死亡保険金に相続税がかかる条件は?負担を減らす保険選びについて解説

投稿日:2022/12/26 最終更新日:2023/03/17
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生命保険の死亡保険金は、法定相続人の数や保険金額及び相続資産全体の規模により相続税が発生するケースがあります。ただし、生命保険特有の相続税の非課税制度や保険金をすぐに相続税支払いに利用できる点などを踏まえると、むしろ生命保険は相続対策としてメリットは大きいといえるでしょう。終身保険や長期平準定期保険などを活用して、うまく相続税対策を進めておくことが大切です。

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死亡保険金に相続税がかかるケース

保険の契約者と被保険者が同一で、保険金の受取人が契約者・被保険者の親族などの場合において、相続資産総額がある程度の規模に達すると相続税が発生します。まずは相続税がかかるケースについておさえておきましょう。なお、相続税の金額についてはこちらの記事でも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

相続税がかかる条件

まず、保険の契約形態が相続税がかかる条件の一つです。保険金の払い手である契約者と、亡くなった時に保険金がおりる対象である被保険者が同一で、かつ保険金の受取人が、契約者・被保険者の相続対象者に当たる人の場合に相続税がかかる可能性があります。例えば、契約者かつ被保険者が夫で、受取人が妻といった場合などです。

もう一つの条件は相続対象資産の規模です。まず、生命保険を通じた相続には非課税限度額があり、次のような計算式となります。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

法定相続人の範囲は、配偶者・子ども(第一順位)・父母や祖父母など直系尊属(第二順位)・兄弟姉妹(第三順位)までです。なお相続放棄をした人もカウントします。

例えば、第二〜第三順位の親族がいない場合で、相続人が配偶者と子供二人だった場合、法定相続人は3人となるので、非課税限度額は1,500万円です。なお、自宅や金融資産など、ほかに相続資産がある場合には、保険金の相続だけでなく、全資産を合計して計算して判定するので注意してください。

死亡保険の税金はこちらにもまとめていますので、合わせて読んでみましょう。

【関連記事】死亡保険の税金はいくら?受取額のシミュレーションと注意点

相続税の申告の有無について

相続税の支払いが必要な場合は、確定申告をした上で定められた金額を納付しなければなりません。しかし、相続対象資産の規模によっては相続税の確定申告の要否が判定しづらいケースもあります。

そこで国税庁では、相続税の申告要否判定コーナーを用意しています。相続税の要否だけでなく、おおよその相続税の金額目安も把握できるので、ぜひ参考にしてください。

【関連記事】:死亡保険金に相続税がかかる条件は?負担を減らす保険選びについて解説

相続税はいくら?シミュレーションしてみよう

相続税がかかるかどうか、そしていくらかかるのかを把握するには、相続税のしくみを理解する必要があります。ここでは相続税がかかる金額を実際にシミュレーションしていきます。

相続税の計算方法

まず、相続税は保険金の相続だけでなく、亡くなった人の相続資産全てを合算します。具体的には相続する総資産から葬儀費用や債務・そして非課税財産を差し引いた金額から算出し、保険金の非課税限度額も、この中の非課税財産に含まれます。

おさらいになりますが、死亡保険の保険金については、下記の部分が非課税となります。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

相続税を計算する時には、保険金から上記の金額を引いたうえで、他の相続対象資産と合計して課税対象となる相続資産を計算していきます。

やや複雑ですが、上記の生命保険特有の非課税限度額のほかに相続資産全体の基礎控除もあります。ここまでで合計した相続資産から下記の金額を控除した額が最終的な課税対象の相続資産です。

基礎控除額=3,000万円+法定相続人の数×600万円

相続税率は、課税対象の相続資産の総額によって下記のとおり変動するのでおさえておきましょう。

こちらの控除額は、先ほど紹介した葬儀費用や非課税財産、そして基礎控除とは別に、課税対象の相続資産総額からさらに控除されるものなので、計算の際は注意してください。相続税の仕組みは複雑なので、ルール全体をおさえておきたい人は、国税庁のWebサイトもみてみましょう。

