経済評論家 楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元氏に聞く「インデックス運用の魅力と活用法」 東証ETF

投稿日:2018/06/27 最終更新日:2022/11/01
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東証ETF・ETN活用プロジェクト [ ETFがわかれば世界がわかる 著名人にインタビュー ]

【第32回】

経済評論家 楽天証券経済研究所客員研究員 山崎元氏に聞く

「インデックス運用の魅力と活用法」

通貨選択型やテーマ型、リスク限定型など、投資信託には一見、非常に分かりにくい仕組みのものがあります。ところが売れ筋を見ると、なぜか複雑な仕組みを持ったものほど、人気が高かったりもします。個人が資産運用をするうえで、本当に必要な投資信託はどういうタイプのものなのか、経済評論家で楽天証券経済研究所客員研究員の山崎元さんに、お話を伺いました。
ここ1〜2年、通貨選択型ファンドのように複雑な仕組みを持つファンドが登場し、人気を集めています。この手のファンドは、本当に個人が資産形成をしていくうえで必要なものなのでしょうか。
山崎氏
山崎氏経済評論家 楽天証券経済研究所客員研究員
山崎元氏
まず、今の投資信託をプロダクツの良し悪しという点で見ると、非常に嘆かわしいというのが正直な気持ちですね。
たとえば毎月分配型ファンド。ここ数年来、個人の人気を一身に集めていますが、そもそもキャッシュが必要ならば現金のまま持っていれば良いだけのことです。わざわざ高い手数料を払って毎月分配型ファンドを購入し、そこから分配金を得る必要など、どこにもありません。日々の生活に必要なキャッシュの確保と、将来の資産形成を目的にした運用に回すお金は、きちっと分けて考えるべきです。
さらにこの1〜2年を見ると通貨選択型ファンドが人気を集めていますが、これなどは分配金の額を多く見せるために、投資対象とは全く関係のない為替リスクを組み合わせるという、言うなれば一線を越えた商品といっても良いでしょう。この手のファンドは、最初から相手にしない方が良いと思います。
結局、この手のファンドばかりが人気を集めるのは個人が自分で考えて投資信託を選ぶという段階に達していないからです。つまり、販売金融機関の言いなりで投資信託を選んでいる。したがって、多くの個人は自分に合ったファンドを選んでいるのではなく、あくまでも販売金融機関が稼げるファンドを買わされている、ということになります。
粗悪なプロダクツばかりが登場してくると、もう投資信託は個人に必要ないのではないかということでしょうか。
山崎氏
今のような嘆かわしい状況のなかでも、少しずつではありますが良い兆しのようなものが現れつつあるのも事実です。
その前に、個人にとって投資信託は必要ないのでは、という点について言うとこれは必要なものであると考えています。国内の株式市場に投資するにせよ、諸外国のさまざまなマーケットに投資するにせよ、そのオペレーションも含めてローコスト運用を実現できるのは、投資信託の仕組みでなければ不可能でしょう。
たとえば世界の先進国の株式市場に分散投資したのと同じ投資成果が得られる「MSCIコクサイ」というインデックスがありますが、これと同じような運用を個人が行おうとしたら、それこそとんでもない手間とお金が必要になります。それが、安い信託報酬と購入手数料の負担で可能になるのだとしたら、やはり投資信託は個人の資産形成にとって必要なプロダクツであると言えます。
ただ、前述したように昨今の投資信託は商品性に問題があり、多くの個人は、そのことに幻滅させられたのではないでしょうか。そこで、「もう投資信託はこりごり」といって投資信託から離れていった人、「他にもっと良いファンドがあるはずだ」と探した結果、インデックスファンドにたどり着いたという人に二分されるわけですが、後者に属している人は合理的に資産を形成していく手段として、インデックス運用に取り組んでいます。
それでもまだインデックス運用は地味な存在。なかなか毎月分配型ファンドを超える人気とまではいかないようですね。
山崎氏
外部環境が非常に厳しかったことが、その背景にはあると思います。そもそもこの10年、マーケット環境は非常に厳しかったので投資信託を買っても良い思いをした人がほとんどいないのです。成功体験がいくつか出てくれば、徐々に投資信託に対する関心も高まってくると思うのですが、なかなかそこまで行かないというのが現状です。
本来、運用期間を長期に取りリスクの分散をきちっと図っていけば、相応のリターンが実現するはずなのですが、やはりマーケットの環境が厳しい現状ではリターンを得ることが難しい。その意味では、本当に優れているプロダクツであったとしても、なかなか注目されない状況にあると思います。
とはいえ、前述したように運用を合理的に考えてインデックスファンドでリスク分散を図り、長期投資をしようという個人も出てきていますし、彼らが横でつながって情報交換を行う場も増えてきました。こうした動きのなかで、徐々にではありますが、投資について正しい知識を持った投資家が増えてきたのも事実です。確かに、毎月分配型ファンドの人気を超える動きにはなっていませんが、そのきっかけのようなものが見え始めたような気はします。
インデックス運用の魅力はどこにあるのでしょうか。
山崎氏
山崎氏
まずコストが低いということ。日本では、アクティブ運用型のコストを高めに設定する傾向がありますが、基本的に、アクティブもインデックスも、運用にかかる経費はそれほど大差がありません。
