グロース株への投資は大きなリターンを狙うことができる点が魅力です。ただし、グロース株は一般的には価格下落リスクが高い及び既に割高になっている可能性もあるので、しっかりと分析をして、リスクを理解した上で投資しましょう。
この記事ではグロース株を見つける時に利用したい指標や、日米におけるおすすめのグロース株銘柄を紹介します。
グロース株の特徴や見分け方は?
グロース株は売上高や利益の成長率が高く、今後も成長が期待できる銘柄です。会社の規模が急速に大きくなっていたり、新しい商品、サービスやプラットフォームを提供するような企業の銘柄があてはまります。
テーマ株のような成長性があり、トレンドを扱う企業もグロース株として取り扱われることが多く、現在ではビッグデータやAIのような情報・通信業の企業がテーマ株の多くを占めています。
グロース株と対をなすのは「バリュー株」と呼ばれる、企業業績から見たときに株価が割安になっている銘柄です。バリュー株について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
ここではグロース株を探すときに利用する指標について解説します。
売上高成長率や営業利益率の高さを確認する
グロース株を探すときは、売上高成長率と営業利益が高い銘柄を探すことをおすすめします。
利益はコストを下げることで大きくすることはできますが限界があります。基本的に売上高を大きくすることが利益を大きくすることにつながります。
急成長するグロース株を狙うのであれば、売上高成長率は20%以上を目安にしたいところです。売上高成長率とは、前期比較で売上高がどれくらい伸びたかを示す指標です。毎年20%の成長をするということはおよそ4年で売上高が2倍となります。
営業利益は本業で稼ぐ力で、売上総利益(粗利)から販管費や人件費を引いた利益のことを指します。営業利益率が10%以上あれば、本業で稼ぐ力として優秀といえます。
ROEを確認する
ROE(自己資本利益率)は、自社のお金(自己資本)でどれだけ効率的に利益を出しているかを測る指標です。基本的にROEが高いほうが収益性が高く望ましい状況だと判断できます。
ROEは以下の計算式で表します。
ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
当期純利益とは営業利益から販管費や特別損益等を計上し実際に企業に入ってくるお金です。
ROEは高いほうがよいと言いましたが、ROEが高すぎる場合は安全性が低い可能性があります。その理由はROEを分解するとわかります。
ROEは以下のように分解することができます。
ROE(%)= ①(当期純利益/売上高) × ②(売上高/総資産) × ③(総資産/自己資本) × 100
ROE
- 当期純利益/売上高:売上高利益率
- 売上高/総資産:総資産回転率
- 総資産/自己資本:財務レバレッジ
この中で3の財務レバレッジに注目してください。財務レバレッジの値を大きくすればROEが大きくなることがわかります。これは、総資産に対する自己資本の比率を下げる(つまり借入金などの比率を増やす)ことになります。
少し考えてもらえばわかると思いますが、借入金をむやみに増やすのは財務上健全な経営とは言えないので、一概にROEが高ければいいというわけでもありません。
ROEの基準の1つは「8%」という数字です。これは2014年に発表された伊藤レポート(※1)の中で述べられています。
ROEが8%以下の場合はPBRは1前後の水準で推移し、ROEが8%を超える場合、PBR(※2)が右肩上がりに上昇しているというROEとPBRの関係が過去の日経新聞の記事でも紹介されました。
ただし、ROEが8%というのは最低限の基準であり、グロース株を探すのであれば15%以上が良いと言われています。
※1:経済産業省「『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』プロジェクト」 の最終報告書」(P6)の通称。ROEの目標を8%とし、実業界から大きな反響があった。
※2:PBR:株価純資産倍率のこと。会社が持っている財産(純資産)から、株価が割安かどうかを判断する指標を指す。
【関連記事】株の割高・割安からPERとPBRの計算方法とは?
