解約返戻金とは?
保険の解約返戻金とは保険を契約している方が自ら解約したり、保険会社から契約を解除された場合などで契約者に対して払い戻されるお金です。保険会社によっては解約払戻金と呼ぶ場合もあります。主に終身保険や養老保険で払い戻されます。
解約返戻金はそれまでに払った保険料が全額払い戻されるケースとそうではないケースがあります。通常、契約年数が長ければ返戻率は上がります。年数が長期に渡れば払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるケースもあります。
解約返戻金は保険契約を自身で解除したり、解除された場合に受け取れるお金です。そのため、契約者の保険契約はなくなり、それまで受けられていた保障はなくなってしまいます。解約すればお金は戻ってきますが、保障がなくなる点は注意が必要です。
解約返戻金には3種類ある
解約返戻金はいくつか種類があります。低解約返戻金型、従来型の解約返戻金、無解約返戻金型の3種類です。それぞれの種類について説明していきます。
低解約返戻金型
低解約返戻金型の解約返戻金は解約金の返戻率を払込保険料の累計額の約70%の低い水準に設定している種類です。保険期間中に契約を解約ないし、解約された場合、解約返戻金は少なく設定されています。
保険料の払い込みが終わったら、契約返戻金の金額は増えるのが特徴です。
解約返戻金はいくら受け取れるの?
低解約返戻金型の場合、解約返戻金はいくら受け取れるのでしょうか。保険料を払い込みが終わるまでは返戻率は70%程度になっています。そして、保険料の支払いが終わると返戻率は100%を超えていきます。
実際に30歳男性で死亡保険金1000万円で、保険期間は終身、保険料払込期間を60歳までで設定していた場合で見てみましょう。
年齢(経過年数) | 保険金 | 累計払込保険料 | 解約返戻金 | 返戻率 |
35歳(5年) | 1000万円 | 1,563,000円 | 970,000円 | 約62.1% |
40歳(10年) | 1000万円 | 3,126,000円 | 2,080,000円 | 約66.5% |
45歳(15年) | 1000万円 | 4,689,000円 | 3,190,000円 | 約68.0% |
50歳(20年) | 1000万円 | 6,252,000円 | 4,340,000円 | 約69.4% |
55歳(25年) | 1000万円 | 7,815,000円 | 5,520,000円 | 約70.6% |
60歳(30年) | 1000万円 | 9,378,000円 | 6,680,000円 | 約71.2% |
65歳(35年) | 1000万円 | 9,378,000円 | 9,560,000円 | 約101.9% |
70歳(40年) | 1000万円 | 9,378,000円 | 9,710,000円 | 約103.5% |
※あくまで一例です。詳細は各保険会社にお問い合わせください。
契約当初5年目の35歳時点で解約した場合の返戻率は62.1%となっています。
10年目の40歳時点で解約した場合でも66.5%、20年目50歳時点で解約した場合は69.4%、30年目の60歳時点で解約した場合は71.2%と、100%を超えることはありません。
31年目の61歳時点で解約した場合の返戻率は111.30%と解約返戻金は100%を超えます。
40年目の70歳時点での返戻率は116.20%、50年目の80歳時点では120.90%の返戻率となっています。
従来型の解約返戻金
従来型の解約返戻金は、低解約返戻金型とは異なり、低解約返戻金期間を設けていないタイプです。払い込んだ保険料に応じて解約返戻金も増えていきます。
保険料を払い込み終わったときには、支払い済み保険料と解約返戻金は同程度になります。保険料払い込み終了後、低解約返戻金型とは異なり返戻金は大きくは増えませんが緩やかに増えていきます。
3つの種類のなかで返戻率は最も高いのが従来型の解約返戻金です。
ただし、昨今日本の政策金利は非常に低い状態が続いているので、返戻率も徐々に低下しているのも特徴です。
無解約返戻金型
無解約返戻金型の保険もあります。保険を解約ないし解約されても解約返戻金はまったくないか、あってもごくわずかな種類です。定期保険や医療保険にみられるケースが多いです。
解約返戻金がないことで、低解約返戻金型と比べて保険料が割安です。
保険で貯蓄の効果を狙うのであれば従来型や低解約返戻金型を選び、保障を得つつ保険料を割安にしたいと考える方には無解約返戻金型の保険を選ぶのも手かもしれません。
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解約返戻金の活用法、メリットって?
