだろう。また、日本企業については、資源価格や輸送費の上昇に加え、急速に進展する円安も相まってコスト増に対する懸念が特に強い。東証1部全体の売買高が停滞気味であるところを見ても、7-9月期決算と下期に対する見通しを確かめるまでは、明確に強気に転じることはできそうにない。
また、約5カ月ぶりの高値を記録した米長期金利の上昇も気懸かり。米10年債利回りは19日、1.64%と、1.59%から大きく上昇。一方、米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は2.54%と横ばいで高止まり。インフレ懸念や来年からの米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げなどを織り込む形で、米国債が売られる状況が続いていると思われるが、BEIが高止まりの一方で米長期金利が上昇を続けると、実質金利の上昇を通して株式相場の重しとなりかねない。3月に付けた1.78%水準にはまだ距離があるが、米長期金利の上昇ペースには改めて警戒しておきたい。
むろん、供給網の混乱や商品市況高など供給サイドに基づく金利上昇でなく、企業業績や景気回復を反映した良い金利上昇であれば、長期的には株式市場への影響もポジティブなものとなる。それでも、金利上昇ペースの速さや実質金利上昇の短期的な悪影響には警戒が必要だろう。また、商品市況が高止まりしている中、今の金利上昇が素直に景気回復を映したものと捉えてよいかどうかを判断するには時間がかかろう。
日経平均は、決算シーズンを一巡するまでは当面3万円の大台を回復することは難しいとみられ、29500円手前での一進一退が続きそうだ。しばらくは、上昇したところは売り、下がったら押し目買いの逆張り戦略が奏功しやすい環境が続くとみる。
<AK>
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