後場の投資戦略
月末アノマリー打破で様相一変、楽観ムードの先にリスクはないか?
配信日時:2021/09/01 12:16
配信元:FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)]
日経平均;28446.81;+357.27TOPIX;1980.20;+19.50
[後場の投資戦略]
前日の日経平均は12カ月ぶりに月末最終営業日の株安アノマリーを破り、節目の28000円も突破した。それまで相場のムードは良くなかっただけに、このアノマリー破りは非常に印象的で、今後の年後半相場への転換点となる可能性がありそうだ。本日も、前日急伸の反動安が想定されてはいたが、良い意味で裏切る形で非常に強い動きを続けている。前引け時点での売買高・売買代金からもかなり膨らんでおり、商いは活況のようだ。
これまで日本株の上値を抑えてきた大きな要因としては、新型コロナウイルスの感染動向、政局不透明感、景気減速懸念などが挙げられていた。新型コロナ感染動向については、社会的にはピークアウト等の議論するのは憚られるが、株式市場ではすでにそうした兆しを捉えてポジティブな方向に転換してきているようだ。実際、全国の中でも先行性の高い東京都の新規感染者数は、30日には1915人と、約1カ月ぶりに2000人を下回った。31日は2909人だったが、8月第3週の5000人台と比べると確かに水準としては高くても、モメンタムとしてはピークアウトしたと捉えられそうだ。
政局不透明感については、菅首相が二階幹事長の交代を含む自民党執行部の顔ぶれを来週にも刷新すると伝わっている。また、人事を行って党の求心力を高めたうえで9月中旬にも衆院解散に踏み切る意向とも報道されている。こうした事態を受けて、政権求心力の回復や経済対策への期待が高まってきているほか、衆院選に向けては日本株が上昇しやすいというアノマリーなども意識されているようだ。
景気減速懸念については、米サプライマネジメント協会(ISM)発表の製造景況指数、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)のモメンタム鈍化や、日本株と連動性の高い米長期金利の低下などが背景にあると考えられてきた。ただ、日経平均が2月の30714.52円から8月の26954.81円まで半年以上かけて調整した値幅を考慮すると、指標のモメンタム鈍化はすでに十分に織り込んだともいえる。水準としては、米製造業ISMは今後も50台後半の高水準が続くと予想されるほか、50ギリギリまで低下した中国製造業PMIも、緩やかながらマクロ政策が緩和方向に転じつつあるなか、底打ち感が強まってきたともいえる。
このように、今まで日本株の上値抑制要因として働いてきた大きな要素が最悪期を脱したのであれば、昨日、今日の株高ムードも一過性のものではないのかもしれない。
勿論、デルタ株に変わる新たな変異株拡大の可能性や経済対策が小粒に留まる可能性などもある。また、景気減速の捉え方についても、水準でなくあくまでモメンタムで景気減速を捉える向きが多ければ、上述の背景を理由とした株高演出は難しいだろう。
他方、前日に発表された6月の米S&P・コアロジック/ケース・シラー住宅価格指数は、前月に続き過去30年余りで最大の伸びを示した。前年比18%以上の伸びで、リーマンショック前の住宅バブル期を超える勢いだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は依然として「(過度な)インフレは一過性」との姿勢を維持しているが、想定以上にインフレが長期化する可能性や、インフレ懸念による個人消費鈍化が引き起こす景気減速といった可能性もあるだろう。
前日には、欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーであるクノット・オランダ中銀総裁はユーロ圏のインフレ見通しがすでに著しく改善したことで、ECBによる刺激策の即時減速とパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の来年3月終了を正当化できる可能性があるとも指摘したという。
程度の差こそあれど、インフレが想定以上に強まっているのは米国だけでなく、欧州も同様のようだ。世界的に長期化した緩和政策がもたらす弊害が今後徐々に表れてくる可能性は十分にあるだろう。足元で楽観ムードが強まってはいるが、リスクはいつもすぐ傍にあることに留意したい。
なお、今晩は米国で8月ADP全米雇用リポート、ISM製造業景況指数が発表予定だ。週末の米雇用統計も結局は株高材料として捉えられる可能性が高そうだが、28500円近辺まで一気に上げてきた日経平均はここから、目先の目標達成感もあり、しばし様子見ムードに入ると想定しておきたい。