これまで、解約返戻金がどのようなものかについて見てきました。では、そんな解約返戻金はどのように活用すれば良いのでしょうか?解約することによって返戻金を得ることのメリット・デメリットを見て、その活用法を考えましょう。
解約返戻金のメリット
解約返戻金の最良の使い方、すなわち最大のメリットは、ズバリ「貯蓄」でしょう。
低金利下の現状では、普通預金の平均年利率は0.001%、5年の定期預金でも0.003%(出典 日本銀行『預金種類別店頭表示金利の平均年利率等』2021年8月18日発表)と、銀行に預けることで得られる利息は微々たるものでしょう。それに比べて、先ほど見た低解約返戻金型・終身保険のモデルでは、40年ほど経過して解約したときの利回り(返戻率)はおよそ103.5%でした。今の金利水準の下、普通預金で40年預けたときの利回りは、(1+0.001%)^40=約100.04%です。
この数値をもとにして、1000万円分を40年間貯蓄だけに回すと仮定すると
- 低解約返戻金型・終身保険 :10,000,000円×103.50%=10,350,000円(+350,000円)
- 普通預金(年利0.001%) :10,000,000円×100.04%=10,004,000円(+4,000円)
もちろん、貯蓄の面だけを比較しているという点に注意が必要ですが、こうしてみると、貯蓄手段の一つとして解約返戻金も検討に値するでしょう。
また、他に考えうる貯蓄の手段として「投資信託」があります。投資信託はさらに大きなリターンを得ることができますが、一方で元本割れ、すなわち損をするリスクも十分あります。この点、解約返戻金を活用した貯蓄にはこれといったリスクは無いでしょうから、そこもメリットの1つといえます。他の貯蓄手段としては個人年金保険やiDeCo(個人型確定拠出年金)、つみたてNISA、外貨積立預金など、様々な金融商品が開発されています。この際に色々と検討してみましょう。
さらに言えば、解約返戻金はもともと保険に付随したものです。貯蓄によるリターンも手にすることができますが、解約するまでは保険本来の機能である「安心感」を得ることができます。解約返戻金の活用法というテーマからは逸れますが、ある意味これもメリットといって良いでしょう。
解約返戻金のデメリット
もちろん、解約返戻金を活用することにはデメリットもあります。それは「保険を解約しなければいけない」というごくごく当然のことです。しかし、解約の際には十分注意が必要です。例えば、終身保険の解約返戻金を受け取ったら、その後終身保険が適用される状態になっても、保険金や給付金を請求できません。
保険は一度解約をすると元の契約に戻すことはできません。加入をしている保険を解約した後の保障は十分に得られるか、病気にかかったりしていると一定期間保険に加入できないこともあるのでその点は大丈夫か、を確認しましょう。また、保険を契約して短期間で早々に解約を申し出た場合にはペナルティが発生することもあります。保険の契約のためには必要な書類を準備したり、その処理をするために事務員が必要です。その必要経費のためにペナルティが発生するので保険の契約と解約をする際には、保険契約の内容をよく読み込んでペナルティの内容も理解した上で臨みましょう。
また、解約以前の問題として、契約の際にも「何年保険に加入すればいくらリターンを得られるのか」など、しっかり調べた上でサインしなければ、誤って元本割れしてしまい「普通預金に預けていた方がよかった、、」などと後悔することになってしまうかもしれません。契約の際から自分で調べたり、保険会社の方に聞くなどして知識をつけておきましょう。先ほど述べたように、他の金融商品と十分比較・検討した上で、自分にあったものを選ぶことが重要です。
解約返戻金で損をしないために
解約返戻金で損をしないための方法はあるのでしょうか。
解約返戻金で損をしないためのポイントや注意点を解説していきます。
解約返戻金の有無をチェック
まずは保険を考えるときに解約返戻金があるのか否か。どのように設定されているのかを確認しましょう。
解約返戻金の有無は保険の設計書を見ることでわかります。
保険商品ごとに解約返戻金がどうなっているのかを確認していきましょう。
終身保険
終身保険は解約返戻金が多い保険の一つです。終身保険は一生涯、死亡保障が受けられる保険です。
一般的に解約返戻金は保険の加入期間が長くなるにつれて増えていきます。
解約返戻金が多く、加入期間が長くなればその返戻金が増えるので貯蓄性の高い保険です。
養老保険
一定期間の死亡保障と貯蓄を兼ね備えた養老保険も解約返戻金が多い保険です。
解約返戻金は契約期間が長くなると返戻率が高まります。
貯蓄性が高いので、結婚資金や子どもの教育費に充てることも可能です。
また、満期を迎える前に万が一亡くなってしまえば死亡補償金を受け取れますが、満期時に生存していた場合は満期保険金を受け取ることができます。
学資保険
子どもの学費や教育資金を準備する学資保険。
