複利と単利の違いとは?
単利とは、当初の投資元本に対して利息をつけて計算する方法です。複利とは、投資元本に対してだけでなく、利息に対しても利息が付いていく方法です。それぞれ、利息の計算方法や増え方、メリット・デメリットが異なります。
この記事で複利と単利の計算方法の違いを理解して、金融商品を選ぶ際はどちらが自分に合っているかを確認しましょう。
単利とは?
単利は資産運用で得られた収益を毎回受け取り、元本は当初の金額のまま変わりません。元本が変わらないため、受け取る利息の金額も毎回同じです。
単利のメリットは、定期的に分配金がもらえる点です。単利として、国債や社債、地方債、分配型の投資信託などがあります。
複利とは?
複利とは、元利合計とも呼ばれ、利息を投資元本に回して再投資するため、投資元本が少しづつ増えていきます。投資元本の増加に伴い、利息が雪だるま式に増えていきます。複利のデメリットは利息を再投資するため、単利のように定期的に分配金を受け取れない点です。複利の商品は、分配金の再投資型の投資信託が代表的です。
同じ複利の商品でも、利息を投資元本に組み入れる期間が短ければ、増え方は早くなります。たとえば、半年で元本に組み入れる商品と1年で元本に組み入れる商品を比べると、半年の商品のほうが元本を早く増やせるため、資産もその分早く増やせます。
金利・利息・利子との違い
金利とは、お金を借りた方が、借りたお金に対して追加で払う金額の割合のことです。たとえば、あなたが銀行に100万円を預けた(貸した)とします。金利が年間1%なら、1年間の利息は1,000,000×0.01=10,000円という計算になります。あなたは、1年後銀行から101万円返してもらうことができます。
金利と合わせて覚えておきたいことが「利息」です。利息とは、お金を貸したときにもらえる手数料のようなものです。金利が「割合(%)」で表すのに対し、利息は「金額(円)」で表します。
また、利息と同じような言葉で「利子」があります。利息はお金を「貸した側がもらえるお金」に対し、利子は「お金を借りた側が払うお金」です。立場の違いで呼び方が変わるだけで、基本的には同じ意味です。
複利と単利それぞれの計算方法
単利と複利はそれぞれ以下のように計算できます。
・単利の計算式
利息(円)=元本(円)×金利(%/年)×運用年数(年) |
たとえば、元本100万円を金利2%の単利で10年間運用したとすると、1,000,000×0.02×10=200,000円の利息がつきます。
・複利の計算式
利息(円)=元本(円)×(1+金利(%/年)/100)^運用年数(年) |
単利の計算と同じ、元本100万円を金利2%の単利で10年間運用したとすると、
1,000,000×(1+0.02)^10=1,218,994円の利息がつきます。
元本と金利が同じでも、複利のほうが単利より100万円以上も多くの利息を受け取れることが分かります。
このように単利と複利の計算式の違いを理解することが資産形成の第1歩となります。
資産を2倍に増やす「72の法則」とは?
72の法則とは、複利の資産運用において、金利◯%で元本を2倍にするためにどの程度の期間がかかるかを調べる計算方法です。
複利の効果を利用した資産運用で知っておきたいことが「72の法則」です。72の法則を利用すれば、資産を2倍にするまでに「どの程度の金利」で「どの程度の期間」が必要かが簡単に計算できます。
72の法則の計算方法
72の法則の基本的な計算式は、以下のとおりです。
72÷金利(年利)=2倍になるまでの年数 |
たとえば、0.002%の金利(年利)の銀行に定期預金したとします。
72÷0.002=36000(年) |
つまり、資産を2倍にするためには3万6千年かかる計算です。
金利(年利)2%で資産運用した場合は、
72÷2=36(年) |
24年で資産が2倍になります。このように、同じ複利でも金利が低いと、複利の効果が小さくなってしまいます。ちなみに、同じく金利(年利)2%で100万円を、単利で資産運用したとすると、1年の利息は、
1,000,000×0.02=20,000円 |
です。つまり、資産を2倍にするためには、
1,000,000÷20,000=50年 |
50年かかります。同じ金利2%でも、複利のほうが単利より約14年も早く資産を2倍に増やせることが計算できます。このことからも複利効果を得ることは将来の資産形成を計画していく上必要な方法とわかります。72の法則を用いてご自身の目的に応じて何年で資産を2倍にしたいかを入力し年率を算出してみましょう。
高い利回りを求めるには?
