銘柄はどのように選ぶ?
銘柄とは、市場で取引される有価証券を指します。株式市場においては、有価証券の発行元となる企業名にあたります。2021年末時点では、東京証券取引所における上場会社の数は3,822社です。このような多くの上場会社のなかから、自分にあった銘柄を見つけ出すことは、投資初心者の方にとって決して容易とはいえません。
そこで今回は、株式投資初心者の方が知っておくとよい「銘柄の選び方」をご紹介します。まずは、「身近な企業」や「スクリーニング」から探す方法を見てみましょう。
引用:東京証券取引所「上場会社数の推移」 |
身近な企業から探す
株式投資初心者の方が株式銘柄を選ぶ方法として、「身近な企業を探す」方法が挙げられます。
そもそも株式投資の基本理念は、自身が日頃から優良であると認識している企業に投資して、企業の発展に貢献することです。何も知らない企業の株を購入するよりも、既に認知している企業や、製品・サービスを利用している親しみのある企業の中から選ぶほうが、より詳細な情報を集めやすくなります。
身近な企業の具体例
具体的にどのような株式が身近な企業といえるのでしょうか。以下の例を参考に、親しみや興味関心のある企業を考えてみてください。
趣味・嗜好 | 銘柄 |
ショッピングが好きな方 | デパート・ショッピングモール |
ファッションに興味がある方 | 洋服メーカー・ブランド |
スポーツ観戦が趣味の方 | スポーツメーカー・スポーツ団体のオーナー企業 |
お菓子好きの方 | コンビニエンスストア・お菓子メーカー |
音楽鑑賞が趣味である方 | 好きなアーティストが所属している企業 |
私たちは、日頃から企業に関する情報収集を自然に行っています。
例えば、あなたがA社製菓のチョコレートが好きだったとします。コンビニエンスストアに立ち寄った際、A社製菓が新発売したチョコレートを目にすると、つい購入してしまうのではないでしょうか。そして、A社製菓が作り出すチョコレートのファンになるとします。
すると、新発売情報をいち早く手に入れるため、A社のインスタグラムやツイッターをフォローしたり、公式Webサイトをこまめに閲覧したりといったように、情報収集が自然と習慣になります。
このような行動が「株式銘柄を深く理解する」ことにつながります。まったく知識のない銘柄よりも、身近な銘柄は既知情報量が上回っているため、企業をより深く理解することが可能です。
そして、その業界全体の市場や将来性を調べることが、自分にとって適切な銘柄を見つけるヒントとなります。日常生活で少し企業のことを意識するのが、銘柄の選び方の第1歩です。
このように愛用する商品を販売している会社から銘柄を選び株式を保有するという方法もあります。ただし、その銘柄の株価が上昇しなければ利益を得ることができないため、企業の業績や将来性を見定めて投資しましょう。
スクリーニング機能を使用して探す
膨大な上場企業のなかから銘柄を絞り込むときに有効なのが「スクリーニング」です。ここでいうスクリーニングとは、株式銘柄の検索機能ツールを指します。株式を購入できる証券会社のWebサイトでは、スクリーニング機能が設置されていることが多く、証券会社で口座を開設している方であれば無料で使用できるものもあります。
また、四季報オンラインや株式投資に関するWebサイトでも、スクリーニング機能が利用できる場合もあります。自身が銘柄で重視するポイントを条件に設定することで、銘柄を選別するプロセスや時間を短縮できます。
▼スクリーニング機能における主な絞り込み条件項目
・自身の投資資金
・配当利回り
・時価総額
・業種
・最低売買代金
・PER(株価収益率)
・PBR(株価純資産倍率)
・EPS(1株当たり純利益)
・配当
・銘柄名
・銘柄コード
以上のような条件を指定して絞り込み検索をすることで、効率的に自身の条件・希望に合った銘柄を探し出すことが可能です。
重視することで決める
株式銘柄を選ぶ際に「重視するポイント」を決定しておくと、購入したい銘柄を探しやすくなります。投資の際には、「配当による利益を優先する人」や「手数料の安さを重視する人」等、人によって株の選び方は千差万別です。今回は、値上がり益・配当金・株主優待の3点を重視するケースについてご紹介します。
どのポイントを重視すべきか人によって異なるため、投資の目的やリスクなどを考慮して銘柄を検討しましょう。
値上がり益を重視する場合
安値で購入した銘柄に高値がついた際、売却して得られる利益を「値上がり益」または「キャピタルゲイン」と呼びます。この値上がり益を重視したい方は、「現時点の株価が割安になっている株式」を狙うことが有効です。この割安株を見極めるための予測方法は、大きく2つあります。
