投資信託でリターンを求めるには手数料などのコストをおさえることが重要です。投資信託ではタイミングによって異なる手数料が発生するので、想定よりも余計なコストがかかったということにならないように注意しましょう。特に重要なのは信託報酬手数料(保有期間中に発生するコスト)をおさえることです。
この記事では投資信託の取引で発生する手数料についてまとめました。
投資信託にかかる手数料の種類は?
投資信託には、主に「購入時」「保有時」「売却時」にかかる手数料の3種類があります。このうち、「保有時」にかかる信託報酬手数料は保有期間中常に発生するので、この手数料を抑えることが重要になります。
支払いタイミング | 手数料 | 支払い先 | 直接/間接費用 |
購入時 | 販売手数料 | 販売会社 | 直接 |
保有時 | 信託報酬手数料 | 運用会社 販売会社 信託銀行 |
間接 |
その他の手数料 (監査手数料・売却委託手数料など) |
手数料の種類により異なる | ||
売却時 | 信託財産留保額 | 投資信託 | 直接 |
換金(解約)手数料 | 販売会社 |
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[購入時]販売手数料
「販売手数料」は、投資信託を購入する時に支払う事務手続き等にかかる費用です。販売手数料がある投資信託の場合、基準価額の何%を上限として、販売会社が定めた料率を乗じた額というのが一般的です。 販売手数料(購入時手数料)は投資信託の目論見書に記載されています(目論見書に購入時手数料の記載があっても販売会社によっては手数料なしの場合もあります)。
また、販売手数料がない投資信託商品(ノーロード)もあり、つみたてNISAの対象(※1)はノーロードの商品に限定されています。
※1 金融庁 NISA特設WEBサイト 「つみたてNISAとは」
[売却時]信託財産留保額・換金(解約)手数料
信託財産留保額は、信託財産に残されるお金です。ある人が投資信託を解約した場合、その人に資金が戻りますが、実際に投資信託の中身を売買するときには費用がかかります。この費用を投資信託を保有している残った投資家が補うのは不公平なので、解約するときに一定の金額残しましょうというのが信託財産留保額の考え方です。
信託財産留保額は換金申込受付日の翌営業日の基準価額に何%かを乗じた額というのが一般的です。投資信託の基準価額はリアルタイムで更新されず、1日1回更新されます。
信託財産留保額がない投資信託もあり、一般的には信託報酬手数料率が低い投資信託のほうが信託財産留保額も小さい(ない)傾向にあります。換金(解約)手数料は、投資信託の解約時に販売会社に支払うお金です。換金(解約)手数料がない場合もあります。
[保有時]信託報酬
信託報酬手数料は、投資信託の保有時には常に発生する運用手数料です。投資信託を選ぶうえで最も注目すべき手数料といえます。一般的にパッシブ運用の投資信託のほうが、アクティブ運用の投資信託よりも信託報酬手数料が低くなります。アクティブ運用はファンドマネージャー(運用のプロ)が運用の戦略策定や銘柄の選定を行うため、コストがかかるからです。
パッシブ運用 | |
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その他にも保有時には監査報酬や売却委託手数料がかかることがあると目論見書にも記載されていますが、こちらについては基本的に気にする必要はありません。
投資信託の手数料の目安は?安く抑える方法について
投資信託の取引をするときは手数料コストを下げることが重要です。特に保有期間中に発生する信託報酬手数料が低い銘柄を選ぶことが重要です。
具体的な商品の選び方としては、ノーロードの商品(販売手数料がかからない)で、信託財産留保額もない銘柄を選びましょう。信託報酬手数料は0.2%程度を目安として検討するのがよいでしょう。
手数料の目安
手数料には売買時に1度だけ発生する手数料(販売手数料と信託財産留保額)と、保有期間中に常に発生する信託報酬手数料の2種類があります。 販売手数料と信託財産留保額は設定がない投資信託もあるので、コストを抑えるならこのような投資信託を選びましょう。
信託報酬手数料が低い投資信託(優良な投資信託が多い)は、この2つの手数料がない商品が多いです。
信託報酬手数料は低い銘柄では0.1%程度、高い銘柄では2.0%を超える銘柄もあります。信託報酬手数料が高い=投資実績がいいというわけではありませんが、コストが低いほどリターンが期待できます。 パッシブ運用の投資信託を選択して、0.2%程度におさえたいところです。
ノーロードファンドを選ぶ
ノーロードファンドとは販売手数料がかからない投資信託のことです。購入時のみ発生する手数料ですが、購入の回数が多くなるとコストが大きくなるので注意が必要です。
販売手数料は投資信託の目論見書に記載されていますが、販売会社によっては手数料がかからない場合もあるので、購入時はチェックするようにしましょう。大手ネット証券では販売手数料がかからないことが多いです。
つみたてNISA対象の投資信託はすべてノーロードファンドです。
インデックスファンドを選ぶ
より正確に言うと「パッシブ運用」をしているインデックスファンドを選びます。パッシブ運用とは市場全体をベンチマーク(TOPIXやS&P500などの指標)として、そのインデックスに連動する運用成果を目指す運用手法です。
インデックスには様々な種類があり、インデックスファンドだから信託報酬手数料が低いわけではないことには注意してください。
一般的には国内インデックス(TOPIXや日経平均)よりも、海外インデックス(S&P500やオール・カントリー)のほうが信託報酬のコストが低めです。
銘柄 | 信託報酬手数料 |
信託財産留保額のないファンドを選ぶ
