投資信託で積立投資するならシミュレーションが重要

投稿日:2022/10/31 最終更新日:2023/10/10
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投資家の当初の自己資金額やリスクに対する考え方によって、一括投資と積立投資のどちらが適しているかは異なります。また投資手法だけでなく、適切な投資信託や証券会社を選ぶことも重要です。

この記事では、一括投資と積立投資についてシミュレーションと共に比較した上で、投資を行う上でのポイントや注意点をまとめています。

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この記事の監修者

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菅原良介

株式会社Finatext

証券アナリスト

Finatext サービスディレクター・アナリスト。日本テクニカル協会認定テクニカルアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科卒業。Finatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当する傍ら、アナリストとしても活動。グループで展開するコミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターなども務め、国内メディアへの寄稿も行う。

一括投資と積立投資どっちから始めるべき?

一括投資は、一回のタイミングで保有している資金をまとめて投資に回す方法です。相場上昇が期待できる局面で大きな金額で一括投資を行うことで、大きな収益を獲得するチャンスがあります。

一方で、予想が外れて相場が下落したときには損失が大きくなるリスクもあるのです。すでにまとまった投資金額があり、かつ資産に余裕があるためリスクを取って運用しても問題ないという人に向いている手法といえるでしょう。

積立投資は、毎月一定額を継続的に投資に回す手法です。積立投資では「ドル・コスト平均法」というメカニズムが働きます。これは、定額購入をすると価格高騰時には口数(もしくは株数)を少なく、価格下落時には多く買うことができるので、平均的な購入価格を下げ、損益を安定させやすくなるメカニズムです。

また、当初は少額から始められるため、自己資金が少なくても投資にチャレンジできます。一方で、一気に大きな金額の収益をあげるのは困難です。初期投資額が少なく、リスクを抑えて着実に資産を増やしていきたいという人に向いています。

最後に、投資にかかるコストについて解説します。売買や運用期間中の手数料は株式・投資信託など投資商品によっても異なるため一概にはどちらが優位とは言えません。ただし、制度上の特性から、実質的に積立投資にのみ活用できる「つみたてNISA」や「iDeCo」により節税メリットが得られることまで加味すると、積立投資の方がお得に投資しやすいといえるでしょう。

【関連記事】:投資信託とは?初心者でもわかる基本と仕組みについて解説

投資信託(一括投資)の場合のシミュレーション

一括投資を投資信託で行う場合についてシミュレーションを行いました。一括投資では初期費用が大きい一方で、当初から大きな金額を運用に回せる分、投資がうまく行けば収益額も大きくなります。

一括投資でかかる初期費用

一括投資は、まとまった金額で一気に投資を行う手法なので、初期費用が高くなります。シミュレーションでは4パターンの初期投資額で計算していますが、これらの自己資金がなければ、そもそも一括投資に取り組むことはできません。

一括で投資をするケース

一括投資を投資信託で行う場合のシミュレーションを以下の条件で計算しました。

  • 運用期間:10年
  • 利回り:3%
  • 初期投資額:100万円、300万円、500万円、1,000万円の4パターン

それぞれの運用成果と最終的な資産額は次のとおりです。

なお、運用期間中に発生した収益は同じ投資信託に再投資するものとし、また、運用中に発生する手数料・税金の影響は無視しています。このように、投資元本が大きいほど期待できる収益額が大きくなるのです。

上記のシミュレーションでは利回りを一定としていますが、現実には利回りは常に変化し、マイナスとなるリスクもあります。相場が下落する局面では、損失額が拡大するリスクがある点もおさえておきましょう。  

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投資信託(積立投資)の場合のシミュレーション 

続いては積立投資で投資信託に投資する場合のシミュレーションです。当初は少額で投資するため、初期費用は低く済み、またリスクが抑えられます。一方で、期待できる収益額が小さくなることも忘れてはいけません。

積立でかかる初期費用

積立投資は毎月の投資額をあらかじめ設定して投資を行ないます。投資信託であれば、1回あたりの投資金額は高くても1万円程度から始められるため、一括投資と比較すると初期費用は少額で済むのが特徴です。

