死亡保険の税金はいくら?受取額のシミュレーションと注意点

投稿日:2022/12/22 最終更新日:2023/03/17
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死亡保険金を受け取ると、所得税、贈与税、相続税のいずれかがかかります。それぞれ控除額や税率の仕組みが異なるため、保険金が同じでも税率が異なり、実質的な受取金額に差がつくケースも少なくありません。

特に贈与税については他の税金より高額になるケースが多いので注意しましょう。保険金を受け取る段階で慌てることのないよう、契約内容や税金の仕組みを理解して、発生する税金を想定しておいてください。

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死亡保険にはどのような税金が課せられる?

死亡保険に発生する税金としては所得税、贈与税、相続税のいずれかが考えられます。保険料を支払う契約者、亡くなった時に保険金が発生する対象となる被保険者そして保険金の受取人の組み合わせによって発生する税金が異なるので注意が必要です。

  契約者 被保険者 保険金受取人
相続税 妻や子
贈与税
所得税

ここからは所得税、贈与税、相続税が発生するそれぞれのケースについて詳しく紹介していきます。 なお、相続税が発生するケースについては下記の記事でも詳しく紹介しているので、合わせて参考にしてください。

【関連記事】生命保険の死亡保険金に相続税はいくらかかる?税金の対策方法や注意点について解説!

所得税がかかる場合

掛け金を支払う契約者と保険金の受取人が同一で、被保険者が別の人の場合は所得税となります。掛け金を支払う契約者と保険金の受取人が夫、被保険者が妻のケースなどがこれに該当します。

この時は、保険金を一時金で受取れば一時所得、年金で受け取れば毎年の雑所得となり、それぞれの所得額に応じて所得税が発生します。 一時所得は保険金額と配当金の合計から、支払った保険料の合計を差し引いた後、さらに特別控除額50万円を差し引いたのち1/2に割り引きます。

この所得はほかの所得と合算されて、その年の所得税が決定する仕組みです。なお保険金額+配当金から保険料を引いた金額が50万円を下回る場合には残額全てが控除されるので、保険金に伴う所得は発生しない計算となります。

雑所得については、その年中に受け取った年金から、払込保険料や掛金の額を差し引いた金額です。年金受け取りの場合は、保険金から源泉徴収されるケースもあります。

所得税率は累進課税となっていて、合計の所得額に応じて税率が変化します。こちらは後半で詳しくみていきましょう。

贈与税がかかる場合

契約者、被保険者、保険金受取人が全て異なる場合には贈与税がかかると想定されます。保険料を支払う契約者から受取人への実質的な資産の贈与であるとみなされるためです。

契約者が夫、被保険者が妻(またはその逆)、保険金受取人が子の場合などが考えられるでしょう。贈与税には一般に110万円の基礎控除額があります。

すなわち、受け取った保険金額から110万円を引いた額が贈与税の課税対象額となります。他にも贈与があった場合には、すべての課税の対象となる贈与額から110万円を引いてください。

贈与税も贈与額に応じて税率が変化しますので、詳しい税率についてはこの後シミュレーションと共に詳しく紹介していきます。

相続税がかかる場合

契約者と被保険者が同じで保険金受取人が異なる場合は、死亡者となる被保険者から遺族への相続ということになるため、相続税が発生します。相続税には遺族の生活資金という性質がある実情を踏まえて、次の式の金額までは非課税となります。

死亡保険金における非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

例えば、妻一人に相続するなら500万円、妻一人、子一人に相続するなら1,000万円といった具合です。法定相続人の範囲は、配偶者・子ども(第一順位)・父母や祖父母など直系尊属(第二順位)・兄弟姉妹(第三順位)までとなります。

なお、相続放棄をした人がいても、これらの順位に該当する人のすべてを含めます。相続税の発生条件については、こちらの記事でも詳しく紹介しているので、合わせて参考にしてください。

【関連記事】「死亡保険金に相続税がかかる条件は?負担を減らす保険選びについて解説」  

税金ごとに受取額をシミュレーション

死亡保険の加入の是非や自分に合った保険の種類を考える上では、税引後の実質的な受取額を加味する必要があります。受取額を考える際、契約者や被保険者、受取人ごとに適用される税金や税率が異なるため注意しましょう。

