投資信託は長期で積立投資するのが基本と言われますが、売り時については考えずに購入している人も多いと思います。
投資信託で利益を確定するのにも、よいタイミングや注意点があります。この記事では投資信託やNISA口座での投資の利益確定タイミングについて説明します。
利益確定について正しい知識を身につけておきましょう。
投資信託の利益確定のタイミング
投資信託の基本は長期投資です。明確な理由がない場合は頻繁に売り買いしないほうがコストの削減、リターンの増加の点からも有利になります。
ただし、目標金額に達した場合など事前にいつ売却するかを決めているときは投資信託を解約しても問題ありません。投資信託を現金化する際には税金の支払いや確定申告が必要になる可能性もあるので認識しておきましょう。
長期保有したほうがいいと言われてる理由
投資信託を長期保有したほうがよい理由は3点あります。
- 長期間保有した方が複利の効果を受けやすい
- 収益が安定しやすい
- 短期売買に比べて、売買時の手数料がおさえられる
複利の効果とは発生した利息を元本に組み入れて運用することで、運用の効率が上がる仕組みです。投資信託には分配金がある商品と分配金がない商品がありますが、インデックス投資のファンドで分配金がない商品を選ぶ(※1)ことで分配金が再投資に回り複利の効果を得られます。
比較的成果が安定しているインデックス運用(※2)でも短期的には株式市場全体が不調であれば下落することもあります。長期で保有することで短期的な下落の影響を小さくすることができます。
投資信託は購入時や解約時に手数料が発生する場合があります。こまめに売買すると思わぬコストがかかってしまうことがあるのも長期保有したほうがよいと言われる理由です。
※1日本証券業協会「投資信託には「分配金あり」と「分配金なし」のタイプがありますが、メリット、留意点を教えてください。」
※2インデックス運用:運用目標とされるベンチマーク(TOPIXやS&P500などの指標)に連動する成果を目指す運用手法
目標金額に達した時
いつが売り時かを考えるのは難しいので、事前に目標金額を決めておき、それを超えたら一括で売却するのもシンプルかつよい方法です。
例えば5年後までに500万円の資産を作ると決めておき、500万円を超えたら解約します。目標金額に達した時に現金化することで、それ以降に基準価額が下落して利益確定のタイミングを逃すことを防ぎます。
投資信託の基準価額の更新は1日1回なので、注文のタイミングには注意しましょう。
投資信託の利益確定時に注意点
投資信託の利益には、購入時と売却時の基準価額の差益であるキャピタルゲインと投資信託の分配金であるインカムゲインの2種類(分配金がない投資信託もあります)があります。 分配金が発生する決算タイミングは年1回や年2回など特定のタイミング(投資信託により異なります)なので、売却のタイミングも注意しましょう。
また、投資信託の利益には税金(20.315%)が発生することは理解しておきましょう。税金は利用している証券会社の口座が「特定口座の源泉徴収あり」であれば、証券会社側で源泉徴収をしてくれるので、投資家が意識する必要はありません。
「一般口座」の場合や、「特定口座で源泉徴収しない」場合で、利益が20万円以上の場合(※3)自分で確定申告を行う必要があります。
※3国税庁「確定申告が必要な方」
NISAの利益確定のタイミング
NISAは非課税期間が決まっているので、基本的には非課税期間終了前に利益確定します。一般NISAとつみたてNISAでは非課税期間が異なることに注意してください。
非課税期間終了前に売却する
一般NISAとつみたてNISAの非課税期間は以下の表のとおり(※4)です。
一般NISA | つみたてNISA | |
非課税期間 | 5年 | 20年 |
年間非課税投資枠 | 120万円 | 40万円 |
特につみたてNISAに関しては、投資可能商品が投資信託なので長期投資を基本として、できるだけ非課税期間ぎりぎりで売却することをおすすめします。
一般NISAの場合、個別株などにも投資可能なので、利益が最大になるタイミングだと判断すれば売却するのも問題ありません。ただし、一般NISAもつみたてNISAも一度売却したら非課税投資枠は復活しないのでこまめに売買して非課税投資枠がなくならないように注意してください。
一般NISAは2024年から新NISAになり、現在のつみたてNISAと一般NISAが組み合わさったような2階建て構造に変わります。(※5)
※4金融庁NISA特設ウェブサイト「NISAとは」
※5金融庁NISA特設ウェブサイト「新しいNISAの制度」
つみたてNISAと一般NISAの利益確定タイミングの違い
