株式投資をするときに、株価の値上がり(キャピタルゲイン)よりも、配当(インカムゲイン)を目的とした投資をする投資家も多いです。
実は、配当はどれだけ利回りが期待できるかだけでなく、納税方法まで考えることはたくさんあります。よく検討してから投資するようにしましょう。
配当利回りとは
配当利回りは購入した株価に対して、年間の配当金がどの程度の割合かを示す指標です。配当金を目的とした投資をする場合、投資家は基本的に高い配当利回りを期待します。 配当金を目的とする投資にはデメリットもあるので、今が高配当だからという理由で簡単に投資先を決めるのは危険です。
配当金とは?配当利回りとは?
配当は株主還元の1つです。企業があげた利益の一部を配当金として株主に支払います。グロース企業など今後の成長が期待できる企業では、配当金ではなく会社の成長(=株価の上昇)を株主還元とする場合もあります。 配当利回りは購入価格に対してどれだけ配当金がもらえるかの指標です。高配当に明確な基準はありませんが、配当利回りが3.0%を超えていれば、株式投資としては十分高配当の銘柄といえます。
また、配当利回りは株価と配当金で計算しますが、購入した株価は投資家によって違うため、配当利回りも変わるという点は理解しておく必要があります。現在の株価から計算した配当利回りが高くても、それよりも高い株価で購入していれば実際の(あなたの)配当利回りは低くなります。
配当金のメリット・デメリット
配当金メリット | ・安定した利益が期待できる ・配当が安定している企業は、業績も安定していることが多い ・配当金を再投資することで複利効果が期待できる |
配当金のデメリット | ・配当金にも税金がかかる ・業績によって減配・無配になる可能性もある |
配当利回り・配当性向の計算方法
配当利回りは株価に対して年間配当がどの程度の割合かを示す指標です。先ほども説明した通り、購入した株価によって配当利回りは変わります。重要なのは自分で購入した株価で計算した配当利回りです。これから投資を考えているのであれば、配当利回りにも影響するので今の株価が過去と比較して高いのか、低いのかも判断するようにしましょう。
【配当利回りの計算方法】 配当利回り(%)= 1株当たりの配当金 ÷ 株価 配当利回り(%)= 配当金支払総額 ÷ 時価総額
この2つはどちらも同じで、1株当たりで計算するか株式全体で計算しているかの違いです。 1株当たりの配当金は企業の決算情報などをみれば確認できます。
配当性向の計算方法
配当性向とは当期純利益のうち、どの程度の割合を配当に回したかどうかの指標です。配当性向が高いということは株主に積極的に利益を還元しているといえます。配当性向を経営指標の1つにしている企業も多く、そのような企業では25%~30%程度を目標としていることが多いようです。
【配当性向の計算方法】
- 配当性向(%)= 1株当たりの配当金(円) ÷ 1株当たりの当期純利益(円)
- 配当性向(%)= 配当金支払金額(円) ÷ 当期純利益(円) この2つの式も配当利回りと同様、結果は同じです。
業種別配当利回りの平均・目安
業種別の配当利回り平均値は以下のようになっています(全体と上位5業種)。
業種 | 配当利回り(2021年) |
全業種 | 2.5% |
化学 | 10.0% |
石油・石炭製品 | 3.3% |
建設業 | 2.8% |
鉱業 | 2.7% |
電気・ガス業 | 2.6% |
ただし、2022年以降は海運業の利回りが上がるなど、タイミングによっても異なる点は注意が必要です。
\ 楽天証券の口座開設はこちら /
配当金を計算するためのシミュレーション
株価と配当利回りから配当金がどの程度もらえるかを計算してみます。もらえる配当金は株価と配当利回りによって決まります。
ただし、株価によって必要投資額も変わる点には注意しましょう。株式を購入するときは単元(100株)単位に購入することになります。単元未満株を購入する場合は1株から購入でき、配当金も受け取れます。
配当利回りが平均な銘柄
配当利回りを1〜3%として配当金を計算するとこのようになります。
配当利回り | 株価 | 必要投資額 | 配当金 |
1% | 1,000円 | 10万円 | 1,000円 |
3,000円 | 30万円 | 3,000円 | |
2% | 1,000円 | 10万円 | 2,000円 |
3,000円 | 30万円 | 6,000円 | |
3% | 1,000円 | 10万円 | 3,000円 |
3,000円 | 30万円 | 9,000円 |
※上表は手数料や税金等は考慮していません
配当利回りが高い銘柄
配当利回りが高い銘柄ではこうなります。2023年2月現在、海運株では15%近い配当利回りとなっている銘柄もあります。
配当利回り | 株価 | 必要投資額 | 配当金 |
