投信ニューフェース 野村の大証ETF『NYダウ30種』『NASDAQ−100』 - 注目の投信 - 投資信託
投資信託 [ 注目の投信 ]
投信ニューフェース
野村の大証ETF『NYダウ30種』『NASDAQ−100』
——海外株式に直接投資する初の国内籍ETF。組入株式の配当金に対する源泉課税率は現在10%。NASDAQ−100は成長株中心で低配当利回り。NYダウ(円換算)と日経平均は連動性が高いカップリング状態に。
知名度の高い「NYダウ」と「NASDAQ−100」は共に米国を代表する株価指数。先物の売買も活発で、機関投資家のETF活用も見込める。「NASDAQ−100」はコンピュータ関連銘柄の比重が半数を占め、アップル社の組入比率が現在約5分の1。
野村アセットマネジメント(以下、野村AM)が運用する新ETF2本、『NYダウ30種ETF(1546)』<正式名称:「NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信 」>および『NASDAQ−100ETF(1545) 』<正式名称:「NEXT FUNDS NASDAQ−100R連動型上場投信」>が8月16日に大証に上場した。野村AMのETFサイト:http://nextfunds.jp/
“NYダウ”は、米国を代表する大型株30銘柄の平均株価指数で、NY株式市場の上場銘柄を主体に構成されている。指数の算出方法は、日経平均と同じく分割など株価不連続を調整する修正平均株価方式。現在の組入上位にはIBM、3M、シェブロンなどが並ぶ。NASDAQはハイテク企業を主体とした新興企業株を取引するメッカとして知られ、“NASDAQ−100指数”は、金融を除くNASDAQ上場の主要100銘柄で構成する。“NASDAQ−100指数”の計算方法は、組み入れ比率に一定の制限を設けた時価総額加重平均型。指数全体の約半分の比重をコンピュータ関連銘柄が占め(8月3日時点)、組入上位にはアップル社やマイクロソフト、グーグル、アマゾンといった日本でもよく知られた成長企業が並ぶ。中でも、新型情報端末iPadで話題をさらったアップル社の組入比率が約19%(8月3日時点)と2位のマイクロソフト(約4.5%)を大きく引き離しているのが目を引く。
ETFの運用目標として、『NYダウ30種ETF(1546) 』はその基準価額の変動率と“NYダウ”の円換算値の変動率との一致を目指し、同様に『NASDAQ−100ETF(1545) 』は“NASDAQ−100指数”の円換算値の変動率への連動を目指す。
両ETFともに円で売買し、信託報酬は年率0.4725%(税込み)。信用取引による売り・買いが可能。上場日の終値を基にした最低売買価格は『NYダウ30種ETF(1546) 』が9千円程度(売買単位:1口)、『NASDAQ−100ETF(1545) 』が1万6千円程度(売買単位:10口)となる。両ETFともに決算は年1回(8月10日)。
野村アセットマネジメントは“NYダウ”と“NASDAQ−100指数”を新ETFの連動指数として選んだ背景を次のように説明する。「“NYダウ”は米国を代表する株価指数として知名度が高い。NASDAQの場合、“NASDAQ総合指数”の方が日本でなじみがあるかもしれないが、構成銘柄数が3千を越す“NASDAQ総合指数”には時価総額が小さく流動性の低い銘柄も含まれている。指数との乖離を小さくとどめる指数連動という点では時価総額の大きい銘柄で構成する“NASDAQ−100指数”を採用した方が、指数に連動するというETFの特色がより生かせる商品性になると判断した。“NASDAQ総合指数”の先物は存在しないが、“NASDAQ−100指数”は先物が活発に取引されている。この点でも、ETFと先物の間の裁定取引などで機関投資家の利便性が高まる。2008年の金融危機以降、機関投資家の間では投資先が明瞭に把握でき、時価評価の透明性と流動性が高い金融商品への投資ニーズが高まってきたとみている。その点で今回のETFは、一般個人はもちろんのこと、機関投資家の積極的な活用を見込んでいる」(野村AMの田畑邦一・商品企画部シニア・マネージャー)。
国内籍ETFで海外株式に直接投資する運用形態は初めて。組入株式の配当金に対する源泉課税率は日米租税条約が定める制限税率(現在10%)が適用されるが、米国税制法律(FATCA)の関係で将来的に変動の可能性。配当金の源泉課税額は一部、ETFの基準価額に繰り戻しとなるケースも。
野村AMではこれまでに「上証50連動ETF(1309) 」<正式名称:「NEXT FUNDS 上海株式指数・上証50連動型上場投資信託」(税込み信託報酬:年0.9975%)>や、「インド株連動ETF(1678) 」<正式名称:「NEXT FUNDS インド株式指数・S&P CNX Nifty 連動型上場投信」(税込み信託報酬:年0.9975%)>など、新興国株指数に連動するリンク債(仕組み債)に投資する新興国株ETFを投入してきたが、今回のETFが海外株式に直接投資するETFとして同社および国内籍初となる。
