信用取引の建玉とは?建玉から何がわかる?
建玉(たてぎょく)とは?
信用取引において、「資金もしくは株式を借りている状態(信用取引残高がある状態)」を「建玉を持っている」と言ったりします。信用取引で新規に約定し、残高を保有することを「信用残高を建てる」と言うこともあります。買いの信用取引残高は「買い建玉」、売りの信用取引残高は「売り建玉」となります。それぞれの銘柄の値動きを占うのに建玉の管理や分析は大変重要ですので、詳しく説明します。
建玉から何がわかる?
信用取引において、日々の建玉の動きは「新規」と「返済」の2種類に分けられています。新規とは該当日に新たに借り入れた建玉のことを指し、返済とは今までの借り入れた建玉を返したことを指します。一方で、建玉の残高については、該当日に返済することなく、翌営業日まで「借り続ける、もしくは、借り直している状態」を示すことになります。「借り直している状態」とは、信用買いをした株式を一旦売却してから、新たに信用買いをすることを指します。例えば、ある投資家が株価が400円の時に信用買いをし、500円に達した時点で売却して建玉を返済し、次に株価が480円に下落した時信用取引で買い直し、600円で売却するなどの状況が、「借り直している状態」になります。
買い残高が厚く、返済が進まない状態というのは、今後の株価の値上がりに多くの投資家が期待していることを示しています。一方で、売り残高が厚い場合は、今後の株価の値下がりに多くの投資家が期待していることを示しています。信用残高(建玉)から投資家の意向を汲むことができます。業績やニュース以外の情報として、参考になります。
また制度信用取引の信用残高(建玉)では、次のようなことが言えます。
制度信用取引の建玉の特徴
まず制度信用取引で買いも売りもできる銘柄(貸借銘柄)に比べて、買いしかできない銘柄(貸借融資銘柄)では、信用取引の残高として買い残高しか建つことがありません。よって、投資家の意向を汲むことが難しくなります(当該銘柄の売りに関する意向が汲めない)。一方、一般信用取引では取り扱い銘柄は各証券会社で異なります。
また、貸借銘柄において、買い残高と売り残高がともに厚い銘柄については、投資家の意向がもみ合っている状態と言えますので、この場合も注意が必要になります。
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建玉の返済はどうやればいい?
信用残高(建玉)は、投資家が証券会社から借りている残高ですので、いずれかは返済する必要があります。信用取引の返済期限はどのようになっているでしょうか。また、信用取引の返済方法にはどのような方法があるでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
建玉の返済期限
建玉の返済期限は、制度信用取引と一般信用取引で異なります。制度信用取引は6ヵ月となり、一般信用取引は無期限(証券会社が定めることができる)とされています。制度信用取引の場合、約定してから6ヵ月後には必ず返済しなければならないことに注意が必要となります。また、6ヵ月応当日までに返済が必須となることから、証券会社によっては1営業日前までに返済決済を完了するようにルールを定めている場合もありますので、併せて注意が必要となります。
ちなみに制度信用取引の「6ヶ月」の返済期限に注目すると、現時点で積み上がった買い建玉(売り建玉)が、半年後の返済によって将来の売り圧力(買い圧力)になるという見方もできますので、投資判断に用いてみるのも良いでしょう。
その他として、証券会社による上場廃止などに伴う取扱廃止(制度信用銘柄の場合は選定取消)やコーポレートアクション(株式移転、株式交換、会社合併、株式併合や株式分割など)に伴う返済要請などがあります。証券会社のWebサイトでの掲載や証券会社からの通知等があり、銘柄の取り扱いに関しては制度信用取引と一般信用取引で異なる場合があるため、注意が必要となります。
建玉の返済方法
建玉の返済方法は、買い建玉および売り建玉のそれぞれ2通りあります。買い建玉には①売り返済(転売)と②現引きがあり、売り建玉には①買い返済(買戻し)と②現渡しがあります。
投資家のみなさまが多くの場合で実施する返済方法が、「買い建玉の転売」と「売り建玉の買戻し」になります。買い建玉の場合、証券会社から資金を借り入れて買い付けた有価証券を市場で売却することによって、当該売却代金(資金)をもって証券会社からの借入資金を返済することになります。売り建玉の場合は、有価証券を買い付けることで当該借入株式を返済することになります。
その他の返済方法として、買い建玉の「現引き」や売り建玉の「現渡し」があります。これらの返済方法は、証券会社から借り入れた資金や株式を投資家自身が調達して返済する方法になります。少し分かりにくいので順番に説明します。
現引きとは
買い建玉の返済方法の「現引き」について、説明します。
買い建玉は、投資家が証券会社から資金を借り入れて、有価証券を買付けている(買付株式を証券会社に担保として差し入れている)状態となります。つまりは、投資家自身が証券会社から借り入れた資金同額を調達し、証券会社に引き渡せば、証券会社からの借入はなくなり、買付有価証券を引き受けることが可能になります。このような形での建玉の返済方法を「現引き」と言います。
「現引き」する場合、当初の約定値段を元に引き受けることとなります。短期ではなく中長期に当該銘柄を保有する場合などは、信用残高(建玉)としてよりも現物株式として保有する方が金利支払いなどのコストがなくなります。また、現物株式として保有した場合、基準日の名義を確保することができるため株主優待や配当金、議決権等のメリットも享受できるようになります。一方で、手元資金以上の信用取引をしている場合は現引きのために追加での資金調達が必要になるほか、信用取引として約定後に大幅に株価が値下がりしている場合は「現引き」することで割高な株価(信用取引の新規約定時の株価)で現物株式を保有することになるので、注意が必要になります。
現渡しとは
売り建玉の返済方法の「現渡し」について、説明します。
売り建玉は、投資家が証券会社から株式を借り入れている(売却代金を証券会社に担保として差し入れている)状態となります。つまりは、投資家自身が証券会社から借り入れている株式を調達し、証券会社に引き渡せば、証券会社から株式を借り入れている状態を解消することができます。このような形での建玉の返済方法を「現渡し」と言います。
「現渡し」する場合、証券会社へ引き渡す株式を調達することとなります。売り建玉の保有時(信用取引として新規に約定した時)から株価が値上がりしている場合、そのまま「買い返済(買戻し)」をすると損失が出ます。しかし、証券会社への引き渡し株式を現在の株価以下で調達できれば、損失を抑えることができます。ただし、投資家自身が引き渡し株式を調達することは大変困難です。このため、「現渡し」は、投資家が元々保有している株式の株価の値下がり対策として、売り建玉を建てた際の返済方法として多く利用されます。
まとめ
信用取引の残高(建玉)について、その状態から投資家の意向を汲み取ることを説明しました。まず建玉の状態から銘柄の値動きを読むには、制度信用・一般信用の両取引の違いに注意しましょう。また、建玉の返済として、返済期限や返済方法について詳しく説明しました。特に、「現引き」「現渡し」は実行する機会が少ないかもしれませんが、そのメリットなどを理解し投資判断に利用してみてはいかがでしょうか。
監修:日本証券金融株式会社
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