信用取引で配当や株主優待は受け取れる?売り方と買い方での違いを徹底解説!

投稿日:2022/01/20 最終更新日:2023/03/14
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株取引の魅力のひとつに配当金や株主優待が得られることが挙げられます。一方で信用取引をしていた場合はどうなるのでしょうか。 実際に株式を保有して権利確定日(基準日)にて権利保全した場合に得られる権利について、信用取引で残高を保有した状態ではどのようになるか、ポイントとなる議決権、配当金、株主優待の3点に絞って見ていきましょう。
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信用取引で権利確定日を迎えた場合の考え方は?

前提条件として、信用取引で買い残高を保有している場合は、株式(現物)を保有している場合と可能な限り同等の権利を付与されるように処理がされます。ただし、権利付与そのものが難しい場合や金銭換算ができない場合は、制度上では同等の権利を受けることができないものとされています。

信用買い残高保有者への対応に連動して、信用売り残高保有者にも処理が発生すると整理すると分かりやすくなります。

信用取引買い残高において、投資家が証券会社から資金を借入して貸付した株式は、借入資金の見返りとして証券会社への担保として差し入れている形となります。このため、投資家として「名義確保していない」ことになります。信用取引の買いにおいて、「名義確保していない」点は大変重要なので覚えておきましょう。

信用取引で議決権は受け取れる?

信用取引買い残高を保有して権利確定日を迎えても、投資家は自身の名前で株主としての名義確保をしておりません。また、議決権を割り振り直すことも可能ではないため、投資家は議決権を獲得することはできません。

信用取引売り残高を保有して権利確定日を迎えた場合も、借入した株式を売却した状態ですので、当然に議決権を獲得することはできません。

信用取引買い残高を保有していて、議決権を獲得したい場合は、基準日以前に「現引き」をするなどで株式(現物)の保有者として基準日を迎える必要があります。

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信用取引で配当は受け取れる?

株式(現物)を保有している場合の権利の1つとして配当金の受領があります。実際の株価においても、権利落ち日(権利付き売買最終日の翌営業日)には「配当落ち」として、分配予定の配当金相当の株価が下落する傾向にあります。現物株を持っていれば配当金を受け取れるため配当落による株価の下落と相殺されますが、信用取引の場合は配当金を受け取れないため、買い建玉保有者には損失が、売り建玉保有者には利益が発生してしまいます。そこで登場するのが「配当落調整金」です。

配当金は金銭そのものですので、買い残高保有者にも同等の処理(株価下落分を充当する配当金の受領)が望まれます。また、この場合において、売り残高保有者においても波及して処理が発生しますので、それぞれ確認していきましょう。

買い残高保有者を「買い方」、売り残残高保有者を「売り方」として、説明します。

買い方の場合

買い方は、権利確定日時点での名義確保ができないため、直接企業から配当金を受領することはできません。ただし、信用取引として、「配当落ち」を充当するために「配当落調整金」として、「配当金相当額(配当落調整額)」を受領する仕組みとなっています。

配当落調整金の受け取り

権利付き最終日(権利確定日の2営業日前)時点で信用買い残高がある買い方は、「配当落調整金」として証券会社から「配当金相当額(配当落調整額)」を受領することになります(正確には「配当金相当額ー所得税源泉徴収相当額」)。

なお「配当落調整金」は、あくまで「配当落による株価下落」を調整するためのもので、金額は同じものの「配当金」でありません。そのため、税法上も「配当所得」ではなく「譲渡所得」として計算されます。この譲渡所得の税金として、配当落調整金に20.315%が課税されますので、手取りとしては「(配当金相当額ー所得税源泉徴収相当額)×(1 – 20.315%)」となり、結果として現物株による配当金よりも受け取る額が少なくなります。

配当調整金を受け取る条件は?