以上の結果から、資産を効果的に増やすためには、利回りの高い複利商品を選ぶことが重要だと分かりました。利回りとは、投資元本に対する、利息や売却益を含めた利益全体の割合を一定期間(通常1年間)で平均したものです。
利回りは、株なのか債券なのか投資の種類や銘柄、取り扱う会社などによってさまざまです。例を挙げると、投資信託において国内債券型は全体的に低い利回りですが、グローバル株式型は10%を超える商品も数多く存在します。
利回りが高い商品はリスクも高くなる傾向があります。利回りはあくまで「想定」のため、運用状況が悪くなれば、損失が発生します。利回りの高さだけでなく、リスクとのバランスを考えて、商品を選ぶようにしましょう。
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複利計算のシミュレーション
複利効果を実際に運用シミュレーションをしてみましょう。以下の表は、元金100万円を年利2%と年利4%で複利で運用した場合の計算結果です。
年利2% | 年利4% | |
5年後 | 1,104,081円 | 1,216,653円 |
10年後 | 1,218,994円 | 1,480,244円 |
15年後 | 1,345,868円 | 1,800,944円 |
20年後 | 1,485,947円 | 2,191,123円 |
30年後 | 1,811,362円 | 3,243,398円 |
40年後 | 2,208,040円 | 4,801,021円 |
5年後の利息の差は10万円程度ですが、20年後で約70万円、40年後には約260万円と、2倍以上の差がひらきます。たった年利2%の差でこれほどの大きな差になるとは、やはり複利の力はあなどれません。
このようなシミュレーションから、複利は同じ元金からスタートしても、利率の大きさや積立期間の長さで合計金額が異なることが分かります。
複利と長期投資を組み合わせると相性が良い
複利は時間が経てば経つほど、効果が大きくなります。そのため、長期投資との相性がよいことが特徴です。長期投資とは、数年から数十年の長い期間で投資する投資方法です。
複利の効果を高めるためには長期的に資産運用する
複利の効果を十分に発揮するには、長期的な資産運用が必要です。なぜなら、短期間だと単利とあまり変わらず、複利の効果が十分に得られないためです。
デイトレードやスイングトレードなどの1日〜数週間の短期間で取引する「短期投資」では、複利の効果を十分に発揮できません。複利の効果を狙うなら、数年から数十年かけて運用できる「長期投資」がおすすめです。
焦らずコツコツ長期で投資することが重要
長期投資は短期投資に比べて変動が少ない分、大きなリターンを期待できません。その反面、価格変動のリスクを軽減できるメリットがあります。
しかし、長期投資でも価格変動が無いわけではありません。一時的な値下がりに焦って手放してしまっては、せっかくの複利効果も水の泡です。
多少の価格変動はあるものと考えて、焦らずじっくりコツコツ長期投資をすることが複利で資産を増やすポイントです。
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複利で資産を増やすためはどうすればいい?
複利を利用した資産運用がどれほど効果的かお分かりいただけたでしょうか?それでは、具体的にどうすれば複利効果を活用した資産運用ができるのかをこれから解説します。
銀行に預金するだけじゃお金は増えない
金融機構局のデータによると、2022年3月末時点での、銀行の定期預金の平均年利率は0.006%です。(契約期間が5年の場合)
これは、100万円を預けても1年間でもらえる利息は、
1,000,000×0.00006=60円 |
と60円しか利息がもらえない計算です。10年預けたとしてもたった600円にしかなりません。
1970年代には3%だった銀行の金利も、バブルがはじけてから現在まで低金利の状態が続いています。低金利政策が続く限り、銀行の金利が上がることはあまり期待できません。いくら複利の効果がすごいといっても、0.00数%程度の低金利ではどれだけ長期間預けようが資産は一向に増えないでしょう。
もちろん、銀行に預けることでお金を確実に保有できるメリットがあります。しかし、資産を増やす目的で利用することは効果的ではありません。
長期的に積立てができる「つみたてNISA」「iDeCo」
複利を利用した商品には、さまざまな種類があります。長期的な運用が可能で、投資初心者でも始めやすい投資商品を紹介します。
つみたてNISA
2018年からスタートした「つみたてNISA」は、金融庁が少額から長期・積立・分散投資ができるように支援している非課税制度です。原則として、投資で得た利益には20.315%の税金がかかり、利益から差し引かれます。しかし、つみたてNISAは20年間で最大800万円(毎年40万円が上限)の非課税枠を使うことができます。
つみたてNISAの対象商品は、「長期・積立・分散」の投資に適していると金融庁が判断した投資商品に厳選されているため、投資初心者でも投資しやすいことが特徴です。
ただし、非課税対象の上限枠である年間40万を超えた分は、非課税対象にはなりません。また、非課税投資枠の未使用分があっても、翌年に繰り越すこともできません。
なお、つみたてNISAは2042年までの期間限定制度です。2042年に購入した投資商品も20年間(2061年まで)は非課税で保有できます。
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iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で決めた額を積み立て運用し、公的年金にプラスして、給付を受けられる私的年金制度です。受け取り開始年齢は、原則60歳からです。受け取り方は、年金として分割で受け取るか、または一時金として一括で受け取るか、または両方を併用して受け取るかを選べます。
iDeCoでは、以下の3つの税制面で優遇措置を受けられます。