つみたてNISAは20年間、一般NISAは5年間の非課税期間があるので、利益が最大になるタイミングで利益確定するのが基本的な考え方です。
つみたてNISAは投資信託の特徴からも非課税期間をできる限り使いきるのがおすすめです。一般NISAの場合、短期的に上昇したタイミングで利益が最大になりそうなら利益確定しても問題ありません。
一般NISAは非課税期間の5年間が終了した場合、非課税期間を繰越す「ロールオーバー」(※6)もできるので、利益確定タイミングをさらに伸ばすこともできます。(ただし、ロールオーバーした分は翌年の非課税投資枠を使用します)
※6金融庁NISA特設ウェブサイト「一般NISAのポイント」
NISAの利益確定時に注意点
NISA口座は一度売り買いすると年間の非課税投資枠が復活しない点に注意してください。
例えば、2023年に120万円NISA口座で購入してそのうち100万円分売却しても、2023年の非課税投資枠は使い切っているので2023年中には購入できません。
2023年に120万円入した分を2024年に100万円分売却した場合は、2024年の非課税投資枠には関係がないので、2024年は120万円分購入できます。
また、NISA口座では、利益確定だけでなく損失が確定する場合にも注意が必要です。通常の特定口座では損失が発生した場合「損益通算」することが可能ですが、NISA口座では損益通算ができません。
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その他の取引の利益確定
株式や信用取引などの利益確定についても、重要なのは事前に利益確定のタイミング(株価など)を決めておくことが重要です。
現物取引の利益確定は自由に決めることができる
現物取引は株式や債券と現金(売買代金)を受け渡すことで行われる取引のことで、一般的にイメージしている株取引そのものです。信用取引や先物取引と区別して現物取引と呼ばれます。
株式の現物取引は、NISAのように期間の制約があったり、投資信託のように保有期間中にコストがかかるわけではありませんので、基本的に利益確定のタイミングは自由です。
ただし、利益確定のタイミングを逃したり、損失が拡大したりすることを防ぐためにも事前に利益確定(損失確定)のポイントは決めておきましょう。
こちらの記事で詳しく解説しています。
信用取引は長期保有に向かないので早く利益確定する
信用取引は早めに利益確定する(長期保有しない)のが投資初心者の鉄則です。信用取引は現金や株などの担保を預けて、証券会社から売買に必要なお金や株を借りて行う取引のことですが、長期投資では不向きな運用方法です。
- 損失が大きくなる可能性がある
- 取引手数料以外にもコストがかかる
ここでは信用取引の詳細は説明しませんが、信用取引は保証金の約3.3倍まで取引を行うことができます。それだけ損失も大きくなる可能性があります。また、信用取引では金利や貸株料といったコストが発生するためより長期で取引するとコストがかかります。
信用取引はできるかぎり短期で利益確定するのが原則ですが、初心者の方はそもそも信用取引はしないことをおすすめします。
まとめ
投資信託のような長期投資に適した商品に投資する場合、できるだけ利益確定はせず長期保有しておくほうが最終的にメリットが大きいです。また、頻繁に売買するものでもありません。
保有可能な期間や保有期間中のコストなどによっても利益確定のタイミングが変わってくるので、それぞれの商品の特性を理解しましょう。
どのような金融商品に投資するにしても、利益確定のポイントを事前に検討しておくことが重要です。
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よくある質問
Q | 投資信託の基準価額がマイナスになった時には売却したほうがいいですか? |
A | 長期投資が基本ですが、ここから基準価額が上がらないと予想するなら売却も検討してください。ただし、NISA口座を利用している場合、非課税枠が戻らないこと、損益通算できないことは認識しておきましょう。 |
Q | NISA口座の非課税枠に上限はありますか? |
A | 非課税投資枠の購入金額(一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円まで)は決まっていますが、非課税投資枠の商品で得た利益はすべて非課税になります。 |
Q | ファンドラップの売却タイミングはいつですか? |
A | ファンドラップも基本的には投資信託と似た考え方で売却します。ただし、一般的に運用コストが高めになっているので長期保有する際には、コストとリターンを検討し、運用パフォーマンスは確認しておきましょう。 |