米国株に関連した先行ETFとしては、東証上場の「NYダウETF(1679)」<正式名称:「Simple−X NYダウ・ジョーンズ・インデックス上場投信」(税込み信託報酬:実質年0.6075%程度)>(運用はシンプレクス・アセット・マネジメント)や、日興アセットマネジメントが運用する「上場MSCIコクサイ株(1680) 」<正式名称:「上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI) 」>(税込み信託報酬:年0.2625%程度)がある。どちらも運用はFOF(ファンド・オブ・ファンズ)形態を採っている。前者は外国籍(ケイマン籍)ファンドを通じて米国株に投資、後者は株式ではなく株価指数先物を中心に組み入れて運用している。日本人以外、特に米国人がETFを売買した場合の組入株式の配当金に対する税金の扱いに配慮した運用形態で、前者の「NYダウETF(1679)」はケイマンと米国の間で租税条約が結ばれていないため、配当金に対し現在30%の源泉税が徴収される。
野村AMの今回の新ETFは国内籍のETFとして米国株に直接投資するが、この配当課税率に関して、「米国株の配当金に対する源泉税は日米租税条約に基づいて、10%の制限税率が現在適用される」(田畑氏)とのこと。また、これに関連して今年3月に米国では、米国株などで運用する国外の金融商品に米国人が投資した場合の税金の取り扱いに関わる法律(FATCA:Foreign Account Tax Compliance Act)が成立している。「この法律が実際に施行となるのは2013年から。その時点での法律の内容・運用次第では現地源泉課税率が上がる可能性はある。ただ、どのような金融商品が該当し、日本籍のETFが対象となるのかどうかなど、法律の適用範囲の細目が決定していないので影響について現時点では不確定だ。この法律以外の条約改定などによっても、将来、現地源泉税率が変更となる場合もある。当社としては、日本から米国株への投資に及ぶ影響が大きいという投資信託全般の見地から、課税率のアップにつながらないよう関係者のみなさんに働きかけていきたい」(田畑氏)。
さらに、海外株式の配当金に対して現地で源泉徴収された税額について、非上場の国内公募株式投信でこれを取り戻すことは今年より原則できなくなったが、両ETFでは一部がファンドに戻ってくる場合がある。「ETFでは分配金の受け取り方法が上場株式と同じであり、証券会社の特定口座で受け取る方法と、証券代行会社(ETFでは信託銀行(受託銀行))からの振り込み等の方法が選択できる。今回のETFも信託銀行から直接受益者に払い込まれる分配金に関しては、原資となる配当金にかかる現地源泉税額を、日本の国税額(分配金に対して現在7%)を上限にファンドに繰り戻すことが制度上可能」(田畑氏)。ただしこの払い戻し手続きはETFの決算分配後になり、信託銀行からの分配金受け取りを選択している個々のETF保有者に直接払い戻されるのではなく、その金額相当分がファンドの基準価額に上乗せとなり、次回のETF決算時での全保有者に対する分配原資に回る仕組みのようだ。
“NYダウ”の予想配当利回りは7月末時点で2.6%程度なのに対し、“NASDAQ−100”の予想配当利回りは0.7%程度、ETFでは、配当金から信託報酬を主とする運用費用を差し引いた額を全額分配する。このため、現状水準の配当利回りが続く限り、『NASDAQ−100ETF(1545)』の分配金は少額にとどまる公算が高く、配当金の源泉税率の大小の影響も小さい。「NASDAQには若い成長企業が集まり、成長企業の多くは利益を配当に回すよりは研究開発や設備、買収資金などの投資に振り向ける傾向が強い」(田畑氏)。『NYダウ30種ETF(1546)』には配当利回りの高さから分配金に注目する側面もありそうだが、『NASDAQ−100ETF(1545)』の方はあくまでキャピタルゲインに期待するETFと捉えるのが自然とみられる。
ETFの設定・解約は現金で行い、株式をその都度売買。売買コストをまかなうために、信託財産留保額を徴収。この信託財産留保額は一般投資家がETFを取引所で売買する際には無関係なコストだが、通常は基準価額のプラス要因になる。
