投資信託 [ 目論見書読みこなしガイド ]
【第21回】
リスク調整後リターン
目論見書の中で「リスク調整後リターン」という言葉が使われていることがあります。例えば、ファンドの特色の欄などに「アナリストによる調査と分析により、主に資本効率に着目して配当を含む株主価値の創出に優れた銘柄を世界中から選択し、ポートフォリオを構築することで、中長期的にリスク調整後ベースでより高いリターン獲得を目指します」というように記載されています。
このリスク調整後リターンとは、ファンドの運用成績を評価する指標のひとつで、ファンドの基準価額の騰落による運用成績に加えて、運用期間中の基準価額の変動幅など定量的なリスク要因についても考慮にいれた上で、ファンドがどれだけ安定的にリターンを得ることができたかを分析するための評価尺度のことです。
リスク調整後リターンの指標としては、「シャープ測度(シャープレシオ)」が有名で、投資信託の評価会社の多くも、ファンドの評価を行なう際に、この「シャープ測度」による評価を採用しています。
シャープ測度における「リスク」とは、具体的には、「基準価額(運用成績)のばらつき」のことで、このばらつきを「標準偏差」という値によってあらわします。「標準偏差」の値が大きいほど、ばらつきが大きいことを示しています。そして、シャープ測度は、リスクを負担したことによって得られたリターン(「超過リターン」)をこの標準偏差で割ることで求めます。シャープ測度の数値が大きいほど、安定的に良好なリターンが得られていることを表します。
例えば、次の2本のファンドで見てみましょう。両者とも同じ日本株の小型株を投資対象としていて、過去1年間の騰落率がファンドAは+6.66%、ファンドBは+5.25%、ベンチマークの騰落率は+0.93%です。これだけでは、両ファンドともにベンチマークをアウトパフォームしており、さらにファンドAの方の値上がり率が高いために、ファンドAが魅力的に見えます。しかし、シャープ測度を見ると、ファンドAは+0.09、ファンドBは+0.24とファンドBの方が高くなっています。これは、リスクに見合ったリターンという面では、ファンドBの方が投資効率が高い、とったリスクに対してリターンが大きいことを意味しています。ファンドの世界では、シャープレシオの高いファンドの方が良いファンドであると、一般に言われています。
したがって、上記の目論見書の例でいる「中長期的にリスク調整後ベースでより高いリターン獲得を目指す」というのは、ただ、大きなリスクをとってでも高い値上がり率を追い求めるというのではなく、とったリスクに対してより高いリターンを目指す、リスクに見合ったリターンを目指すという意味であると解釈されます。
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