参考:国税庁ホームページ「No.4155 相続税の税率」

相続税がかかる具体的なケース

相続税がかかるケースとかからないケースを二つの例で考えてみましょう。なお、簡素化簡単化のために保険金以外の課税対象の相続資産は2,000万円とします。

まず、父親の死亡において、法定相続人が母と子二人、そして保険金が1,000万円だったとしましょう。この時保険金の非課税枠は1,500万円となります

非課税限度額=500万円×3人(法定相続人の数)=1,500万円

そのため保険金は全て非課税となり、基礎控除前の課税対象の相続資産は2,000万円です。ただしこちらも基礎控除によって控除されるため、相続税は発生しないことになります。

一方で、家族構成や生命保険以外の相続資産額が同様で、保険金が5,000万円だったとします。この時は保険金のうち非課税枠を引いた3,500万円が課税対象になります。保険以外の相続資産と合計すると、5,500万円が基礎控除前の課税対象となります。

基礎控除は下記の計算で4,800万円となります。

基礎控除額=3,000万円+3人(法定相続人の数)×600万円=4,800万円

すなわち5,500万円と4,800万円の差額700万円が残るため、この部分は相続税の課税対象となります。1,000万円以下の相続税率は10%なので、70万円の相続税を支払う必要があります。

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相続税対策で生命保険が選ばれる4つの理由

相続税対策の観点からすると、生命保険には以下4つのメリットがあります。

  • 非課税枠がある
  • 受取人を指定できる
  • 相続放棄しても受け取れる
  • 現金で支給される

いずれも相続税をおさえたり、相続税支払いを円滑にするうえでのメリットとなります。

非課税枠がある

死亡保険金には法定相続人×500万円の非課税枠があります。この非課税枠は生命保険特有のものなので、他の形式で資産を相続する場合には活用できません。

すなわち生命保険を活用した方が、最終的に課税対象となる相続資産を圧縮できる可能性があるため、実質的な相続税の節税につながります。

受取人を指定できる

保険金は非課税限度額を超えた部分が相続税の課税対象とはなりますが、分割協議の対象となる相続財産には含まれず、保険の契約通り受取人に指定した人が全額保険金を受け取れます。そのため、本人が希望する相手に確実に相続することができ、分割協議におけるトラブルの回避にもなるというメリットがあります。

相続放棄しても受け取れる

生命保険は保険金がおりる瞬間に受取人固有の財産という扱いとなります。「相続財産」とはならないため、相続放棄をしたとしても保険金が受け取り可能です。例えば亡くなった人に多額の借金があるため、相続放棄をする場合、資産は受け取れなくなりますが、保険金額部分だけは実質的に相続することができます。

相続税の納税資金に使える

相続税は現金一括納付しなければならないため、不動産など現金化が難しい資産で相続すると対応が難しくなるケースがあります。その点保険金は現金一括で受け取ることができるため、直ちに相続税の納付原資に充てることができるのもメリットです。

生命保険を選ぶ際の注意点

相続の観点からは、生命保険を契約すること自体には大きなデメリットはありません。一方で、相続税制をしっかり理解したうえで、効率の良い方法で加入するのがよいでしょう。例えば特段の理由がない限り、配偶者を受取人にした方が、相続税を圧縮できる可能性が大きくなります。

その他、保険料の払い過ぎによって生計を圧迫することのないよう注意が必要です。ここからは相続の視点から生命保険を選ぶ際の注意点を紹介していきます。

受取人は配偶者にする

配偶者には相続税の配偶者控除というものがあり、次の条件までは相続税が非課税となります。

  1. 課税対象となる相続資産が1億6,000万円以上
  2. 配偶者の法定相続分相当額

1より、非課税枠や基礎控除を加味したのちの相続額が1.6億円を超えない限りは非課税です。また、2より法定相続分通りの相続であれば、資産規模に関わらず、非課税となります。例えば法定相続人が配偶者と子一人の場合は、50%までは相続資産の規模に関わらず非課税です。

もし親の死亡に際して、配偶者がいるのに子を保険金の受取人とすると、配偶者控除が効かずに相続税が発生しやすくなったり、相続税額が増えたりするリスクがあるので注意しましょう。相続税の配偶者控除は強力なので、特段の事情がなければ、配偶者を受取人にするのがおすすめです。