学資保険は子どもの進学に合わせてお祝い金が受け取れたり、満期保険金を受け取ることもできます。
途中解約をしても解約返戻金はありますが、払い込み保険料よりも少なくなるケースが多くなります。
契約して早期に解約すると解約返戻金はごく僅かになってしまうケースもあるので注意をしましょう。
定期保険
一定期間を保障する定期保険。定期保険は解約返戻金が少ない保険の一つです。
解約返戻金はほとんどない掛け捨てのタイプや、あってもごくわずかです。
定期保険は保障に特化したタイプの保険で、貯蓄性に優れているわけではありません。
解約返戻金を多く得たくて、貯蓄性を求めるのであれば定期保険を選ぶのは避けたほうが良さそうです。
医療保険
病気や怪我で入院したり手術をしたりした際に保障を受けられる医療保険も解約返戻金が少ない保険の一つです。基本的には解約返戻金がなかったり、あってもごくわずかです。
医療保険は病気や怪我への備えに特化しているので、解約返戻金がそもそも設定されていないのです。
最近は医療保険でも掛け捨てではなく、解約返戻金があるタイプもありますが、掛け捨てのタイプよりも保険料は高めに設定されています。
解約するときの注意点
保険を解約するときにはどんなことに注意をすればいいのでしょうか。
保険は一度解約をすると元の契約に戻すことはできません。
加入をしている保険を解約した後の保障は十分に得られるか。病気にかかったりしていると一定期間保険に加入できないこともあるのでその点は大丈夫かを確認しましょう。
また、保険を契約して短期間で早々に解約を申し出た場合にはペナルティが発生することもあります。
保険の契約のためには必要な書類を準備したり、その処理をするために事務員が必要です。
その必要経費のためにペナルティが発生するので保険の契約と解約をする際には、保険契約の内容をよく読み込んでペナルティの内容も理解した上で臨みましょう。
解約返戻金に税金はかかる?
解約返戻金には税金がかかるのでしょうか。
解約返戻金は一時所得の扱いになり所得税の対象になるケースがあります。
具体的には払い込み保険料と解約返戻金の差額が50万円を超えた場合には所得税がかかります。
差益が50万円を超えない場合には所得税はかかりません。
所得税の課税対象となるかどうかは、計算式に当てはめてみましょう。
課税対象額は「(解約返戻金-払い込み保険料累計額-特別控除50万円)✕1/2」で計算できます。
解約返戻金に所得税がかかるかどうかは、しっかりと解約時に確認をしておきましょう。
解約返戻金に確定申告は必要か?
解約返戻金は一時所得扱いになり、差額に利益が出ていれば所得税の対象になります。
では、解約返戻金を受け取ったとき、確定申告は必要なのでしょうか。
自営業の方など確定申告が必要な方は、解約返戻金についても確定申告をしなければなりません。
また、一般的なサラリーマンや年金生活者でも、給与収入等の収入金額が2000万円以上の給与所得者で、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以上の場合や、公的年金等の収入金額の合計が400万円以上で、公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以上の場合は確定申告が必要です。
100万円を超える解約返戻金や年間20万円を超えた場合には保険会社から支払調書を受けるのでそれを元に確定申告が必要になります。
一般的なサラリーマンで給与所得が2000万円以下で、給与所得および退職所得以外の所得が20万円以下の場合は解約返戻金を受け取っても確定申告は必要ありません。
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満期保険金とは
保険期間が設定されている保険は期間が終了すると満期となります。
満期を迎えたときに生存していた場合、保険会社から満期保険金として契約者に保険会社から支払われるのが満期保険金です。
満期保険金がある保険には養老保険や学資保険があります。満期保険金について解説していきます。
養老保険
一定期間の死亡保障と貯蓄を兼ね備えた養老保険。
養老保険は死亡保険金と満期保険金が同額に設定されています。
保険期間の契約中は契約者が亡くなった場合、受取人が死亡保険金を受け取れます。
契約期間が満了するまで生存していた場合は、契約者が満期保険金を受け取ることができます。
学資保険
子どもの進学や教育資金のために加入する学資保険。
一定の期間で祝い金や満期保険金を受け取ることができます。
祝い金は子どもが一定の年齢になったり進学した際にお祝いとして贈られるお金です。お祝い金を受け取っても保険契約は継続しています。
学資保険の満期保険金は保険が満期を迎えたときに受け取るものなので、保険契約は終了となり、保障は受けられなくなります。
満期保険金にかかる税金
満期保険金を受け取った際に税金の扱いはどうなるのでしょうか。