市場区分から調べる
グロース株を探すときには、市場にも注目しましょう。2022年4月の東証再編によって、東証は「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に変わりました。
このうち「グロース」市場は一定基準を満たした高い成長性を有する企業向けの市場です。過去の区分では「マザーズ」や「JASDAQグロース」に属しているような企業が、グロース市場に集約されています。(※3)
今後成長する企業を狙うのであれば、グロース市場の中で上場から日が浅く、時価総額が小さい中小企業を狙うのも一つの方法です。メルカリ(4385)や、メドレー(4480)のようにグロース市場からプライム市場へ移行する企業もあります。
※3:JPX日本取引所グループ「市場区分見直しの概要」
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グロース株のおすすめ日本銘柄一覧
ここからは実際に国内銘柄で有名なグロース株を紹介します。
以下で出てくるROAという指標は総資産利益率です。会社の総資産を利用してどれだけの利益を上げられたかを示す数値になります。この指標も高い程安全と判断されることが多いですがROAだけでなく総合的な観点を持って評価していくことが必要となります。
※2022/12/8時点の情報です。投資を行う際には最新の情報を確認してご自身の判断で行ってください。
国内銘柄でおすすめのグロース株
- メルカリ【4385】
- 東京エレクトロン【8035】
- ファーストリテイリング【9983】
- レーザーテック【6920】
- エムスリー【2413】
メルカリ【4385】
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
2,889円 | - | - | - | 10.8% |
※"-"の項目は直近の当期純利益がマイナスの為、未記載
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
2020/6 | 76,275 | -19,308 | -22,772 |
2021/6 | 106,115 | 5,184 | 5,720 |
2022/6 | 147,049 | -3,715 | -7,569 |
※単位:百万円
※2022/12/8 時点
メルカリは日本最大のフリマサービス運営会社です。フリマサイト「メルカリ」のほかに、2019年にはスマホ決済「メルペイ」をリリース、2021年には「メルコイン」を設立、2022年には「メルカリshops」やクレジットカードの「メルカード」の提供など様々な事業を展開しています。
先ほど紹介しましたが、メルカリはグロース市場からプライム市場に移行した初めての企業です。実は日本だけでなく米国にも進出(イギリスは撤退)しており、売上高の3割近くを米国が占めています。
業績だけを見れば、売上は伸びていますが利益が出ていないので保有の判断が難しい銘柄ですが、上記のように様々な事業を展開していく柔軟性とスピード感があるので、なにかがきっかけで利益も急回復・急成長する可能性があります。2022年上半期は株価が大幅に下落していましたが、下半期は回復傾向です。
東京エレクトロン【8035】
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
44,400円 | 17.3倍 | 37.23% | 26.33% | 70.5% |
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
2020/03 | 1,127,286 | 237,292 | 185,206 |
2021/03 | 1,399,102 | 320,685 | 242,941 |
2022/03 | 2,003,805 | 599,271 | 437,076 |
※単位:百万円
※2022/12/8 時点
半導体製造装置で世界でも上位に入る企業です。直近でも最高益を出しており業績は非常に好調です。半導体関連銘柄はこの数年かなり好調でした。半導体業界の景気循環は「シリコンサイクル」と呼ばれており、およそ4年周期で好況と不況を繰り返すと言われています。
以前は2023年以降も半導体は好調だと言われていましたが、このところ風向きは変わってきており、2023年以降厳しい展開が続くという予想もあります。また、半導体銘柄は業績が良くても米国のSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数 ※4)の影響を受ける時があります。
しかし、半導体自体は自動車からスマホまであらゆる製品で利用されており、現代ではなくてはならないものですので、今後も需要が強ければ成長は続くと考えられます。
(※4)フィラデルフィア半導体株指数:米国の主要な半導体銘柄で構成された株価指数。米国のフィラデルフィア証券取引所が時価総額加重平均で算出・公表している。
ファーストリテイリング【9983】
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
83,620円 | 37.2倍 | 20.41% | 9.60% | 49.1% |
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
2020/08 | 2,008,846 | 149,347 | 90,357 |