1つ目は、「将来的に成長を遂げた企業の株価」と「現在の株価」を比較する方法です。将来的に大きな成長を遂げる見込みのある企業であれば、現在の株価は「将来期待できる株価」よりも安いことが分かり、つまり割安と言えます。このような銘柄であれば、値上がり益が期待できるでしょう。
常に最新情報をチェックして、これから人気が出そうな商品・サービスを提供している企業や、新規参入する企業に注目しておくことが重要です。
2つ目は、「割安株(バリュー株)を狙う」方法です。割安株とは、本来の株価よりも安値で推移している株式を指します。相場よりも株価が割安になっているため、購入後に株価が上昇して、値上がり益を得られる可能性があります。
興味のある株式の相場を確認し、割安なのか割高なのか見ておきましょう。
【関連記事】 チャートの見方・読み方をやさしく解説!株価チャートから株の買い時を探る方法とは? |
配当金を重視する場合
銘柄選びには、少しずつ利益が発生する配当金(インカムゲイン)を重視する方法もあります。配当金とは、出資比率に応じて株主に分配される金銭を指します。企業が生み出した利益の一部を、一般的に前期・後期と分けた年2回、または年1回年末決算後のタイミングで配当金として還元されます。
ただし、この配当金の金額や還元される回数は、企業の業績によって異なります。企業の財務状況が好調であればより多くの配当金を得られますが、悪ければ配当金が少ない、もしくはまったくないということもあり得ます。
配当金を重視する場合には、配当利回り・配当性向をチェックしておくことが重要です。それぞれの算出方法と概要は以下のとおりです。
▼配当利回り(%)
趣味・嗜好 | 銘柄 |
算出方法 | 1株に対する1年間の合計配当金額 ÷ 1株に対する購入金額 ✖️ 100 |
概要 | 購入した株に対して1年間でどれほどの配当金を得たかを示す指標 |
▼配当性向(%)
算出方法 | 1株に対する配当金額 ÷ 1株に対するその期の純利益 ✖️ 100 |
概要 | その期の税を差し引いた後の利益(純利益)から、どれほどの配当金を株主に還元しているかを示す指標 |
株主の立場からすると、配当利回りや配当性向が高いほどその企業に魅力を感じてしまいがちです。
しかし、その数値の高さだけで判断することは非常に危険です。株価が暴落してしまうと、予定していた配当金を得られないリスクがあります。
また、配当利回りや配当性向が低い銘柄であっても、新規事業や事業展開によって将来的に株価が上昇し、得られる配当金が大きくなることも期待できます。配当利回りや配当性向のみで判断することなく、将来的な成長や企業の業績を踏まえた視点から判断することが重要です。
株主優待を重視する場合
株式による金銭の利益ではなく、企業の株主優待を重視する方法もあります。株主優待とは、企業が株主に対して贈る特典です。
例えば、映画配給会社の株主になれば、映画鑑賞チケットを株主優待として贈るといった特典があります。株主に分配される配当金だけでなく、このような株主優待の内容を重視することも、銘柄を選ぶ方法のひとつです。企業がどのような株主優待を提供しているかは、証券会社のWebサイトから確認できます。
ただし、株主優待の内容が魅力的であったとしても、それだけで銘柄を決定してしまうのは避けた方が良いでしょう。株式購入の際は株主優待の内容だけでなく、株主優待を継続できる安定した企業かどうかを加味して判断することが重要です。
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投資期間で選ぶ
株式投資では、投資期間によって銘柄の選び方が変わります。取引の期間や頻度で投資の戦略が変わるため、株式を購入する前には「株式投資期間」を明確にさせておくことが重要です。
ここからは短期投資と長期投資について、それぞれの銘柄の選び方を解説します。
短期投資をする場合
短期投資では、短期間で株を売買して、値上がり益の獲得を狙います。
いわゆる「デイトレーダー」と呼ばれる1日で売買を完結する人たちは、この短期投資家タイプに含まれます。また、数日から数週間で値上がり益を目指す投資家は「スイングトレーダー」と呼ばれます。
どちらの投資であっても、短期投資の銘柄を選ぶ際は「テクニカル分析」の実施が有効です。テクニカル分析とは、過去の値動きをもとに株価の相場を予測する分析手法です。売買に適切なタイミングを見極めるために実施します。
長期投資をする場合
