信用取引の逆日歩とは?逆日歩はどうやって計算する?逆日歩を徹底解説

投稿日:2020/11/30 最終更新日:2023/03/14
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信用取引には特有の費用がかかるケースがありますが、その中でも代表的なものが制度信用取引の逆日歩です。制度信用取引の裏側で行われている貸借取引(たいしゃくとりひき)の仕組みと、貸借取引によって発生する「逆日歩(ぎゃくひぶ)」について詳しく見ていきましょう。

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貸借取引とは

貸借取引逆日歩とは制度信用取引信用売り残高が信用買い残高を上回る際に、売り建玉を保有する投資家が負担する費用です。逆日歩について理解するためには、制度信用取引の裏側で行われていることを理解する必要があります。
図の矢印の流れを順番に見ると、投資家は信用取引の注文を証券会社に行い、当該注文が成立(約定)した後、証券会社から日証金(証券金融会社)に「貸借申込」を行っています。証券会社は投資家の約定結果を集計した後、制度信用取引の決済に必要な資金・株式を調達するために、日証金に借入申込を行います。このように、証券会社が制度信用取引の決済に必要な資金・株式を日証金から調達する取引を『貸借取引』といいます。なお、投資家の「信用買い申込」の約定分は、証券会社から日証金への貸借申込では「融資申込」と読み替わります。同様に、投資家の「信用売り申込」の約定分は、証券会社から日証金への貸借申込では「貸株申込」と読み替わります。

証券会社が投資家の信用取引の約定結果を集計するように、日証金も証券会社からの貸借申込を集計します。この結果、融資申込より貸株申込が多い銘柄については、超過した貸株申込分を機関投資家等から入札形式で株式を集め、決済することとなります。この際の株券調達の入札で決定した料率が「逆日歩」となります。これらの仕組みを『品貸入札』といいます。日証金は、証券会社からの貸借申込(資金・株式の借入申込)に対して、資金は自社で調達し、株式は品貸入札により調達しています。

 

逆日歩が発生する仕組み

逆日歩の仕組み続いて逆日歩が発生する仕組みについてです。図は貸借取引・品貸入札を拡大したものです。
矢印の流れを順番にご覧ください。証券会社は、投資家の制度信用取引の約定結果を集計し、信用売りが多い場合は日証金に貸株申込を行い、信用買いが多い場合は日証金に融資申込を行います(図表では貸株申込のみ記載)。日証金は各証券会社からの貸借申込を集計し、融資申込より貸株申込が多い銘柄はその超過分の株式を機関投資家等から調達します。この時、機関投資家等は日証金に株式を貸し出す際に、「株式のレンタル料」を設定します。これが「逆日歩」となります。日証金はこの「逆日歩」を証券会社に転嫁し、証券会社は投資家に転嫁することとなります。

逆日歩が発生する条件とは

逆日歩の発生する条件この図は、証券会社と日証金の間で行われている貸借取引・品貸入札のイメージをより詳細にしたものです。ある銘柄について、左上のA証券会社では、投資家の信用取引の約定結果を合計すると、制度信用買残高が10万株、制度信用売残高が25万株となります。A証券会社はグリーンの部分として信用売り残高で超過となっている15万株について株式を調達する必要があります。そこで、A証券会社は日証金に15万株の貸株申込を行います(株式の調達)。一方で、左下のB証券会社はオレンジの部分として信用買い残高で超過となっている5万株について資金を調達する必要があります。そこで、B証券会社は日証金に5万株の融資申込を行います(資金の調達)。日証金は、A証券会社の貸株申込15万株、B証券会社の融資申込5万株を集計します。その結果、貸株残高が10万株超過した状態(貸株超過=株式の調達が必要な状態)になります。この10万株の貸株超過について、品貸入札で株式を調達することになります。なお、証券会社でも、日証金でも、買い残高と売り残高が重複部分(=食い合い)の決済処理については、相殺することが可能となっています。

日証金は、貸株超過分の10万株を品貸入札で調達しますが、右側の品貸入札では「5万株を1株あたり5銭でなら貸しますよ」、「7万株を1株あたり10銭でなら貸しますよ」、「5万株を1株あたり15銭でなら貸しますよ」という3社の機関投資家が品貸入札に参加しているのが分かると思います。このように、品貸入札では入札に参加している機関投資家が1株あたり原則0銭から、5銭刻みで品貸入札を行います。


日証金は料率が低い順番に採用し、調達すべき株数に達したところの料率が同日発表分の「逆日歩」となります。
図の例では、逆日歩が5銭では5万株しか調達できませんが、10銭ならば10万株を調達できるため、この日の逆日歩は10銭で決定となります。

逆日歩は誰が受取、誰が支払う?