信託財産留保額は投資信託の売却時に発生するコストです。信託財産留保額が設定されている場合でも0.05~0.5%程度なので、それほど高いわけではありません。信託財産留保額は投資信託の目論見書に記載されています。
ただし、信託財産留保額が発生しない投資信託もあるので、そちらを選ぶほうがコストを抑えることができます。特に上で紹介したようなインデックスファンドは信託財産留保額が設定されていない銘柄が多いです。
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投資信託で手数料負けしないためのシミュレーション
投資信託で手数料負けしないために重要なのは信託報酬手数料です。日々の手数料の額は小さいように感じますが、長期で考えると思ったよりも大きな手数料額になることがあります。
販売手数料のシミュレーション
販売手数料は基準価額の3%以下程度で設定されていることがほとんどです。仮に販売手数料率が3%だった場合、100万円分の投資信託を購入すると3万円のコストがかかります。
100万円(購入金額) × 3%(手数料率) = 3万円(販売手数料)
投資信託は大きなリターンを狙う商品ではありませんので、数パーセントの販売手数料の有無で最終的なリターンも予想外に変わってきます。
信託報酬のシミュレーション
信託報酬手数料は保有期間中常に発生します。銘柄ごとに信託報酬はかなりの違いがあり、0.1〜2.5%(年率(税込み))も違います。信託報酬手数料がかからない(ゼロ)の投資信託はありません。
信託報酬手数料は保有評価額から直接ひかれるわけではなく、資産総額から間接的にひかれるイメージです。仮に100万円の評価額で0.154%(税込・年)の信託報酬の場合、日々これだけの手数料がかかります。
100万円(評価額) × 0.154%(信託報酬手数料)÷ 365日(日歩) ≒ 4.2円 (年間1,540円)
信託報酬が1.5%の場合、このようになります。
100万円(評価額) × 1.5%(信託報酬手数料)÷ 365日(日歩) ≒ 41円 (年間15,000円)
20年保有した場合、これだけの差が発生するので、信託報酬手数料が低い銘柄を選ぶことが重要であることがわかると思います。
1,540円(年間) × 20年 = 30,800円 (信託報酬手数料0.154%) 15,000円(年間) × 20年 = 300,000円 (信託報酬手数料1.5%)
※評価額は常に変動するので、この計算通りになるわけではありません。
信託財産留保額のシミュレーション
信託財産留保額が設定されている場合、0.05〜0.5%程度が一般的です。信託報酬手数料が低い銘柄は信託財産留保額が設定されていないことが多いです。
信託財産留保額が0.5%の場合、100万円分売却すると5,000円のコストがかかります。
100万円(評価額) × 0.5%(信託財産留保額) = 5,000円
銀行は手数料が高い?投資信託を買うならネット証券?
結論から言えば、投資信託を購入するのはネット証券のほうがおすすめです。一般的に銀行よりも売買時のコストを抑えることができ、取扱銘柄数も多いことがほとんどです。
銀行のメリットとデメリット
銀行で投資信託を購入するメリットとデメリットにはこのようなものがあります。
【メリット】
【デメリット】
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大きく言えばメリットはサポートの充実、デメリットはコストと商品数です。コストに関して、信託報酬手数料は銀行でもネット証券でも変わりませんが、販売手数料や解約手数料の差が出る可能性があります。
ネット証券のメリットとデメリット
ネット証券はメリットデメリットが銀行と逆になります。
【メリット】
【デメリット】
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コストをおさえることができるのは一番のメリットです。取扱商品数も多いため、信託報酬手数料率が低い商品を選べばコストを下げることにもつながります。
一方、ネット証券でも問合せサポートはありますが、銘柄の問い合わせなどの細かい問合せまでは応じてくれないことがほとんどです。しかし、ネット証券では投資信託の検索機能などが充実しているので、銘柄選びに不自由することはほとんどありません。
まとめ
投資信託で発生する手数料は、大きく分類すると購入時に発生する「販売手数料」、保有期間中に発生する「信託報酬手数料」、売却時に発生する「信託財産留保額」の3種類です。投資信託でコストを抑えるには、この2点が重要です。
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特に保有期間中発生する信託報酬手数料は、長期間保有するほどコストが大きくなるので銘柄選びが重要です。
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よくある質問
Q | 銀行の投資信託の手数料は、ネット証券より高いって本当? |
A | 信託報酬手数料は変わりませんが、販売手数料や解約手数料などがネット証券より高い傾向があります。 |
Q | 投資信託で手数料負けすることってあるの? |
A | あります。コストが低い投資信託を選ぶことで手数料負けする確率を下げることができます。 |
Q | 信託報酬手数料はいつ払う? |
A | 信託報酬手数料は資産総額からひかれているので、投資家が意識することはありません。資産総額からこのような運用コストをひいた形で純資産額を算出し、基準価額が更新されています。 |
Q | 投資信託で元本割れする確率は? |
A | 商品によって異なります。信託報酬が高いと資産総額からひかれる割合が大きくなるので基準価額は上がりにくく(下がりやすく)なります。ただし、優秀な銘柄に長期で投資するほど元本割れの可能性は低くなります。(※2) ※2 金融庁「虫とりさんはどんな投資をしているのですか?」 |