株の割高・割安からPERとPBRの計算方法とは?

投稿日:2022/08/29 最終更新日:2023/06/28
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PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)は、現在の企業の株価が割安か割高かを判断するために使う指標です。PERは「時価総額÷純利益」または「株価÷1株あたりの純資産」で算出でき、PBRは「株価÷1株あたりの純資産」で算出できます。どちらも似た意味を持つ指標ですが、両者には算出に用いる数値が異なります。

また、株式投資において良く使う指標としてROE(自己資本比率)があります。ROEは「当期純利益÷自己資本×100」で算出でき、投資した場合の利回りの程度を参考にできる指標です。今回はPERとPBRの違いについて、ROEとの違いやPER・PBRを使う上での注意点について解説します。

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PERとPBRそれぞれの指標の違いは

PERとPBRはどちらも株価が割安か割高かを判断する指標ですが、算出方法や用いる数値が異なります。 株式投資において、現在の株価が割安か割高か判断できれば、投資する銘柄の選定や取引のタイミングなどの決定に役立ちます。   

PERとは

PERとはPrice Earnings Ratioの頭文字を取った言葉であり、株価収益率を意味します。REPは、企業の純利益と株価の関係を示す指標であり、PERが低ければ低いほどその株価は割安と判断できます。

PERは以下の計算式で算出できます。

PER(株価収益率)=株価÷1株あたりの当期純利益(EPS)

1株あたりの当期純利益(EPS)とは、当期純利益÷期中平均発行済株式数で算出し、企業の一決算期における純利益の額を1株あたりに換算した数値です。当期純利益は、企業が公開している損益計算書に記載されています。  

PBRとは

PBRとはPrice Book-value Ratioの頭文字を取った言葉であり、株価純資産倍率を意味します。PBRは、企業の純資産と株価との関係を示す指標であり、低ければ低いほどその株価は割安と判断されます。

PBRは以下の計算式で算出できます。

PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株あたりの純資産(BPS)

1株あたりの純資産(BPS)とは、期末純資産額÷期末株式数で算出される数値です。期末株式数は、期末の発行済株式数から自己株式数を引いた値を用います。期末純資産額は、企業が公開している貸借対照表に記載されています。

PERとPBRの違い

PERとPBRはどちらも株価が割安か否かを示す指標ですが、両者には基準となる数値が純資産なのか、純利益なのかという点が異なります。PER(株価収益率)は純利益を基準に算出し、PBR(株価純資産倍率)は純資産を基準に算出します。

PERは企業の「純利益」から見た時価総額の割合から、その株価が割安なのか割高なのかを判断し、PBRは企業の「純資産」から見た時価総額の割合から、その株価が割安なのか割高なのかを判断する指標です。

なお、当期純利益とは企業がその期で得た最終的な利益(本業で得た利益から経費や税金などを差し引いた金額)であり、純資産とは企業の総資本から負債を除いた資本です。当期純利益と純資産の違いからも、PERとPBRが異なる指標であることがわかります。

PERを使って株価の割安・割高を判断する方法

PERは15倍が適正とされており、上回れば割高であり下回れば割安とされていますが、業種ごとに目安が異なるため、他社と比較して判断します。  

PERで株価の水準を判断する

実際に株価800円、1株あたりの純利益が100円の銘柄のPERを算出してみましょう。この場合、計算式は「株価÷1株あたりの純利益」を使うため、「800÷100=8」となり、この銘柄のPERは8倍であることがわかります。この数値をもとに、PERの一般的な目安や複数の競合他社のPERと比較しながら、株価が割安か割高かを判断します。  

PERの目安を知る

PERを算出できても目安がわからなければ、株価が割安か割高かを判断することはできません。そのため、PERの目安を把握しておくことは必要不可欠です。

PERの目安は15倍と言われています。明確な定義がないものの15倍が目安とされている理由は、日経平均株価のPERは14〜16倍を推移し続けているからです。

ただし、新型コロナウイルスの影響による株価の大幅な変動に伴い、2020年8月から2021年3月までの日経平均株価のPERは20〜25倍前後です。そのため、目安はあくまでも目安として競合他社のPERと比較することも忘れないようにしましょう。

2022年7月における東証プライム市場の業種別のPER水準を見ると、水産・農林業は13.0倍、鉱業は12.2倍、石油・石炭製品は3.3倍、医薬品は37.3倍、情報・通信業は23.1倍です。このように、PERは業種によって目安が大きく異なるため、総合的な目安である15倍だけでなく競合他社との比較も必要不可欠です。  

