生命保険の死亡保険金に相続税はいくらかかる?税金の対策方法や注意点について解説!

投稿日:2022/04/08 最終更新日:2023/04/14
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「ライフステージで必要なお金を準備しておきたい」「貯蓄が少なく将来の老後資金が不安」という方も多いのではないでしょうか。 将来に備えてまとまったお金を確保する方法のひとつに、保険で資金を積み立てる方法があります。 この記事では、保険で資産運用ができる仕組みやメリット・デメリット、資産運用が可能な保険の種類についてご説明します。
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生命保険の死亡保険金って課税対象?

亡くなった方が死亡保障付き生命保険に加入していた場合、死亡保険金は残された遺族を支えてくれます。ただし、死亡保険金は原則として「相続財産」と見なされ、課税対象のため、全額が保険金受取人の手元に残るわけではありません。法律に従って、相続税や贈与税等の税金が課せられます。

また、死亡保険金に課税される税金は、被保険者・保険契約者・保険金受取人の組み合わせによって変わります。相続税・所得税・贈与税について、一覧を下記の表にまとめました。

  被保険者(亡くなった方) 保険契約者(掛金を支払っていた方) 保険金受取人 死亡保険金にかかる税金
ケース1 相続税
ケース2 所得税/住民税
ケース3 贈与税

引用元:国税庁|No.4155 相続税の税率

死亡保険金の相続税の場合

死亡保険金の相続税は、被保険者と保険契約者が同一人物であって、かつ契約者が保険金受取人ではない場合に課税されます。例えば、上記の表のように被保険者・保険契約者が夫、保険金受取人が妻のようなケースです。

また、死亡保険金は遺族にとって重要な生活資金のため、相続税法上は一定の金額までが非課税です。非課税とされる一定の金額を「非課税限度額」と呼びます。

非課税限度額は下記の計算式で算出できます。

[死亡保険金における非課税限度額=500万円×法定相続人の数]

亡くなった方に配偶者がいた場合は、配偶者+子どもの数が法定相続人の人数となります。法定相続人の範囲は、配偶者・子ども(第一順位)・父母や祖父母など直系尊属(第二順位)・兄弟姉妹(第三順位)です。なお、相続税の計算における法定相続人の数は、相続放棄をした人も含めます。

このように、相続税では法定相続人が1人増えるごとに、500万円ずつ非課税限度額が増加します。

死亡保険金の所得税の場合

死亡保険金の所得税は、被保険者と保険契約者が異なり、保険契約者と保険金受取人が同一人物の場合に課税されます。上記の表のように、被保険者が夫、保険契約者・保険金受取人が妻のようなケースにあたります。

このように、契約者と保険金受取人が同一人物の場合は「一時所得または雑所得」となり、所得税と住民税の課税対象となります。

課税額は下記の計算式で算出できます。

[一時所得の課税対象となる金額=(死亡保険金-既に払い込んだ掛金-特別控除50万円)×1/2]
[一時所得の課税対象となる金額=(死亡保険金-既に払い込んだ掛金-特別控除50万円)×1/2]

なお、死亡保険金から既に払い込んだ掛金を差し引いた金額が50万円より少ない場合は、さらに特別控除額を差し引く必要はありません。

死亡保険金の贈与税の場合

死亡保険金の贈与税は、被保険者と保険契約者と保険金受取人がいずれも異なる場合に課税されます。上記の表では、被保険者が夫、保険契約者が妻、保険金受取人が子のようなケースにあたります。

また、死亡保険金を受け取った際の贈与税には110万円の基礎控除があるため、死亡保険金から110万円を差し引いた金額に対して課税されます。

贈与税は、基礎控除110万円を引いた下記の計算式で算出できます。

[税課税対象額=死亡保険金額-110万円]

