投資信託の収益性を考えるときは、利回りという指標をしばしば参照します。投資信託における利回りは総合損益を価格で割り算したものです。利回りが高ければ収益性が高いことを意味しますが、一方で利回りが高い投資信託はリスクも高い傾向にあるので注意しましょう。自分の運用目標を立てた上で、その目標に見合う適切な利回り水準の投資信託を選ぶことが大切です。
投資信託における利回りとは?
利回りは投資信託をはじめ資産運用における収益性を分析するための指標です。すなわち利回りが高いということは、一般に高い収益率が期待できるということになります。まずは投資信託における利回りの意味合いや、計算方法などについてみていきましょう。
投資信託の利回りは総合収益から計算する
一般的な利回りとは、収入を価格で割った数値を指します。この数字が高ければ、投資元本に対して多くの収入が得られることを意味するため、その投資は収益性が高いということを意味するのです。
利回りは金融資産や投資先によって計算方法が異なります。投資信託の場合、単純に「利回り」といった場合は、分配金による収入と価格変動に伴う損益を合計した総合損益を期初の投資信託の価格で割り算して求めるのが一般的です。ちなみに、投資信託の価格推移からは運用期間中の信託報酬などのコストが控除されているので、必然的に運用期間中のコスト控除後の利回りが算出されます。
尚、あえて「分配金利回り」という場合には、価格損益を加味せず、分配金収入を価格で割り算した利回りです。分配金収入を基準に投資先を考えるときには分配金利回りが重視されることもありますが、この記事では総合損益から算出した利回りを軸に紹介していきます。
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利回りの計算方法
投資信託の利回りは次の式で算出できます。
利回り=(分配金収入+価格損益)÷(当初の価格)
価格は通常の投資信託の場合は基準価額(外国籍投資信託の場合は1口当たり純資産価格)を意味します。利回りは任意の期間で計算可能です。例えば、投資開始時点から直近までの利回りであれば、価格分配金は次の数値を使用します。
- 分配金収入:投資開始時点から直近までの合計
- 当初の価格:投資開始時の価格
- 価格損益:直近と投資開始時の価格差
また、1年・3年など一定期間の利回りを見ることもしばしばあります。例えば1年の場合は次のような数値を使用して計算してください。
- 分配金収入:1年間の分配金収入の合計
- 当初の価格:計算開始日の価格
- 価格損益:計算する期間の最終営業日と計算開始日の価格差
実際に利回りを確認してみる
例えば、ある1年間の投資信託の成績が次のとおりだったとします。
- 投資開始時点の価格:10,000円
- 分配金収入:400円
- 投資終了時点の価格:9,900円
この時、当該期間の価格の変動は100円となります。従って、この時の利回りは次のとおりです。
利回り=(400-100)÷ 10,000 = 300÷10,000=3%
尚、この例のように価格が下落していても利回りがプラスになることもあります。これはすなわち、価格が下落しても、分配金を加味すると収益がプラスになる可能性があることを意味しています。
利回り・騰落率・パフォーマンスの違いは?
利回りと同じように、投資信託をはじめとした資産運用の収益性を図る指標として、騰落率やパフォーマンスというものもあります。利回りと騰落率、パフォーマンスの違いをおさえて、うまく投資判断に活かすことが大切です。
騰落率と利回りの違い
騰落率とは、一定期間における投資信託の価格の上昇・下落率を意味します。利回りは分配金を含めて計算しますが、騰落率は通常は分配金の収益を加味しないため、利回りより騰落率の方が低くなるケースが多いです。
ただし、投資信託によっては分配金を再投資したものとして再計算された「分配金込み基準価額」のデータを公表している場合があります。この価格を使用した場合の騰落率は、利回りと同じ意味合いになります。また、投資信託によっては分配金がない商品もありますが、その場合は分配金収入がゼロなので、やはり騰落率と利回りは同じ水準です。
騰落率については参照している価格や分配金有無によって利回りと異なる場合、実質的に同じ場合があるので注意しましょう。
パフォーマンスと利回りの違い
パフォーマンスとは、投資信託をはじめとした資産運用一般における投資の成績を意味する言葉です。しかし、投資信託においては特に投資信託の運用の基準となるベンチマークとの差異を評価するときに使用します。
例えば日本株を運用するアクティブファンドで、日経平均をベンチマークとしている場合に、日経平均を上回れば「パフォーマンスが良い」、その逆は「悪い」と評価します。例えば、日経平均が下落していて、投資信託の下落幅が日経平均より小さければ「利回りがマイナスだがパフォーマンスが良い」というケースも考えられるのです。
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投資信託における平均利回りは?