長期投資は、長期にわたって株を保有して、継続的かつ安定した収益を得る投資方法です。短期投資に比べて資産を増加させるまでの時間を要しますが、コツコツと着実に収益を増やしたい方に向いています。ただし、株を保有している期間に株価が下落すると、元本割れのリスクもあり、銘柄を選ぶ際は注意が必要です。
長期投資の場合には「ファンダメンタルズ分析」の結果から銘柄を選ぶことをおすすめします。ファンダメンタル分析とは、企業の財務状況や業績などを基に、株式の本質的な価値を分析する手法です。
分析に使用される主な指標には、以下が挙げられます。
▼ファンダメンタルズ分析に使用する主な指標 ・PER(株価収益率)PER=株価÷一株当たり純利益 ・PBR(株価純資産倍率)PBR=株価÷一株当たり純資産 ・ROE(自己資本利益率)ROE=当期純利益÷自己資本×100 |
ファンダメンタル分析によって株の本質的な価値を見極めることで、将来的な株価や為替の値動きを予測できるようになります。「どの株を購入するか」を判断したい場合に適しています。
情報の集め方
株式投資の銘柄を選ぶときには、企業の業績をはじめとする株式情報を収集しなければなりません。情報収集の際によく利用されている代表的なツールには、テクニカル分析が可能なチャート・会社四季報・適時開示・証券会社のレポートなどが挙げられます。売買のタイミングや企業の将来性、配当性向といった情報を、それぞれの手段を活用して集めましょう。
チャートを使う
短期投資を目指す方には、チャートを使ったテクニカル分析が有効です。テクニカル分析には、株価チャートと呼ばれる1日・1週間・1か月単位で株価の変動を示したグラフを活用します。チャートから過去の値動きを読み取り、それをもとに株に対する現在の需要・供給バランスを把握することで、将来的な株価を予想できます。
四季報を使う
東洋経済新報社から出版されている「会社四季報」は、長期投資を目指す方の情報収集ツールとしておすすめです。上場しているすべての企業情報がまとめられているだけではなく、東洋経済新報社の記者独自の目線による株式分析も掲載されています。四季報でとくに注目すべき項目は、以下のとおりです。
▼四季報で注目すべき項目 ・EPS(1株当たり純利益)の経年変動 ・株主構成 ・四季報による予想 ・営業増益率ランキング |
EPSの経年変動や株主の構成といった情報を把握することで、今後の業績予想がしやすくなります。また、株価を左右するとも言われている四季報予想とランキングをチェックすれば、値上がり益が期待できる銘柄を見極めやすくなります。
適時開示を見る
適時開示とは、証券取引所の規定に基づき、上場企業が株主に対して開示している情報です。証券取引所のWebサイト内にある「適時開示」に関するページや、適時開示情報閲覧サービスの『TDnet』というWebサイトから閲覧できます。
適時開示を確認すれば、期末後の上場企業決算情報をすばやく入手できるようになります。いち早く情報を得ることで、市場への影響が出る前に有望な株を購入できるチャンスを得やすくなります。
証券会社のリポート
多くの証券会社では「アナリストレポート」と呼ばれる企業の調査・分析結果を提供しています。証券会社によりレポートの提供方法は異なりますが、以下の3種類が一般的です。
・証券アナリストによるコラム・レポート ・口座開設者には無料で提供している情報コンテンツ ・投資家へのセミナー |
近年では、アプリを介して企業情報を閲覧できるサービスを提供している証券会社もあります。証券会社を選ぶ際には、このようなアナリストレポートが充実しているかどうかを確認しておくとよいでしょう。
【もっと詳しい記事を見る】 株取引で情報収集は必要?上達するためには何を見ればいい?オンラインの情報源も紹介! |
まとめ
今回は銘柄選定のポイントを解説しました。株式投資が初心者の方にとって、膨大な上場企業のなかから自身に適した株式銘柄を探し出すことは困難に思われるかもしれません。
銘柄を選定する際は、まずは自身にとって身近に感じる企業についてよくリサーチしてみましょう。将来的に発展する可能性を感じれば、その企業の株を購入することから始めてみるのもひとつの手です。
また、株式情報の収集や企業分析を実施すれば、より利益が見込める銘柄を絞りやすくなります。値上がり益や配当金、株主優待など、どのような条件を重視するかによって選び方が変わってくるため、取引を行う際には自身の投資目的や投資期間、余裕資金に応じてよく検討することが重要です。
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