四季報とは
四季報とは、特定の分野において、新しい情報や資料などのデータをまとめた出版物です。四季報はその名の通り、四半期に1度(1年に4回)のペースで刊行されます。
四季報の種類
四季報には、大きく分けて「会社四季報」と「就職四季報」があります。この2つの違いを確認した上で、今回の記事では会社四季報について解説します。
【会社四季報】
会社四季報は東洋経済新報社出版が刊行している雑誌です。会社四季報は株式投資をするための銘柄研究に多く用いられ、株価チャートや業績データ、業績に関連するニュース、企業の株主などの情報が得られます。会社四季報は1936年に創刊して以来、企業の情報収集雑誌として、投資家だけでなくライバル会社の調査などにも活用されています。
【就職四季報】
就職四季報は東洋経済新報社出版が刊行している雑誌です。主に就活生向けの内容で、企業のさまざまな情報が網羅されています。就職活動に直接関係する、採用人数や採用試験における情報のほか、給与形態や平均年収、離職率まで掲載されています。
会社四季報の読み方や見方が分かると、勢いのある企業や業界を知り、資産や時価総額、配当といった会社の財務情報を把握できるようになります。四季報で様々な情報を学ぶことで、投資家は株式投資でどの銘柄を選べばいいか分かるようになります。
また、四季報は日本の上場企業だけでなく、海外の企業を対象としたものもあります。例えば、「米国会社四季報」では米国企業の株価や業績などの情報が掲載されています。
会社四季報の特徴
会社四季報は全ての上場銘柄についての情報が掲載されています。そのため、アナリストがチェックしていない銘柄も網羅しています。発売時期は四半期に1度で、春号・夏号・秋号・新春号の計4号です。また、会社四季報は紙版とオンライン版があります。
発売時期
【春号】3月中旬に発売されます。今期の業績と来期の業績予想が注目ポイントです。
【夏号】6月中旬に発売されます。3月決算の情報を掲載し、今期の業績予想が注目ポイントです。そのため、投資家がとくに注目する号でしょう。
【秋号】9月中旬に発売されます。4~7月にかけての業績推移から、9月における中間決算への見通しが注目ポイントです。
【新春号】12月中旬に発売されます。9月の中間決算情報を掲載し、今期本決算の見通しや来期予想が注目ポイントです。
最新版では会社四季報夏号が2022年6月17日に発売されました。
紙版とオンライン版
【紙版】最大のメリットは、1度に多くの会社を網羅できることです。1ページにつき2社掲載されているため、見開きで4社もの情報を確認できます。定価は2,300円(税込)です。1年間に刊行される4冊全ての会社四季報を購入しても、年間9,200円です。
【オンライン版】最大のメリットは、紙版に載る情報が先行で配信されることです。また、週に1度、情報を更新しているため、紙版よりも常に新しい情報が入ります。月額1,100円(税込)で、毎月購入すると年間13,200円(税込)です。
株式投資で会社四季報の読み方と活用方法
そもそも東証プライム、スタンダード、グロースへ上場している企業はおよそ4000社もありますから、どの銘柄へ投資するか決めるのは簡単ではありません。そのうえ会社の業績を詳しく見ようと思うと、その都度それぞれの企業ページや有価証券報告書などを参照する必要があり、慣れていない方からすると少々難しく面倒かもしれません。そこで活躍するのが四季報です。
会社四季報には、株式投資に必要な情報が網羅されています。読み方としては、情報が詰め込まれているため少し読みにくいですが、社名や業績、株価の変動など知りたい情報は項目でエリア分けされているため、簡単に情報の参照ができます。次の8項目に分けて説明します。
①会社概要 ②業績評価 ③株主・役員情報 ④財務情報 ⑤資本・比較会社情報 ⑥業績情報 ⑦配当情報 ⑧株価情報 |
①会社概要の見方
上図の緑枠線が「会社概要」掲載エリアです。企業名や証券コード、決済データ、会社の所在地や取引先情報など、企業の基本的な情報が掲載されています。最も重要なチェック項目は「連結事業」部分です。直近の決算データ「部門別の売上高の構成比率」を確認できます。
連結事業
グループ会社や子会社を含む全社で「どの事業」が「全体売上のどれだけを占めるか」を表します。ソニーの場合では、G&NS(ネットワーク・ゲーム)分野が22%を占め、音楽分野が9%を占めています。
連結事業の見方が分かると、その会社はどの事業で売上を出しているか分かるようになります。
特色
企業の特徴を簡潔に掲載しています。事業分野や沿革などが簡単に書かれており、どのような会社なのかを把握するときに役立ちます。
こうした基本的な情報は思いのほか調べるのが難しく、有価証券報告書などには記載されていますが、多くの場合複雑で読みづらいでしょう。四季報ならこのように最低限必要となる情報を簡単に眺めることができます。
②業績評価の見方
上図の緑枠線が「業績評価」掲載エリアです。会社四季報の担当者が今期や来期の業績予想を出し、評価したコメントが掲載されています。株式投資にかかわる指標として重要であるため、必ず目を通しましょう。
四季報を刊行している東洋経済新報社はビジネス書や経済誌を専門としている著名な出版社ですから、こうした業績評価にも信頼がおけます。このような専門家のコメントを簡単に読むことができるのも、四季報の魅力の1つでしょう。
