投資信託は少額から投資でき、比較的リスクが小さい金融商品なので、投資初心者にもおすすめできます。ただし、元本が保証されているわけではなく、過去には投資信託の基準価額が大きく下落し、大損する場合もあったので注意するポイントを理解しておきましょう。
この記事では投資信託で大損しないための知識をまとめました。
投資信託で大損する可能性は?
結論から言えば、投資信託で大損する確率は低いです。理由は、「運用のプロによって分散投資がされている」、「大損する前に投資信託が償還(清算)される可能性がある」からです。それでも投資信託の基準価額が下落する可能性はあります。
【関連記事】:投資信託とは?初心者でもわかる基本と仕組みについて解説
投資信託で大損する可能性が低い理由
投資信託には以下のような特徴があり、損する確率が低い仕組みができています。
- 投資信託は比較的リスクが分散された商品である
- 投資信託は資産運用のプロによって運用されている
- 「繰上償還」の仕組みがある
投資信託はリスクが分散された商品です。株式や債券、REIT(不動産)のように投資する資産でリスク分散している銘柄もあれば、株式投資でも国や地域などの投資先の違いでリスク分散している銘柄もあります。また、投資信託に長期で投資することで時間のリスク分散効果もあります。
投資信託は資産運用のプロによって銘柄の選定、運用がされています。特にアクティブファンド(※1)は損を続けていれば投資家からの信用を失うことになるので、投資家の代わりにあらゆる情報を収集・検討して成果を上げようとしています。
繰上償還とはあらかじめ決められた信託期間が終了する前に、投資信託の運用が終了することです。繰上償還の条件は目論見書に記載されています。以下は、ある投資信託の償還条件を一部抜粋しています。
以下の場合等には、信託期間を繰り上げて償還となることがあります。
- 受益権の口数が10億口を下回ることとなった場合
- 対象インデックスが改廃されたとき
- ファンドを償還させることが受益者のため有利であると認めるとき
- やむを得ない事情が発生したとき
参考:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)「投資信託説明書」
このように、受益権の口数(簡単に言えば純資産額)が一定の値より減ると強制的に投資信託が解散されることがあるため、マイナスになることはあっても株式投資で会社が倒産したといったような0になる事態にはほぼなりません。
※1 アクティブファンドはインデックス(指標)を上回る成果を上げることを目標としています。
過去に投資信託が暴落した時期
投資信託で人気があるのは、株式市場全体をインデックスとする「パッシブ運用」をしている銘柄です。米国インデックスではS&P500、日本株インデックスではTOPIXなどに連動する銘柄がこれに該当します。
このような投資信託は市場全体に連動するため、比較的動きが安定しているのですが、過去には大きく値を下げた場面がありました。(以下の表はS&P500の過去の騰落率です)
理由 | リセッション(景気後退) 時期 |
期間 | 期間内騰落率 |
ITバブル崩壊 | 2001年3月~2001年11月 | 8ヶ月 | ▲16.8% |
サブプライム& リーマンショック |
2007年12月~2009年6月 | 18ヶ月 | ▲41.7% |
コロナショック | 2020年2月~2020年4月 | 2ヶ月 | ▲27.9% |
とはいえ、米国株式市場は一次的に下落しても長期観点でみれば右肩上がりで上昇しています。
一方で、債券やREITはこのような動きをしているわけではありません。銘柄によっては投資信託に組み入れられている資産は株式だけではないので、組入れの構成によって値動きするタイミングも異なります。
投資信託で大損する原因
株式市場の暴落は投資家の責任ではないので防げません。しかし、大損する場合には投資家の責任が大きいものです。特によくある原因は「ポートフォリオの見直し不足」「損切りの徹底不足」「分散投資の不足」などが挙げられます。
ポートフォリオの管理を怠る
投資信託などの金融商品は、購入したら終わりというわけではありません。そこから値動きに応じてポートフォリオの見直し(リバランスといいます)が必要です。
例えば、商品Aと商品Bを同じ割合で保有すると決めた後に、Aが値上がりして割合が崩れたとします。定期的に商品Aと商品Bを同じ割合に戻すことをリバランスといいます。
リバランスをすることが必ずプラスに働くわけではありませんが、リバランスをするほうがリスクが減ると言われています。リバランスのタイミングは、定期的に行うパターンとバランスが崩れた変化率に応じて行うパターンがありますが、日本証券業協会によれば、初心者の方は定期的なリバランスのほうが向いている(※2)としています。