ただ運用会社としては、自分のところできちっとリサーチを行い銘柄の売買タイミングなども考えて運用するという前提がある以上、アクティブ運用のファンドを安売りしたくないという気持ちが強いのだと思います。アクティブ運用を否定するつもりは全くありませんが、コストが割高になる点はやはり納得がいきません。そしてコストは、投資家が自分の努力によって最終リターンを押し上げることのできる要素のひとつですから、ローコストのインデックス運用は個人の資産運用にとって望ましいツールということになります。
2つ目のメリットは、分かりやすいこと。インデックス運用は、TOPIXなどの株価インデックスに対して、運用成績をトラックさせていくものですから連動目標としている株価インデックスの値動きを追っていけば、現状で自分の損益がどうなっているのか、あるいは購入する前に、どの程度のリスクがあるのかといった点を、過去データから把握しやすい面があります。
ただし、インデックス運用でひとつだけ注意しておくべき点は、インデックスの種類によって優劣があることです。たとえば米国の株価インデックスを事例に挙げると、NYダウ工業株30種平均は対象銘柄が工業株30銘柄に過ぎませんから、米国株式市場全体の値動きをきちっと反映しているのかどうか疑問です。それよりも、S&P500やラッセル2000の方が、インデックスの対象銘柄数が多いだけに、より米国株式市場全体の値動きをきちっと反映していると考えることができます。
つまり、対象銘柄が多ければ多いほどインデックスとしては優れたものになるのです。
インデックス運用をする場合、通常のインデックスファンドとETF、どちらを選べば良いのでしょうか。
山崎氏
運用する資金量によります。ある程度、まとまった金額で運用するのであればETF。月々少額資金の積立を行っていくのであればインデックスファンドというように、使い分けてみてはどうでしょうか。
最近は、1,000円で積み立てられるインデックスファンドもありますから、それこそ自分の資金量に応じて、自由な選択が可能です。
ただし、ETF以外のインデックスファンドで積立投資をする場合はファンドを買い付ける際にかかる購入時手数料を無料にしている販売金融機関がありますから、こういうところを窓口にして積み立てていくのが良いでしょう。
また、ETFといっても非常にたくさんの種類が上場されているのでどれをどう組み合わせたら良いのか、迷う方もいらっしゃると思いますが、その前に、どのETFがETFとして使えるのかということを、きちっと見極める必要があります。
どういうことかというと、ETFは連動目標としているインデックスに対して、高い連動性を持たせることに主眼が置かれています。したがって連動性の低いものは、これから純資産が大きくなって連動性が高まっていくことを待つ必要があります。したがって、現状で使えるETFを見つけるためには、東証のホームページからレポートをダウンロードして、過去1年間のトラッキングがどうなっているのかを調べる必要があります。
具体的には乖離率といって、ETFの市場価格が基準価額に対してどの程度、乖離しているのかをチェックしておくと良いでしょう。もちろん、乖離率の数字が0%に近いほど、連動していることになります。
ETFも複数ファンドに分散した方が良いのでしょうか。
山崎氏
山崎氏
業種別などさまざまなETFが上場されていますが、基本的にはシンプルなもの同士の組み合わせをお勧めします。
たとえば、国内株式についてはTOPIX連動型のETFを。海外についてはMSCIコクサイのように、日本を除く世界先進国に分散したインデックスに連動するタイプ。そして、MSCIエマージングのように世界の新興国に分散したインデックスに連動するタイプを組み合わせれば、分散の効いたポートフォリオを組むことができます。
それぞれの投資比率ですが、仮にリスクを取って運用できるお金が100あるとしたら、TOPIXに50%、MSCIコクサイに50%を配分して、世界の先進国に分散したポートフォリオを構築するか、もしくはTOPIXに50%、MSCIコクサイに25%、MSCIエマージングに25%という配分で、新興国の成長も反映させたポートフォリオを構築するか、という程度の組み合わせが考えられます。
将来的にETFの商品性を拡大させていくとしたら、どのようなタイプが考えられますか?
山崎氏
少し個性的な、でもベーシックな特性を持ったインデックスを開発し、それにトラックするETFがあれば面白いと思います。たとえば、バリュー株指数やグロース株指数といったインデックスを開発し、それに連動するETFがあれば投資をする際の選択肢が広がります。
また、アクティブインデックスも候補のひとつです。たとえば、私が選んだ100銘柄で「山崎インデックス」を作り、それにトラックするETFを上場させる。日経225平均株価も銘柄入れ替えを行っているのですから、理屈としてはアクティブ運用の銘柄入れ替えと同じです。
このように、インデックスの種類が増えて、それにトラックするETFが上場されていけばETFに対する個人の関心も高まっていくのではないでしょうか。
掲載日:2012年月03月21日
山崎 元(やまざき はじめ)氏プロフィール
経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員。
一橋大学商学部国際経営戦略研究科非常勤講師。2010年、獨協大学経済学部特任教授。
山崎氏 主な著書
「超簡単 お金の運用術」(朝日新聞出版)
「投資バカ」につける薬」(講談社)
「新しい株式投資論—「合理的へそ曲がり」のすすめ」(PHP研究所)
「よくわかる証券業界」(日本実業出版社)
「ファンドマネジメント」(きんざい)
「年金運用の実際知識」(東洋経済)
「お金がふえるシンプルな考え方」(ダイヤモンド)

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