PERを使う際の注意点

PERを指標として使う際には、以下の点に注意が必要です。

  • 赤字企業には使えない
  • 予想PERは大きく外れることがある 
  • 一時的に大きく変動することがある

赤字企業には使えない

まず、赤字企業は純利益がマイナスなのでPERが使えません。PERの計算において、株価はマイナスになることはありませんが、分母の純利益がマイナスであれば計算結果もマイナスになります。

PERは割安か割高かの判断だけではなく、投資した金額が何年分の当期純利益で回収できるか示す数値でもあります。年数はマイナスにできないため、指標として意味を成しません。

予想PERは大きく外れることがある

また、予想PERは純利益を予想して算出された数値であるため、大きく外れることがあります。純利益はこれまでの企業の動きや発表済みの情報から予想できます。

しかし、リーマンショックや新型コロナウイルスといった世界的な経済環境の変化、事故や事件が原因の事業成績の悪化などの思わぬ事態は予測することができないため、予想通りまたは予想に近い純利益になるとは限りません

予想純利益が大きく外れると、純利益をもとに算出される予想PERも大きく外れます。予想PERはあくまでも予想であり、必ず予想PER通りにはならないということを念頭に置いておきましょう。

一時的に大きく変動することがある

さらに、PERは一時的に変動することがあり、直近のPERだけでは参考にならないことがあります。PERが一時的に変動する要因としては、特別利益や特別損益が発生した場合です。特別損益が発生した年と翌年はPERが大きく変動しやすいため、3年程のPERを指標にすることをおすすめします。

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PBRを使って株価の割安・割高を判断する方法

PBRもPER同様、株価の割安感または割高感を示す指標です。株価を1株あたりの純資産で割ることで、現在の株価が1株あたりの純資産の何倍に相当するかを明確にし、1倍を基準に割安か割高かを判断します。  

PBRで株価の水準を判断する

PBRが割安の場合と、割高の場合を例に挙げて実際に算出します。

まず、株価1,000円で1株あたりの純資産が500円の企業のPBRは以下の通りです。

1000÷500=2

よってPBRは2倍であり、この企業の株価は割高であると判断できます。

次に、株価1,000円で1株あたりの純資産が2,000円の企業のPBRは以下のように算出できます。

1000÷2000=0.5

よってPBRは0.5倍であり、この企業の株価は割安であると判断できます。

PBRの目安を知る

PBRの目安は1倍です。株価を1株あたりの純資産で割った際に1倍よりも高ければ割高、低ければ割安、1倍であれば平均的と判断できます。

ただし、PBRも業種によって目安が異なるため、同業種のPBRの基準も確認した方が良いでしょう。2022年7月における東証プライム市場の業種別のPBR水準を見ると、水産・農林業は1.4倍、鉱業は0.5倍、石油・石炭製品は0.6倍、医薬品は1.4倍、情報・通信業は2.3倍です。

業種ごとにPBRの水準は大きく異なるため、1倍という全体のPBRの水準だけに目を向けるのではなく、競合他社との比較も重要です。  

PBRを使う際の注意点

PBRを使う際には以下の点に注意しましょう。

  • 短期投資には不向き
  • 割安の銘柄はリスクがある
  • 創業期の企業は割高になりやすい

短期投資には不向き

まず、PBRを算出する上で必要となる純資産は短期間で変動することがないため、PBRは短期投資には不向きとされる指標です。短期投資では短期的な株価の変動が重要ですが、純資産は短期的な株価の変動には影響しないためPBRを短期投資に使うことはできません。

割安の銘柄にはリスクがある/h4>

また、PBRが1以下の銘柄の中には赤字企業で株価が低迷している場合があるため、割安の銘柄として断言するにはリスクがあります。この場合、さらに株価が下落したり、最悪の場合倒産する可能性もあります。「割安だから今後株価が上昇する」と判断せずに、割安になっている理由を確認した上で投資を検討しなければなりません。

創業期の企業は割高になりやすい

最後に、創業期の企業は借入金が多いことから純資産比率が低くなるため、割高になりやすいという注意点があります。PBRを算出する上で純資産は分母となるため、創業期の企業のPBRは高くなりやすい傾向にあります。

ROEとの違いは?ROEの計算の仕方

株式投資の指標として、ROEという指標もよく使われる指標です。企業が効率的に利益を上げられれば、投資家の利回りも高くなるため重要な指標の一つとされています。  

ROEとは?