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死亡保険金の相続税の事例

実際に、生命保険金を受け取る場合の相続税の例について、計算をしながら下記のケースでご紹介します。契約内容は以下の通りです。

・被保険者と保険契約者は夫、保険金受取人は妻を指定した生命保険に加入していた
・亡くなったのは夫
・夫の財産は2億円
・妻、子ども(1人)が1億円ずつ財産を受け取る
・妻が死亡保険金を6,000万円受け取る
・葬儀費用として600万円を支払う

まずは、課税対象額を算出します。
今回のケースでは被保険者と保険契約者が同一人物で、かつ契約者が保険金受取人ではないため、相続税が課税されます。

相続税の非課税額は「500万円×2名(妻・子1人)」となり、1,000万円です。

葬儀にかかった費用については、相続人が負担した場合は相続税の計算上、控除することが可能です。今回は妻が葬儀費用を支払ったとして計算します。

財産と死亡保険金を合わせた2億6,000万円から相続税の非課税額と葬儀費用を差し引くと、妻と子どもの課税価格は合計で「2億4,400万円」です。

ここまでで妻と子どもの課税価格は以下のようになっています。夫の財産2億円は法定相続分通り2等分したとします。

妻:1億円(夫の財産×1/2)+6,000万円(死亡保険金)-1,000万円(非課税額)-600万円(葬儀費用)=1億4,400万円
子ども:1億円(夫の財産×1/2)

次に妻と子どもの課税価格の合計金額となる2億4,400万円から、基礎控除の「(3,000万円+600万円)×法定相続人の数」を差し引きます。

法定相続人は妻と子どもの2人なので(3,000万円+600万円)×2となり、「4,200万円」まで非課税です。2億4,400万円から4,200万円を引いた残りの「2億200万円」が課税遺産総額です。

さらに妻子、それぞれの相続税額を計算します。課税遺産総額である2億200万円を法定相続分である1/2ずつに分けると、仮の取得金額は妻と子、それぞれで1億100万円です。
そこで、下記の相続税の税額速算表を使って相続税を計算します。

妻=1億100万円×40%-1700万円=2340万円
子=1億100万円×40%-1700万円=2340万円
妻と子、2つを合算した4,680万円が相続税の総額です。

最後に、相続税の総額を実際の受取額で案分することにより「各人の税額」を算出できます。
計算式は下記のとおりです。

各相続人等の税額=相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

妻:4,680万円×1億4400万円÷2億4,400万円=2761万9000円
子ども:4,680万円×1億円÷2億4,400万円=1918万円

相続税の税額速算表

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用元:国税庁|No.4155 相続税の税率

死亡保険金による相続対策のメリットは?

相続対策の一つとして、生命保険をご検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。生命保険の死亡保険金には相続においてさまざまなメリットが存在します。特に着目したいポイントが、非課税枠が大きい・資金をすぐに用意できる・代償分割に利用可能の3点です。なぜ死亡保険金によって相続対策ができるのか、下記で解説します。

非課税枠が大きい!

1つ目のメリットは、死亡保険金にかかる相続税に大きな非課税枠があることです。
先述の通り、死亡保険金は「遺族の生活を保障する役割」を持つため、相続税の負担も安く抑えることができる仕組みになっています。具体的には、死亡保険金は「500万円×法定相続人数」まで非課税です。

例えば、父がなくなり妻と子ども3名が法定相続人となる場合、2,000万円を非課税で相続できるため、預貯金をそのまま相続するよりも税金の負担を抑えられます。仮に1,500万円を預貯金で相続した場合、相続税の税額速算表の通り課税されてしまうため175万円の相続税がかかります。

資金をすぐに用意できる!

2つ目のメリットは、死亡保険金の場合、資金をすぐに用意できることです。思わぬ金額を相続することになった際、相続に必要な現金を用意できないケースがあります。また、一家の大黒柱が突然に亡くなった場合、亡くなった本人(以下、被相続人)の預貯金が凍結されて生活費に困るケースもあるでしょう。このような場合、すぐに資金が調達できる死亡保険は非常に心強い存在です。

納税資金の調達に有効!