5% | 1,000円 | 10万円 | 5,000円 |
3,000円 | 30万円 | 15,000円 | |
10% | 1,000円 | 10万円 | 10,000円 |
3,000円 | 30万円 | 30,000円 |
配当金にかかる税金の計算方法
配当金には株式の売却利益と同じように税金がかかることは覚えておきましょう。したがって、上で計算した配当利回りは税引き前の利益となります。 また、配当金の課税は大口株主(持ち株比率が3%以上の株主)とそれ以外でも変わりますが、ここでは大口株主以外の一般的な投資家が上場株式を保有したときの配当金について説明します。
配当金にかかる税金
配当金には20.315%が課税されます(所得税(復興特別所得税含む):15.315%、住民税:5%)。配当金にかかわる税金についてはこちらの記事で解説しています。
配当金の税金を納める3つの方法
配当金の納税方法は以下の3種類があります。
納税方法 | 確定申告 | 税率 | 備考 |
納税方法 | 不要 | 20.315% 所得税:15.315% 住民税:5% |
いわゆる「特定口座の源泉徴収あり」のパターン |
総合課税制度 | 必要 | 所得税:累進税率 住民税:10% |
配当控除も可能。所得税率によっては得になる |
申告分離課税制度 | 必要 | 20.315% 所得税:15.315% 住民税:5% |
参考:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
一般的に配当金は源泉徴収される
一般的に利用されることが多い「特定口座(源泉徴収あり)」の口座を使って取引している場合、配当金は自動的に源泉徴収されることになるので、確定申告は不要です。
\ 楽天証券の口座開設はこちら /
確定申告で配当金の税金を取り戻せるケース
申告不要制度を利用している場合、確定申告は不要ですが、場合によっては確定申告をしたほうが良いケースもあります。複数の口座を損益通算するケース
複数の口座を利用していて、売却損が出ている口座がある場合、申告分離課税を利用して「損益通算」したほうがお得です。損益通算とはその年に発生した利益と損失を相殺して、課税対象金額を小さくする(それでも損失のほうが多ければ、課税されない)ことです。
仮にA証券口座で30万円の損失があり、B証券口座で100万円(課税額は約20万円)の配当金を受け取った場合、この2つを相殺すると50万円の利益に対して課税されることになります。 したがって、本来は70万円に対して課税(約14万円)されるため、確定申告で損益通算することによっておさめすぎた税金約6間年が還付されます。
※ここではわかりやすくするため、税率を20%として金額を表現しています。
参考:国税庁「No.2250 損益通算」
含み損が出ているケース
「損益通算」をしてもなお損失が残る場合は、3年間損失を繰越すことができます。これは「繰越控除」と呼ばれています。 繰越した損失は翌年配当が出たときに再度「損益通算」できるので、含み損が出ている場合も確定申告をしたほうが得になります。なお、損失を翌年に繰越すには株式の売買がなくても確定申告で繰越控除の申請が必要になる点に注意してください。
参考:国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」
所得が一定以下の会社員のケース
配当金を総合課税にした場合、所得税は累進課税(課税所得に応じて段階的に税率が上がる)になります。課税所得が695万円以下の場合は、総合課税を選択して確定申告したほうが申告分離課税および申告不要制度の税率である20.315%よりも有利になります。
まとめ:配当金をうまく利用しましょう
配当金を狙った投資は、投資タイミングに配当利回りを考えるだけでなく、納税方法まで理解していると、さらに効率よく投資できることがわかるのではないでしょうか。このほかにもNISAを利用した方法などもあります。配当を目的とする投資をするときにはよく検討してから効率よく投資しましょう。
\ 楽天証券の口座開設はこちら /
よくある質問
Q | 月5万円の配当をもらうにはいくら必要? |
A | 年間の配当が60万円です。仮に配当利回りを3%とした場合、投資資金としては約2,000万円が必要です。 |
Q | 高配当株のデメリットは? |
A | 高配当株が減配や無配になると株価も下落する可能性が高くなります。売り時を逃すと売却も難しくなります。 |
Q | 株価と配当利回りの関係は? |
A | 「配当利回り=1株あたり配当金/株価」にて表されるため、株価が下がれば配当利回りは上がります。 ただし景気後退が長引くなどして「減配」となる可能性もあります。必ずしも将来にわたって現在と同じ配当水準が維持されるわけではない、という点に注意が必要です。 |