ROEとは、自己資本利益率を意味し、株主が出資したお金をもとにどの程度効率的に利益を上げているかを示す指標です。

ROEは以下の計算式で算出できます。

ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100 

例えば、株主から集めた1億円をもとに1事業年度活動し、その間に5,000万円の利益を上げた場合は上記の式に当てはめると「5,000万円÷1億円×100=50」となるため、自己資本比率は50%となります。  

ROEの使い方

基本的に、ROEが高ければ高いほど効率良く利益を上げていると判断でき、逆にROEが低いほど利益を上げる効率が悪いと判断できます。 ただし、ROEを算出する際に使う自己資本はあくまでも返済義務のないお金のことです。

つまり、ROEが高くても負債が多ければ経営の安定性が低くなり、株価も下がりやすくなります。そのためROEは一つの指標として活用できますが、ROEだけで投資価値を測ることはできません

なお、ROEの目安は10%です。ROEが10%を上回っていれば効率的に利益を上げられていると判断できます。ただし、ROEの基準も業種によって異なるため、10%という目安だけではなく競合他社との比較も必要です。  

ROE・PER・PBRの関係

ROE・PER・PBRはそれぞれ異なる指標を示すことから、一見無関係の指標に見えます。しかし、ROE・PER・PBRは「PBR=ROE×PER」という計算式もあるほど密接な関係にあるのです。

なぜなら、株式投資で損をしないためには自己資本で効率的に利益を上げられる優良企業を、自己資本よりも安い株価で買うことが重要だからです。つまり、自己資本の効率性を示すROE、株価の割安感または割高感を示すPERとPBRは、株式投資で損をしない銘柄を選ぶ上で必要な指標となります。

株式投資で効率的に利益を得るために、ROE・PER・PBRを上手く活用しましょう。

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PER・PBR・ROEを使って企業の株価を判断する

PER・PBR・ROEを使うことで、気になる銘柄の株価がその企業の成績に対して割安なのか、割高なのかを判断できます。しかし、PER・PBR・ROEはそれぞれ異なる指標であるため、それぞれの指標の意味を把握した上で正しく使い分けることが大切です。

また、指標はあくまでも指標であり、株価が予想通りに動くとは限りません。PER・PBR・ROEはそれぞれ一つの指標とし、鵜呑みにしないことも株式投資で利益を得るために重要です。  

3つの指標を使い分ける

PER、PBR、ROEは異なる指標であることから、投資方法などによって使い分けなければなりません。

例えば、PERは純利益をもとに算出するため赤字企業には使えません。また、PBRは純資産をもとに算出するため、短期的な変動のない純資産を参考にはできないことから短期投資には使えません。 このように、PER・PBR・ROEそれぞれの算出に使う数字から、どの投資方法であれば活用できるか判断して使い分けるようにしましょう。  

指標だけを鵜呑みにしない

PERとPBR、ROEはあくまで指標であり、必ずしも指標に合った株価の動きをするとは限らないため、それだけで株価を判断することは避けましょう。

株価は、リーマンショックやコロナなどの世界経済情勢や思わぬトラブルなどに影響されるため、必ずしも指標通りに動くとは限らず、時には指標とは全く異なる値動きになることもあります。つまり、指標ばかりに目を向けて投資すると、大きな損失を招く可能性もあるのです。

このように、指標だけを鵜呑みにすることはリスクが大きくなるため、指標とともに企業の業績や今後の経営方針なども確認した上で、投資するか否かを検討しましょう。

まとめ

株式投資において企業の純利益から株価の割安感または割高感を判断する指標であるPERと、企業の純資産から株価の割安感または割高感を判断する指標であるPBR。PERとPBRは一見似た指標ですが、両者は基準とするものに違いがあるため活用方法に違いがあります。

PER、PBR、ROEそれぞれの特徴や算出方法、注意点を正確に把握した上で、有効に活用し株式投資で効率良く利益を得ましょう。

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よくある質問

Q

PERとPBRの違いは?

A

算出に用いる数値が異なります。具体的には、PERは企業の純利益を用いるのに対し、PBRは企業の純資産を用います。

Q

PERの目安は?

A

業種全体の目安は15倍で、15倍よりも高ければ割高、低ければ割安と判断できます。ただし、業種ごとに平均値が異なるため、競合他社と比較することも大切です。

Q

PBRの目安は?

A

業種全体の目安は1倍で、1倍よりも高ければ割高、1倍よりも安ければ割安と判断できます。ただし、業種ごとに平均値が異なるため、競合他社と比較することも大切です。

Q

ROEとは?

A

自己資本比率のことで、企業が資本金(返済義務のないお金)でどの程度効率的に利益を上げられているかを示す指標です。「ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100」で算出できます。

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