ここでは、次のケースを例として、所得税、贈与税、相続税が適用される場合のそれぞれの受取額がいくらになるかを紹介します。

  • 家族構成は父、母、子どもの3人
  • 父が亡くなったものとする
  • 課税前の受け取り死亡保険金は800万円
  • 累計の払込保険料は500万円
  • 配当金はないものとする  

所得税のケース

契約者及び受取人が母、被保険者が父の場合には、父が亡くなった後に発生する保険金は所得税が適用されます。まず、一時所得の場合は、次のような計算をします。

800万円(保険金)+ 0円(配当金)- 500万円(払込保険金)- 50万円(特別控除額)= 250万円

これを1/2した125万円が当該保険金の支払いに伴い発生する一時所得の課税対象額となります。あとは、これを給与所得などほかの所得と合算した上で、次の表に基づいて税率が決定していきます。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円 以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円 超 45% 4,796,000円

例えば、給与所得が500万円で上記の保険金を受け取り、かつ他に所得が発生しなかった場合、総所得は625万円で所得税率は20%となります。すなわち、125万円×20%の25万円の税金が保険金に対してかかるため、実質的な保険金の受取額は900万-125万円の775万円となります。

なお、年金で受け取る場合には雑所得となり、年間の保険金とその保険金に対応する必要経費によって算出されます。必要経費の前提によって課税対象額は変化します。  

贈与税のケース

続いては、贈与税のケースにおいていくら税金がかかるかをみてみましょう。被保険者が父で、契約者が母、保険金の受取人が子の場合には贈与税の対象となります。この時は800万円から基礎控除の110万円を引いた690万円を元に税率や税額が決まります。

課税額と税率や控除額の関係性は下記のとおりです。

基礎控除後の課税金額(110万円を引いたあと) 税率 控除額
200万円 以下 10%
300万円 以下 15% 10万円
400万円 以下 20% 25万円
600万円 以下 30% 65万円
1,000万円 以下 40% 125万円
1,500万円 以下 45% 175万円
3,000万円 以下 50% 250万円
3,000万円 超 55% 400万円

贈与額690万円の時の税率は40%なので、控除前の金額は276万円となります。そこから控除額の125万円を引くため、最終的な贈与税額は151万円です。

800万円からこの税額を引くと、実質的な保険金の受取額は649万円となります。

相続税のケース

被保険者と契約者が父で、保険金の受取人が母もしくは子の時は相続税の課税対象となります。相続税は「法定相続人の数×500万円」の部分までが非課税枠となります。

今回の例では、父に対して配偶者にあたる母と子の二人の法定相続人がいるため、1,000万円までが非課税となります。すなわち、このケースでは、他に相続資産がないことを前提とすれば、相続税は0円で、保険金は丸ごと使うことが可能です。

非課税枠の部分や基礎控除を加味した後で、相続資産に対する課税が発生する場合の税率は下記の通りとなります。

法定相続分に対する取得金額 税率 控除額
1,000万円 以下 10%
3,000万円 以下 15% 50万円
5,000万円 以下 20% 200万円
1億円 以下 30% 700万円
2億円 以下 40% 1,700万円
3億円 以下 45% 2,700万円
6億円 以下 50% 4,200万円
6億円 超 55% 7,200万円

相続資産から葬儀費用や基礎控除を差し引いて最終的な相続税の課税額や税率が決まるため、保険金額が非課税枠を超えてしまったとしても、必ず相続税が発生するとは限りません。以下の記事において、死亡保険金の受け取りに際して相続税が発生するケースについてさらに詳しく紹介しています。こちらも合わせて参考にしてください。

【関連記事】生命保険の死亡保険金に相続税はいくらかかる?税金の対策方法や注意点について解説!

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死亡保険金を受け取る前に注意するべきこと

かかる税金によって大きく税金が変わってくるため、死亡保険金を受け取る前には、まず契約内容を把握しておきましょう。また、引き落としの口座名義も確認しておいてください。

特に、満期保険金を受け取るときに、受取人を第三者にすると高額な贈与税がかかる場合があるので注意が必要です。

以下、死亡保険金を受け取るときの注意点を紹介します。  

契約の内容を把握する

死亡保険金は保険料を支払う契約者、死亡したときに保険金がおりる対象となる被保険者、保険金を受け取る受取人の組み合わせによってかかる税金の種類や税額が大きく異なります。死亡保険金を念頭に大きな出費をして後で税払いに対応できなくなるようなことを防ぐため、契約内容は予め把握しておきましょう。