積立で投資をするケース

積立投資を投資信託で行う場合のシミュレーションを以下の条件で計算しました。

積立期間:10年
利回り:3%
積立額:8,300円、25,000円、41,700円、83,300円の4パターン(それぞれ最終的な積立総額が100万円、300万円、500万円、1,000万円に近い額になるように設定)

それぞれの運用成果と最終的な資産額は次のとおりです。

こちらも、運用期間中に発生した収益は同じ投資信託に再投資するものとし、また、運用中に発生する手数料・税金の影響は無視しています。それぞれ最終的な元本と金額が近い一括投資(例えば最終的な元本が99.6万円となる積立8,300円対、一括投資100万円など)と比較すると、運用収益は積立投資の方が小さくなることがわかります。期待できる収益額については、一括投資には及びません。

一方で、実際の相場では利回りがマイナスとなるリスクもあります。そのような相場環境においては、積立投資の方が損失額を抑制可能です。

インデックス投資とアクティブ投資、オススメは?

投資信託にはインデックス投資を行う商品とアクティブ投資を行う商品の2種類があります。インデックス投資は例えば日本株の日経平均や米国株のダウ平均など、特定の市場指数に連動することを目指して投資を行うものです。

どの指数に連動するかは目論見書などに明記されているため、連動する指数の特徴から商品ごとにリスクの高さを推測することができます。また、投資信託を運用する運用会社にとっては、インデックス投資の方が運用の難易度が低いことから、運用期間中に発生する手数料が低い傾向にあるのも特徴です。

一方で、アクティブ投資の商品は、運用会社の能力を活用して、市場指数を上回る成績を目指すか、または「絶対収益型」といい市場変動に関わらず一定の収益を継続的にあげることを目指す金融商品です。各銘柄の運用方針や運用能力の高さによってリスクは異なり、また運用会社にとって運用の難易度が高いがために手数料が高くなる傾向にあるのが特徴です。

アクティブ投資は商品によってリスクが大きく異なり、中にはハイリスクな商品もあります。市場指数に連動しないことから、リスクの高さを見極めるのにも慣れが必要です。そのため、初心者が投資に慣れるまでは、投資の内容がわかりやすく、リスクも見極めやすいインデックス投資を行う投資信託を購入するのが良いでしょう。

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積立によるインデックス投資の効果

初心者においては、積立投資においても比較的リスクが低いインデックス投資を行う投資信託を選択することをお勧めします。ここからはインデックス投資の収益性の指標となる利回りや、積立投資を継続することで享受できる複利効果について紹介します。  

利回りの計算方法

利回りとは、投資した元本から一定期間の間にどのくらい収益を上げられたかを示す指標です。最も単純な利回りの計算方法は次のとおりとなります。

利回り(%)=(収益額)÷(投資元本)×100

投資信託の場合は、保有している間において得られる「分配金」と売買時に発生する価格損益がありますが、収益額を考える場合は双方を合計して収益額を算出しましょう。なお、投資期間が長期に渡るときは、1年あたりの利回りを平均した「年率」もしくは「年利」を参照する場合もあります。

証券会社によっては投資信託の過去の利回りを一覧などで掲載している場合もあります。(「リターン」と表記されている場合もあります)収益性を考える上での参考にしてください。

複利の効果を実感する

複利効果とは、運用の途中で獲得した収益を再投資することで、最終的な収益額を拡大させることができるメカニズムです。また、複利効果を得られるように、収益を順次再投資していく手法を「複利運用」と言います。これに対する運用手法は、収益を再投資しない「単利運用」です。

例えば、元本100万円、1年あたりの利回り5%で運用した場合の運用期間ごとの資産額は次のようになります。 

単利運用より複利運用の方が同じ利回りでも資産規模が大きくなり、かつ運用期間が長いほど、両者の差は大きくなるのです。

なお、日本でインデックス投資を行う投資信託には分配金がない商品が多いですが、こうした商品は、運用会社が自動的に獲得した収益を再投資してくれているので、保有しているだけで複利効果が得られます。分配金が出る投資信託も、分配金を再投資する設定にすれば、やはり複利効果を得ることが可能です。

楽天証券やSBI証券で簡単にシミュレーションできる

楽天証券やSBI証券の場合、無料で簡単に積立投資の成果を積立金額や期間などから計算できるツールを公開しています。こうしたツールを活用して投資計画を立てるのが良いでしょう。