業績・材料記事
今期業績の見通しや、中長期的な戦略、新商品発売の情報などが掲載されています。
前号比矢印
上図の枠外右が掲載エリアです。前号で予想した営業利益と、今号で予想する営業利益の振れ幅を矢印で表しています。「↑:予想よりも利益が増額」「↓:予想よりも減額」「→:前号と同じくらい」を意味します。
会社比マーク
上図の枠外右が掲載エリアです。「会社四季報が予想した営業利益」と「企業が予想した営業利益」の乖離率を示します。また、会社比マークにおいて、会社四季報の予想が企業予想よりも強気な場合は笑顔で表し、弱気な場合は泣顔で表します。
③株主・役員情報の見方
上図の緑枠線が「株主・役員情報」掲載エリアです。株式の保有人数や上位保有者、企業の役員情報などが掲載されています。株主の構成によって、会社経営は変わるため、銘柄選びの際は株主の項目も最重要チェック項目です。
株主
企業の株を持っている人数と、株式保有数の多い上位10名がわかります。ソニーの例では「【株主】(単)454,632名<18.3>」と表記されています。これは、ソニーの株式を2018年3月時点で454,632名の方が保有しているという意味です。
役員
役員の名前が掲載されています。役員の意思決定によって、経営方針や業務が変わります。銘柄を選ぶ際にそこまで気にする必要はありませんが、念のため確認しておいた方がよいでしょう。
④財務情報の見方
上図の緑枠線が「財務情報」掲載エリアです。財務情報は、企業の経営状況を知り、安定性を確認するための重要なポイントです。企業の資産・負債・純資産といった情報が簡単にまとまっています。ここでは、財務情報を読み取る鍵となる、財務・指標・キャッシュフローについて確認します。
財務
企業の「総資産・自己資本・自己資本比率・資本金・利益剰余金・有利子負債」が記されています。この中でも特に注意したい指標は「自己資本比率」です。
自己資本比率
企業の総資産に対して、返済しなくていい資金(自己資本)がどれだけあるかを示す比率です。自己資本比率が高ければ、企業が自由に使える資金が多いと分かるでしょう。つまり、安定した経営のもと成り立っていることが読み取ることができます。一般的に、自己資本比率が40%以上の企業は倒産のリスクが少ない傾向にあります。
指標
投資した株式に対する利益の確認と、今後の株価動向を見極めるための項目です。ROEとROAの数字が掲載されており、いずれも銘柄を選ぶにあたり重要な指標です。
ここでは指標の中でも特に重要なROEとROAの意味について解説します。
ROE
ROEとは自己資本利益率のことを指し、株主資本利益率とも呼びます。投資する株に対し「どれだけの利益をどれだけ効率的に出せるか」を表しています。つまり、株主にとっては、収益を予測する重要な指標です。具体的にいうと、ROEが高ければ「自己資本を効率的に運用して、確実に利益を生み出していること」を意味します。なお、ROEの算出方法は以下の計算式を用います。
ROE(%)=純利益÷自己資本×100 |
日本企業の場合、8%を超えると良いとされていますが、欧米企業と比べると低い傾向にあります。加えて、負債を多く借り入れている企業の場合、分母の自己資本の部分が小さくなりますから、ROEが高く出ることがあります。ROEは高い方がいいとはいえ、財務の安全性など詳細まで分析し、鵜呑みにしないことが重要です。いずれにせよ、株価に影響を与える指標であることには変わりないので、きちんと注目しておきましょう。
ROA
総資産利益率のことです。「会社の総資産を使い、どれだけの利益がでたか」を表します。そのため、総資産に対する収益性や効率性を算出する指標としても使われます。つまり、ROAの数値が高ければ「少ない資本で、大きな利益を上げる」ことに成功しているでしょう。なお、ROAの算出方法は以下の計算式を用います。
ROA(%)=当期純利益÷総資産×100 |
キャッシュフロー
企業の一定期間における、お金の支出・収入の増減額が記されています。その内容は「営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフロー・現金同等物」という4つ項目です。それぞれの項目で、営業や投資、資金調達による収支の増減を測ります。会社のお金の流れとバランスを確認することができるため、銘柄選定に役立つでしょう。また、キャッシュフローにおいて、各項目の数値によってマイナスがよいか、プラスがよいかは異なります。なお、キャッシュフローは通常「CF」と略されます。
営業CF
企業の営業活動により生じる、お金の増減です。お金が入る、すなわち数値がプラスになるため、この数値はプラスである方がよいでしょう。
投資CF
設備投資やグループ会社への投資によって生じる、お金の増減です。一般的に、優良企業はマイナスになることが多い傾向にあります。
財務CF
企業の資金調達や、借入返済などの財務活動で生じるお金の増減です。一般的に、資金の返済をすると財務CFの数値はマイナスになります。そのため、優良企業はマイナスになることが多い傾向にあります。
現金同等物
営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローの動きの結果、手元に残ったお金のことです。また、定期預金のように3か月以内で現金化できる資産も含まれます。