少なくとも契約内容がわかれば、死亡保険金がおりたときにどの税金が発生するのかは確認できます。  

保険料の引き落とし口座名義を確認

保険料の引き落とし口座名義をあらかじめ確認し、契約者と同じ名義にしておきましょう。課税計算においては口座の名義人を実質的な保険料の支払い手として認識される可能性があります。

例えば、非保険者と契約者が母で、保険金受取人が子なら、通常は相続税の課税対象ですが、もし引き落とし口座の名義人が父だった場合、実質的な保険金の支払い手が父であるとみなされる可能性があります。

そうすると、税計算上は父から子への贈与に当たるため、贈与税が発生します。受取金額が同程度なら、多くの場合相続税より贈与税の方が高額なため、税負担が大きくなってしまう可能性が高いです。

このような事態を避けるために、予め引き落とし口座を確認して、契約者と同一名義にしておきましょう。

満期保険金を受け取る場合

被保険者が満期まで生存していた時に受け取るのが満期保険金です。満期保険金は受取人が契約者であれば所得税の課税対象になります。

一時所得になるため、課税対象所得の計算式は先ほど紹介の通りです。一方で、満期保険金の受け取りを契約者とは別人にしていると、贈与税が発生します。

所得税の税率にもよりますが、所得税より贈与税の方が高額になるケースも少なくないため、満期保険金の受取人は慎重に検討しましょう。  

これから生命保険を選ぶ場合のおすすめは?

生命保険は加入すれば保険料が定期的に発生し、受け取る保険金には税金がかかります。保険料と税払いを勘案すると実質的な負担が大きいケースも少なくないので、加入の際には自分が必要な保険や特約をうまく選んで加入するようにしましょう。

リビングニーズ特約を活用する

これからの生命保険において有効な特約の一つがリビングニーズ特約です。これは、余命6か月以内と診断されたときに、先に保険金を受け取ることができるものです。

同特約で受け取れる保険金の上限は3,000万円で、こちらの金額は、被保険者が使用する分には非課税になります。一方で、もし使い切れずに死亡し、相続される場合には相続税の課税対象となります。

同特約が働いたのちは、元の契約保険金から特約分の金額が差し引かれます。例えば、5,000万円の生命保険に対して、3,000万円のリビングニーズ特約が発動したときには、死亡時の保険金は2,000万円に減額されます。

また、治療の結果持ち直し、6か月以上生存しても返還などの必要はありません。リビングニーズ特約は生存が難しい局面になった時に、残りの日々を過ごすための原資や延命治療の医療費とするための制度です。

全額が非課税となるため、税負担を気にせずに自由に使用可能です。うまく活用して実質的な税負担を軽減しましょう。

終身保険で契約する

多くの生命保険は割高なため、多数の保険に加入したり、特約を増やしたりすると、保険料の負担が重くなる可能性があります。一方で、相続税対策や遺産分割における対策などの目的で保険には入っておきたいという人も少なくありません。

その点では、特に特約がなく被保険者が死亡したときに受取人に保険金が支払われるシンプルな生命保険が、負担の増大やトラブルのもととなりにくく、適しています。  

まとめ

死亡保険金にかかる税金は、契約内容によって課税される税金項目や税率が大きく異なります。あらかじめ相続税・贈与税・所得税のいずれにあたるかを把握しておきましょう。

また、むやみに特約を設定すると、保険料が高くなります。シンプルな終身保険が、結局は負担が少なく相続対策に適切な場合が多いといえるでしょう。

死亡保険金にかかる税金を知ったうえで、自分にあった生命保険を選んでください。 

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よくある質問

Q

相続税の非課税枠に関する「法定相続人」に上限はありますか?

A

養子の場合は、実子がいない場合で2人、いる場合で1人までしか法定相続人としてカウントされません。それ以外には法定相続人の人数に制限はありません。

Q

自分が入っている保険を把握しきれない場合、どうすればいいですか?

A

通帳やクレジットカードの明細なら引き落とされた保険料が確認できます。1年分確認すれば、継続的に保険料が発生している保険の加入状況はわかるでしょう。一括払い保険など、通帳や明細だけではわからない保険があるときは、保険加入を相談している代理店などに確認してください。

Q

生命保険の特約をつける際の注意点はありますか?

A

通常保険の特約は、保険料が割高になるため、加入すればするほど負担が大きくなります。特約を全くつけないという選択もありますし、もしつける場合は自分にとって必要最低限の範囲で特約を活用しましょう。

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