投資信託の平均利回りは市場環境によって変わってきますが、通常ハイリスクな商品ほど利回りが高くなる傾向にあります。ここでは2022年11月時点の3〜5年程度の利回りをもとに平均的な利回りを紹介していきますが、市場環境が変われば全体の利回りも傾向も上下しうることはおさえておきましょう。
投資信託の平均利回りは
3〜5年運用した場合の1年あたりの平均利回りは、3〜10%程度というのが一つの目安となります。ただし、投資する資産によっても違いがあり、代表的な投資地域・資産の平均的な利回りは次のとおりです。
- 海外株式:7%前後
- 国内株式:5%前後
- 海外債券:3%前後
- 国内債券:1%前後
ただし、実際の利回りは相場環境や個別の銘柄によって大きく異なる点に注意が必要です。例えば、極端に利回りの高い例で言うと、2022年11月15日時点では、3年間運用した場合の1年平均リターンは30%を超える銘柄もあれば、逆に-30%以下と大幅下落している銘柄もあります。
また、市場環境によっても変化するもので、リーマン・ショックなどの市場環境の悪化時には多くの銘柄の利回りが低下し、逆に市場回復時には利回りが高止まりする傾向にあります。平均利回りはあくまで目安として、市場環境や個別銘柄の状況を確認しながら投資先を決めることが大切です。
利回りが高い=良い投資信託ではない
利回りが高いと言うことは高い収益性が期待できることから「利回りが高い=良い投資信託」と考えてしまう人も少なくありません。
しかし、利回りが高い銘柄は、リスクも高いハイリスク・ハイリターンな商品である傾向にあります。そのため、市場悪化局面では他の投資信託よりも大きな価格下落を引き起こす恐れがあるのです。利回りの高さだけをみて安易に投資先を選ぶのではなく、自分のリスク許容度にあった商品を選ぶ必要があります。
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利回りを考える上での注意点
利回りはあくまで過去の結果であり、将来の収益性の高さを保証するものではない点に注意が必要です。あらかじめ運用の目標を決めたうえで、適した利回り水準の銘柄へ投資するのが良いでしょう。一方で、運用規模が小さい銘柄は、繰り上げ償還のリスクもあるので、長期にわたって運用が継続すると期待できる銘柄を選ぶことも大切です。
利回りは過去の結果であることをおさえておく
将来の利回りは目標や予測でしか出すことができないため、そのとき確認できる利回りは基本的に過去の結果です。市場環境が変われば投資信託の利回りも変わるため、過去の利回りと同等の成果が将来も出る保証はどこにもありません。特に市場環境が大きく変わる局面では、過去の利回りが参考にならないリスクもあります。過去の成果だけでなく、今後の市場環境の見通しも持ちながら、適切な商品へ投資することが大切です。
数値目標を決めて投資信託を行う
利回りが高ければ、リスクも高い傾向にあるため、適切なリスク・利回り水準の投資信託をうまく見つけ出さなければなりません。そのためには、まず運用期間と収益目標を決めて、そこから年何%程度の利回りがあれば目標を達成できるか計算してみましょう。その後に、目標利回りと同程度の銘柄を購入すれば、自分に適したリスクと利回り特性を持つ投資信託を購入しやすくなります。
騰落率やパフォーマンスも確認する
騰落率に着目すれば、一時の価格変動に惑わされずに済みます。利回りの源泉の多くが分配金となっている銘柄は、価格については変動性が大きかったり、下落しがちだったりします。あらかじめ騰落率を見ておけば、価格変動の特性をおさえておけるので、価格変動の大きい局面でも落ち着いて投資を継続できるでしょう。
また、似たような投資信託の中からより優れた銘柄を選ぶうえでは、パフォーマンスに着目すると良いでしょう。ベンチマークを持つ投資信託の場合、損益の大部分はベンチマークとしている市場指数の変動によることも少なくありません。そのため、市場が下落すれば、優れたファンドでも下落がちになるので、単純な利回りの上下では、ファンドの質の高さを適切に比較できないのです。
同じようなベンチマークを持つファンド同士では、パフォーマンスに着目すると良いでしょう。ベンチマークである市場指数と比較して優れた投資信託を見つけ、投資することが可能に。長期にわたって投資を継続すれば、他の投資信託よりも優れた利回りの獲得が期待できます。
繰り上げ償還に気をつける
投資信託が突然運用を終了するのが繰り上げ償還です。過去の利回りがいかに優れていても、繰り上げ償還により投資資金が返済されれば、それ以降の分配金や収益を獲得することはできません。また、投資期間の途中に繰り上げ償還した場合には、改めて再投資先を探す手間も発生します。
このような事態を避けるためには、繰り上げ償還しそうな銘柄を避けることが重要です、繰り上げ償還は運用残高の小さい投資信託で発生しやすいので、運用残高が大きい銘柄を選ぶようにすれば、繰り上げ償還のリスクを減らせます。
まとめ
利回りは資産運用において収益性を表す指標ですが、算出方法は投資先によって異なります。投資信託の場合は、価格から間接的に運用期間中の信託報酬が引かれているため、自動的に運用期間のコスト控除後の収益性を表す指標であることをおさえておきましょう。
今の利回りだけでなく、景気悪化時の状況などをしっかりとみて、自分のリスクにあった適切な商品に投資することが大切です。長期の運用目標を立てたうえで、自分が必要な利回りを試算したうえで、それに見合う商品に投資してください。
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よくある質問
Q | 異なる投資信託の利回りを比較しても良いの? |
A | 投資先が違っても分配金と価格がわかれば、投資信託同士を利回りの高低で比較することは可能です。ただし、比較するときには利回りを算出する期間を揃える必要があります。また、利回りが高い=いい商品ではないので、ほかの指標も見ながら投資する銘柄を選別しましょう。 |
Q | 価格から引かれている運用期間中のコストとは? |
A | 運用期間中のコストのうち最も大きいのは信託報酬で、運用会社や販売会社などにおける投資信託ビジネスの収益源となります。そのほか監査報酬や売買委託手数料なども存在します。いずれも投資信託の運用資産の中から徴収されるため、投資家がお金を払う必要はありませんが、これらコストは利回りの低下要因となります。 |
Q | 利回りはどれくらいの期間でみるのが良いの? |
A | その人の目標を踏まえた投資期間をもとに計算するのがセオリーです。もし投資期間が定まらない場合には、できるだけ長期の利回りを1年あたりに換算して平均利回りを計算した方が、利回りは安定します。 |
Q | どんな投資信託の利回りが高いの? |
A | 個別の投資信託によって利回りおよびリスクの水準はさまざまですが、通常債券よりも株やREITの方が利回り・リスクとも高くなります。また、日本より海外の資産、さらに海外の資産の中でも先進国より新興国の方が利回りやリスクが高い傾向にあります。 |