2021/08 | 2,132,992 | 249,011 | 169,847 |
2022/08 | 2,301,122 | 297,325 | 273,335 |
※単位:百万円
※2022/12/8 時点
ファーストリテイリングは「ユニクロ」や「ジーユー」を展開しています。海外ユニクロの売上構成が約50%を占めており、特に中国と東南アジアが成長の軸になります。
コロナ禍でいったん売上・利益ともに落ちましたが、それ以降、再度増加傾向にあります。株価は2022年上半期に落ち込み約半値まで下がりましたが、下半期では盛り返しつつあります。
ファーストリテイリングは有名な値嵩株(1単元あたりの株価水準が高い銘柄)で、1単元購入するのにタイミングによっては約1,000万円もかかります。ファーストリテイリングの株式を保有したい場合は、単元未満株の取引を検討したほうが良さそうです。
レーザーテック【6920】
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
25,780円 | 70.5倍 | 38.86% | 16.71% | 40.7% |
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
2020/06 | 42,572 | 15,062 | 10,823 |
2021/06 | 70,248 | 26,074 | 19,250 |
2022/06 | 90,378 | 32,492 | 24,850 |
※単位:百万円
※2022/12/8 時点
レーザーテックは半導体検査装置メーカーです。ここ数年で急速に業績を拡大させてきました。それに伴い株価も急上昇しています。3年前と比較しても、株価は10倍以上増加しているので割安感はありません。
しかし、財務・業績ともに非常に優秀で、半導体の需要が続くようであれば引き続き成長が見込まれる企業です。海外売上が約8割(全体の3割が米国)を占めており、為替レートを1ドル115円前提と保守的に計画しているため、急激に業績が悪化するようなことは考えにくく、優良なグロース株だと言えます。
エムスリー【2413】
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
4,039円 | 50.6倍 | 27.90% | 20.62% | 74.5% |
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 |
2020/06 | 130,973 | 34,337 | 21,635 |
2021/06 | 169,198 | 57,972 | 37,822 |
2022/06 | 208,159 | 95,141 | 63,845 |
※単位:百万円
※2022/12/8 時点
エムスリーはソニーグループの関連会社で、医療従事者向け情報サイトの大手企業です。このビジネスモデルは参入障壁が高く、エムスリーのほかには、メドピア(6095)やケアネット(2150)などしかありません。
時価総額を上記2社と比較すると圧倒的に大きく優位に立っています。また、海外売上が約25%を占めており、拡大傾向にあります。
さらに、2023年1月からの電子処方箋の運用(※3)など、医療のDX化はエムスリーにとって追い風になると考えられます。
※5:厚生労働省「電子処方せん(国民向け)」
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グロース株のおすすめ米国銘柄一覧
次は米国株でおすすめのグロース銘柄について紹介します。
米国株でおすすめのグロース株
- ユナイテッドヘルスグループ(UNH)
- レイセオン・テクノロジーズ(RTX)
- シノプシス(SNPS)
- ゾエティス(ZTS)
- ディア&カンパニー(DE)
ユナイテッドヘルスグループ(UNH)
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
542.910 | 26.6倍 | 26.8% | 8.5% | 33.8% |
※2022/12/7 時点
ユナイテッドヘルス・グループは、米国最大級の民間医療保険会社であり、米国外の500万人を含む5,000万人の会員に医療給付サービスを提供しています。
医療関連はどんなに不況でも一定の需要が必ずあり、ディフェンシブな銘柄と言われていますが、成長が見込まれる分野でもあります。ユナイテッドヘルス・グループはアメリカを代表する500の銘柄であるS&P500の構成銘柄でもあり、その中でも上位のウエイトを占める大型株です。
レイセオン・テクノロジーズ(RTX)
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
99.040 | 33.0倍 | 6.3% | 2.8% | 45.3% |
※2022/12/7 時点
レイセオン・テクノロジーズは航空宇宙・防衛産業界で多角的な事業を展開する企業です。4つの部門で構成されており、そのうちの1つはミサイル防衛部門です。直近では米国防総省からウクライナ関連の受注(最大12億ドル)を獲得したと発表されました。
米国の国防費は約100兆円とも言われており、巨大な市場が広がっています。
シノプシス(SNPS)
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
