投資信託の分配金や売買で収益を得たときは、20.315%の所得税が発生します。通常この所得税は源泉徴収されますが、確定申告により税金の過払いを避けられる場合もあります。この記事を参考に、投資信託の所得税の仕組みやいつ引かれるのかをおさえておきましょう。
株の配当金とは
投資信託から得られた利益は課税される
投資信託をはじめ有価証券で得た利益には所得税がかかります。ただし、給与所得に対する所得税のような累進課税制度はなく、税率は20.315%で固定です。まずは、投資信託にかかる税金の仕組みについて見ていきましょう。
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投資信託の利益にかかる税金は20.315%
投資信託から得る利益は大きく分けて分配金による収益と、売買差益に分けられます。税制上は、普通分配金から得た利益は、株式に投資を行う株式投資信託の場合は配当所得、株式には投資しない公社債投資信託では利子所得となります。また、売買差益に当たる譲渡益は譲渡所得に分類されます。
いずれの所得にも所得税が発生しますが、税率は20.315%で、給与所得のように所得金額が大きくなったからといって税率が変わることはありません。また、いくらから引かれるといったような最低金額もなく、納税額が1円を超える場合には税金が発生します。
普通分配金から得られた利益
分配金のうち、個々の投資家の投資元本を上回った利益の部分から捻出される分配金を普通分配金と言います。先に紹介した配当所得もしくは利子所得に当たるのはこの普通分配金の部分で、20.315%の所得税の課税対象となります。
なお、同じ分配金でも、収益が出ていない場合の分配、もしくは実際の収益を上回る金額の分配金については、特別分配金と呼ばれます。税制上、特別分配金は元本の部分償還と同等の性質を持つとみなされるため、所得には含められず、所得税の課税対象にもなりません。
譲渡益
譲渡益とは投資信託の売買差益にあたります。すなわち、売却時に適用される基準価額が、購入時の基準価額と購入時手数料の合計である取得価額よりも上回っていれば、その差額部分に対して所得税が課せられるのです。売買損益がゼロもしくはマイナスの場合には所得税は課税されません。
投資信託の税金が発生するタイミング
普通分配金に対する所得税は特定口座(源泉徴収あり)を開設していれば、分配金を受け取るタイミングで源泉徴収されて、納税が完了します。分配金を再投資する場合でも税金は徴収されるので注意が必要です。また、譲渡益についても、収益が発生した際に源泉徴収されます。ここからは投資信託にかかる税金がいつ引かれるのかを見ていきましょう。
一般的に普通分配金は源泉徴収
普通分配金に対する所得税は、特定口座(源泉徴収あり)を選択していれば源泉徴収されます。すなわち、普通分配金から20.315%の所得税が差し引かれた残りの金額が証券口座に現金が振り込まれます。投資家が特に何もせずとも自動的に納税が完了する仕組みです。
譲渡益が生じた場合
投資家が売却した場合や、投資信託の償還時に利益が生じた場合、この利益が譲渡所得にあたります。売却は投資信託の営業日であれば、投資家の任意のタイミングで行うことができます。一方で、償還はあらかじめ投資信託ごとに日付が決まっています。当初の償還期限が延長される場合もありますが、延長されなかった場合には、自動的に償還日に換金されて、やがて投資家の証券口座に入金されます。
投資家側でタイミングを選べるかどうかの違いがありますが、いずれの場合でも特定口座(源泉徴収あり)を選択していれば、譲渡所得に対する所得税は源泉徴収されます。従って、売却や償還後は、換金額から所得税が差し引かれ、残りの金額が証券口座に反映されます。
分配金を再投資した場合も税金が発生する
分配金ありの投資信託の多くは、分配金を自動的に再投資する方式を選択することが可能です。ただし、この場合でも分配金が普通分配金であれば、所得税が差し引かれます。
源泉徴収ありの口座であれば、自動的に分配金から所得税を差し引いた残りの金額が同じ銘柄の再投資に回されます。
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投資信託の税金計算シミュレーション
投資信託で発生する、普通分配金や譲渡益に対する所得税の計算についてのシミュレーションをご紹介します。いずれの場合も20.315%の税率となるため、収益額から税金の金額を想定できるようにしておきましょう。
普通分配金を受け取った場合
例えば、基準価額10,000円の時に10万円分の投資信託を購入し、基準価額が10,500円の時に10,000円の分配金を受け取ったとします。基準価額は投資開始時点より上昇しているため、この分配金は普通分配金に分類されます。
すなわち10,000円に20.315%の所得税がかかるため、税額は2,031円となります。10,000円から2,031円が差し引かれて、7,969円が証券口座に入金されることになります。また分配金再投資を選択している場合は、7,969円分の投資信託が買い付けられることになるのです。
【計算式】
- 基準価額:10,000円→10,500円と上昇しているため、分配金は「普通分配金」に
- 税金の金額:10,000円(分配金) × 20.315%(税率)= 2,031円
- 税引後の分配金:10,000円 − 2,031円 = 7,969円
売却して譲渡益を得た場合
譲渡益を考える上で気をつけたいのは、購入時の価額についてはその時の基準価額に購入費用を上乗せした取得価額を基準とすることです。
例えば10,000円の投資信託を10万円分購入するときに、購入時手数料が1%徴収されるとします。すると、購入時には101,000円支払うことになるので、この金額が購入時の取得価額とみなされます。
もし、売却時に基準価額が13,000円まで上昇していて、13万円で売却したとすると、譲渡所得は29,000円となります。 29,000円に対して20.315%の所得税が発生するため、税額は5,781円となります。従って、売却後に、証券口座には13万円から5,781円が差し引かれた124,109円が入金されます。
【計算式】
- 100,000円(投資元本) + 1,000円(購入手数料) = 101,000円(取得価額)
- 譲渡益:130,000円(売却時の総額) − 101,000円(取得価額) = 29,000円
- 税金の金額:29,000円 × 20.315% = 5,781円
- 売却後の入金額:130,000円 − 5,781円 = 124,109円
投資信託にかかる税金は確定申告する必要ある?
