スイングトレードに適した銘柄は?新規売り(空売り)銘柄のスクリーニング方法
短期取引、とりわけスイングトレードは、相場のトレンドを重視する取引とも言われ、いかに相場の上昇トレンドまたは下降トレンドを見極めるかが最も重要かつ難しいポイントとなります。したがって、トレンドの分析については、過去から現在まで様々な分析手法が考案され、また試行錯誤が繰り返されています。スイングトレードは、1日のなかで次から次へと売買を繰り返すデイトレードと異なり、1日以上の一定期間株を所持するため、利幅も大きくなり、デイトレードのようにハイペースで取引する必要もなく、初心者にお勧めできる取引方法であると言えます。ここでは信用取引を使って新規売り(空売り)を行うことを想定して、銘柄を探す代表的な分析手法等についていくつか紹介していきます。
下降トレンドに入っている銘柄を狙う
株価は日々、上昇と下落を繰り返しますし、もっと言うと毎分でも、毎時間でも変動します。スイングトレードを用いて信用売りをすることで、株価が下落トレンドに入ったとしても利益を出すことができます。
株価チャートにおける一定期間の株価の高値を結ぶ線と底値を結ぶ線の間が、その銘柄の直近の価格変動域になると言えます。この高値の線と底値の線は同じ動きをすることが多く、2つの線が右肩上がりの場合が上昇トレンド、そして右肩下がりの場合が下降トレンドとされます。このトレンドを参考にして銘柄の高値および底値を想定し、株価が下降トレンドに入った銘柄を抽出するというスクリーンング方法です。スイングトレードを用いて、下落トレンドに入った銘柄を空売りして短期の値下げから利益を狙うのはもちろん、一時的に株価がリバウンドするタイミングを見定まって買い注文をすることで株価の値上げから利益を確定することもできます。
ダブルトップ、ダブルボトムを形成している銘柄を狙う
ダブルトップとダブルボトムは視認できるわかりやすい売買シグナルの一つであり、スイングトレードとは相性がいいと言えます。
例えば、ある企業にとってプラスとなるホットトピックが発生すると、一時的に株価が急上昇します。しかし、ある程度まで達すると利益確定の売りなどにより、株価は反転して下落します。その後、株価が再上昇し、もう一度高値を付けにいくものの同じ高値付近で上昇が止まり、再び下落に転じていく状況が良くあります。こうした株価推移を「ダブルトップ」と呼び、スイングトレードにおける投資タイミングのサインとして利用されているようです。ダブルトップの場合は、間にある下落時の株価を直近株価が下回るようになると「下降トレンド」に入ったと判断され、売りを実施する目安とされます。「ダブルボトム」は、その逆となります。上述のように、「ダブルトップ」と「ダブルボトム」のチャートは他のシグナルよりも判断しやすく、かつ多くの投資家が注意しているため、スイングトレード初心者にもおすすめできます。
ちなみに、このようにチャートなど過去の値動きに基づいて将来の相場を予想する手法を「テクニカル分析」と呼び、それに用いる指標をテクニカル指標と言います。その対となるのが、個別企業の業績や経済状況といった「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)」から株価を予測する「ファンダメンタル分析」で、基本的にはスイングトレードなど短期間の取引で利益をあげるにはテクニカル分析が、中長期投資にはファンダメンタル分析が向いています。それぞれのメリット・デメリットを意識しつつ使い分けるのが良いでしょう。
移動平均線を活用する
トレンドを分析する手法として移動平均線を利用する手法も広く知られており、空売り銘柄のスクリーンング方法の一つでもあります。移動平均線とは、一定期間の株価の平均値をつなぎ合わせた線のことで、5日間、25日間、75日間といった期間の移動平均線が使われることが多いようです。移動平均線と現在の株価を比べることで、現在の株価が過去の平均に比べてどの程度の位置にあるのかを知ることができるほか、移動平均が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンドと捉えるというのが基本的な利用方法と言われています。
また、異なる期間の移動平均線を2本から3本使って、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜ける状態を「デットクロス」と呼び、売りのサインと捉える(逆の場合を「ゴールデンクロス」と呼び、買いのサインと捉える)という考え方もあるようです。ゴールデンクロスとデッドクロスが発生した後、短期から中期までトレンドに沿って株価が推移する可能性が高いため、スイングトレードをすればある程度の利益が見込めると思われます。しかし、「ダマシ」が発生する場合もありますので、トレードをする銘柄を選ぶ際とチャートから売買タイミングを判断する際は注意する必要があります。