長期の保険料の支払いに注意

生命保険は一度加入すると、保険料を毎月もしくは年一回など定期的に支払って行きます。その契約の性質上支払い期間が長期にわたることも多いため、保険料の金額設定には注意しましょう。

いまは支払える金額でも、将来収入が減少したときに払えずに途中解約を余儀なくされる人も少なくありません。保険料は将来収入が減少しても支払いを継続できる無理のない金額で加入しましょう。

逓増定期保険の契約は慎重に

逓増定期保険とは、解約返戻金が一定期間経過後に急増する商品です。特に経営者の場合は法人名義の逓増定期保険について損金処理ができるため、これまで相続税対策に盛んに活用されてきました。しかし足元課税ルールの見直しが議論されているため、将来今のようには節税効果を発揮しなくなる可能性もあります。今後の加入については慎重に判断しましょう。

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相続税対策におすすめな生命保険

最後に相続税の抑制や、支払いに柔軟に対応できるようにしておくうえでおすすめの生命保険を紹介します。具体的には終身保険や長期平準定期保険を利用するのが有効です。相続という観点から見た時のそれぞれの有効性について理解しておきましょう。詳しく紹介します。

終身保険

終身保険とは、一生涯保障が付与される保険で、加入後は亡くなった年齢に関わらず保険金が受取人に支給される保険です(加入直後は死因による免責事項がつく場合があります)。

解約した時に返戻金がない掛け捨て型と、解約返戻金が設定される貯蓄型があります。先に紹介した相続税における税制のメリットや、現金での相続、指定した相手への確実な相続といったメリットを享受するうえでは、終身保険が有効です。

特に貯蓄型であれば、本人存命中の急な年収の低下や家計の逼迫などの時に、解約して自分が使うこともできます。相続対策と貯蓄の二つの役割を果たしてくれるため、貯蓄型の終身保険はおすすめです。

長期平準定期保険

定期保険とは満期が設定されている保険ですが、そのうち長期平準定期保険は、満期が100歳前後など長く設定されているものです。終身保険より保険料が安く設定されていて、保険料が変わることもないため、保険料支払いの負担をおさえられます。

満期時の返戻金があるもの、ないものがあります。満期まで存命であった時の資産形成を意識するなら返戻金ありがおすすめな一方で、満期返戻金がないプランの方が、さらに保険料をおさえられます。費用対効果をふまえて、自分にあったプランで加入してください。

まとめ

親の死亡などに直面すると、急な相続対応に戸惑ってしまう人も少なくありません。相続対策として有効なはずの生命保険も、仕組みがわからずかえって混乱してしまうケースもあります。今回の記事の通り、実は生命保険は相続に対してメリットがデメリットよりも大きい制度です。

親が加入している生命保険の制度を理解して、いつか来る相続に備えましょう。またこれから生命保険に加入する方は、相続税の制度もふまえて、最適なプランを選ぶようにしてください。

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よくある質問

Q

死亡保険金に所得税や贈与税がかかる条件は何ですか?

A

保険契約者と保険金の受取人が同一の場合には所得税の発生要件となります。また、保険契約者と被保険者、受取人が全て異なる場合は、実質的な保険契約者から受取人への贈与とみなされ、贈与税の対象となります。それぞれ税率や控除の条件が異なるため、どの税制が適用されるのかおさえておきましょう。

詳しくは「死亡保険金に相続税がかかるケース」を参照。

Q

相続税について、確定申告は必要ですか?

A

全ての控除などを勘案したのちに相続税の支払いが発生する場合には確定申告にて課税額を明確にしたうえで、納付しなければいけません。確定申告が必要か微妙な場合は、国税庁の相続税申告要否判定コーナーを利用しましょう。

参考:国税庁「相続税の申告要否判定コーナー

Q

生命保険でおすすめの特約はありますか?

A

無料でつけられるリビングニーズ特約がおすすめです。これはもし余命6ヶ月以内と判断された時に、生きているうちに保険金を受け取れる制度で、残された期間の思い出作りや、高額になるケースも多い延命治療などに活用できます。上限は3,000万円までで、受け取った金額は全て非課税となります。

【関連記事】リビングニーズ特約とは?メリット・デメリット・注意点は?

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