権利付き最終日(権利確定日の2営業日前)時点で信用買い残高がある買い方で、保有している銘柄が有配(当該基準日に配当金を支払う)の場合に、適用されます。

売り方の場合

売り方においては、実際の株価においても、権利落ち日(権利付き売買最終日の翌営業日)には「配当落ち」として、分配予定の配当金相当の株価が下落しています。
当該下落分は、まさに証券会社が買い方へ支払う「配当金相当額(配当落調整額)」と一致することから、「配当落調整金」として証券会社は売り方から同額を徴収する仕組みとなっています。

配当落調整金の支払い

権利付き最終日(権利確定日の2営業日前)時点で信用売り残高がある売り方は、「配当落調整金」として証券会社から「配当金相当額(配当落調整額)」を徴収されることになります。
おおよそ決算日の数ヶ月後、配当支払開始日から数週間前後に、証券口座から支払われるようですので、残高には注意しておく必要があります。

配当落調整金を払わなければならない条件は?

権利付き最終日(権利確定日の2営業日前)時点で信用売り残高がある売り方で、保有している銘柄が有配(当該基準日に配当金を支払う)の場合に、適用されます。

信用取引で株主優待は受け取れる?

繰り返しとなりますが、投資家は自身の名前で名義を確保できていません。よって、株主優待を得る権利も有しておりません。

信用取引買い残高を保有しており、該当銘柄の基準に付与される株主優待の権利を得たい場合は、権利付き売買最終日までに信用取引の返済として「現引き」をすることで、株式(現物)を権利確定日に保有することとなり、自身の名前での権利保全が可能となります。信用残高のままでは、株主優待を得ることはできないので注意が必要です。

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信用取引を用いた優待取り

株主優待は上場会社も力を入れている魅力的な権利です。当該権利の取得について、1つテクニカルな手法をご説明します。

株主優待を得るには、権利確定日において、株式(現物)を保有しておく必要があります。一方で、株式は日々の株価が変動するため、株主優待を得るために株式(現物)を保有する一方で、著しく株価が下落しては意味がありません。

このため、株価変動リスクを回避するために信用取引の売りを利用する手法があります。株価変動リスクを回避する取引は「ヘッジ取引」と呼ばれますが、株主優待を取得するために実施される本取引は「優待取り(取引)」として称されることが多いです。

例えば、500円で株式(現物)を買付、同額にて株式(信用)で売りを実施した場合で考えます。株価が400円に下落した場合、株式(現物)は100円の損失となり、株式(信用)は100円の収益となることから、結果として株価による損益は全くありません。株価が600円に上昇した場合は損失と収益が逆転し、この場合も株価による損益は全くありません。同状態で権利確定日を迎えると、株式(現物)に投資家自身の名前で権利保全できるため、株主優待を得ることができます。

しかし、本手法には注意が必要です。信用取引においては、金利が発生します。特に制度信用取引の売りにおいては「逆日歩」に注意です。多くの投資家が「優待取り」を狙った場合、「逆日歩」が高くなり、株主優待の価値をも超えることがあります。

多くの投資家が利用する手法ですので、機会があったら実践してみてはいかがでしょうか。

まとめ

信用取引の残高を保有した状態で、権利確定日を迎えた場合における買い方や売り方が得られる権利や処理について、見てみました。信用取引において、買い方は権利確定日時点での名義確保ができないため配当金を受領することはできませんが、「配当落調整金」として「配当金相当額(配当落調整額)」を受け取ることができます。一方で、売り方は配当金相当額を支払う必要があるため、証券口座の残高には注意が必要です。
株主優待についても同様で、名義確保ができないため株主優待を得ることができません。買い方を中心にして理解することで、売り方で実施される処理も整理しやすくなります。

また、参考として、多くの投資家が利用する「優待取り(取引)」も紹介しました。同取引を利用する際は「逆日歩」について注意を払う必要があります。優待取りを行う前に過去のデータやクロス取引(ヘッジ取引)についての情報などを参考にしましょう。
 

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