<AK>
日経平均;28446.81;+357.27TOPIX;1980.20;+19.50
[後場の投資戦略]
前日の日経平均は12カ月ぶりに月末最終営業日の株安アノマリーを破り、節目の28000円も突破した。それまで相場のムードは良くなかっただけに、このアノマリー破りは非常に印象的で、今後の年後半相場への転換点となる可能性がありそうだ。本日も、前日急伸の反動安が想定されてはいたが、良い意味で裏切る形で非常に強い動きを続けている。前引け時点での売買高・売買代金からもかなり膨らんでおり、商いは活況のようだ。
これまで日本株の上値を抑えてきた大きな要因としては、新型コロナウイルスの感染動向、政局不透明感、景気減速懸念などが挙げられていた。新型コロナ感染動向については、社会的にはピークアウト等の議論するのは憚られるが、株式市場ではすでにそうした兆しを捉えてポジティブな方向に転換してきているようだ。実際、全国の中でも先行性の高い東京都の新規感染者数は、30日には1915人と、約1カ月ぶりに2000人を下回った。31日は2909人だったが、8月第3週の5000人台と比べると確かに水準としては高くても、モメンタムとしてはピークアウトしたと捉えられそうだ。
政局不透明感については、菅首相が二階幹事長の交代を含む自民党執行部の顔ぶれを来週にも刷新すると伝わっている。また、人事を行って党の求心力を高めたうえで9月中旬にも衆院解散に踏み切る意向とも報道されている。こうした事態を受けて、政権求心力の回復や経済対策への期待が高まってきているほか、衆院選に向けては日本株が上昇しやすいというアノマリーなども意識されているようだ。
景気減速懸念については、米サプライマネジメント協会(ISM)発表の製造景況指数、中国製造業購買担当者景気指数(PMI)のモメンタム鈍化や、日本株と連動性の高い米長期金利の低下などが背景にあると考えられてきた。ただ、日経平均が2月の30714.52円から8月の26954.81円まで半年以上かけて調整した値幅を考慮すると、指標のモメンタム鈍化はすでに十分に織り込んだともいえる。水準としては、米製造業ISMは今後も50台後半の高水準が続くと予想されるほか、50ギリギリまで低下した中国製造業PMIも、緩やかながらマクロ政策が緩和方向に転じつつあるなか、底打ち感が強まってきたともいえる。
このように、今まで日本株の上値抑制要因として働いてきた大きな要素が最悪期を脱したのであれば、昨日、今日の株高ムードも一過性のものではないのかもしれない。
勿論、デルタ株に変わる新たな変異株拡大の可能性や経済対策が小粒に留まる可能性などもある。また、景気減速の捉え方についても、水準でなくあくまでモメンタムで景気減速を捉える向きが多ければ、上述の背景を理由とした株高演出は難しいだろう。
他方、前日に発表された6月の米S&P・コアロジック/ケース・シラー住宅価格指数は、前月に続き過去30年余りで最大の伸びを示した。前年比18%以上の伸びで、リーマンショック前の住宅バブル期を超える勢いだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は依然として「(過度な)インフレは一過性」との姿勢を維持しているが、想定以上にインフレが長期化する可能性や、インフレ懸念による個人消費鈍化が引き起こす景気減速といった可能性もあるだろう。
前日には、欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバーであるクノット・オランダ中銀総裁はユーロ圏のインフレ見通しがすでに著しく改善したことで、ECBによる刺激策の即時減速とパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の来年3月終了を正当化できる可能性があるとも指摘したという。
程度の差こそあれど、インフレが想定以上に強まっているのは米国だけでなく、欧州も同様のようだ。世界的に長期化した緩和政策がもたらす弊害が今後徐々に表れてくる可能性は十分にあるだろう。足元で楽観ムードが強まってはいるが、リスクはいつもすぐ傍にあることに留意したい。
なお、今晩は米国で8月ADP全米雇用リポート、ISM製造業景況指数が発表予定だ。週末の米雇用統計も結局は株高材料として捉えられる可能性が高そうだが、28500円近辺まで一気に上げてきた日経平均はここから、目先の目標達成感もあり、しばし様子見ムードに入ると想定しておきたい。
<AK>
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