逆日歩の支払いと受け取りこのようなプロセスで決定した逆日歩ですが、誰が受け取り、誰が支払うかについて確認しましょう。
上の図は、逆日歩を受け取る人を赤、支払う人を青で表しています。先ほど記述しましたが、逆日歩は「株式のレンタル料」となります。株式を貸出した機関投資家は逆日歩を受け取ることができます。株式を借りたのは、信用売りをした投資家となるので、信用売りをした投資家は全員が逆日歩を支払うこととなります。このままではバランスが取れないので、信用買いをしている投資家も逆日歩を受け取ることができます。つまり、「逆日歩を受け取るのは制度信用買いの投資家と品貸入札参加者で実際に株式を貸し出した機関投資家等、逆日歩を支払うのは制度信用売りの投資家」ということになります。日証金は、逆日歩を受け取ることも支払うこともありません。

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逆日歩は実際にいくらかかる?

ここからは、実際に信用取引の建玉を保有している場合にどのような金額が発生するかについて見ていきましょう。逆日歩で発表される「10銭」などの料率は1株あたりに発生する金額であり、実際に計算する場合は保有株数で乗じて計算する必要があります。計算の仕方について詳しく見ていきましょう。

逆日歩の計算

1日当たりの逆日歩は1株当たりの金額に株数を掛け合わせて求めることができます。複数日保有した場合は、保有日数を掛け合わせることでその期間の逆日歩総額を求めることができます。

具体例として、トヨタ株式の逆日歩が「10銭」として発表された場合、トヨタ株式の買い建玉100株を保有していた場合の逆日歩は「10銭×100株=10円の受け取り」となります。また、トヨタ株式の売り建玉100株を保有した場合の逆日歩は「10銭×100株=10円の支払い」となります。日証金が発表した逆日歩に保有している建玉の株数を乗じて、買い建玉なら受け取り、売り建玉なら支払いと覚えてください。

 

逆日歩の計算日数は受渡日で計算しよう

次に逆日歩の計算日数について整理します。下の図のケース1は月曜日に信用取引をして当日中に返済をしなかった(建玉を持ち越した)場合、ケース2は水曜日に信用取引をして建玉を持ち越した場合です。株式取引は約定日の2営業日後に決済します。信用取引での買付代金や売却株式の借入は、この決済のためです。

ケース1のように月曜日に約定した注文は水曜日に決済日を迎えます。品貸入札により調達した株式は水曜日に機関投資家等から日証金に貸出され、翌営業日の木曜日に日証金から機関投資家等に返済されます。品貸入札により調達した株式の借入期間は1日になるため、逆日歩も1日分となります。

一方、ケース2のように水曜日に約定した注文は金曜日に決済日を迎えます。品貸入札により調達した株式は金曜日に日証金に貸出され、翌営業日の月曜日に返済されます。このため、土曜日も日曜日も日証金が株式を借り入れることになるため、逆日歩は3日分となります。
「水曜日に建玉を持ち越した場合、逆日歩は3日分となる」と覚えましょう。祝祭日も土曜日等と考え方は同じです。

この日数に、先ほど説明した1日ごとにかかる1株あたりの金額を掛け合わせれば、支払う/受け取る逆日歩の総額を求めることができます。
逆日歩の計算

逆日歩の「最高料率」「倍率適用」を理解しよう

逆日歩をより深く理解するための要素が「最高料率」「倍率適用」の2つです。逆日歩の最高料率逆日歩の最高料率の条件

「最高料率」とは「逆日歩の上限」のことです。表は、最高料率をまとめた最高料率早見表です。逆日歩は、貸借値段(≒当日終値)、売買単位の2つの要素で決定されます。今回は、売買単位100株の株式の最高料率を計算してみましょう。ある銘柄が、売買単位が100株、貸借値段が880円とします。この場合の最高料率は、貸借値段が〜900円の欄になるので、最高料率は1株あたり1.8円ということが分かります。最高料率は売買単位によって異なり、株式の売買単位は100株に統一されていますが、ETFやREITの売買単位は銘柄によって異なるため注意が必要です。
ただ、倍率適用はあくまで「逆日歩の上限に対して倍率適用されるのみ」となることに注意が必要です。例えば、倍率適用が「2倍」が付されている銘柄において、最高料率が1.8円から3.6円になっている状態で、1株あたり5銭で日証金が株式を調達できた場合、逆日歩はそのまま「5銭」となり、「10銭」になるわけではありません。

まとめ

逆日歩は制度信用取引で特定の場合で発生します。計算の際は決済日を基準に日数を考えること、逆日歩には最高料率があることを注意しましょう。 逆日歩のルールをしっかり確認して信用取引を活用してみましょう。
 

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