満期保険金の受取人が保険料を支払った本人の場合には一時所得になり、所得税や住民税の対象となります。
一方で、保険料を支払った人とは別の方が受け取った場合には贈与税の対象になります。
所得税や住民税の考え方、贈与税の計算方法などについて解説していきます。
「所得・住民税」の計算方法
満期保険金を受け取った場合、受取人が保険料を支払った本人の場合には一時所得となり、所得税や住民税の対象となります。
一時所得の計算方法は、「(満期保険金-払い込み保険料累計額-特別控除50万円)✕1/2」になります。
一時所得には特別控除額が設けられていたり、養老保険などの一部には金融類似商品のものがあります。
その場合には源泉徴収がなされるので注意をしましょう。
贈与税の計算方法(一般贈与の場合)
満期保険金を受け取った場合、受取人が保険料を支払った本人ではなく別の方の場合、贈与税の対象になります。受取人が配偶者などの場合は一般贈与になり、課税対象となる額が大きいと割合が増えます。
一般贈与の場合、基礎控除は年間110万円となっています。
基礎控除後の課税価格が200万円以下なら税率は「10%」、200万円超300万円以下なら「税率15%、控除額10万円」、300万円超400万円以下なら「税率20%、控除額25万円」と上がり、3000万円超で「税率55%、控除額400万円」まで8段階となっています。
贈与税の計算方法(特別贈与の場合)
満期保険金を受け取った場合、受取人が保険料を支払った本人ではなく別の方の場合、贈与税の対象になり、受取人が親から子、祖父母から孫の場合の贈与税の特例贈与の課税対象となります。
基礎控除後の課税価格が200万円以下で「税率10%」、200万円超400万円以下で「税率15% 、控除額10万円」、400万円超600万円以下で「税率20%、控除額30万円」となっています。
一般贈与よりも税率の上昇は緩やかですが、保険の契約者と受取人を別にすると贈与税が上がり、保険の損得という観点では不利になることもあるので注意が必要です。
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税務署への申告の有無には要注意
満期保険金を受け取った場合、契約者本人が一時所得で受け取った場合と、契約者以外の方贈与の対象となる形で受け取った場合には注意が必要です。というのも、一時所得の場合と贈与税の対象になる場合では確定申告が必要になる金額は異なってきます。
所得税は、満期保険金を含め年間20万円を超える給与所得以外の所得がある場合は確定申告が必要です。
贈与税の場合は、基礎控除の110万円を超えた場合には確定申告をしなければなりません。
確定申告をしなかったり、申告金額が少ない場合にはペナルティとして加算税が課されたり、悪質だと判断されれば重加算税が課されるケースもあります。税務署への申告はきちんとチェックをしましょう。
解約返戻金と満期保険金の違い
保険の解約返戻金と満期保険金はどのように違うのでしょうか。
内容 | 主な保険 | かかる税金 | |
解約返戻金 | 解約時に受け取ることができるお金 | 終身保険 養老保険 学資保険 |
所得税 住民税 |
満期保険金 | 満期時に受け取ることができるお金 | 養老保険 学資保険 |
所得税 住民税 贈与税 |
保険の解約返戻金は保険を本人が解約したり、保険会社から解約されたときに支払われるお金です。解約返戻金は死亡保険や養老保険などで受け取ることができます。
満期保険金は保険が満期を迎えたときに受け取れる保険、養老保険や学資保険で満期を迎えたときに受け取る金額です。
お金が受け取れるという点では一緒ですが、その中身については違うのでよく理解をしておきましょう。
まとめ
保険の解約保険金と満期保険金。貯蓄用途として保険を契約するか、否かによってその考え方や設定方法は異なります。よく理解して自身にあった保険を見つけましょう。
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よくある質問
Q | 解約返戻金に税金はかかりますか? |
A | 解約返戻金には一時所得税がかかる可能性があります。保険料と解約返戻金の差額が50万円を超える場合、その差額が一時所得として課税されることがあります。ただし、差額が50万円以下の場合は、所得税の対象にはなりません。 詳しくは「解約返戻金に税金はかかる?」を参照。 |
Q | 解約返戻金の確定申告はいくらから? |
A | 解約返戻金について、自営業者や所得が高い方、公的年金等の収入が多い方は確定申告が必要です。支払調書がある場合は、100万円以上の解約返戻金や年間20万円以上の場合にも確定申告が必要です。ただし、一般的なサラリーマンで所得が低い場合は確定申告は必要ありません。 詳しくは「解約返戻金に確定申告は必要か?」を参照。 |
Q | 解約返戻金の種類は? |
A | 解約返戻金は以下の種類があります。
詳しくは「解約返戻金には3種類ある」を参照。 |