・掛金の全額を所得から控除できるため、所得税と住民税を安くできる。 ・運用で得た利益に対して税金がかからない。 ・受け取りの際、一定額までは税金がかからない。 |
iDeCoで気をつける点として、年金制度であるため60歳までは一切資産を引き出せないことが挙げられます。そのため、途中でお金が必要になっても、iDeCoで積み立てたお金は老後の生活でしか使えないことを心に留めておきましょう。
投資の際は分散投資を心がけよう
制つみたてNISAもiDeCoも税制面で非常にメリットがある度です。
しかし、投資である以上、価格変動のリスクはあります。投資でリスクを軽減するためには、分散投資をすることがポイントです。
分散投資には、主に3つの分散方法があります。
資産の分散 | 株式や債券、預金、不動産投資など、異なる値動きの金融商品を組み合わせる。 |
地域の分散 | 複数の地域や通貨を組み合わせて、地域の状況による値動きのリスクを抑える。 |
時間の分散 | 金融商品の購入時期をずらして、一時的な価格変動のリスクを抑える。上手に分散投資をして、投資のリスクを減らしましょう。 |
身近な金融商品(株、投資信託、FX、NISA)の複利比較
つみたてNISAやiDeCo以外にも、たくさんの投資の種類があります。ここでは、誰もが一度は耳にしたことがある身近な金融商品についても、複利が利用できるか解説します。
株式
株式投資は、利益の種類によっては複利効果を期待できる金融商品です。
株式投資には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」の2種類の利益があります。キャピタルゲインとは、株式を買ったときと売ったときの差額で得られる利益のことです。インカムゲインは、配当金や株主優待など、株式を保有している間に得られる利益を指します。
複利効果を狙うには、キャピタルゲインではなくインカムゲインをメインに運用しましょう。特に個別銘柄の配当利回りの情報を確認するといいでしょう。
投資信託
投資信託は、たくさんの投資家から集めた資金を、投資の専門家が株式や債券などに投資し運用する仕組みの金融商品です。忙しい会社員や投資初心者にお勧めの商品となっています。
運用で得られた利益を、投資額に応じて投資家に分配します。投資信託は、投資のプロが選んだ株式や債券など複数の商品に投資するため、投資リスクを低減させる分散投資ができます。
複利効果を得るためには「累積投資型」の投資信託がおすすめです。累積投資型とは、自動的に分配金が再投資される仕組みの投資信託です。
このように投資信託複利は得られた分配金を長期投資に活かすことで、大きな効果を発揮します。
ただし、投資信託で長期運用する際は、手数料で費用がかさまないように注意しましょう。購入手数料がかからない「ノーロード型」の商品を選ぶと、費用を抑えられます。
また、毎月の投資金額を設定し積立投資を行うことでよりリスクを分散させて投資することが可能です。
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FX
FXとは、「Foreign Exchange」の頭文字をとったもので「外国為替証拠金取引」と呼ばれます。日本円や米ドルなどを売り買いしたときに発生する差額で利益を生み出す仕組みの投資です。
たとえば、日本からアメリカへ旅行するときに、日本円を「1ドル=100円」のレートで米ドルに交換したとします。その後、日本に帰ってきたときに、レートが「1ドル=110円」になっていたら「110−100=10円」の利益が得られます。
レートは日々変動するため、安くなったら買い、高くなったら売る、を繰り返して利益を得る手法です。
FXは担保となる保証金の最大25倍の金額を取引できます。つまり、資金の何倍もの金額の取引できる「レバレッジ効果」を期待できます。レバレッジ効果により、少ない資金で大きな利益を得られる可能性があることが、他の投資にはない特徴です。
一方で、万が一損失が出た場合、その分損失も大きくなるリスクもあります。
FXも「FX複利」として、複利の恩恵を受けられます。具体的にはFXの為替差で得た利益をそのまま次の投資に回すことです。
ただし、FX複利を行うと1度得た利益を引き出すことができないデメリットがあるので注意が必要です。複利運用するなら、レバレッジ効果の高いものより、長期的に安定した運用を心がけましょう。
NISA
NISAは金融庁が支援している非課税制度です。成人が利用できる「一般NISA」「つみたてNISA」と、未成年が利用できる「ジュニアNISA」の3種類あります。
2020年制度改正により、ジュニアNISAの投資可能期間が2023年までとされているため、ここでは一般NISAについて解説します。つみたてNISAについては、先に解説したとおりです。
一般NISAで投資できる商品は、上場株式・ETF・公募株式投信・REIT等と、つみたてNISAに比べて選択の幅が広いことが特徴です。年間の非課税枠も一般NISAは120万円までと、つみたてNISAより多くの金額を投資できます。
一方で、非課税保有期間が最長5年と、つみたてNISAの20年に比べて短く、複利効果を狙って長期で運用したい方には向いていません。5年間運用した商品を翌年の非課税枠に移す「ロールオーバー」と呼ばれる方法もありますが、それでも最長10年です。
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まとめ
最後に、この記事の内容を以下にまとめます。
・単利は、当初の投資元本に対して利息がつくのに対し、複利は利息に対しても利息がつく。 ・同じ金利でも、単利と複利で資産の増え方が変わる。 ・複利は長期間の運用で効果があらわれる。 ・「72の法則」で資産が2倍になるまでの期間が分かる。 |
複利は資産運用をする上で重要な考え方です。「複利は人類最大の発明」と、アインシュタインが言ったこともうなづけます。「複利×長期投資」で、効果的な資産運用をしてはいかがでしょうか?
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