※2 参考 日本証券業協会「ポートフォリオのリバランスのタイミングを教えてください」
ルール通りに損切りしない
損切りとは、これ以上損失を拡大させないために損失を出してでも売却する事です。大損しないために小さな損失でとどめるのは資産を守るうえで重要なので、どこまでの損失を許容するのかを事前に決めておきましょう。
ただし、損切りが常に正しい行為というわけではなく、(つみたて)NISA口座などを利用している場合など損切りがむずかしい状況(※3)もあります。その場合、逆の動きをする商品があれば損失を相殺させることでリスクヘッジする方法もあります。
※3 年間非課税投資枠を無駄に使ってしまうため。売却しても非課税投資枠は戻りません。
分散投資をしない
投資信託自体がリスク分散できる商品ですが、株式のみを組み入れた銘柄だけで運用していると、複数の銘柄を保有していても同じ様な値動きをする可能性が高くなり、リスク分散になりません。
このような投資をしていると、上で説明したような株式市場全体が暴落するタイミングでは損失が拡大します。
資産(株、債券など)、投資先(日本、米国、欧州など)、時間(積立投資)の分散を意識したポートフォリオを構築すると、リスクを小さくすることができます。
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投資信託で大損する典型的なパターン
実際の取引で損をしやすい典型的なパターンを紹介します。新興国への投資やレバレッジをかけた商品など、ハイリスクハイリターンな銘柄の保有割合が多くなるほどリスクが高くなります。
新興国ファンドへの投資で失敗
新興国ファンド(エマージングと呼ばれることもあります)は急成長による大きな利益を期待できる反面、インフレや通貨暴落など様々なリスクがあります。
急落するときの動きは速いため、現地の情勢に精通していなければ、特定の新興国ファンドへ積極的に投資するのは控えたほうが良いでしょう。
また、信託報酬などのコストが比較的高めであることも投資をおすすめできない点です。
例えば、日本で人気の「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」のような投資信託でも、投資先として新興国が組み入れられているので、このような銘柄を利用するほうがリスクが低くなります。
レバレッジファンドで失敗
レバレッジの商品は、特定のインデックスの日々の値動きの2倍、3倍の動きを目指す商品です。日本で有名なのはナスダック100指数に連動する「レバナス」です。
レバレッジ商品は、想定した方向に動いた場合は大きなリターンを得ることができますが、予想が外れるとその分だけ損失も大きくなります。
また、レバレッジ商品は長期投資に向いていません。レバレッジ商品は日々の変動率に対して2倍、3倍の動きをするため、指標となるインデックスの値が戻っても、レバレッジ商品の値は元に戻りません。上げ下げを繰り返すたびに損失が大きくなっていきます。
下の表を見るとわかりますが、1日目にインデックスが20%下落すると、レバレッジ2倍は40%下落します。2日目にインデックスが25%上昇すると価格は100に戻りますが、レバレッジ2倍は50%上昇しても90までしか戻りません。
100を基準とする | 1日目 | 2日目 | |
インデックス | 変動率 | -20% | +25% |
値動き | 80 | 100 | |
レバレッジ2倍 | 変動率 | -40% | +50% |
値動き | 60 | 90 |
株価急落時に狼狽売り
投資を始めたばかりの頃は、少しでもマイナスが発生すると精神的に不安になるものです。基準価額が急落すると慌てて売ってしまい(狼狽売りといいます)、少したったら戻っているということは損をする投資家の方からよく聞く話です。
投資をしていれば、株価や基準価額の上げ下げは当然発生します。損切りも同じですが、事前にどういう動きをしたら売却するのかを決めておけば、狼狽売りで利益を逃したり、損切りできずに損失を拡大させることを回避できる確率が上がります。
投資信託で大損しないための注意点
この記事内でも説明していますが、大きく失敗しないためには、「長期」「分散」「積立」でリスク分散することが重要です。これは金融庁も推奨(※4)している投資の基本です。
また、ハイリスクハイリターンな銘柄は避けるようにします。投資信託でこのような銘柄を避けることは比較的簡単です。
※4 金融庁 NISA特設WEBサイト「投資の基本」
分散投資を意識
分散投資をするときに、始めに決めるのは資産の配分です。これはアセットアロケーションといいます。