運用面での特色として、両ETFの設定・解約は株式の現物をじかに拠出・交換するのではなく、現金で設定・解約する方式を採用している。「現実問題として、現物拠出・交換の場合、券面の振替を米国時間に行うことになり、券面不足などの問題が発生しても日本時間では対応できないなどのリスクを抱えることになる。このため、現金設定・現金解約の仕組みを採用した。現金設定・現金解約の仕組みの場合、その都度、組入株式の売買コストがかかる分、現物拠出・交換方式に比べ、指数連動性が理論上はやや劣るとされている。しかし今回のETFでは、設定・解約時に発生する株式売買コストは申し込み者が負担するのが公平という観点から、解約時には0.3%の信託財産留保額(注1)が必要となり、設定時にも同率の費用がかかるようにしている。株式の売買コストについてもできる限り抑え、指数連動性が損なわれないよう細心の注意を払う」(前田秀紀・インデックス運用部シニア・ファンドマネジャー)。
(注1)信託財産留保額がコストとして発生するのは、機関投資家などによるETFの解約時。設定時にも同率のコストがかかる。ETFの総口数が増減する場合のみに発生するコストであり、一般の個人投資家が取引所でETFを売買する際には、総口数に変更が生じる訳ではないので、この費用は関係しない。一般には、信託財産留保額から株式売買にかかった実際の費用を除いた分だけ、ETF基準価額への上乗せ要因になり、取引所で売買する一般投資家など、設定と解約に関係しないその他の保有者には有利となる。
過去10年半では“NYダウ”と“NASDAQ−100”ともに、2009年は堅調な年に。“NASDAQ−100(円換算)”は約61%の上昇率。価格変動リスクを大きい順に並べると、“NASDAQ−100(円換算)”、“日経平均”、“NYダウ(円換算)”の順。
“NYダウ”と“NASDAQ−100”の米国での原指数値および円換算値について、2000年以降、2010年7月末まで約10年半の間の年間騰落率と価格変動リスクを測り、“日経平均”や“NASDAQ総合”と比較してみた(注2)。
(注2)日米間時差の関係で、ETF基準価額の時価評価と同様にして、指数値は日付で日本営業日の1日前の米国終値を採用し、円換算値は日本の営業日午前の米ドル・円相場で換算。
そうすると、2009年の“NASDAQ−100”は原指数、円換算値ともに、10年半で最大となる約60%前後の年間上昇率を記録し、“日経平均”の19%上昇の3倍あまりに達した。“NYダウ”も10年半での最大に迫る年間上昇率を示し、“NYダウ(円換算値)”は日経平均を上回って約26%上昇した。ただリーマン・ショックが起こった2008年や2000年から2002年にかけての下落率は大きく、2000年以降約10年半の期間では原指数、円換算値のいずれも下落している。
値動きの荒さを示す価格変動リスクは、“NYダウ(円換算)”が日経平均に比べやや小さかった一方で、“NASDAQ−100(円換算)”は日経平均の1.5倍程度と値動きの振れ幅が大きい。“NASDAQ−100(円換算)”の価格変動リスクは“NASDAQ総合(円換算)”に比べ、やや大きい程度だった。
2007年以降、“NYダウ(円換算)”と“日経平均”との間の連動性が高い状態が続き、カップリング状態に。NYダウ連動型投信の基準価額も日経平均と似た動きが続いている。
10年半の値動きを観察すると、興味深いことに気がつく。2007年を境にして、“NYダウ(円換算)”と“日経平均”の間の連動性がそれ以前に比べ、高まっていることだ。“NYダウ(円換算値)”と“日経平均”の関係を米国側から裏返して見ると、“NYダウ”と“米ドル建て日経平均”の連動性を意味する。米サブプライム・ローン問題やリーマン・ショックを引き金にした世界同時株安や株安連鎖と円急伸、日米主要企業の海外売上比率の増大、株式取引の電子化や先物夜間取引の進展など、経済のグローバル化を象徴する様々な要因が絡み合う形で、カップリング傾向を強めてきたとみられる。
この結果、東証上場の『NYダウETF(1679)』の基準価額と市場価格および、中央三井アセットマネジメントが指数採用銘柄を直接組み入れてNYダウ連動型運用を行っている「中央三井ダウ・ジョーンズ インデックスファンド」(税込み信託報酬は年0.7245%)の基準価額を日経平均と比べてみても、2010年はおおむね似た動きをとってきたことが分かる。
ただ足元では7月以降、円高が日経平均に対して大きな下押し圧力として働き、“NYダウ(円換算値)”の方が上回って推移している。今後、本格的なデカップリングに遷移するのか、それともカップリング状態はまだまだ続くのか、日米どちらが優位に立つのかなど、“NYダウ(円換算値)”の動きと“日経平均”の関係は、世界の株式市場での注目点の一つになりそうだ。
最新ネット証券比較ランキング
口座開設されてない初心者の方に向けた、ネット証券が比較できる最新ランキングTOP10はこちらです。口座開設手続きはネット上で完結できます。口座開設キャンペーンもご紹介してます。是非この機会に、ネット証券の口座開設を行ってみましょう。