死亡保険金は納税資金の早期調達に有効です。相続税の納税は「現金一括」という原則があります。また、期限も「被相続人の死亡を知ってから10ヶ月以内」という制限が存在します。もし納税に必要な現金を持っていない場合、相続ができません。不動産や車のような資産を保有していた場合にも、それらを一度換金して納税しなければなりません。しかし不動産等の売却にはそれなりの時間と労力が必要です。死亡保険金であれば早期に受け取り可能なため、不動産等を一時換金する必要なく、円滑に相続できます。

生活資金に充てられる!

死亡保険金は、当面の生活資金に充てることができます。被相続人の預金口座は、被相続人が亡くなった段階で、凍結されてしまいます。凍結された預貯金は、遺産分割と相続の手続きが完了するまで相続人の共有財産となるため、預金口座の凍結解除と預貯金資産の相続には時間がかかります。その間、相続人全員の承諾がない限り、預金を下ろすことはできません。一方、死亡保険金の受け取り期間は、概ね申請から5営業日程度です。書類の申請も比較的簡易のため、必要な生活資金を早期に受け取ることができます。

代償分割に利用可能である!

3つ目のメリットは、死亡保険金は代償分割に利用できる点です。残された遺産のほとんどが土地だった場合、不動産を相続した相続人のみが利益を得てしまい、相続人間のトラブルに発展するケースがあります。そのようなケースで遺産分割を円満に進めるために行うのが「代償分割」です。

代償分割とは、特定の人物が不動産のような分割しにくい資産を相続し、代わりに他の相続人へ代償金を支払うことで、円滑に遺産を分ける方法です。相続する不動産に相続人の誰かが引き続き住む場合などに行われます。

ただし、代償分割を実施する場合、相続人に代償を支払う資金を用意しなければなりません。そこで、あらかじめ代償を支払う相続人を、死亡保険金の保険金受取人に指定しておく方法があります。受け取った保険金から他の相続人への代償分を支払いできるため、スムーズに代償分割ができるようになります。

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死亡保険金で節税する際の注意点

死亡保険金は、相続税対策としても効果が期待できますが、いくつか注意点があります。
例えば、生命保険契約の際は、保険契約者・被保険者・保険金受取人をそれぞれ別の人物に設定できます。しかし、相続税の負担を避けたい場合、原則として契約者と被保険者を同一人物にする必要があります。「契約者=被保険者」ではない場合、保険金が所得税や贈与税の課税対象になり、相続税に対して税金を支払わなければなりません。

ほかにも、死亡保険金の相続税対策についての注意点を解説します。

受取人が誰か把握しておくこと!

死亡保険金で節税を検討する際、保険金受取人が誰に設定されているか把握しておくことが重要です。死亡保険金は、保険金受取人固有の財産となるため、相続人間で遺産分割をめぐるトラブルが起きても協議の対象とはならず、原則として保険金受取人が確実に受け取ることができます。

しかし、保険加入から時間が経っていると「相続人と保険金受取人が一致しない」「相続させたい人物が変わった」ということがしばしばあります。相続人間のトラブルを避けるために、保険金受取人が誰かを定期的に確認し、必要であれば変更手続きを行うようにしましょう。

特に保険金受取人が以下の場合には、死亡保険金の取扱いが通常と異なるため注意が必要です。

・保険金受取人が被相続人
・保険金受取人が死亡している
・保険金受取人が認知症

下記にて、1つずつ説明します。

受取人が被相続人になっている場合は?

保険金受取人が被相続人になっている場合、死亡保険金は被相続人の相続財産として取り扱われます。死亡保険金の保険金受取人は保険契約の内容で決定するため、約款で保険金受取人が指定されている場合、保険金は保険金受取人の所有財産となります。反対に、約款によって保険金受取人が指定されていない場合は、法定相続人で均等に分割されることとなります。この場合、保険金の額は、法定相続分の割合で決めるのではなく全員同額になります。
参考:保険法第46

受取人が死亡している場合は?