アセットアロケーション(株式50%、債券30%、預貯金20%のようなイメージ)は、商品銘柄の割合であるポートフォリオ(A銘柄50%、B銘柄50%のようなイメージ)よりも重要です。
アセットアロケーションが決まったら、銘柄を選んでいきます。このときに地域の分散も考えるようにします。ただし、闇雲に投資先の国や地域を増やせばいいというものでもありません。
最後に実際の投資方法として、時間の分散を意識しましょう。
具体的には同じタイミングで同じ金額を買い付ける「ドルコスト平均法(定額購入法)(※5)」と呼ばれる手法を利用します。同じ金額というのが重要で、結果として株価が安いときには多く買い付けることで平均購入価格を平準化できます。
※5 参考 日本証券業協会 「定額購入法(ドル・コスト平均法)」
長期的な運用を心がける
特に投資初心者の方は長期的な運用をするようにしましょう。デイトレードのように取引回数が多くなると負ける可能性も大きくなり、コストも余計にかかります。
特に米国株式は短期的に下落したとしても、その後反発して上昇してきた過去があります。長期的な投資になるほどリスクが小さいことがわかるのではないでしょうか。
つみたてNISAやiDeCoは長期投資に適した制度です。このような制度を利用して、運用益が非課税になるメリットを活かすことができれば資産形成の効率が上がります。
ハイリスクハイリターンな銘柄を避ける
ハイリスクハイリターンな銘柄を避ける簡単な方法は、信託報酬手数料が安い銘柄へ投資することです。さらにリスクを下げるのであれば、債券やREITなどを組み入れたバランス型の投資信託を選ぶのも有効です。
各証券会社の投資信託サーチ機能を利用するとわかりますが、信託報酬手数料が安い順に並べると、ほぼ外国インデックスのパッシブ運用投資信託から並びます。
ハイリスクな投資信託 | 内容 |
アクティブファンド | TOPIXやS&P500などの指標(ベンチマーク)を上回る収益を目指すファンド。 特に信託報酬手数料が高いファンド、純資産額が小さいファンドなどはリスクが高くなる。 |
ブルファンド | 相場(日経平均など)が上昇したときに、基準となる指数の値上り幅以上に利益が出るように作られたファンド。 2倍、3倍といったレバレッジをかけている場合、リターンも損失も大きくなる。 また、レバレッジは日々の変動率に対しての動きであり、最終的な価格の2倍、3倍にはならない。 |
ベアファンド | ブルファンドの逆。相場が下落したときに、基準となる指数の値下がり幅を上回る利益が出るように作られたファンド。 またレバレッジ型のファンドは信託報酬手数料が比較的高く、保有コストがかかりやすい。 |
ローリスクな投資信託 | 内容 |
インデックス型ファンド (パッシブ運用) |
正確には株式市場全体に連動(パッシブ運用)することを目指した投資信託。 (特殊なインデックスもあるため、単純にインデックス投資だからローリスクというわけではないので注意。) 信託報酬手数料の低い銘柄を選ぶほうが一般的にリスクが低くなる。 |
バランス型ファンド | 株式、債券、REIT(不動産)のように、複数の資産が組み入れられているファンド。 地域が分散されている場合もある。どのような構成銘柄でバランス型となっているかは目論見書に記載されている。 |
まとめ
この記事で説明した通り、投資信託は適切な銘柄を選択すれば大損をする可能性は低い金融商品です。投資信託で大損しないためには、「長期」「分散」「積立」が重要ですが、なにより大切なのは正しい知識を身につけて投資を人任せにしないことです。
このサイトでは投資信託以外の情報も紹介していますので、気になる情報があれば参考にしてください。
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よくある質問
Q | 投資信託はいつ下落する? |
A | 投資信託の組み入れ銘柄によって下落タイミングは異なります。株式を中心に組み入れている銘柄の場合、株式市場と似た動きをします。 |
Q | 投資信託とETFの違いは? |
A | 明確な違いは上場の有無です。実際投資するときに何が違うかというと、ETFは株式のようにリアルタイムで取引ができますが、投資信託は当日の終値もを元に基準価額が決まります。 また、一般的にETFのほうが投資信託よりもコストが低くなる傾向があるようです。 参考:日本証券業協会「ETFと投資信託の違いを教えてください」 |
Q | 初心者が避けるべき投資信託は? |
A | パッシブ運用の投資信託と、バランス型の投資信託以外は避けたほうがよいでしょう。信託報酬手数料が高い投資信託も避けるようにしましょう。 |