323.800 | 51.5倍 | 19.2% | 11.6% | 58.6% |
※2022/12/7 時点
シノプシスは電子設計自動化(EDA)ソフトウエアに特化した最大手の企業です。近年の半導体需要ブームはシノプシスにとって追い風になりました。今後も半導体が伸びるのであればシノプシスの成長も続くと考えられます。
また、シノプシスは半導体メーカーだけに依存しているわけではなく、アップルやアマゾン、グーグルといった企業とも提携し、自社の商品を提供しています。このようなハイテク大手企業が半導体を社内設計するようになり、シノプシスの売上にもよい影響をもたらしています。
ゾエティス(ZTS)
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
150.250 | 34.3倍 | 44.3% | 15.1% | 32.7% |
※2022/12/7 時点
ゾエティスは動物用抗感染症薬、ワクチン、その他ヘルスケア製品の開発や製造をしている企業です。もともとはファイザーの動物ヘルスケア部門でした。
売上高は生産動物(牛、豚、鶏など)とペット(犬・猫など)でおよそ半々となっています。動物用のヘルスケアは参入してくる企業が少なく、先行している企業にとっては優位性が保たれるメリットがあります。
ディア&カンパニー(DE)
株価 | PER | ROE | ROA | 自己資本比率 |
440.650 | 18.9倍 | 35.5% | 7.4% | 22.5% |
※2022/12/7 時点
ディアは、世界有数の農業機器製造業メーカーです。重機械産業で世界的に知られている機械をいくつか生産しています。
農業が活発に行われるとディアの業績も上がります。日本では人口の減少が大きな問題になっていますが、世界的に見れば、今後30年は人口が増加していくと予想されています。
農業生産の需要が高まれば、同社にとって追い風となります。
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グロース株を狙う際の注意点
グロース株の取引は、一般的に言えばバリュー株よりもリスクが高くなります。以下のような点について注意するようにしましょう。
リスクが高いことを留意する
特にグロース市場区分の時価総額が小さい企業であったり、上場間もない企業へ投資する場合、業績のブレが大きいことがあります。株価上昇を期待できる反面、今まで好調だったのに急に赤字になるなどの業績不振で株価が下落するということもあり得るので、決算発表や業績の下方修正などの重要情報や企業の動向に注意が必要です。
また、株式市場全体が不調の時にはグロース株のほうが下落率が高くなりやすいので注意して取引してください。
購入するタイミングを見極める
株価の値動きが大きい銘柄の場合、既に人気がある銘柄などで高値でつかんでしまうと下落する可能性も高くなってしまいます。PERやPBRなどの割安性を測る指標や、オシレーター系のテクニカル分析を利用するなどして購入タイミングを判断しましょう。
オシレーター系のテクニカル分析とは、株価の買われ過ぎ、売られ過ぎを判断するのに役立つ指標です。代表的な指標として「RSI(アールエスアイ)」や「ストキャスティクス」などがあります。
株価は日々変動するため、購入タイミングを見極めるのは難しいです。しかし、PER、PBR、オシレーター系のテクニカル分析を利用するなどして、リスクを抑えながら投資することができます。
配当金が出ない場合が多い
グロース株は株価上昇(キャピタルゲイン)を狙う銘柄なので、配当金が出ないまたは利回りが低い企業も多いです。利益を配当に回すのではなく会社の成長のために資金を利用して、株価の上昇をもって株主還元をしています。そのため、配当(インカムゲイン)を期待するのであればバリュー株を狙いましょう。
まとめ:グロース株の特色を理解したうえで、投資をしてみよう
グロース株は株価が大きく上昇する可能性があり、業績うまく予想できれば大きなリターンが得られると期待されます。ただし、株式投資に限らずハイリターンな投資はハイリスクであることも理解し、今回紹介した銘柄を参考にして自身で分析、判断してみてください。
なお、ROEやPERといった情報はyahoo!ファイナンスや、証券会社のレポート、各社のIR(投資家向け)サイトにあるデータなどから取得することができます。
どんなに業績が良くなっても相場に引っ張られて株価を落とす可能性もあります。銘柄情報だけでなく、経済にも目を向けて投資をする事を忘れないようにしましょう。グロース株の特徴を知った上で、投資にチャレンジしてみましょう。
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よくある質問
Q | 投資初心者はグロース株とバリュー株どちらから始めた方がいいですか? |
A | 一般的にはグロース株のほうがリスクが高いため、まずはバリュー株を探すほうから始めることをおすすめします。最終的にはそれぞれの特徴を生かして、両方をポートフォリオに組み込むのがよいでしょう。 |
Q | グロース株を買うタイミングはどのように判断すればいいですか? |
A | PERなどの指標、決算発表等のタイミング、テクニカル分析など多角的に検討することが重要です。 |
Q | グロース株を購入する際、どのような費用がかかりますか? |
A | 一般的に株式取引では取引手数料がかかります。また運用益には20.315%の税金がかかります。 |