⑤資本・比較会社情報の見方
上図の緑枠線が「資本・比較会社情報」掲載エリアです。株式数が変わるタイミングや理由を記しており、会社の経済事情や思惑を予測できます。
資本移動
企業の資本金の増減や、株式分割などの理由で変わる株式数を表します。ソニーの図では「【資本移動】17.7・現物出資・126,436」とあります。これは「2017年7月に、金銭以外の財産を株主に配布し、その合計株数は126,436」という意味です。
業種・比較会社
業界における企業の立ち位置や、ライバル企業を見ることができます。
⑥配当情報の見方
上図の緑枠線が「配当情報」掲載エリアです。配当金や予想配当利回りが掲載されています。配当金についての情報が書かれており、株式投資家にとっては、自分の収入に関わる情報です。具体的には、過去に支給された配当金、今期の配当金、今期以降の予想配当金に関する情報と、予想配当利回り、1株あたりの純資産に関する情報が書かれています。
以下、配当情報の見方です。
【配当】の下の数字は、配当金が支払われた年月を表します。
【配当金】は、1株あたりの配当金を表します。
ソニーの例では、2016年3月に1株あたり10円、9月にも10円の配当金が支払われています。つまり、1年に2回配当金があったということがわかります。また、配当年月の隣に「予」と記されているものは、会社四季報がソニーにおけるこれまでの業績から予想する配当金です。
⑦業績情報の見方
上図の緑枠線が「業績情報」掲載エリアです。これまでの業績と、これからの業績予想が掲載されています。企業の過去の財務状況や、どのように推移してきたかを読み取ることができます。「売上高・営業利益・税前利益・純利益・1株益・1株配」の6項目に分かれており、この中でも投資家がチェックすべき項目は、1株益と1株配です。
【1株益】1株あたりの純利益です。純利益とは、経常利益から特別利益・特別損失などの税金を差し引いた後の利益を指します。
【1株配】1株あたりの配当金額です。上図ソニーの場合、16年3月の20円から、18年3月には27.5円に上がっています。このように見て、投資家の収入にかかわる配当金増減を確認します。
このような配当に関する情報は株価に影響を与えることが多いので、この確認も欠かさないようにしましょう。
⑧株価情報の見方
上図の緑枠線が「株価情報」掲載エリアです。チャートの読み方が分かると今後の銘柄選びの参考になります。ここでは株価チャートの見方や、株価指標で重要なポイントを説明します。
株価チャート
過去における株価の変動をグラフに表したもので、株価、出来高、信用残が載っています。過去の株価の動きから、トレンドの方向やパターンを見て、今後の株価を予想します。そのため、株価チャートを見れば、株売買のタイミングを見計らうことができるでしょう。
株価
株価の推移は、ローソクのような形の印を並べて表します。その内容を理解するためには「ローソク足」を覚える必要があります。ローソク足とは、株価の始値・高値・安値・終値の値段を表す記号です。ローソクの向きや大きさ、色によって意味が変わります。
出来高
株式の売買が成立した数です。また、チャート下部分に棒グラフで表記されます。グラフが長ければ長いほど、取引が活発であることを表します。ソニーの会社四季報を見ると、2012〜2013年にかけて急激に出来高が多くなっていることを読み取ることができるでしょう。
信用残
信用取引残高のことです。株価チャートの下部分に記されています。通常、信用取引は、株式の売買のあと6か月以内に決済しなければなりません。このとき、決済期間内で未決算の取引残高がある場合を信用残といいます。さらに信用銭は、買い残と売り残に分けられます。買い残が多ければ、株価の下落につながり、売り残が多ければ株価の上昇につながるでしょう。
株価指標
株価が割安かどうか、妥当かどうかがわかります。株価チャート欄の右側に記されています。株価指標では「予想PER・実績PER・PBR・株価・最低購入金額」の項目があり、特に大事な指標は「予想PER・実績PER・PBR」の3つです。
そもそもPERとは、株価収益率とも呼ばれ「企業が稼ぐ1株に対する利益が、現在の株価の何倍か」を表すものです。
【予想PER】予想した来期の利益で計算したPERです。
【実績PER】直近3期の平均利益で計算するPERです。
【PBR】株価純資産倍率のことを指し「1株に対して純資産の何倍の値付けか」を表すものです。
どの指標も、数値が高いと株価は割高とされ、低いと割安と判断されます。
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まとめ
会社四季報は、投資家にとって企業を知るために活用すべき書籍です。会社概要から業績評価、配当情報、株価の動きまで、知りたい情報を網羅できます。はじめのうちは専門用語を覚えることに苦労しますが、各情報は決まったスペースに掲載されており分かりやすい作りであり、本文で紹介した読み方を覚えていれば簡単に読めちゃいます。会社四季報の読み方をマスターして、株式投資に活用しましょう。
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