投資信託にかかる税金は、源泉徴収ありの口座を利用していれば確定申告せずとも、税金の支払いは完了します。ただし、損益通算をする場合には確定申告をすることで税の過払いを防げます。特に複数の証券口座を所有している人は、合計の損益額を日頃から管理するなどの対策をしておきましょう。
年間利益が20万円以下の場合
年間利益が20万円以下の場合は、申告不要の特例が適用されるため、口座の源泉徴収の有無にかかわらず確定申告は不要です。ただし、給与収入が2,000万円を超えているなど、投資収益以外に確定申告が必要な要件がある場合は、対応しなければなりません。
なお、源泉徴収のない口座で確定申告をしなかった場合、投資収益にかかる所得税は事実上免除されますが、住民税は「いくらから支払いが発生する」という下限がなく、少しでも収益が発生すれば支払わなければなりません。確定申告をしない場合には住民税の支払い手続きが必要になるので、お住まいの自治体に手続きを確認してください。
損失が出た場合
もしある証券口座が損失を出していて、他の証券口座では収益が出ている場合、確定申告をすれば損益通算をしてトータルの税額を適正額に調整することができます。
確定申告をしなくとも特に脱税・申告漏れにはなりません。しかし、収益が出た口座はその口座の収益のみを元に税金を源泉徴収するため、所得の減少要因となる損失額が加味されず、税の過払いになってしまうのです。確定申告した結果、源泉徴収された税額が過剰であれば、実際に支払うべき税額との差が還付されます。
また口座を一つしか所有してなくとも、損失が出たら確定申告しましょう。分配所得や譲渡所得に対する税金には繰越控除というシステムがあり、損失が出たら将来3年間の収益と損益通算し、将来の所得税を圧縮することが可能です。このルールを適用するためには確定申告の実施が条件となるため、損失が出た時には、源泉徴収の有無に関わらず確定申告を行うのがおすすめです。
特定口座を利用している場合
特定口座とは証券会社などの金融機関が「年間取引報告書」を作成してくれる口座のことです。さらに源泉徴収あり、なしで分かれていて、どちらの口座を保有しているかによって、確定申告の要否が変わってきます。源泉徴収なしの場合は当然確定申告が必ず必要になりますが、実は源泉徴収ありの口座でも確定申告を行った方が良いケースは少なくありません。
源泉徴収ありの特定口座
源泉徴収ありの特定口座は、確定申告をしなくても所得税が源泉徴収されるので、申告漏れや脱税の心配はありません。ただし、複数の証券口座間で発生した損益を合算して正しい所得額を算出する損益通算や、発生した損失を将来の所得と合算して、将来の納税額を抑制する繰越控除といった仕組みを利用するには確定申告をしなければなりません。
特に、繰越控除については将来どのように損益が発生するかわからないので、毎年確定申告を行うことで、損失が発生したときに税の過払いを防ぐことができます。
源泉徴収なしの特定口座
源泉徴収なしの特定口座については、確定申告は義務となります。確定申告をしなければ公的に所得税額の申告や納付が完了しないため、もし所得が20万円を超えているにも関わらず、確定申告を怠ると脱税・申告漏れとなります。源泉徴収なしの特定口座の場合は必ず確定申告を行ってください。
NISA口座を利用している場合
NISA口座については収益に対して税金が発生しませんし、また損失が発生しても課税される口座との損益通算はできません。そのためNISA口座については例外なく確定申告は不要となります。
まとめ
投資信託で発生した普通分配金や売却益は分配所得や利子所得、もしくは譲渡所得にあたり、20.315%の所得税がかかります。多くの人が利用している源泉徴収ありの特定口座なら確定申告は義務ではありませんが、損益通算や繰越控除といった制度を活用するためには確定申告が必要です。税の過払いを防ぐためにも、確定申告を実施することをおすすめします。
なお、NISA口座を活用すれば、確定申告は不要になりますし、そもそも税金も発生しません。所得税が重い、確定申告が面倒と感じる人は、NISA口座を活用するのが有効な対策の一つです。
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よくある質問
Q | 投資信託はいくらから確定申告しますか? |
A | 状況によって異なりますが、継続的に所得がプラスの場合、投資による所得が20万円を超えたら源泉徴収なしの口座では確定申告が必要です。源泉聴取ありの口座では義務ではありませんが、投資による所得がマイナスの年が出たら、確定申告により税の過払いを防げます。 |
Q | 特定口座は源泉徴収あり・なしのどっちがいい? |
A | 税額を正確に算出するのは煩雑で面倒なので、個人投資家には源泉徴収ありの口座がおすすめです。ただし源泉徴収ありの口座でも、今回の記事を参考に、必要に応じて確定申告の実施を検討しましょう。 |
Q | 投資信託の確定申告に必要なものは? |
A | 印鑑と給与所得、退職所得、公的年金などの源泉徴収票が必要です。また、投資信託による所得額を計算する上では、各証券口座が発行する年間取引報告書が手元にあるとスムーズです。 |