【関連記事】 移動平均線における「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」とは? |
信用倍率が高い銘柄に注目する
株価は投資家の需給によっても決まる側面を持っているといわれます。様々な投資家の需給のうち、信用取引の需給(仮需給)を表すものとして信用倍率が知られています。信用倍率は「信用買い残高÷信用売り残高」で計算される指標で、信用倍率が1倍を超えている状態は、信用買い残高が信用売り残高を上回っている状態となります。
一方、制度信用取引は建玉を維持できるのが6カ月と決まっている取引ですので、この期限までに買い建玉の返済が必要で、この「売り返済(転売)」が売り圧力になる可能性があります。つまり、信用倍率が高い銘柄ほど信用買い残高が多い状態なので将来の売り圧力が強いと推測し、新規売りの対象として考えることができるという考え方です。当然、多くの建玉で手仕舞いタイミングが到来したとしても、例えばそのタイミングで新規の買いを誘発する要因(サプライズニュースなど)があれば思い通りの株価推移とならないことも考えられますし、期限が到来した投資家が引き続き株価が上昇すると考え、売り返済を行った後、同日中に新規買いを行い、買い残高を建て直す(信用残高を回転させる)ことも考えられますので、参考にする際は、その点を十分留意する必要があります。また、信用取引をする場合は金利や貸株料、逆日歩など、各種手数料が発生する場合もありますので、取引コストについても注意が必要です。逆に言えば、銘柄の信用倍率を注意すれば、買い建玉の返済時期や売り建玉の買い戻し時期に合わせてスイングトレードを行うことも不可能ではありません。
信用倍率の情報は各証券会社の取引画面や日本証券所グループのホームページから確認できますので、気になる方はぜひ確認してください。
信用取引ができない銘柄に注意
ここまで短期取引における銘柄のスクリーニングについて説明してきましたが、信用取引を使って売買を行う場合には、信用取引口座を開設していたとしても上場しているすべての銘柄で信用取引を実施できるわけではありません。対象として考えていた銘柄が信用取引の対象外であれば信用取引を使った売買はできないので、注意が必要です。信用取引ができない銘柄の情報は、証券会社や日本証券取引所のホームページに載っていることが多いので、取引をする前は確認してください。ここでは一般信用取引と制度信用取引に分けて説明します。
一般信用取引対象銘柄
まず、一般信用取引については、証券会社によってサービス自体の取扱い有無がありますので、事前の確認が必要です。また、取扱いが有ったとしても、「信用取引の買いのみが可能」「信用取引の買いも売りも可能」と証券会社によってサービス内容が異なる場合もありますので事前の確認が必要です。
また、最も重要なのが、一般信用取引の取引対象銘柄は各証券会社によって異なる点です。取引を行う証券会社の取引対象銘柄を事前に確認しておきましょう。
制度信用取引対象銘柄
制度信用取引については、各証券会社で基本的には取引対象銘柄に差異はありません(証券会社独自の制約がある場合は、この限りではありません)。取引対象銘柄は制度信用銘柄(信用取引で買いができる銘柄)として、また、制度信用銘柄のうち売りもできる銘柄は貸借銘柄(買いも売りもできる銘柄)として選定されていますので、事前に情報を把握することが重要となります。
また、制度信用銘柄、更には貸借銘柄に選定されていたとしても銘柄別制限措置と呼ばれる取引制限がかけられている場合がありますので、取引所、日証金、証券会社のHP等で公表されている制限情報をしっかり把握する必要があります。
空売り価格規制
信用取引で新規売り(空売り)を行う際には「空売り価格規制」にも注意する必要があります。「空売り価格規制」は、空売りが売り崩しに利用されることのないよう設けられた規制で、規制対象となった銘柄について、一定の条件に抵触した際に、発注価格の制約を設けるものです。個人投資家の場合は50単位を超える空売り注文について、直近の株価と比較して発注できる価格の下限が設定されます。
規制の細かいルールや規制発動条件などは別項で詳しく説明していますので、事前に理解しておくことが大切です。なお、空売り規制が発動されている銘柄は取引所のHP等で確認できますので、売買を行う前に必ず確認するようにしましょう。
まとめ
2日から1週間の間株式を保有するスイングトレードを行う際の銘柄スクリーニングについて、いくつかの手法を紹介してきましたが、いずれの手法も、あくまで株価動向を利用した過去の経験則からくる指標に過ぎず、未来の株価推移を確定するものではありません。また、信用取引を使うことによる注意点も多くありますので、これらの点を十分留意したうえで、各種指標やトレンドを売買する銘柄を選ぶ際の参考としてみてもよいかもしれません。
監修:日本証券金融株式会社
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