被保険者が死亡する前に、指定していた保険金受取人が先に死亡している場合、本来は保険金受取人の変更手続きが必要です。しかし、保険金受取人を変更していなかった場合は、保険法第46条によって、「保険金受取人の法定相続人」が死亡保険金を受け取ることになります。

また、保険金受取人によって、かかる税金の種類・税額も変わります。例えば、夫が契約者かつ被保険者で、妻が保険金受取人だった場合で考えてみましょう。

保険金受取人の妻が亡くなった際、夫が保険金受取人の変更手続きをしていなければ、その後夫がなくなった際の死亡保険金の保険金受取人は「妻の法定相続人」になります。夫婦の間に子どもがいる場合は、新たに子どもが保険金受取人となり、子どもが2人であれば、死亡保険金を2等分します。

子どもがいない場合には、妻の相続人となる「妻の両親」「兄弟姉妹」が新たな保険金受取人となります。この場合、夫の両親や兄弟姉妹には相続されません。
参考:保険法第46条

受取人が認知症を患っている場合は?

保険金受取人が認知症を患ってしまい判断能力が不十分な場合、生命保険金の請求手続きができず、死亡保険金を受け取れなくなります。そのような場合、「成年後見制度」を利用して、法定後見人を立て、保険金受取人の代わりに死亡保険金を請求する必要があります。後見人を立てる場合には、認知症の保険金受取人に対して、住居や病院の手配への責任が生じます。

事前に後見人を立てていなかった場合は、家庭裁判所にて所定の手続きが必要です。弁護士のような専門家が後見人に選任される場合には費用も発生します。

事前にできる対策として、保険会社の「指定代理請求特約」を付ける方法があります。
指定代理請求特約とは、本来の保険金受取人が認知症等で請求できないときに、予め指定された家族によって代理請求できる制度です。

相続放棄すると死亡保険金の非課税枠から外れる

相続を放棄する場合については、死亡保険金にかかる税金の仕組みが変わります。
契約者と被保険者が同一人の場合、受け取る死亡保険金は死亡した人の相続財産ではなく、保険金受取人固有の財産となるため、相続を放棄しても死亡保険金を受け取ることができます。この際、死亡保険金は「みなし相続財産」として、基礎控除が適用されます(基礎控除額を超えて受取った場合、相続税の課税対象となります)。ただし、相続を放棄する場合には、生命保険金の非課税の適用を受けられなくなるため注意が必要です。

また、死亡保険といった生命保険の控除については生命保険料控除もあります。生命保険料控除を受けるためには、確定申告が必要です。確定申告は税理士への依頼や確定申告ソフトの使用等で、手続きが可能になります。

まとめ

死亡保険金は残された遺族の生活を支えるお金ですが、相続税の課税対象や支払い金額については事前に把握しておくことが重要です。また、契約内容を見直し・更新していないために、余計なコストがかかってしまうことや、被保険者の意図と異なる相続になってしまう可能性もあります。これを機に、家族で相続について話し合ってみてはいかがでしょうか。

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よくある質問

Q

死亡保険金に相続税はかかりますか?

A

死亡保険金の相続税は、被保険者と保険契約者が同一人物であって、かつ契約者が保険金受取人ではない場合に課税されます。

詳しくは「死亡保険金の相続税の場合」を参照。

Q

死亡保険金が1000万円のとき税金はいくらですか?

A

相続財産が4,000万円で基礎控除内、かつ死亡保険金も1,000万円で非課税枠内(500万円×2)に収まっている場合は、相続税が課されません。

詳しくは「死亡保険金の相続税の事例」を参照。

Q

死亡保険金の非課税額はいくらですか?

A

死亡保険金の非課税対象は、被保険者1人あたり500万円までとなっています。保険金受取人が2人いる場合は、それぞれ500万円までが非課税となります。

詳しくは「生命保険の死亡保険金って課税対象?」を参照。

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