中長期の現物取引でのリスク
中長期的に株式投資を行う場合、数か月から数年、場合によっては10年を超える期間で特定銘柄を保有し続けることもあるでしょう。中長期的な投資の目的は、企業の長期的な成長期待、高配当利回りに注目した投資、長期保有による株主優待など、様々ですが、一方で、長い期間保有することは、その間の価格変動リスクも負うということにもなります。
投資した企業特有の要因による株価下落も勿論ありますが、株式市場はマーケット全体で起こる急落局面をこれまで幾度も経験しています。こうした株価の急落においては、現物取引だけで長期投資を行っている投資家は、売るに売れないという状態に陥り、保有資産の大幅な目減りの可能性、つまりリスクを負うことになります。
リスクヘッジの方法
資産価値の変動を回避するために行うのが「リスクヘッジ」ですが、先物取引やオプション取引といったデリバティブズ(金融派生商品)を用いるなど、具体的な方法は多岐にわたります。
そのなかでもこうした株価急落時の対応策として、株取引初心者でも馴染みやすい信用取引を利用したリスクヘッジが知られています。実際の利用方法を確認していきましょう。
両建て
信用取引を利用したリスクヘッジ方法として「両建て」という取引手法があります。
両建てとは、一般的には同じ銘柄で「買い」と「売り」の両方のポジションを持つことを言いますが、中長期投資のリスクヘッジとして実施する場合は、現物取引で買い付け保有した株式と同銘柄・同株数分を「信用取引」で売りを行うことになります(同時に同価格で行う両建て取引(クロス取引)は場合によっては相場操縦や仮装売買といった不正取引と見做されることがありますので注意が必要です)。
これにより、信用取引の売りを実施したタイミング以降の株価下落については、現物買いの評価損失と同額の信用取引売りの評価益が発生しますので損益が相殺されるわけです。マーケットの急変時等に、更なる下落が予想される、これ以上損失を膨らませたくないと考えた場合に、信用売りを行うことで評価損益を固定すると考えれば判りやすいかもしれません。その後、マーケットが落ち着きを取り戻したり、反転が予想される局面になったりしたところで、信用売りの手仕舞い(買戻し)を行い、元の現物買いだけのポジションに戻せば、その間の株価下落リスクをヘッジしたということになります。
もちろん、予想に反して株価の下落が起こらず、逆にすぐに反転してしまった場合には、その分の利益を逃すことにはなりますが、少しでもリスクを減らしたいと考える投資家には有用な取引手法とも言えるでしょう。
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ヘッジのタイミング
それでは、どういったときに両建てによるリスクヘッジを行うとよいでしょうか。一つには保有する銘柄について何らかのマイナスの要因が発生し、一時的な株価急落が予想される場合があります。
また、リーマンショックやコロナショック等の経済的ショックによってマーケット全体が過剰なダウントレンドに陥るなどして、保有銘柄も連れて下落するような場合も考えられます。ただいずれの場合も、どこかのタイミングで両建て取引を解消する必要がありますので、将来の株価回復が期待できるということが前提条件になります。
ヘッジの注意点
このように、信用取引はリスクヘッジに有用な取引手法として広く知られていますが、注意点もありますので確認していきましょう。
信用取引は、現物取引とは違ったコストが課されますが、リスクヘッジとして制度信用取引の売りを実施した場合には、貸株料(固定コスト)や場合によっては逆日歩と呼ばれる株券の借り賃(変動コスト)が売りのポジションがある間はコストとして発生することになりますので、長期間リスクヘッジを行うような場合には特に注意が必要です。
仮に株価下落による評価損発生を防げたとしても、こうしたコストが評価損を上回ってしまっては効果的なリスクヘッジができたとは言えません。リスクの大きさと想定される期間コストをトータルして考えていくことが大事になります。
まとめ
価格変動リスクを回避できる信用取引を利用した「リスクヘッジ」について説明してきました。現物取引で中長期的な株式投資を行っている投資家にとっても、信用取引はリスクヘッジ手法として有用な取引であることがお判りいただけたでしょうか。
一方で貸株料や金利手数料、制度信用取引の場合は逆日歩といった、信用取引固有のコストが発生するなどの注意点もあります。また、ヘッジを開始するタイミング、手仕舞いを行うタイミングも重要になってきますので、留意して有効なヘッジ取引を実施していくようにしましょう。
監修:日本証券金融株式会社
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