信用取引の買い申込については、これからの業績期待などで株価が上がると思われる銘柄の買付代金を先に証券会社から借り入れて、株価が上がったところで買い付けた株式を売却するイメージとなることから分かりやすいと思います。
一方で、信用取引の売り申込については、これから業績悪化見込みなどで株価が下がると思われる銘柄の株式を先に証券会社から借り入れて売却し、株価が下がったところで借り入れた株式を返済するために株式を買付するイメージとなり、すんなり理解できないかもしれません。 信用取引の売り申込は「空売り」と呼ばれ、特集が組まれるぐらい注目される取引です。空売りをするにあたって信頼できる空売り情報を入手することが鍵になります。ここでは、「空売り」について説明し、参考になる空売り情報をご紹介します。
空売りとは
基本的な考え方として「手元に株式がないが、今すぐ売りたい」という時に、信用取引の空売りを活用することができます。つまり、株価が下がるという過程を通して利益を得たいと考え、株価が比較的に高い時に証券会社から株を借りて売ることで資金を手に入れ、株価が比較的に低い時に借りた分の株を買い戻し、売却時と買い戻す時の差額で利益を得る方法です。株価の下落は急激なものが多く、空売りは短い期間で大きな利益を狙える方法の一つでもあります。しかし、相場を読み間違え、下落すると予想した株価が上昇してしまった場合、売却時(空売り)に手に入れた資金よりも高い金額で株を買い戻す必要があり、損失につながりますので注意が必要です。
空売りは信用取引の一種であるため、現物取引とは異なって信用取引の口座を開設する必要があります。しかし、信用取引の空売りはすべての銘柄でできるわけではありません。制度信用取引であれば、投資家は証券会社から株式を借り入れることとなりますし、さらに証券会社は日証金から株式を借り入れることとなります。資金と異なり、株式は有限であるため、対象は絞られます。日証金が貸借銘柄に選定した銘柄が、制度信用取引で信用売りができる銘柄となります。
一方で、一般信用取引でも信用売りはできますが、一般信用取引は投資家が証券会社から株式を借り入れることのみ可能となり、証券会社は日証金から借り入れることはできないため、一般信用売りの対象銘柄は証券会社が独自に設定します。証券会社により一般信用売りができる銘柄が異なることに注意しましょう。
空売りの仕組み
空売りの流れや仕組みについて、詳しく説明していきます。
空売りの株とお金の流れ
制度信用取引で説明します。
投資家は信用売りしたい銘柄を選択し、信用取引の売り申込を注文します。当該注文が約定(成立)したら、信用売り建玉を保有することとなります。今回の約定分を決済するには、投資家は証券会社から株式を借り入れる必要があります。証券会社も日証金から借り入れる必要があります。このように、投資家の信用売りの注文の約定分は、証券会社から日証金への貸株申込となり、日証金にて集計されることとなります。
日証金での集計の結果、貸株超過(融資残高<貸株残高)となった場合、日証金は機関投資家等から品貸入札で株式を調達することとなることから、「逆日歩」が発生する可能性があります。
空売りは先に売って、後で買う
信用買いは、今後成長する株式を買付して、値上がり後に株式を売却する流れになり、値上がり幅が収益となります。信用売りは、その逆です。
信用売り(空売り)の最大のポイントは、今後、値下がりが期待できる銘柄の株式を売却できることです。信用売りは、今後値下がりする見込みの株式を売却して、値下がり後にその株式を買付する流れになり、値下がり幅が収益となります。
空売りの買い戻し期限
制度信用取引で信用売りをした場合は、返済期限が6ヵ月となっていることに注意が必要です。一方で、一般信用取引で信用売りをした場合の返済期限については、各証券会社に確認する必要があります。
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空売りのリスク
信用売り(空売り)については、信用買いとは異なるリスクがあるので、注意が必要です。その注意点について説明します。
予想が外れて値上がりした場合
信用売りは、値下がり期待が大きいときに利用する取引ですが、予想が外れることもあると思います。信用売りで注意したいのが、「値上がりに上限がない」ということです。
株式に関して、株価の最低は「1円」です。一方で、株価の最高はありませんので、値上がりが続くと、信用売りの建玉を保有している限り、損失は拡大していきます。空売りが現物取引や信用取引の買いと比べて難しいといわれる要因のひとつが、このように株価のダウンサイドに対しアップサイドに天井がない点にあるのです。
また、人気銘柄に関しては、株価が上昇する日が下落する日より圧倒的に多い銘柄も少なくないため、そういった銘柄を空売りしたい場合はタイミングを正確に見計らう必要があります。
さらに、空売りは現物取引ではなく、あくまで短期売買を目的とした信用取引です。借入の期間が長ければ長いほど、支払う金利も増え、損失が出た場合は現物取引よりはるかにダメージが大きいため、空売りする際は自分なりの損切りルールを設けるなどして、利用することをお勧めします。
逆日歩に注意
制度信用取引で信用売りをした場合は、株式の調達のため支払う手数料である「逆日歩」に注意する必要があります。
日証金で貸借申込が集計され、貸株超過(融資残高<貸株残高)となった場合、日証金は品貸申込で株式を調達することとなり、機関投資家等から株式調達した際に支払う費用が「逆日歩」となります。売り建玉を保有することで発生する「貸株料」と、この「逆日歩」の費用が、株価の値下がり幅よりも大きくなる場合があります。また、「貸株料」は日々累積されて、「逆日歩」は日々発生の有無も含めて再算出されることを考慮する必要があります。
空売り情報はどう見る?
信用売り(空売り)を実施するにあたり、株価チャート以外に、空売りをすべきかどうかを判断する空売り情報は非常に重要です。2022年時点で参考になる情報源をいくつか紹介します。
空売り比率
東証の立会市場で成立した売買代金における空売りの売買代金の比率等を公表しています。 当該情報は日々発表されています。
この情報は、「売買代金に占める信用取引売り残高」ではないことに注意してください。信用取引は回転売買ができるため、「同日にどれだけ信用売り注文が約定したか」を示す情報となります。現物取引(需給)に対して信用取引(仮需給)がどれだけ活発に取引されたかを示す情報として、よく利用されます。
信用取引残高(買い残高、売り残高)
銘柄別信用取引週末残高として、東証で取り扱っている全制度信用銘柄の週末時点の信用残高が公表されています。制度信用と一般信用の区別、買い残高と売り残高の区別、前週比を知ることができます。
当該情報は、毎週第2営業日の16:30を目安に発表されています。
貸借取引残高(融資残高、貸株残高)および品貸料率
貸借取引残高として、日証金がWebサイトで情報を公開しています。
当該情報は、日々12時を目安に発表されています。
品貸料率一覧として、日証金がWebサイトで情報を公開しています。
当該情報は、日々11時を目安に発表されています。
まとめ
値下がりで利益をあげる信用売り(空売り)については、信用買いとは異なるリスクもありますが、様々な情報から適切な判断ができると、とても有益な取引手法になります。ただし、株価の上昇ではなく下落に賭けるため、損失が無限大になる可能性もあります。注意点やリスクをしっかり確認しておく必要があるでしょう。
今回は導入として、一般的な空売りについて説明しましたが、基本が掴めれば、空売りを応用した売買リスクを軽減する手法(リスクヘッジ)も利用することができるようになります。
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