楽天証券の場合。積立金額と積立期間、運用利率(利回り)を入力するだけで計算できます。

参照:楽天証券「積立かんたんシミュレーション」

SBI証券の場合。入力内容は少し多くなりますが、最終的な資産額・利回り・必要な積立期間・積立額など、自分が知りたい情報を柔軟に選べるツールになっています。目標金額などを検討する上でも有効です。

参考:SBI証券「積立シミュレーション」

投資信託をする上での注意点

投資信託では、次の3つの注意点を理解した上で投資を行うことが重要です。証券口座選びや投資におけるリスク、節税が可能な制度などをおさえておきましょう。

自分に合った証券口座を選ぶ

投資信託の投資においては証券口座選びが重要です。売買できる投資信託のラインナップは証券会社によって異なります。そのため、自分が投資したい投資信託を扱う証券会社やラインナップが豊富な証券会社を選ぶと良いでしょう。

また、売買による手数料は投資信託の銘柄・証券会社双方によって差があります。売買手数料が無料の投資信託を多く扱う証券会社を選べば、運用にかかるコストを抑えられるでしょう。

最後に、売買単位にも注目してください。投資信託は本来1万円程度から購入可能な商品でしたが、近年は100円などより少額での売買を受け付ける証券会社も少なくありません。このようにラインナップ、手数料や売買単位などを踏まえて、自分に合った証券会社選びが大切です。

リスクとリターンの関係性について知る

投資信託での運用には、必ず価格変動リスクが伴います。また、リターン(利回り)が高い投資信託ほど、一般に価格変動リスクが高いという特徴もあります。そのため、リターンにのみ着目して投資信託を選んでしまうのはおすすめできません。

この時見ることができるリターンは、あくまで過去の実績や投資信託が目標としている水準です。投資開始後に想定外に相場が下落した場合は、思わぬ損失が発生するリスクもあります。まずは自分が許容できる損失リスクを考えた上で、適切なリスク・リターン特性を持つ投資信託を選んで投資することが大切です。

NISAやiDeCoといった制度を活用する

投資をする上で見落としがちなのが税金です。投資信託をはじめとした有価証券運用における配当や値上がり益に対しては20.315%の税金がかかります。せっかく収益が発生しても、その5分の1以上が税金として引かれてしまうのです。

税金を減らすためにはNISAやiDeCoといった制度を活用するのがよいでしょう。NISAについては一定期間中の運用益が非課税となります。積立投資を行う場合に適した制度設計のつみたてNISAという制度もあります。

またiDeCoは運用益に加えて、投資した元本に対して所得税額控除が適用されます。こちらは60歳以後に受給を開始して、iDeCoに充当した資産が枯渇するまで非課税となるため、NISA以上に節税効果は大きいといえるでしょう。ただし、投じた資金は60歳まで現金化できない点には注意が必要です。NISAやiDeCoの制度をうまく組み合わせて、税負担を減らしながら資産形成を行いましょう。

まとめ

積立投資と一括投資のどちらが適しているかは、投資に回せる自己資金の規模や、損失に対するリスクの許容度によってことなります。自分の状況や投資スタンスを踏まえた上で、、自分に合った投資方法を選択してください。

初心者においては市場指数に連動するインデックス投資を行う投資信託がおすすめです。具体的なラインナップは手数料は証券会社によって異なるので、自分にとって適した証券会社を選ぶのも重要になります。今回の記事で紹介した一括投資・積立投資のシミュレーション結果も参考に、投資信託での投資にぜひチャレンジしてみてください。

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よくある質問

Q

積み立て期間はどうやって決めるの?

A

新築購入や子供の教育資金など、ライフイベントの発生タイミングに合わせるのがよいでしょう。特にライフイベントがない場合は65歳の老後までの期間で考えるのも一案です。

Q

どんなインデックス投資信託を選べばよいの?

A

損失リスクを許容できるならハイリスク・ハイリターンな株式へ投資する商品がおすすめです。安定運用を目指すなら債券の投資信託がよいでしょう。双方を組み合わせてバランスの取れた運用を行うのも一案です。

Q

収益ができたら確定申告が必要?

A

特定口座の源泉徴収ありを選べば、確定申告は不要で、収益に対する税金は自動的に控除されます。またNISAで発生した収益についても確定申告は必要ありません。

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